「全く、ハサンなんぞに遅れを取るとは……貴様それでも魔術師か! あの聖杯戦争を生き残っていくらか成長したかと思えば、全く成長しておらん! 恥を知れ!」
「なっ――! しょうが無いだろ! あんな大人数のサーヴァントに襲われたら、いくらアサシンだって言っても無理だ!」
「フン、そんなものはただの言い訳にしか過ぎん! 大体何だその投影は! 投影八節が全く出来ておらん! 基本骨子の想定も甘い! 何もかもが甘い! 構造に理がなければ話にならんと前に言っただろう!」
「なんだと!? これでも前よりは上手くなったんだぞ!」
「ダメだダメだ! そもそもだ、投影というのは―――」
「……ねぇ、クー・フーリン。なんなのあれ?」
「知らん。俺に聞くな」
後ろでギャーギャー言っている二人に呆れながら、夜の森を歩く。
あの後から、士郎と名乗る青年にずっとエミヤは食ってかかっている。何故かとクー・フーリンに聞くものの、彼は何も知らないようだ。
名前から察するに、彼とエミヤは生前に関係のあった人物とか血縁者とかだとは思うのだが、何故あんなに仲が悪いのかはわからない。
同じ名前同士、仲良く出来そうなものなのだが。
「…ん?」
「ん? どしたのクー・フーリン?」
どこまでも続いていそうな森の中を、ルーンの灯りを頼りに歩き続けていると、クー・フーリンが何かを見つけた。
クー・フーリンは近くに生えていた大木をまじまじと見つめると、ポツリと呟く。
「これは…傷だな。しかもまだ新しいぜ」
彼の指が指す箇所に目を凝らすと、そこには確かに何かの刃物でつけられたような傷がついていた。
周りの木も見てみると、そこかしこに傷がついている。
「…これってもしかして」
俺とクー・フーリンは互いに顔を見合わせる。
どうやらお互い、同じ結論に至ったらしい。
「あぁ。間違いなくここでつい数分前まで、戦闘が起きてた。相手は……恐らくあのアサシン共だろうな」
「…そっか。数分前までってことは、そんなに離れてないよね?」
俺はクー・フーリンにそう尋ねながら、足元に落ちていた手頃な石を幾つか拾い上げて、
俺がこの特異点の旅の中で使えるようになった魔術の中の一つが、この"ルーン魔術"だ。
全てのルーンを習得した、というわけではないが、幾つかのルーンはもう実戦に使えるほどのレベルになっている。
師匠であるキャスターのクー・フーリンやスカサハからのお墨付きだ。
話が少しズレてしまったが、俺はその石を地面に置き、いつでも探査を始められる状況になっている。
クー・フーリンは顎に手をあて、少しの間考えると、おおよその検討を告げた。
「…そうだな。ざっと、半径20メートルちょいってとこか」
「了解。それぐらいの範囲に絞って探してみるよ」
次の瞬間、俺は一斉にルーン石たちを発進させた。
ルーン石と俺の意識を同調させ、森の中を探査させる。
薄暗い森の中を数個のルーン石が高速で駆け回り、範囲の隅から隅まで探し回る。
そして、探査開始から数秒後、無数の黒マントと戦いを繰り広げるアルトリアとイリヤの姿を見つけた。
「……ビンゴ。ここから真っ直ぐ17メートル行ったところにアルトリアとイリヤがいる」
「OK。んじゃま、いくとすっか。 おい! 後ろでギャーギャー騒いでるバカ二人組! そんなとこで騒いでないでとっとと準備しやがれ!」
クー・フーリンが軽く伸びをしながら今も口喧嘩をしている二人を怒鳴りつける。
すると、全く同じタイミングで、
「「誰がバカだ!」」
と怒鳴り返してくる声が聞こえてきた。
そんな息ぴったりの二人に笑みを零しながら、俺も準備を始める。
いつもいつもサーヴァントに頼ってはいられない。特異点では何が起こるかわからないのだ。俺一人でもある程度は戦えるように、日々のうちからできるだけサーヴァントに頼らず、自分でできることは自分でやるようにしている。
まずはルーンによる身体能力の向上。これでオリンピックの金メダリストと同等くらいになる。
次に体重の軽量化。これでオリンピックの金メダリストを簡単に追い抜けるくらいになる。
最後に魔術礼装による身体強化。これで並の人間なら目で追えないくらいの速さになる。
ちなみに、ここまでしてもサーヴァントには簡単に追いつかれる。本当にサーヴァントというのは人智を超えた存在なのだと思い知らされた。
とはいえ、これならアルトリアたちの元へ行くのに5秒も掛からない。
俺は静かにその場で準備運動をしながら、他のみんなの様子を伺っていた。
「よーし、みんな準備できた?」
「おうよ。俺はいつでもいけるぜ」
「こちらもOKだ。…だが何故私が貴様を抱きかかえて移動しなければいかんのだ?」
「しゃーねーだろ。坊主をここに置いてくわけにもいかねぇし」
「ちっ…仕方がない。不満ではあるが、マスターの指示に従うとしよう。おい、絶対に目と口を開くなよ。開いた瞬間に風圧で酷いことになるからな」
ブンブンと士郎が首を縦に振る。この様子なら言いつけに逆らうことは無さそうだ。
周囲の了解を得た俺は、膝をつき、クラウチングスタートの構えをしてスタートのカウントダウンを始める。
「よし、じゃあ行こうか。サン、ニイ――」
踏み出す足に力を込め、土を踏みしめる。
全身の力が足に向かっていくのがわかる。これなら自己ベストを更新できるかもしれない。
「イチ――」
そんな下らないことを考えながら、その時を今かいまかと待ち続ける。
そしてその時は来た。
「ゼロ!」
俺の声と共に全員が一斉に飛び出す。
瞬間、俺たちは風となって夜の森を駆け抜けた。
どうも皆さま、ミーラウです。
ついに始まりましたねぐだくだ明治維新!
本能寺よりも周回が楽になって、すごい楽しいです。
あと茶々可愛いですよね!ロリなのに時々見せるお母さんっぽいとこがめっちゃ好きです。
次回はアルトリアたちとの合流回!アルトリアたち以外のサーヴァントたちとの合流はもう少し先になりそうです。
ではまた次回!