7月も残り1周で終わるというところの今日は土曜日。春樹とみぞれは直美の家のホームパティに招待された
「ホームパーティなんて初めてだな」
「うん」
「こんなドレスコード普段しないから慣れないな」
「似合ってるよ?」
「ありがと。みぞれもドレス似合ってる」
みぞれがレンタルしたのは濃い目の青のフィッシュテールドレス。春樹はみぞれとまったく同じ色のスーツを着用している。どちらのも一緒に見に行って決めたものだ
「というか直美って静岡から来たって言ってたよな。なんでホームパーティできるんだ?」
「わからない。あとで聞いてみよ」
「そだな」
痛くならないものを選んだとはいえ履き慣れない革靴とパンプスで電車を使い30分ほど。最寄りの駅からそこまで遠くないところにたたずむ大きな一軒家。教えてもらった住所はここで間違いないし表札にも「芹澤」と書かれていた
「ここであってるよな?」
「多分」
「これで間違ってたら恥ずかしいどころじゃないぞ」
「あってるわよ」
携帯のマップで何度確認しても入力した住所はここで間違いない。ただいざインターフォン押そうとすると苗字の同じまったく別のお宅だと不安なっている2人の声が聞こえたのか中から直美が出てきた
「よかったー。あってたわ」
「なら早く鳴らしなさいよ」
「えと、こんばんは」
「来てくれてありがとう鎧塚さん。案内するわ」
ディープグリーンのタイトドレスに身を包んだ直美に連れられ春樹とみぞれは家に入りどんどんと奥へ通された
「ここよ」
「おー広いな」
「外国のホームパーティに比べたら全然。ここは入っても20人ぐらいだもの」
「十分、だと思う」
「そう?」
広々とした空間に長テーブルが2台。そしてキッチンは調理している様子が見えるようになっておりカウンターも面している。まさにパーティすることを想定したかのような造りだった
「まぁいいわ。先に叔母と会ってほしいの」
「もしかして今日招待してくれた?」
「そう。今日の主催者ってことになるかな。始まる前に2人に会いたいっていうから他の人より少し早めに来てもらったの」
「そういうことだったのか。じゃあこれは叔母様に渡した方がいいか?」
「そうして。叔母もその方が喜ぶと思うから」
「わかった」
「じゃあこっち」
パーティ会場から一度出てさらに奥の部屋。立ち止まった直美はドアをノックする
「叔母さん、2人連れてきた」
『どうぞー』
「「失礼します」」
「あら、あなた達が」
返事を受け直美が開けた部屋は応接室のようでさっきのパーティ会場とは打って変わってシックなお部屋に背の低いテーブルとその両脇に4組のソファーが並んでいた
「改めて紹介するわね。大学で知り合った堺 春樹くんと鎧塚 みぞれさん。こちらは私の叔母で芹澤 響子」
「はじめまして、堺 春樹です。直美さんには大学で良き友人として大変お世話になっています」
「鎧塚 みぞれです」
「芹澤 響子です。今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそお招きいただきましてありがとうございます」
「ありがとうございます」
直美の叔母であり雑貨店を経営している芹澤 響子。だた若い頃は世界を飛び回るようなオーケストラ団でクラリネットを担当し音楽界では顔が利く重鎮である
「こちらつまらないものではございますが」
「あらありがとう。まぁいちご大福」
「えっ!?っ!」
春樹から手渡された紙袋の中身を確認し商品名を口に出したところ直美が反応。ただすぐさまやってしまったと口を押さえた
「ふふっ直美の大好物なのよ」
「そうでしたか。これは偶然」
「春樹、あなたまさか...!」
「選んだのはみぞれだ」
「っ!」
普段滅多なことでは動揺しない直美が醜態を晒してしまったため春樹を睨むが選んだのはみぞれだと聞いてみぞれと目を合わせたところ無表情のピースが飛んできた
「直美から話を聞いていて私も一度お話してみたかったの。どうぞ掛けて。直美、お茶お願いできるかしら?」
「わかったわ」
お茶を持ってくるよう頼まれた直美は一旦退室した。そして春樹とみぞれは響子の反対側のソファーに腰かけた
「まずはお礼から言わせてちょうだい」
「お礼、といいますと?」
「あの子入学したときはレベルが低いだの私の貴重な時間をって険しかったの。でも2週間もしないうちに学校に行くのが楽しみになったようでね。それからよ、あなた達2人の名前をしょっちゅう聞くようになったのは」
「それは私達としても嬉しい限りです。専門が違えど直美さんのようなトップレベルの演奏家と知り合えたことに感謝しています」
「私も、嬉しいです」
「そう言ってもらえると私としても嬉しいわ。実はね、私堺くんも鎧塚さんも名前だけは知っていたのよ」
「え...」
「あの大学の講師何人かとは知り合いでね。あと滝くんからも話は聞いていたわ」
「滝先生とお知り合いなんですか?」
「昔一緒になったことがあってね。ちょくちょく連絡は取ってたの。まさか公立高校の教師になってたなんて驚きだったけど」
「そうだったんですね」
高校の2年間、春樹に限ってはそれ以上前からお世話になった滝先生と響子に接点があったことに2人は驚いた
「同じ大学に進学することは知ってたからいつかは直美と出会うとは思ってたけどまさかもう2人の名前を聞くなんて思わなかった」
「偶然でした」
「そうみたいね。演奏会が楽しみだわ」
「もうご存じでしたか」
「もちろんよ。今日のパーティはあなた達のお祝いも含めた開催なの。楽しんでいってね」
「そんな...ありがとうございます」
こんな人生で参加できるかできないかのパーティに招待してもらっただけでなくその内容が自分達のこととなり感謝の気持ちが込み上げ2人は立ち上がり頭を下げて感謝を伝えた
「ところで、学校内で直美はどんな感じなのかしら?」
「余計なことは聞かなくていいの叔母さん」
「あら残念」
普段自分のことを話さない直美の学生生活のことを聞きたかった響子は2人に問いかけてみたところに直美がお茶を持って戻ってきてしまった
「2人も余計なこと言わないでね」
「別に隠すようなことしてないんだからいいじゃんか」
「それなら話す必要もないでしょ」
「預かってる身としては気になるのよ」
「それは建前でただ叔母さん聞きたいだけでしょ」
「親はちょっとしたことでも聞きたいらしいぞ。ウチもみぞれの親もひっきりなしに連絡くるからな」
「鎧塚さんのところも?」
「うん。よく連絡くる」
「ほらねー?」
「よそはよそ、ウチはウチ」
「じゃあ響子さん、今度直美がいないときにまた」
「あらそう?」
「こらっ!」
春樹と響子による密談が執り行われそうだったが案の定直美に妨げられた
「そろそろ他の人達も来出すから会場行くよ」
「そうね。2人とも時間取らせてごめんなさいね」
「いえ、響子さんとお話できてよかったです。後ほど家族を紹介させてください」
「もちろん。楽しみにしてるわ」
「ありがとうございました」
「鎧塚さんも楽しんでね」
「はい」
響子とは一旦別れパーティ会場に戻ると春樹と同じようにスーツ姿の界人が到着していた
「界人だ」
「こんばんは」
「2人はもう来てたんだね」
「響子さんと話してた」
「あーなるほどね。会いたいって言ってたから」
「もしかして界人もここに?」
「そう。1人暮らしするって言ったのに直ちゃんがね」
「部屋は空いてたみたいだからお願いしてみたのよ。界人ほっとくと食事抜いたりするから」
「あはは...お世話になっております」
「なんか界人が直美に頭が上がらない理由がわかったわ」
「うん」
4人で仲良く話していると春樹の携帯が震えた
「母さんからだ。もしもし?」
『あ、春樹~?今どこ?』
「もう会場着いてるよ」
『なんだ早いじゃん。私達も今目の前に着いたと思うんだけど』
「わかった。もしかしてみぞれのお義母さんお義父さんもいる?」
『もちろーん』
「オッケー。じゃあ外出るわ」
『はーい』
直美が今日招待したのは春樹とみぞれだけではなく2人の両親も時間があればとのことで招待していた
「親来たみたいだ」
「わかった」
「みぞれも行くか?」
「うん」
外にいるとのことで直美と春樹、みぞれが外に出た
「あ、直ちゃーん!」
「うげっ...」
「何その反応ひどい!」
「千紗ちゃん猪突猛進型なの忘れちゃったんじゃない?芹澤さん」
「うるさいバカ朔太!直ちゃんが私のこと忘れるわけないでしょ!」
「なんか懐かしいねこの感じ」
「懐かしんでる場合じゃないでしょエレン。芹澤さんすっごい嫌そうな顔してる」
「何事?」
「なんか今日招待してくれた芹澤さんの高校のお友達だそうよ。駅で迷子になってたみたいだったから声かけたら目的地一緒だったから連れてきちゃった」
「なるほど、おつかれさんだな」
春樹とみぞれの両親と一緒にやってきたのは直美と界人の高校の同級生であり吹奏楽部の仲間だったメンバー。直美に抱きついた穂村 千紗とその幼馴染の上条 朔太。そしてエレン・セイと成島 美奈子の4名だ
「きゃー!みぞれちゃーん!」
「お久しぶりです」
「春樹くん、みぞれが世話になってるね」
「いやいやお義父さん。オレ自身もうみぞれがいない生活なんて考えられませんよ」
「まぁ聞きましたお父さん!みぞれはホントにいい旦那さんと巡り会えたわ〜」
「まだ気が早いですよお義母さん。その件はまた必ずご挨拶にお邪魔しますので」
「すまないな。母さんはもうどこの式場がいいか探してるぐらい楽しみにしていてな」
「いえ、嬉しいです」
みぞれの姿に大興奮の春樹の母と春樹を既に自分の娘の伴侶と認めているみぞれの両親が揃った
「もう!案内するから離れて!」
「えー。もっと感動の再会を育もうよー」
「いらないから」
「穂村さん、他にもいらっしゃるから」
「あー気にしないでもらって全然。案内ならオレ達がするから」
「ホントですか!?ありがとうございます!」
「そういう変な気遣いいらないから。ほら行くよ」
千紗を引き剥がして全員を家に案内する直美。それに続いて全員がパーティ会場に入った
「おー!」
「Amazing!」
春樹達同様千紗達もパーティ会場に驚いた
「あーみんな久しぶりー」
「界人!」
「久しぶり檜山くん」
直美と同じように高校卒業で離れ離れとなった界人とも再会を果たした