真・恋姫で地味ヒロインの妹してます   作:千仭

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今回は何時もより短いです。

一応計画の全貌がここで露わになりますが気にしないでください。

何が起こるのがわからないのが外史ですから。

ではお楽しみください。


暗殺計画

 あの場で公表した通り私は劉備を暗殺することにした。そして私はその暗殺計画を秘密工作部隊『鴉』を使って様々な工作をすることにも決定、そのため私は深夜になろう夜遅くに城のとある一角に来ていた。なぜならここでしか『鴉』との連絡手段が取れないからだ。

 

チリーン、チリーン。

 

 そして私は決められた回数手に持った鈴を鳴らした。決められた場所、時間、鈴の回数でなければ『鴉』はここにやってこない。その後数秒もしない内に黒い忍装束に似たものを着た連絡員が私のすぐそばに現れて跪いた。

 

「……何用で」

 

「……これを部隊長に渡してくれ。詳細は明日の夜に私の部屋で話す」

 

「……承知」

 

 私が手渡した竹簡を懐に収めた連絡員はそう言って夜闇の中へ静かに消えて行った。そして私も誰にも見つからないように自分の部屋へと戻ると執務室の椅子へと音を立てて座り込み、計画を再度緻密に練る。しばらくそのまま計画の最終確認をしていると段々窓の外から光が差してきた。私は一旦計画を練ることをやめ、窓の外を見ると地平線の先が少し白く霞みがかっている。どうやら随分と集中していたせいでいつの間にか朝になっていたらしい。

 

「ふう……あいつらを殺す、か」

 

そう簡単に死ぬのか?あいつらが。

 

「まあ、なんにせよ。やってみるしかあるまい」

 

 そう言って私は再び計画の準備に専念し始める。私がそのことをやめるのは、結局部下が仕事を持ってくるまで続けた。

 

†††††††††††††††††††

 

 深夜近くに私は昨日と同じく執務室で計画の最終準備をしていた。そうすると不意に窓を誰かが叩いた。私は椅子から立ち上がり、窓を開けると昨日と同じ忍装束に似た服装の女が入って来た。その女性は全身黒ずくめの忍装束を着ており、その服の下には黒タイツみたいなものも着ている。さらには顔に忍者が付けるような狐の面もつけている。

 

「来たか、鴛」

 

「……(こくり)」

 

 そう頷いた鴛は人前でめったに話すことはない。なぜなら私が口は災いの元と冗談で言ったら本当にそれを真に受けてしまったからだ。そして調子に乗って忍装束をオーダーメイドして着せたり、仮面や口当をつけたりしてしまったのは若気の至りだったと今は思うが反省も後悔もしていない。

 

「じゃあ、計画の詳細を話すぞ?」

 

「……(こくり)」

 

 黙って私の言葉に頷いた彼女はそのまま微動だにせず、私の机の上にある竹簡を見つめている。

 

「今回の暗殺の標的は劉備とその仲間を合わせた計四人だ。だがそこに兵をいくらかつけていくから実質100人から200人ぐらいになる予定になる。少し大きめの賊討伐という名目であいつらを森まで誘き出すからだ」

 

 今回の計画では多めの賊がでたという設定で劉備たちをその本拠である森に誘い出す。もちろんその賊は本物であり、そこにいろいろと私たちが手引きをしている。交渉も金を積んだので概ねうまくいっており、その賊は私たちの入れ知恵で戦力となる他の賊を吸収している最中のようだ。

 なぜ賊に手引きして戦力を大きくするのかというとはっきり言って賊を全部討伐するのが面倒くさいからである。様々なところに散っている少人数の賊を毎回兵を出して潰しているのでは埒が明かず、なら一か所にまとめさせてから討伐すればより効率的であるからだ。さらに劉備たちを暗殺することにも利用でき、もし失敗しても賊は討伐されるので一石二鳥である。

 

「そこで待ち伏せして弓で殺せ。だが毒は使うなよ?なんせ100人以上がいるんだ。生き残る可能性もあるからな。だからそこは物量でいけ」

 

 そしてよく暗殺に使う毒は使わせない。なぜなら小隊を劉備たちにつけるため、もしかしたら生き残りが出るかもしれないからだ。また矢に塗ったのが毒だと後からくる援軍に知られたらこれは暗殺だったのではないかと疑われる可能性もある。それにこの時代の賊ごときが矢に毒を塗る可能性は極端にないに等しい。そしてあくまで賊に殺られた(・・・・・・)ということにしなければならない。そうしなければ賊を利用する意味がなくなるからだ。それに賊に弓を多く持たせて撃てばそれなりの数になるので結構な被害が出るはずである。

 次に劉備たちにつける小隊は劉備たちに貸してある新人が多い小隊だ。言うまでもなくその小隊は劉備や関羽たちの色に染まりきっており、もはや私たちの小隊ではなくなっている。それを処分するために今回の暗殺では全員連れていかせるつもりでいる。そのためもう古参兵はそこから引き抜かれており、いるのは厳しい調練をした新兵だけである。

 

「次に待ち伏せが成功してもしなくとも賊どもには伏兵として突撃させろ。新兵の部隊に関羽たちなら恐らくそれに対応できないはずだ。乱戦になってからその隙に弓で狙撃し、劉備と北郷を仕留めろ。あいつらは目立つ格好だからな。それとお前らは絶対に戦場には出るなよ?これは賊に表だってやらせなくちゃ意味がなくなる。お前らは森の中から目標のみを狙撃して殺せ」

 

 確かに調練はしてきたがあまり実戦経験のない関羽たちが指揮官となり、さらに戦を経験したことない新兵の小隊では伏兵に対応できないだろう。そこに足手まといである劉備と北郷もに加わるので混乱は収めきれず、結果有象無象の集団と小隊は成り果てる。そうなれば混乱の収拾と賊の対応に関羽と張飛は集中せねばならず、劉備たちの護衛はできなくなる。そこを森の中で潜んでいる『鴉』たちが狙い撃つのだ。戦闘が得意ではない劉備たちなら複数の方向から来る矢には対応できないだろう。

 そして劉備たちに何かあったら関羽たちは平静ではいられない。演義でも関羽を殺された劉備は激怒し、夷陵の戦いで孫呉に敗北を喫している。それほどの絆があるのならおそらく激怒して隙を見せてくれるだろう。それほどの隙があるなら鴛は関羽を殺すことができるだろう。張飛も同様に。

 

「物資の方はもう手配してある。ここから西にある山の中にあるから賊たちに渡してやれ」

 

 計画に必要な大量の物資となる弓や矢、鎧に刀剣の類はもう啄郡の西にある森の中に『鴉』の護衛をつけて置いてある。そして調達方法も足がつかないように他の州から奏に頼んで秘密裏に取り寄せた。もし賊に手引きしたことがばれたとしても他の州の謀略として扱うことができるし、それに公孫家がかかわっていることが気が付かれにくい。なぜなら私たちは幽州一の軍を持つから謀略を受けたとしても不思議ではないからだ。

 

「実行は一応一週間後に予定している。四日後あたりに賊出現の報告がくる手はずになっている」

 

 今の賊には大量の物資と金を渡したので動くなと命じている。最低でも三日の間は動かずに他の賊を吸収しろとも。そうなればおそらく賊の総数は200人以上は集まるだろう。そのためにその付近の賊を私の権限で野放しにし、劉備たちに情報がいかないように握りつぶしていたのだから。

 

「報告が来たら猫で知らせを出すから受け取れ。それを合図に準備をさせろ。それに一日ごとに鳥と犬を出せ」

 

 猫は暗号で連絡員、鳥は伝書鳩、犬は偵察兵を差している。一応は劉備たちの行軍速度を計算して計画を立てているが予定が狂うことも顧慮し、報告を一日ごとにださせるつもりだ。それに何が起こるのかが分からないのが外史と呼ばれるこの世界だ。追って指示を出す可能性もある。

 

「もし失敗する可能性が出てきたらちゃんと後始末をして帰ってこい、以上だ」

 

 後始末とは私たちと接触した可能性のある人物全員の殺害だ。おそらく賊の幹部と頭領がそれに当たると思われる。そいつらを全員暗殺してから撤退を開始するということだ。あとの有象無象の屑どもは残党狩りで正規の部隊を使うから『鴉』の出番は終了となる。

 

「理解したか?」

 

「……(こくり)」

 

 私がそう聞くと彼女は静かに頷き、窓から音もなく出て行った。そしてすぐさま夜闇に紛れて気配が消える。おそらく彼女の気配に気が付くのは武人だったとしてもほとんどいないだろう。それほどまでに彼女の気配はない。そして私は寝室に戻り、寝巻に着替えて久々に深い眠りについた。

 

計画が始まるのは四日後、その時が少し待ち遠しい。

 




誤字脱字等などがありました気軽に教えてくれると助かります。

よろしくお願いします。

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