妖精の羽   作:ささみ紗々

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別れと涙

「救助、か……」

柊二君は悲しそうに呟く。まるでストッパーが外れたように、彼は涙をぼろぼろと流す。

音は一瞬遠のき、すぐにこちらへ向かってくる。お城に気づいたのだろう。

風がごうごうと吹く、私の体を突き刺すように。木々の葉が飛ばされる。髪が上に下になびく。羽がバタバタとはためく。彼の涙は頬を伝い、ふわりと浮いた。

ゆっくりと、ヘリコプターが着陸する。とうとう、別れの時がやってきた。

彼はもう一度私を抱きしめる。泣いたらダメだ、泣いたらダメだ。ぐっと堪えて、目をぎゅっとつぶる。彼は私の頬に手を当てた。ゆっくりと、彼の息がかかる。そして彼は……私に、キスをした。

「……えっ?」

目を開けて、戸惑う。彼はぎゅっと私を抱きしめ直す。その瞬間……私の目から涙が溢れてきた。

「あ、……泣かないって……っ決めたのッにっぃ……」

留まるところを忘れたように、私の目はぼろぼろと涙を流し続ける。柊二君も、私も。時間を忘れたように泣きじゃくった。

ヘリコプターの音が止まって、私たちは束の間の静寂に包まれる。すぐにヘリコプターから男性が降りてきて、柊二君の名前を呼ぶ。

「もう、行かなきゃ」

彼の手をそっとどける。後ろに下がり、彼の胸を押す。

「行って」

「嫌だ」

「行って!」

「まだ……セッちゃんとっ…一緒にいたいんだ……!」

彼が私の手をつかむ。振りほどけない。男性の、力。私はそっと声をかける。

「ねぇ行って、お願い。私……」

息を吸う。

「あなたのことが好き!」

涙を流しながら。それは別れの告白だった。

「……!」

柊二君は目を見張り、悲しげに微笑む。

「そうだといいなって、思ってた」

消え入りそうな声で、

「俺も好きだ」

その瞬間、風が吹いた。強い風だった。木の葉が飛ばされ、私たちを包み込んだ。この世に二人きりになったみたいだった。くるくると、私たちの周りを葉が回る。全てが美しいまま、終わろうとしている……。

「さぁ行って、」

「もう……会えなくなる?」

「そんなことない……!次は……次はそう、」

声を張り上げて、

「あなたのもとへ、私が会いに行くから!絶対に!だから行って……あなたのいるべき場所は、ここじゃない!」

叫んだ。その瞬間、風がピタリと止む。

彼は掴んでいた手をゆっくりと離し、私に背を向けた。一歩、二歩、進んでから、振り返った。そして

「ありがとう……!」

言った。最高の、笑顔だった。彼は時折振り返りながら、ゆっくり歩みを重ねていく。私はずっと手を振っていた。

「ありがとう」

彼の笑顔を思い出しながら。

「ありがとう、ありがとう……っ、ありがとう……!」

彼がヘリコプターに乗る頃にはもう私は立っていられなくて、へなへなと座り込んでしまった。嗚咽が漏れる。だって、ずっと1人だったのよ……?誰かに笑顔を向けてもらうことの幸せなんて今まで何もは知らなかったのに……柊二君は私の奇跡だった……出会えてよかった。ありがとう、何度言ってもきっと伝えきれない。もっと……一緒にいたい。大好き……っ!

「うわぁああああぁああああぁああああ!!!」

まるで赤ん坊のように、私は泣きじゃくった。

さっきまで晴れていた空が、曇り始めて、雨を降らした。雨に打たれながら、座り込んだまま、泣いた。

またあの音がした。パラパラパラパラと、プロペラが回る音。耳が裂けそうなほど大きくて、私は顔を上げる。

柊二君と目が合った。彼は私の姿を見て、涙を流しながら、何かを伝えてきた。目がしばしばして、かろうじて口が動いているのがわかる。涙を拭って彼をよく見る。すると、彼の声がしっかりと、耳に届いてきた。

「待ってる」

その瞬間、私は思った。

 

人間に、なりたい。




ここからは、セッちゃんと柊二君から少しだけ離れて、別の人たちの目線で送りたいと思います!
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