Fate/Slot of RIDERS   作:菊川 数時

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ヒマつぶしでやった、
後悔は無い寧ろ清々しい気分だ。


開幕 拾八の道が続く限り

ーーーアナタは無力で無価値だ。

 

 そう言われた彼女、岸波白野(きしなみはくの)は闇の中へ飛び込んだ。その闇は自身を削り奪っていくものであった、自分が消える。短絡的にそれを理解した。

 

 なにを思ったのか自分は諦めが悪い人間(モノ)らしい、あの巨大な何かに《存在の否定》を言われてそれに抗いたいがばかりにこの闇へと突っ込んだ。我ながら馬鹿なことをしたと自嘲する。

 

 落ちている、というのさえもう分からなくなっている。時間なんて無いに等しいし、自分の存在さえ遠くなっていく。だからもう届かない、その手を伸ばしても光は見えない。

 

『ふ〜ん、じゃあ諦めるか?』

 

 脳裏を響く誰かの声、驚くことが出来る程の余力を持ち合わせていない自分はその声を初めて聞いた。

 

ーーー誰なんだろう?

 

『ーーー誰だっていいだろ、それでお前どうすんの?諦めんの?』

 

 いい加減なことを言う奴だ。この状況を切り抜ける力量を自分は持ち合わせていない、もうすることは無い最後に足掻きを見せてやった。それだけで十分だった

 

『勝手な自己完結だな、だったらお前の手に刻まれているのは何なんだよ。』

 

 そう言われて、私は初めて自分の手の甲を見た。刻まれていた、紅い赤い『痣』が…、頭の中に何かが流れ込んでくる。記憶?知らない記憶、でも何か懐かしい。知らない自分の隣に居る四人。それは何かが矛盾していた、知らない人物なのに知っている。

 

ーーー其の人は、薔薇の皇帝。

 

ーーー其の人は、《正義の味方》。

 

ーーー其の人は、狐耳の呪術師。

 

ーーー其の人は、黄金色の英雄の王。

 

 

 あぁ、そうだ。自分達はいつも諦めなかった、いや諦めきれなかった。《聖杯戦争》を勝ち抜き、そして辿り着いた。最後の場所に。

 

『ーーーアホくさ、今更だろ。俺は一番関係ないのにこんな事に巻き込まされたんだ、お前が諦めたらあいつ等に怒られちまう。だからお前は立ち上がるんだ、その心に信念担いで………』

 

 そうだよ、自分は諦めが悪いことでまかり通っているんだ。そうやっていつも絶望的な状況を覆してきたんだ。どんな自分でも。

 

『なら答えは言わずもがな、お前の仲間の代わり位は果たしてやるよ。今回はそういう意図で来てやってんだ』

 

 うん、わかってるよ。でも私はアナタの名前を知らないんだ、あなたは誰なの?

 

『ーーー九条誠一(くじょうせいいち)、通りすがりの仮面ライダーだ。よく覚えとけ』

 

 次の瞬間、私の手の甲の《令呪》が紅い光を灯し変化を見せた。形が変わっていく、それは一つの紅い十字の紋章。罪の証にして正義の証明、形では伝わらない熱い意志の体現があった。

 

「ーーー来て、《RIDER》!!」

 

「うっせぇ、聞こえとるわ」

 

 気だるそうな男性の声と共に身体に浮遊感と人肌の温かい温度を感じた。黒髪の青年の顔がが自分の顔の付近で見えた、俗に言う《お姫様抱っこ》と言うやつだ。

 

「ほれ、行くぞ。ずっとこんなとこにいられっか……………『マスター』」

 

 素直じゃねぇの、心の中で呟き。私は意識を闇に沈ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ムーンセル)な知らない、彼は《番外(EXTRA)》も番外。誰も知られない『英雄(仮面ライダー)』なのを………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●★●●●

 

 

 彼らは英雄とは言い難く、ヒーローである。

 

 仮面の戦士はいつの時代も、正義ではなく《人々の自由と平和のために》戦うのだ。

 

 存在の仕方は違えど、その真っ赤な十字の炎は彼らの心にあった。

 

 九条誠一も同じく、その存在の仕方をしていた。失敗はした、しかし彼は様々な世界を旅した。そして自分の終着点を見つけ、使命を全うした。

 

 拾八の道が九条の《十久目の道》を示した。記憶の中の色々な人々の思い、悲しみ、愛、正義、悪、絶望、希望。総て全て背負って(始まり)へと還ってきた。

 

 そして、始まった。

 

 

 

●●●☆●●●

 

 

 

 

「ーーーさて、ここは何処だ?」

 

 落ち着き、目を擦る。真っ暗な世界、しかし上空には満点の星空。うん意味がわからない。

 

 九条誠一は珍しく動揺していた。いつの間にか見知らぬ世界に放り投げだされ、動揺しないほうが可笑しいが。

 

「《スロットルドライバー》はあるな』

 

 ポケットから取り出したのは因縁蒲しい金白のスロットのバックル。これがあれば代々の問題は片付く、自己暗示にも近いそれを確信し、頭を冷静にする。

 

「とりあえず、散策するか…………とその必要はなさそうだ」

 

 数メートル先に何かの光りが見えた、取り敢えず宛もないのでそこへ向かう事にした。段々と光に近づいている、その光の近くには四人の人影があった。

 

「ん?アイツラは確か………。」

 

 その後ろ姿には見覚えがあった、記憶の中に探りを入れる。そして、捜し物はすぐさまに見つかる。

 

 それは、あったかもしれないもう一つの未来。人類焼却事件、そしてそれに立ち向かう藤丸立香とそのサーヴァント達。そんな懐かしい思いでの中にそいつ等はいた。とにかくまた『人類焼却』が起こっているのであれば一大事、早く彼らに事情を聞かなくては。

 

「ーーー頑張ってくださいご主人様(マスター)、早くそちらに私が参ります!!……………………それでアーチャーさん!まだ『壁』は破壊できないんですかッ!?」

 

 赤い壁に向かって呪術の力を込められた札を使い、豪炎、氷結、の現象を発生させている狐耳のキャスターが

焦りを隠せずにいた。

 

「ッ!!無茶を言ってくれる、これはムーンセルの外殻そのものだぞ。いわば別世界の『壁』安易に破壊できるものでは無い、しかしそれは諦める理由ではないがねッ!!」

 

 紅い外套を身に纏ったアーチャーがお手製の夫婦剣干将·莫耶で巨大な紅い壁の破壊を試みているが無意味だろう、壁は未だにその阻む力を見せている。

 

「奏者よ!余が行くまで無事ていてくれ、頼むぞ!!」

 

 赤い舞踏服に身を包んだセイバーがその華奢な肉体に不似合いな大剣を振り回している。それを脇目で仁王立ちしながら腕を組む英雄王ギルガメッシュがいた。

 

「ーーー相変わらずサーヴァントの戦いってのは強烈だな」

 

「…………感嘆している暇などあるなら、我に頭を垂れよ『愚者』よ」

 

 ギルガメッシュはどうやら俺の存在をすでに知っていたらしい。さすが王様ってところか、底が知れない。するとギルガメッシュの言葉で三人は背後の俺の存在に気づいたようだ。

 

「よお、なにしてんだアーチャー。というかお前らが居るってことは聖杯戦争かなんかでもやってのか?」

 

「………君が誰だか知らないが、今は構ってやれるほど暇ではない。あとにしてくれ」

 

「余たちは奏者救うので忙しい、もしどこかのサーヴァントで手助けに来たのであれば余達に手を貸せ。その気がないなら去れ!」

 

「あなたがどこの誰かさんなのか知りませんが、邪魔をするならコロコロしちゃうぞ☆」

 

 各々の言い分を言い終わり、再び壁の破壊作業を開始した。ちょっと呆気にとられていた俺を呆れた眼でギルガメッシュが口を開く。

 

「ーーーあの時の出来事は『あったかもしれない未来』奴らが貴様のことを覚えていないのは当たり前であろう。『愚者』よ」

 

 あっ、そうだった。と思わず口から溢れだ。あの時の事は時間を修復する際に全て『あったかもしれない』の出来事に変換されたんだった。

 

「……………おい、ちょっと待て。じゃあなんでギルガメッシュは俺のことを、カルデアのことを覚えてんだよ」

 

 俺の問にギルガメッシュは当然のようにドヤ顔を見せた。

 

「当たり前だぞ、我は全ての王。時間なんぞに未来が書き換わったところで我の記憶が消えるわけがないわ!」

 

 相変わらずスゲー奴だ、絶対こいつとは戦いたくねぇな。そして俺は本来の目的をギルガメッシュに問いただすことにした。

 

「…………ところでお前ら何してんの、というか今どんな状況だ?」

 

「うむ、そのことで貴様を呼びつけたのだ」

 

………………いまこいつさり気なく真犯人だと暴露したぞ。呆れに近いため息をつく、なんだってこんなことに巻き込まれようとしてるんだ俺は。

 

「ーーー時間がない、貴様。今からあの壁を超えろ」

 

『ッ!?』

 

 ギルガメッシュの発言によってその場に居たサーヴァント達が驚愕と困惑の眼差しでこちらを振り返った。

 

「………あの壁を『ぶっ壊せ』なら分かるが、『超えろ』ってのは……」

 

「問題ない、アレは只の『世界の壁』にしか過ぎない。貴様ならそれぐらい造作でもないだろう」

 

 もし、ギルガメッシュが言うようにあれが『世界の壁』だというならそれなら簡単だ。《ディケイド》の力を使えば造作もない。

 

「………まあ、やるだけやってみるが。」

 

「やめたまえ、アレは『世界の壁』と同等で在りながら安易に触れると存在をダイレクト消失するぞ」

 

 アーチャーの警告が耳に刺さる、しかしその眼には懇願に近い感情見受けられた。それは他のサーヴァントも同じだった。そんな表情されたら逃げられないじゃねぇかーーー。

 

 バックルを腰の中央部に当て、自動的に装着させる。赤い壁が数センチ目の前にある、背中には期待の篭った視線を感じる。俺は意を決して恐る恐る壁に手を当てた。

 

 

 

 スルッ、そんな効果音が付きそうなほど簡単に通り抜けた。なんだか拍子抜けだ、と壁の向こうに居るサーヴァント達が驚いた表情でこちらを見ていた。

 

「よし、『愚者』よ。王が直々に命令だ、その先にいる我らのマスターを救って、キサマが、我らの代わりに契約して守護せよ」

 

「ハッ!?なにを考えているんですか、アナタは!?見ず知らずの、それも男にご主人様を預けるんですか!?」

 

「そうだぞ、金ピカ。あんなよく分からん男に奏者を任せられるか、余こそが奏者のサーヴァントに相応しい!!ポッと出の狐なんかお呼びでは無いわ!!」

 

「おや〜、ちょっと何言ってるのか分かりませんねぇ。この我が儘皇帝さんの戯言も程々にしてくださいね、それに私が最初にあのイケ魂に目を付けてたんです!!料理なんて出きなさそうなズボラな貴方にはご主人様を任せることなんてできません!!」

 

「なんだと、雌狐!!」

 

「殺りますか!?」

 

『グヌヌヌヌヌッ!!』

 

「やめたまえ、二人共!!今はそんな事をしている余裕があるか!?」

 

 俺の意志を真っ向から無視して、漫才を開始している。二人、なんという空気、俺氏。

 

「俺の意志はどうなるんだよ」

 

「知らん、行け。どちらにせよ貴様が行かないと元の場所には戻れんが」

 

 不敵なギルガメッシュの笑顔、こいつこれが最初からわかっていてやりやがったな。すると深くため息をついている俺の様子を見ていた四人の視線が俺に集まる。

 

「君が誰なのかは知らないが、頼むマスター救ってくれ」

 

「不本意でありますが、ご主人様をよろしくお願いします………。アッ、手を出しだら判りますよね★」

 

「むむむ、貴様に奏者を預けれのは憚れるが。それしか方法が無いなら、頼んだぞ奏者の事を!!」

 

「早く行け、貴様は『救う』ことに関しての長所だけしか持ち合わせおらんのだから」

 

 信頼と希望。きっとコイツラはそんなにもマスターとやらの事が好きなんだな、なら『掬って』やるか。コイツラには少なからず借りがある。その返済日かが今日なのだろう。覚悟は決まった、胸いっぱいに空気を吸い込み、吐き出す。

 

「ーーー任せろ、なんたって俺は《仮面ライダー》だからな!!」

 

 そう言って俺はアイツラとは反対側の闇の中を疾走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、彼の、彼女の、番外(EXTRA)が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『運命は廻り始めた………、再び!!』

 

 

 

 




次回、RIDER
運命は再び廻り始めた………!!
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