璃乃音Side
「璃乃音 そんなに走ったら 転んじゃうよ!」
後ろからリク兄様の声がする
「ふふふっ大丈夫
璃乃音もう七歳になったから転ばないよ!」
そう答える でもリク兄様はまだ心配なのか
ずっと後ろから言ってくる
全部にこたえてると疲れちゃうから
今言ったので最後にした
桜の木まで走る
タッタッタッタと軽やかな足音を響かして
あと少しって時だった
「あれ?」
何かに躓いた気がした
ばッしゃーーーん
ぶくぶくぶく
視界が私が飛び込んだせいで出来た
泡でいっぱいになる
一瞬可愛いなんて思った
でもそれはホントに一瞬で
息が出来ない 今日は肝心な河童はいない
河童の集まりがあるんだとか
誰も助けてくれない
ううっ苦しいよぉ
ついに息が限界になって
璃乃音の体が沈んで視界が見えなくなる
意識がなくなる瞬間
黒が見えた気がした
「と さま」
目が覚めた所は 私の部屋だった
さっきのはゆめだったのか
そうだと思った
いや 思いたかった
「あっお父さん 璃乃音 目覚ましてる」
リク兄様の声がした
はあ これから どうせ
怒られるんだろうな
「璃乃音 あの時言ったよね
走ったら転ぶよって」
璃乃音は反論する言葉が見つからず 俯く
こういうときまだ璃乃音は 二歳何だなあって思う
「また前みたいに 遊び三日間禁止って言われるよ」
そうなのだ
璃乃音だっていつもあんな感じって訳ではない
ただ 三日前に縁側からおちて
頭を石にぶつけてしまった
血がだらだら出て
父様が 直してくれなかったら
間違いなく病院で何針か縫ってたらしい
それで お仕置きとして三日間遊び禁止令が出た
別に璃乃音悪くないんだけどなあ
で やっと外で遊べたのが今日で
つまんなさから解放されるってはしゃいでたってたわけ
でもまさか だれもこんな風になるなんて思わないもん
でも
「また 遊び禁止令がでるなんて絶対やだ」
そう言った璃乃音に
じゃあ 今度からは?
そう続けたリク兄様に
「気をつける」
そうそう なんて言って 頭を撫でてくれた
・・・へへ
すると襖がスーっと開いて 父様が出てきた
「リクオすっかり 兄様らしくなったじゃねえか」
そう言ってリク兄様の頭をくしゃりと撫でた
あっいいなあ
リク兄様は 照れたように笑った
でも リク兄様だけが兄様らしくなったんじゃないのに
璃乃音の姉様らしいこと… らしいこと…
あっ!!
「父様 璃乃音もう七歳になったの
璃乃音もお姉さんになったでしょっ」
そう言った璃乃音に
最初は きょとんとした顔をしたけど
笑って頭を撫でてくれた
そう璃乃音は三月二十九日生まれ
だから もうリク兄様と同い年なんだ
リク兄様に近づいた気がした
「そうだな 璃乃音も もう お姉ちゃんだなあ
早いな もう 七年たつのか」
うん 璃乃音が 産まれてから もう
七年経つんだ 七年でこんなに大きくなった
もっと大きくなるつもりだけどね
「あ そうだ
父様 璃乃音ね あそこ行きたいんだ
あの 黄色い花がたくさん咲いてるところ
名前なんだっけ … ッ山吹だ」
父様に言いたいことを一気に言ってみた
最近あそこ行かないんだもん
だんだん春休みが終わって 学校始まったら行けなくなるでしょ
だから 春休みが終わる前に
一緒に行きたい
璃乃音の気持ちが伝わったのか
明日の午後 昼食を食べたら行くって 約束してくれた
楽しみ 楽しみ 楽しみ 楽しみ 楽しみ
ああ 楽しみすぎて 眠れない
よし こういう時は…
部屋から飛び出し 縁側にいって 草履を履いた
そして 桜の木の下に座る
ここは璃乃音の 好きな場所
父様や爺様は 上のほうが好きみたいだけど
璃乃音は 下のほうが好き
下から見た 桜の景色がとっても綺麗なの
ああ 桜を見てたら 歌いたくなってきた
璃乃音は歌うのが大好き
みんなも上手って褒めてくれる
すうっと息を吸った
胸に手を当ててみて
感じるでしょ みんなとの思い出が
離れていても 大丈夫
みんなとの思い出が 道しるべ
明日がどんな姿で 始まり 終わるのかは
分からないけど 変えれるのは君だけだよ
途中でやめて 桜と向き合い歌った
これからもよろしくね 最高のベストフレンド
そう言って 抱きしめた
ちゅんちゅん
スズメの鳴き声で目を覚ました
「ふあー… 眠い」
目覚めた時 最初に 目に映ったのは
いつもと同じ 部屋の天井
ん あれ 何かおかしい
・・・あ そうだ
昨日璃乃音 桜の木の下で寝ちゃって…
でも なんで私こっちに戻ってきてるの
「まあ いいや 着替えよ」
そう言って お気に入りの浴衣に着替えた
普通の家だったらここは Tシャツとかだろうけど
璃乃音の家の人はみんな 浴衣とか着物だから
家では これが 当たり前
着替え終わって 襖を開けた
しばらく 廊下を歩いていた
特に何も考えず
考えていたこととすれば 眠いなあ とか
早くお昼になんないかな みたいな
自然と下がっていた顔をふとあげた時だった
黄色の花びらが 璃乃音の前を ひらりひらり
通りすぎて 落ちた
拾って花びらを 見つめる
黄色の花なんてこの辺に咲いてたかな
もしかしたら 気づかない内に咲いていたのかも
頭の中に 山吹の花が浮かんだ
確かにあの花は 黄色で 花びらだって
このぐらいの大きさだったと思う
でも 璃乃音でも分かる
山吹の花びらがこんなところまで 飛んでくるはずない
どこかに似た花が 咲いているのかも知れない
そのあと 黄色い花を庭からその周辺まで念入りに
探したけど見つけることは 出来なかった
昼食を食べた後 約束の山吹畑に来た
ふふ 嬉しいことにリク兄様も一緒に来てくれた
しばらく三人で遊んでた
そして リク兄様とお寺のとこに来た時
女の子がいた
綺麗な女の子
印象は 不思議な人だった
白と黒で出来た子
黒の髪に黒の瞳に黒の服
その色と対照的な白い肌
その子 ううん お姉ちゃんは
「一緒に遊びましょ?」
そう 微笑んで言ってくれた もちろん
私たちは了承してしばらく 一緒に遊んだ
「リクオ 璃乃音 その子は誰だ?」
何だろう 胸騒ぎがする
警報が頭の中で鳴り響く
ああ 頭が痛い
すると 一瞬何かが 頭の中に 流れ込んだ
これは 何?
いつの間にか お姉ちゃんとまた遊んでいた
幸せだ とっても楽しい
そう思う反面
駄目だ 今すぐ その子を置いて帰れ
という自分もいた
ごちゃごちゃになって 気づいたら
「あ みて 何だろう あれ 璃乃音 見に行こう」
そう言って 腕を引っ張るリク兄様に着いていく璃乃音
「駄目 リク兄様帰ろう」
え 何言ってるの
そんな表情で璃乃音を見たリク兄様の手を払って
父様のほうへ 走った
父様がいる道に着いた時
お姉ちゃんは 山吹の中から 剣を抜いて持っていた
「父様 危ない!!」
私は父様の所へ 走った
だが
ぐさっ
そんな音がした
倒れていく 父様
瞳に光を取り戻していくお姉ちゃん
父様に駈けよって 声をかけた
「父様 父様 しっかりして」
あ そうだ歌えば傷は治るかも知れない
爺様が 鴉天狗と話しているのを聞いた
私の歌には 傷を治す力があるって
私が歌えば
「まってて 今 なおして見せる」
すうっと息を吸って
空へ羽ばたく 大きな翼
あなたを支える道しるべ
あなたが鳥なら私は風に
いつまでも傍で
あなたを支える道しるべになれるように
「璃乃音逃げろ リクオを連れて」
いきなりそう言われ動揺した
「俺なら大丈夫だ
妖怪の血が半分入ってる
だが いまは 無理だ
代わりに リクオを連れて逃げてくれ」
ごくり 唾を呑んだ
「約束だからね 破ったら許さないんだから」
ふっと笑って頭を撫でてくれた
「ああ」
それが 最後の会話なんて 思わなかった