響け!オーボエカップル   作:てこの原理こそ最強

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今話にて最後となります。
ありがとうございました。


アンサンブルコンテスト 6

 

 

アンコン出場へ向けた演奏会が幕を開けた

 

会場には吹部を引退した3年生のみならず多くの生徒、先生方が演奏を聴きにやってきていた

 

現在みどりと求によるコントラバス二重奏が行われており、この次に演奏する久美子や麗奈達は準備室で待機していた

 

「結構な期間をこのメンバーで練習してきたけど今日ようやくその成果を見せることができて嬉しく思います。校内予選を勝ち抜いてアンコン出場を目指しましょう!」

 

リーダーである麗奈の宣言の後秀一を筆頭に全員が手を重ねる

 

「久美子」

 

「うん。北宇治ファイトー!」

 

『おー!!』

 

久美子の掛け声の下全員が気合を入れ、いざ本番へ

 

 

 

 

会場にて...

 

「みんなまた上手くなってるね」

 

「うん。あれからまだ数ヶ月なのに」

 

「これが若さなのかな。羨ましいね〜」

 

「私達と年そんな変わらないでしょ」

 

 

 

 

 

またまた会場にて...

 

「中川ミスってたな」

 

「受験があったししょうがないよ」

 

「後で優子に煽られるんでしょうね」

 

「比べてのぞみは相変わらず美味かったわね。なんか悔しいけど」

 

 

 

 

 

そして舞台の上手側。オーボエを持った2人がなにやら動きを見せていた

 

「まだまだこんなところで満足させるわけにはいかないな」

 

「うん」

 

「行くぞみぞれ」

 

「うん」

 

「オレはみぞれのために」

 

「私はハルのために」

 

「今日は後輩達の度肝を抜いてやろう」

 

「うん」

 

「いい音、奏ようぜ」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みなさん。とても素晴らしい演奏でした」

 

前組の演奏が終了し部員全員がステージを降り傍聴者と同じくステージの上から話す滝先生に目を向ける

 

「本来でしたらここで投票という流れなのですが、飛び入り参加でもう1組いらっしゃいます」

 

いざ投票というところで滝先生がもう一組いることを伝えた。現役生で残っている人はいなかったと全員が疑問に思う

 

「それではどうぞ」

 

滝先生がステージ下手に退場したところで会場全体の明かりが一気に消えた。そしてステージ上を歩く足音

 

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

 

足音が止まり全員の耳に聴こえてきたのは一切澱みのないキレイな音。繊細かつ流麗な響きが会場にいる全員の耳から入り脳と心臓を震わせる

 

そして暗闇の中パッと光放たれた2本のスポットライト。照らし出されたのは、春樹とみぞれだった

 

案の定全員驚いている。しかし声を出せない。いや、声が出ないという表現の方があっているかもしれない。それほど春樹とみぞれの奏でる音に魅了されていた

 

以前久美子が優子達のように演奏会に出るか確認したところ2人には出ないとはっきりと返答をもらっている。春樹はそんな驚いた表情を見せていた久美子に気づいてしてやったりの笑顔を見せ、みぞれは変わらず真顔のまま音を出し続けた

 

『堺 春樹くん、鎧塚 みぞれさんによるオーボエ二重奏。曲は「白鳥の湖」です』

 

滝先生がマイクでアナウンスをしてすぐ春樹とみぞれは互いに目を合わせ奏でていた音に変化を生ます。それは音大進学を目指すのに恥じないものだったのは全員が一瞬でわかった

 

♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜

 

♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜

 

「え...」

 

「なに、これ...」

 

「すごっ...」

 

2人の演奏は今まで共に同じ部員として演奏を続けていた3年を含めた吹奏楽部員にはもちろんのこと、オーボエがどういう楽器でどういった音が出るのかすら知らない一般で来てくれた生徒、先生にも衝撃を与えた

 

「春樹先輩...みぞ先輩...」

 

「さすがです...」

 

「ずっと聴いていられるよ..」

 

特に同じパートで研鑽を積んだ梨々香、える、駿河の三人は改めて自分達はすごい先輩と1年を過ごしてきたと自覚した

 

♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜

♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜

 

「...」

 

「麗奈...」

 

演奏が続く中隣で静かに涙する麗奈を見つけた久美子。そんな麗奈の表情から久美子はいろんな想いを感じ取ったのだった

 

\パチパチパチパチ/

 

曲が終わり長丁場の演奏を座りながら聞いていた生徒もその場に立ち上がって拍手をした。スタンディングオーベーション。この場でこれ以上の賞賛はないだろう。春樹とみぞれはそれに応えるようお互いに顔を見合わせお辞儀をした

 

そして...

 

「梨々香!」

 

「はい!?」

 

「える!」

 

「はい!」

 

「駿河!」

 

「は、はい!」

 

「楽器持って来い!」

 

「「「っ!はい!!」」」

 

突然春樹に呼ばれた3人は急いで自分の楽器を持って舞台に上がった

 

「最後に一緒にセッションしたいなってみぞれと話してたんだ」

 

「うん」

 

「先輩...」

 

「いい、んですか...?」

 

「私達では...」

 

急なことで上手く言葉が出ない後輩3人。さらにさっきの春樹とみぞれ演奏で若干萎縮してしまっている

 

「これはオーディションには関係ないしましてや金がかかった全国の舞台でもない。俺達はただ、純粋に3人と一緒に演奏がしたいって思ってる」

 

「「春樹先輩...」」

 

「みんな、一番一緒に練習してきた仲間だから」

 

「みぞ先輩...」

 

春樹とみぞれの嬉しい言葉に後輩3人はもう泣きそうになってる

 

「部活中にいつもやってた練習曲、忘れてないだろうな?」

 

「はい!」

 

「もちろんです!」

 

「今でも練習でやってますので!」

 

「よし。じゃあ行くぞ」

 

みぞれと後輩3人は楽器を咥え春樹の足に注目する。そして春樹が足で1、2、1、2、3、4...と刻み演奏が始まった

 

♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜

 

春樹とみぞれは聴いている部員や一般の人々よりも後輩三人を頻繁に見渡していた。それに反応するように後輩3人も演奏しながら春樹とみぞれを見る余裕がある。なんの重圧もなく、言わばパート練習をしていた教室の延長線のよう。側から見ていた久美子達にもすぐわかった。みんなすごく楽しそうだった

 

♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜♪ 〜♪〜

 

\パチパチパチパチ/

 

先ほどのスタンディングオーベーションとまではいかないものの拍手喝采。梨々花はみぞれに抱きつきえると駿河は春樹から頭を撫でてもらっていた

 

「3人とも、本当に上手くなったな」

 

「春樹先輩...」

 

「おい梨々香泣くなよ。パートリーダーだろ?」

 

「そうですけど...もっと先輩達と部活したかったです!」

 

「私もです!」

 

「私も!」

 

拍手が止まない中3人はもう涙を堪えられていない。これで終わり。どうしてもそう考えてしまうのだった

 

「コンクール見に行く。期待してる」

 

「みぞせんぱ〜い!!」

 

「先輩!」

 

「頑張りますー!!」

 

3人は泣きながらみぞれに抱きつく。ただみぞれは無表情のまま。いつも通りだ

 

「お疲れ様でした」

 

「滝先生。急な申し入れを受けていただいてありがとうございました」

 

「いえいえ。私もあなた方の演奏をみなさんに聴いておいてもらいたいと思っていましたので」

 

「そうですか」

 

舞台袖で春樹とみぞれの演奏を聴いていた滝先生がステージに戻ったタイミングで拍手は鳴り止んだ

 

「では最後にみなさんに伝えておくことはありますか?」

 

「はい」

 

滝先生から時間をもらい春樹はステージに目を向ける後輩達に向き直った

 

「まずは演奏会お疲れ様でした。そして突然の乱入をしてしまったすまなかった」

 

春樹は一旦謝罪を込めて頭を下げた

 

「今日急遽参加したのはこれからの北宇治吹奏楽を任せる後輩達に伝えたいことがあったからだ」

 

春樹は一度みぞれに目配せをして自分のいるところに近寄らせる

 

「俺もみぞれも決して天才なんかじゃない。だが努力を積み重ねてさっきの演奏ができるまで成長できた」

 

春樹の話を後輩達は真剣な表情で聞いている

 

「努力は裏切らない。信じられないと言うなら俺とみぞれが証明してやる。だから自分の腕を磨き続けろ。困難にぶち当たったらいろんな人を頼れ。そのための部であり仲間だ。塚本新副部長!」

 

「は、はい!」

 

「副部長がなにをしなきゃいけないのかはもう伝えてる。ただそれは一般的なことであって秀一達の代やこれから入ってくる新入生でどうなるかなんてわからん。サボってる暇はないぞ。常に頭使えよ?」

 

「っ!?はい!」

 

副部長を引き継いだ秀一は春樹からの喝でまだ新体制が始まったばかりだからといって甘く見ていた自分を思い出し力強く返事した

 

「高坂新ドラムメジャー!」

 

「はい」

 

「泣いてる暇はないぞ」

 

「っ!?」

 

春樹とみぞれの演奏を聞いて涙したのがバレていてすぐさま俯く麗奈

 

「憧れるのはいい。悔しがるのもいい。弱音を吐くのもいい。だがそれ後輩に見せるな。部のリーダーは久美子だが演奏の実質的なリーダーは麗奈なんだ。そいつの弱腰な姿を見せれば士気に関わる」

 

「...」

 

「だが誰よりも先頭を行けるのが麗奈だと思って俺達3年はお前に託した。期待してるぞ。部のことも、麗奈自身のことも」

 

「...。はい!」

 

春樹の言う通り魅入ってしまったと同時に悔しかった。でもそんな尊敬できる先輩からもらった"期待してる"の言葉。麗奈は頭を上げ力強く返事した

 

「黄前部長!」

 

「はい!」

 

「頼んだぞ」

 

「えっ...」

 

久美子は困惑した。秀一や麗奈に比べてたった一言。はっきり言えば自分も2人のようにアドバイスが欲しかった。ただでさえ部長なんて役職自分には不釣り合いと思っているからだ

 

そんな久美子の手をそっとに握る者がいた。久美子が顔を向けるとその正体は麗奈だった。まるで「久美子なら大丈夫」と、そう言っているような目をしていた。そんな麗奈を見て再びステージ上にいる春樹に目を戻すと、春樹は変わらず真剣な表情で久美子を見ていた。そんな春樹を見て久美子は麗奈の手を握り返し決心した

 

「はいっ!」

 

「いい返事だ」

 

久美子の返事を聞いた春樹は満足したように笑った

 

これにてアンコンオーディションは終了

 

部員投票結果

第1位:クラリネット四重奏 「革命家」

第2位:金管七重奏 「金管七重奏のための"ティー・タイム"」

第3位:サックス三重奏 「スペイン舞曲集よりガランテ・バレンシアーナ」

(実質第1位:オーボエ二重奏 「白鳥の湖」ー棄権)

 

一般投票結果

第1位:管打八重奏 「フロントライン〜青春の響き〜」

第2位: 金管七重奏 「金管七重奏のための"ティー・タイム"」

第3位:コントラバス二重奏 「メヌエット」

(実質第1位:オーボエ二重奏 「白鳥の湖」ー棄権)

 

 

アンサンブルコンテスト校内代表は部員投票結果に基づきクラリネット四重奏 「革命家」となった

 

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