絵を描く息抜きに文章(ストウィ)を書く息抜きにこれを書く感じで。
暗くする予定はないので。
独自な考察を多く含みます。
苦手な方はご注意ください。
じょしょう
薄暗い部屋の中で、ただキーボードを叩く音が聞こえる。
その合間にマウスのクリック音。
男は無心に、部屋の唯一の明かりであるディスプレイを眺めていた。
インターネットのブラウザが画面に表示されている。
表示されているサイトは全て文字が薄くなっており、すでに閲覧済みだということが分かる。
「ここも駄目か……」
男はパソコンデスクに置いてるマグカップに手を伸ばし、中に入っている冷え切ったコーヒーを呷ってため息をついた。
「クゥン?」
その様子を足元の床で寝ていた大型犬が見つめて『どうしたの?』という感じの鳴き声をげてた。
「なんでもないよ」
頭を持ち上げた犬に対して、彼はそれを見ることなく頭を撫でた。
(ジャパリパーク……ね)
男は内心でつぶやいた。
彼は無駄だと思っていても、あることを探していた。
それは今や都市伝説と言われる類のもので、存在すら怪しいテーマパーク。
(洋上に浮かぶ火山島。動物の研究、種の保存。ふれあいを行う事ができる複合動物園。ネットを調べても、オカルト以外での情報はこれぐらいか)
男はすでに閲覧したサイトの内容を見返した。
どれも信頼できるソースでは無いため、男はその中でも有り得そうな情報を選択して集めた。
しかしそれも、『ジャパリパーク』の存在に迫れそうな内容ではなかった。
「緯度も経度もわからない。航路も、写真すらない。画像も殆どがCG合成のまがい物。本当にあるのかすら怪しい。なぁ?」
椅子の隣で無心にこちらを眺め続ける飼い犬に対して、男は語りかけた。
犬は首を傾げて、何かわからないと言った様子だった。
「だいたい、
ジャパリパークと検索すると、必ずと言っていいほど引っかかるオカルトサイトに表示される内容。
男はそのにわかには信じがたい内容に溜め息すら漏らす。
「確かに、カコ博士の論文については読んだことあるが、現実味を増すためのブラフだろうしなぁ」
そして、必ずオカルトサイトに出てくる名前があった。
その人物。
彼女の名前は『カコ』
絶滅動物に対する論文や研究で著名な学者である。
男もその手の論文に目を通したこともあった。
(最近は名前すら聞かなくなったもんな。引退したのか?それとももう……)
ある時期から、カコの名前はピタリと途絶える。
所在すらわからないため、何故ここに名前を挙げられているか。
本人に聞くこともできないため、男は完全に手詰まりの状況で、デスクに肘をついて頭を抱えた。
「あと、ミライって誰なんだ。そもそも何をしてた人なんだ……。」
そしてもう一人、必ずと言っていいほど出てくる名前があった。
『ミライ』
あるサイトではパークのガイド、あるサイトでは謎の研究者。
実在すらしていないかもしれない人物。
これも『カコ』と同じく、調べようがないため、男はまた溜め息を漏らした。
「何やってるんだろうな俺は……」
そして男は自虐とも取れる言葉を呟く。
そして、何故こうなっているかの経緯をふと思い出していた。
(何気ない事だったんだよな……)
男がネットサーフィンをしていた時の事だった。
いつもなら見逃す様なサイトだった。
しかしその時見た言葉が、なぜかサブリミナルのように脳内に残ってしまった。
(ジャパリパーク。複合動物園……)
謎の場所。未知の単語。
ただのオカルトではあったのだが。
元写真家のジャーナリストである男の魂に何かしらの炎が灯ったのだ。
(動物の楽園、
実在しないオカルトの話。
しかし男には、それが実在しているのではないか。
そういった謎の自信と希望で、今日まで仕事をそっちのけで情報を集め続けていた。
そして、早くも半年の時間が過ぎていたのだ。
男は再び頭を上げて、ディスプレイに齧り付く。
ディスプレイが唯一の明かりである薄暗い部屋で、愛犬と二人きりで。
男はまた、存在すら怪しい場所をの情報を探し始めた。
時刻は0時を過ぎていた。
………
……
…
男は久しぶりに外に出ていた。
今朝のことである。
男は仕事で付き合いのある情報屋から『お前に売りたい情報がある』と言った誘いを受けたのだ。
(内容は聞けなかったが、俺に売りたいってなんなんだよ)
中途半端に連絡を切られてしまったため、男はモヤモヤした気持ちで、待ち合わせの場所へと向かった。
「ハッ、ハッ、ハッ」
リードを首輪に繋がれている愛犬は、嬉しそうに男の前を引っ張るように歩いている。
「なぁレグ。悪かったって。散歩もろくに連れて行かなくて。だから引っ張るなって」
久しぶりの散歩に『レグ』と呼ばれた愛犬は、耳をピクピクと動かずが、知らんぷりで足を進めていく。
レグはシベリアンハスキーである。
そんな大型の犬に引っ張られれば、男も若干引きずられ気味で歩くしかない。
木漏れ日が漏れる並木道を歩くと、やがて大きく広がった場所へと着いた。
情報屋が男に待ち合わせを指定した公園である。
(なんで公園なんだよ。いつもの喫茶店でいいじゃんか)
情報屋はいつもは街中の喫茶店で情報の受け渡しを行なっていた。
しかし今回に限って、こんな街から少し離れて公園を指定された。
よっぽどの理由があるのだろうと、男はこれから売りたい情報とやらに不安を覚えた。
公園は街を離れているせいか、あたりの人影は疎らで、とても賑わっているとは言えない。
男は中央の噴水に見知った人を見つける。相手も気がついたのか手を振っている。
「おーい、久しぶりだね。レグも」
「わうっ!」
「よう。お前の方から売りたい情報ってなんなんだよ」
二人と一匹は短い挨拶を交わすと、男は情報屋に対していきなり呼び出したことについて切り出した。
「つれないね。久しぶりに会ったっていうのに」
やれやれと、若干のオーバーリアクションで情報屋は呆れたように首を横に振った。
「俺は昔からこうだろ? しかしなんでこんな場所なんだ?」
「ブツがブツだからね。人目が多いとちょっと」
「ほーう、かなり危険なのを引っ張ってきたみたいじゃないか」
情報屋は耳打ちをするような小さな声で話した。
「お前オカルトに心底ハマってるだろ?」
「オカルト言うな。これでもマジで探してんだぞ?」
「悪い悪い。実はそれに関連するかもしれない情報なんだけど」
その言葉に男の表情は一転して真剣なものに変わる。
「食いついたな? 歩きながら話そう」
情報屋はしてやったといった表情で歩き始める。それにつられて男も歩き始めた。
情報に手詰まりだった男にしては、またとないチャンスだった。
(これで少しでも『ジャパリパーク』の情報に近づければ)
男は早く情報屋の話が聞きたいと、興奮気味で話を始めた。
「で、情報ってのは?」
「まぁ落ち着けって。実はこれなんだけど」
興奮気味の男をなだめると、情報屋はバッグから一つの封筒を取り出した。
A4サイズの封筒で、厚みも少しあり、かなり多くの枚数の紙が入っていることがわかる。
「中をみてもいいか?」
「あぁ、納得できれば金を払ってね」
情報屋はいつも中身を相手に見せてから、納得させて金を要求すると言うスタンスを取っていた。
そう言ったやり方をしているため、同業者からの信頼も厚い。
高い信頼性の情報を持ってくることも、彼の顧客が多い理由でもある。
男はレグのリードを一旦情報屋に預けると、封筒から中身を取り出した。
「……おい、これヤバくないか?」
「だから喫茶店じゃダメなのさ」
なんてものを持ってきたんだと、男はそんな表情で情報屋の顔を見た。
無理もなかった。そ
の表紙に書かれているのは、某国情報機関のマーク。
「知り合いがクラッキングが得意でね。この情報。私だけに売ってくれたんだけど」
「俺まで犯罪者にするつもりか? これのどこが俺に関係ある情報なんだ」
「とにかく読んでみなよ」
男はパラパラと流し読みを始める。
そして、あるページに差し掛かると、ピタッと動きが止まった。
「ジャパリアイランド……!?」
「気に入っていただけたかな?」
「他にこの資料を知ってるやつは?」
「私は軽く目を通しただけ。情報引っこ抜いた奴は結局捕まっちゃったよ」
男はその話にさらなる信頼を感じた。
クラッキングした者が捕まったと言うことは、この資料は隠したい情報だと明白だった。
(早く帰って資料を読み解きたい)
男は早る気持ちを抑えて、小さく深呼吸を行なった。
「……いくら払えばいい?」
「今回はサービス価格でこんなもんで」
それきた、と情報屋は金額の書かれた紙を男に渡した。
「……手持ちがない。後日でもいいか?」
男は財布に入っている有り金全部をまずは情報屋へと渡す。
「もちろん。お前と私の仲だからね」
「感謝する」
男は資料を封筒に戻すと、情報屋からレグのリードを受け取った。
「しかしまぁ最年少で『ジオグラ』の表紙に載ったほどの『けもの狂い』とまで言われたお前が、私と連むなんて」
「昔の話はやめろ。今はただのジャーナリストだ。売れない方の」
「お前の写真好きだったんだけど。生き生きとしたの写真」
「だからやめろって、そいつはもう死んだ。じゃあな」
男は封筒を大事そうに抱え込むと、情報屋の顔を見ることなく軽く手を振った。
「やっぱりつれないね。写真家さん」
冗談ぽく弄るような声色で情報屋は男に声をかける。
しかしそれに振り向くことはせずに、男は自宅への道を足早に歩く。
「写真家か……」
レグに若干引っ張られながら、男は少しぼーっとした表情で小さく呟いた。
………
……
…
「ふぅ……」
薄暗い部屋に、カーテンの隙間から日差しが差し込んでいた。
男は大きく息をつくと、持っていた資料を少し乱暴に机の上へと投げた。
ぎぃぃと音を立てる椅子から立ち上がると、同じ部屋にある長ソファーへと寝転んだ。
それに追随して、向かいの一人掛けのソファーにレグが飛び上がり、まるまるように寝転がる。
「なんて資料を持ってきたんだあいつは」
男は差し込む朝日から逃げるように腕で目を覆い、感慨深く呟いた。
「
資料の内容を整理するように、男は書かれていた単語を何回も繰り返す。
「
脳内で情報を整理するたびにまた湧き上がる興奮を、男は小さく深呼吸して落ち着かせた。
(まずネット上でこの緯度経度を調べても、島ひとつ出てこないこと。そして、なぜ爆撃機を喪失したか書かれていないこと。特定特殊生物と書かれているが、それ以上の情報はなし)
情報を整理するたびに深まる謎に、男は興奮冷めやらぬ笑みを見せた。
(しかしジャパリアイランドと記されている。間違いなく『ジャパリパーク』のことだろう)
男は着実に確信に近づいていることに、笑みが止まらないと言った表情を見せる。
男はゆっくりと体を起こす。
(実在するとして、どうしてみんなから忘れられた? 破棄されたのは火山島だし毒ガスのせい……?)
自らの顎を撫でるように男は考え込む体勢をとった。
(しかし、火山ガスのせいで爆撃機なんて出すか? 特定特殊生物とか書いてあるし。これはもう)
男は決心したように二、三度頬を叩くと、一気に立ち上がった。
「その場所に行くしかないんしゃないか」
ガタン−−−
男が決心を決めたその時だった。
玄関から物音が聞こえ、男はその音の方へと向かう。
(何かが投函されたみたいだな。いつもの配達時間とは違うが)
男は玄関の扉を開けて確かめるが、郵便のバイクや車の音はおろか、人影すら見当たらない。
しかしポストを確認すると、確かに一通の封筒が投函されていた。
男はその封筒を手にとった。
その封筒は若干の盛り上がりがあるため、紙以外も入っていると思われる。
「なんだこれ。宛先も相手の住所もない……。いたずらかよ」
再びあたりを見回すも全く人影もなく、男はため息をつきながら部屋へと戻った。
「一応開けておくか」
部屋に戻り、男は再びソファーに腰掛けると、封筒を少し乱暴に開けた。
中に入っていたのは一通の折られた紙。
もう一つはパソコンに接続できそうな記憶媒体だった。
男は初めに折られている紙に手を伸ばし、そしてそれを開いた。
「あなたに託します。ようこそジャパリパークへ!?」
男は書かれていた文面に驚き、素っ頓狂な声をあげた。
ソファーで寝ていたレグも、それに驚いたのか飛び起きて男を見つめた。
「この手紙誰が……ミライ? って……えぇ!?」
手紙に書いてある名前が、巡回していたオカルトサイトに載っていた名前と合致したことに、男は再び驚愕の声をあげた。
「ミライさん? この手紙はミライさんが? いやでも……」
頭の中を掻き回されたかのような衝撃に、男は混乱の声をあげた。
「そっ、そうだ! この媒体には一体何が……!」
男は震える手で同封されていた記録媒体を手にとって、飛びつくようにパソコンデスクへと向かった。
「あぁ、くそ! 落ち着け!」
記録媒体をパソコンへと挿入して、表示されたフォルダを開く。
中にはテキストファイルが一個。そして、形式のわからないファイルがひとつ入っていた。
「こっちは開けない。こっちはテキストファイル?」
男はファイルをクリックして、中身を確認した。
「なんだこの数字……。あぁ、そうかこれは!」
男は近くに投げ置いた情報屋の資料を手に取り、ディスプレイと交互に見比べる。
「やっぱり、これは間違いない。ジャパリパークの座標だ……!」
男は確信に至る。
(ミライさんの手紙は信用性ないが……。でも)
男は瞳を輝かせて、まるでプレゼントをもらった子供のような表情で、興奮を露わにする。
「ジャパリパークは存在したんだ!」
男はテキストファイルに他に書かれていることはないかを調べるために、スクロールバーを下に下ろした。
「同封ファイルは『パークセントラル』のコンピュータでのみ閲覧可能……。パークセントラル?」
また新しい単語に、男は首をかしげる。
「ジャパリパーク内の施設か何かか? ジャパリパークの所在まで書いてあるんだから間違いないだろうけど」
テキストファイルに他に書かれていないことを確認すると、男は媒体をパソコンから取り出した。
男は椅子に深く腰掛ける。
「ふぅ……」
頂点に達した興奮が一旦落ち着きを見せると、男は小さくため息をついた。
「どうしてジャパリパークに立ち入れなくなったか。なぜ隠されるのか……。行ったらわかるってことだろミライさん?」
男は記録媒体を見つめて、そしてゆらりと立ち上がった。
「やっぱり行くしかないよな。ジャパリパークに!」
その言葉に、いつのまにか男の足元に近づいてきたレグが、首を傾げていた。
要望あったら続き考えるかなぁ。ぐらいの気持ちで。