びゅうびゅう吹く風に煽られて、絨毯は飛んでいく。ただし下は真っ白である。なぜって?雲が分厚いから。
風が強い。私の長い黒髪もバタバタとはためいて、首元が少し寒い。
寒さを感じるようになったということが、私にとって大きな変化だった。夏は過ごしにくかったが、山にいれば自分がダメになってしまう心配もほとんどなかったし、それ以前の問題として季節というものを今までそんなに感じたことがなかったのだ。これからはどんな季節も柊二君と一緒に感じられる、そう考えたらやる気が漲ってきた。
雲を抜けると、下界には緑いっぱいの景色が広がる。たった今抜けてきた雲を見ると、水平線の向こうに一筋の光が見えた。
煌々と輝く太陽が雲の割れ目から顔を出し、光を放つ。その一点だけ眩しくて、私は思わず目を細める。
すると雲の割れ目がどんどん大きくなって、次第に雲自体がどこかへ消えていった。頭上には青、真下には緑。前を向くと赤い髪のシャルロットさん。いろんな色があった。あぁ眩しい。生きてるって素晴らしい。
私とシャルロットさんを乗せた絨毯は下降しながら飛んでいく。びゅうぅっっという音に耳がつんざけそうになりながら、私はそれでも前を見据える。
しばらく飛ぶと、やがて見覚えのある城が見えてきた。
「あそこでしょう、あなた達が作ったお城」
前から聞こえるつぶやきに、私は少し首をかしげて問う。
「知ってるの?」
「もちろんよ、私をなんだと思っているの」
「そうね、魔法使いだものね」
「ええ」
私が鷹に襲われそうになったあの時、シャルロットさんが私のことを助けてくれた。あの時は単なる偶然だと思っていたが、もしかしたら……
「ねぇ、シャルロットさん」
シャルロットさんは振り向く。
「ありがとう」
たった五文字だけれど。
「何よ照れるわね……これが私の仕事なの」
そう言って自身の髪と同じ色に頬を染めたシャルロットさんは、前を向いて続けた。
「もう着くわよ」
私は里でも、山に出てからも1人だった。
けれど柊二君と出会って、また里へ戻って、シャルロットさんの館へ行って。今まで知らなかった世界がたくさん出来た。それも、こんな短期間で。いろんな人と出会って、助けられた。
出会いのきっかけはなんだろう……?すっかり青くなった空を見上げながら、私は考えた。
「待っててね、柊二君」
もう何度も言った言葉を、またつぶやく。私のことを覚えてなくても、きっと上手くいくから。
「さぁ、着いたわよ」
今回は少し少なめです!
次の話までセッちゃんで、その後からは主人公の柊二君に戻ります。
まだまだ続くのでお楽しみに!