ロクでなし魔術講師と禁忌教典〜雷の戦車〜 作:引きこもり志願者
ネタバレあるよ!
それは、とある早朝の一風景
「なんつーかさ。俺、つくづく思うんだよ。働いたら負けだなって。」
悟りを開いた人とはこのような顔をするのだろうか。
頬杖を付きながら訳のわからん事を吐き出した男の名はグレン=レーダス。黒髪黒い瞳、長身瘦軀のとくに特徴は無いのだが、全部からやる気の無さが滲み出てる。これでもかと言うほどに。
「お前のお陰で俺は生きてる。お前がいてくれて本当に良かった。」
テーブルを挟んでグレンの正面に座る女性は優雅に足を組み換えると、穏やかな視線を送る。
「ふ、そうか。死ねよ、穀潰し。」
さらりと毒を吐きながらも、その細面には可憐な微笑が咲いていた。
女性の名はセリカ=アルフォネア。黄昏に燃える麦穂の様な金髪、鮮血の様な赤い瞳。その相貌は見目麗しく整っており、妖しい色香が魔性を感じる。外見は二十歳ほどに見えるが、噂では三桁を超えると言われている。まぁ、魔女みたいな人物だ。
「あっはっは!セリカは厳しいなぁ!あ、お代わり。」
カラになったスープ皿をずいっと目の前のセリカに突きつけるグレン。その顔は罵声をくらったとは思えないほど清々しい。
「普通、働きもしない居候って、もうちょっと謙虚になるもんだと思うんだが。」
「あ、今日のメシはちょっと塩味がキツかったぞ?俺は薄味の方がいいね。」
「その上、ダメ出しとは恐れ入る。」
セリカは暫くニコニコと笑って
「《まぁ・とにかく・爆ぜろ》」
奇妙な三節の呪文を唱えた。
その刹那、耳をつんざく爆音が轟き、視界を紅蓮の衝撃が埋め尽くす。
セリカの唱えたのは魔術。そう、世間一般的に使える人は恰好良く見え、それさえあれば何でも出来る魔術。ルーン語と言われる魔術言語で組んだ魔術式で、数多の超常現象を起こす。この世界では当たり前にあって、呪文を唱えるだけで色々と出来てしまう『技術』だ。
ちなみに俺の名はアールツ・グリード。歳は16歳で、アルザーノ帝国魔術学院の二年生。
全体的に長めな焦げ茶の髪で、目は黒。平均的な身長で筋肉はそこそこ。
肉料理全般が好きで、学院の友達と遊んだりするのが楽しい学生さ!
・・・なんで自分のプロフィール喋ったんだろ。
ちなみに今は朝食の時間であり、俺もスープに浸けたパンを食べている。決して魔術を使うような場面では無い。無いのだが、魔術の腕が高いセリカを怒らせるグレンがアホ過ぎるのだ。
今もグレンとセリカが言い合い、とても賑やかな朝になっている。
こんくらい塩気があっても美味しいと思うなー、何て言っても聞こえなさそうな位賑やかだ。つかうるさい。
「・・・ごちそーさまっしたー。」
どうせ言い合いは終わらんし、このまま待って魔術に巻き込まれるのは嫌なので、そそくさと退出し、制服に着替え、学院に向かう。
途中でセリカが魔術を唱え掛けたり、グレンが軽やかにフライング土下座を決めたり、ギャーギャーと騒がしかったが、気にしては行けない、
むしろ気にしていたら時間が無くなる。
「いってきまーす。」
恐らく聞いちゃ居ないだろうが、挨拶をして家を出る。
後ろで現分子分解する大魔法が発動して壁に大穴が空いた気がするが、気にしてはいけない。