真・恋姫で地味ヒロインの妹してます   作:千仭

16 / 28
なんかのりで書いてたらすぐに投稿できた。

とういうことで今日は二話投稿です。

お楽しみください。



俺のこの手が………

一刀side

 

俺の目の前で赤髪の青年が何かを呟いている。どうやらこの青年は医者らしく、愛紗たちのことを見せるとどうにかできると言い切った。

 

「違う、こいつらじゃない。……こいつか?いや、こっちか!!……見つけた、コイツだな!!」

 

彼の光る目が愛紗たちの身体を見ている。なんか心配になってきたのは俺だけだろうか。

 

「貴様ら病魔など、この一撃で蹴散らしてやる!」

 

そして目の前の青年はどこからともなく一本の鍼を持ち出し、天に向かって掲げた。

 

「俺のこの鍼が真っ赤に燃えるぅ!!!」

 

本当に鍼が紅く燃えあがり、辺りに向かって炎をまき散らした。

 

「病魔を倒せと轟き叫ぶぅっ!!!」

 

愛紗に向かってその鍼が炎を散らしながら構えられる。

 

「ばぁぁぁくねぇぇぇつっ!!ゴォォォッドヴェェェイドォォォォ!!

 

なんか叫びだした青年の腕が今まで以上に紅く輝き、濃密な氣が辺りを照らす。

 

「一鍼同体!全力全快!必察必治癒……病魔覆滅!(キュピーン!!)」

 

そして鍼を持った青年が大きく振りかぶり……

 

「げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

愛紗に向かってその鍼を突き刺した。

 

「「「ええええええええええええええええっっっ!!!」」」

 

「病魔、退散」

 

そして青年が鍼を抜くと、さっきまで苦しんでいた愛紗の顔色が良くなり、荒い息も元通りになっていた。

 

「……治っちゃったよ」

 

「……はい」

 

「……ですね」

 

俺たちは困惑した。でも治るに越したことがないので、青年に鈴々や負傷兵を任せることにし、俺たちはその様子を見守ることになった。

 

桃香side

 

賊討伐から一晩明けた。旅の、ゴッヴェイドォォの華佗とかいう人のおかげで愛紗ちゃんと鈴々ちゃんは一命を取り留めた。

 

だがその代わりに負傷者の兵隊さんたちのほとんどが治療が間に合わずに二度と目を覚まさなくなった。

 

「……私の軽はずみのせいで」

 

そう実際に言葉にしてみると、胸の中に後悔や懺悔、贖罪とかの気持ちがあふれるように混ざりあい、私のことを責める。

 

「……あの時、朱里ちゃんの言うとおりにしておけば」

 

こんなに犠牲者がでなかっただろう。愛紗ちゃんたちだって毒に苦しまなかったはずだ。

 

「……本当に私の『理想』なんて甘いものなんだね」

 

妹さんに甘いと言われた私の理想。

 

 

『話し合って皆が手を取り合えば……

 

 

ーー誰もが平和に生きられる場所が作れる』

 

 

という誰もが……

 

 

幸せに、

 

困らずに、

 

血を流さずに、

 

憎まずに

 

 

生きれる場所を……

 

 

ただ平和に明日を迎えられるように……

 

 

ただそれだけを目指していただけなのに。

 

 

そんな場所はこの世界のどこにもなくて……

 

 

そんな理想は馬鹿馬鹿しくて……

 

 

そんなものために多くの人の命を奪って……

 

 

その後に残ったものは何もなくて……

 

 

私はなんて馬鹿だったんだろう。

 

 

目を覚ました愛紗ちゃんたちに会うのが怖かった。

 

 

このまま時が止まってしまえばいいのに。

 

 

そう考えていたらいつの間にか夜が明けて、眩しい程の朝日が昇ってきたけど、朝日は私の顔を照らすことなく、暗い雲に覆われてしまった。

 

今の私の気持ちを表すようにどんよりとした雲に太陽は遮られ、しばらく経つとポツポツと雨が降り出した。

 

「どうしたんだ?桃香。こんなところで」

 

そんな中、そんな天気さえも気にしない様な明るい声でご主人様が私に話しかけてきた。

 

一刀side

 

愛紗たちの体調が一段落したあと、俺は桃香を探して邑のあちこちを探し回った。

 

そしていくつか歩き回った後、桃香は城壁の上にある櫓に一人ぽつんと膝を抱えて座っていた。

 

ぶつぶつと呟きながらずっと下を向いて何かを言っている。

 

そんな彼女を表すように朝日が静かに上ったが、濃い雲に隠され、終いには雨まで降ってくる。まるで世界までもが彼女のように落ち込んでいたように感じた。

 

それを見た俺は桃香に静かに近づき、肩に手をおいて話しかける。

 

「どうしたんだ?桃香。こんなところで」

 

そう話しかけ、その言葉に反応した彼女が顔を上げると、その頬を静かに涙が流れた。

 

どうやら彼女は昨日からずっとこの場で泣いていたらしい。

 

桃香らしいって言えば桃香らしいな。

 

「……ご主人様ぁ」

 

「いつも泣いてるな、桃香は」

 

「だってぇ……」

 

泣きながら俺を見る彼女の目が言う。全部私が悪かったんだ、と。愛紗ちゃんたちが負傷したのも、兵隊さんたちが死んでいったのも全部私の責任だ、と。

 

そんなことはないんだけどな。

 

「なぁ、桃香。確かに今回は桃香のせいかもしれない」

 

「……ッ!?」

 

俺の言葉に桃香が目を見開いて驚く。そしてさらにあふれ出た涙が彼女の頬を濡らしていく。

 

「でもそれは桃香だけの責任じゃない。俺も愛紗も鈴々も、朱里や雛里だって桃香と同じだよ」

 

「それはちがう!!」

 

「そうなんだ」

 

そう言っても頑と自分が悪いんだと彼女は言う。どうやらそれは譲れないらしい。

 

「そうなんだよ……」

 

彼女がさらに自分のことを責める言葉を発するが、それを遮るように俺は答えた。

 

桃香だけの責任じゃない、と。

 

それと同時に後悔の念も覚える。

 

兵たちは死んでいった。俺たちの軽はずみで身勝手な指揮で。

 

あのときこうしておけばよかったなんて、そんなことは誰でも思う。

 

だけどあの時、指示を出す立場に俺たちはいた。

 

何かを思えば、ちゃんと考えていればこんなことにはならなかっただろう。

 

それは桃香だけの責任ではない。

 

その場にいた誰にも責任はあったはずだ。

 

俺も桃香みたいに正直言って落ち込みそうだった。

 

だってこの前まで普通の学園に通っていただの学生だ。そんな俺がいきなりこんな世界につれてこられて、人の死を、大勢の死を目の前で見せられた時なんて胃からでるもん全て吐いた。

 

昨日仲良くしていた奴が突然死ぬなんてわかりきったことだった。小説なんかよく書いてあった通り、ここは戦場で殺し合いをしているのだ。

 

 

殺しもするし、殺されもする。

 

 

甘かった、どこまでいっても。

 

 

仲珪に言われた通りだった。

 

 

彼女の言葉が俺の心を蝕む。

 

 

貴様の甘い考えがこの結果を生み出したのだと。

 

 

 

後悔は十分にしている。俺が生きてきた人生の中で一番。

 

 

 

 

だけど俺は諦めたくはない。

 

 

 

 

なぜなら俺は……

 

 

 

 

桃香の願った世界を見てみたいんだ。

 

 

 

 

それに俺は、こんなにも普通の女の子が苦しんでいるのを前にして、格好悪いところは見せたくなかった。

 

「桃香だけのせいじゃない。俺たち全員の責任だよ」

 

「でも……私が、みんなを巻き込んだんだよ!」

 

いいや、桃香。それは違うよ。

 

「桃香が巻き込んだんじゃない、俺たち全員が望んだことだったんだ」

 

「違う!みんな私が巻き込んで……みんな私が殺しちゃったんだよ!!」

 

桃香の心の叫びが俺の胸に染み渡る。

 

そしてグスグスと泣きながら彼女は無言の視線を俺に向ける。その瞳は何かを疑うようで、それでいて何かを求めるような複雑なものだった。

 

「違くないよ、桃香。愛紗だって、鈴々だって、朱里だって、雛里だって、星だって……。もちろん俺だってみんな望んだから」

 

俺たちは頼まれたから桃香と一緒に戦場にいるんじゃない。

 

「桃香の夢を一緒に見たいから、桃香の夢を手伝いたいからここにいるんだ」

 

きっと皆そうだと思う。なにも確信はないけど、それだけは真実だと俺は思った。

 

「だから、さ。そんなに思い詰めるなよ」

 

俺たちが一緒にその理想を目指すから。

 

「罪の意識が重すぎるのなら」

 

彼女の背に罪悪感が重くのしかかっているのなら……

 

「一緒に俺がその分を背負う」

 

「………………」

 

でもそれは俺だけじゃない。

 

「力が必要なら愛紗や鈴々、星だって貸してくれる」

 

愛紗に鈴々、そして星だってきっと桃香の理想のために力を貸してくれる。

 

「知恵がほしいなら朱里と雛里がいい案だしてくれるさ」

 

彼女たちは桃香の夢を求めてこの遠い場所まで歩いて来たんだ。

 

「一人で抱えすぎなんだよ」

 

いろんな物をその小さくて、柔らかい体に全部背負おうとしてる。

 

「桃香にはさ、いっぱい仲間がいるだろう」

 

そう、ここにはいないけれど。死んでいった兵たちだって皆桃香の理想をいいものだって、俺たちも手伝いますって言ってくれた。

 

「一人で抱え込みすぎないで、皆を頼ろう」

 

そうすれば一人では絶対無理なことであっても……

 

「きっとどんなことでも乗り越えられるはずだから」

 

そう言って俺は桃香に自分の手を差し伸べた。

 

「ごしゅじぃんさまぁ!!」

 

その手を取った桃香は、立ち上がった勢いのまま俺に抱きつき、大声で泣き始めた。

 

そして彼女が泣きやんだ頃には空を覆っていたどんよりとした雲はなくなり、綺麗な青空が広がっていた。

 

星side

 

その二人の様子を近くの影から見ていた私らはその場から音を立てずに離れる。

 

「ふむ、どうやら私らの出番は無いようですな」

 

「はい」

 

「ですぅ」

 

そこには私の他に背の低い二人がいる。主殿と同じように桃香殿のことを探していたのだろう。

 

私はだって?月見酒をしていただけですがなにか?

 

「お邪魔しない内に私たちは行きましょう」

 

「……はい」

 

「ですな」

 

そうして私たち三人は明るくなった城壁から降り、愛紗たちの眠る宿へと歩き出した。




誤字脱字等などありましたら気軽に書いてくださると助かります。

あと、感想の方にいろいろとありますが、本作は基本的に恋姫の話通りに進みますので大幅な話のずれはあまりないとご了承ください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。