真・恋姫で地味ヒロインの妹してます   作:千仭

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今回は前回よりも長く書くことができました。

感想をいただいた読者の皆様のアドバイスによって

ようやく星の口調とキャラが分かったような気がします?


それではお楽しみください。

また星などに違和感がありましたら何かアドバイスをいただけると助かります。


蜀の皆さんとの邂逅~星編(2)~

―――――――幽州啄群・公孫賛居城 城下町 桃香side

 

 私は義勇軍を集めているという友人の白蓮ちゃんが治める町へとやってきていた。なぜかというと私と新たに加わった愛紗ちゃんと鈴々ちゃん、そして天の御使いと言うご主人様の理想をかなえるための足掛かりとして。

また、今は黄巾賊というのがいて世が乱れているため、賊に襲われている人々を助けたいという願いをかなえるためにここに来たのだ。

 

「へ~ここが白蓮ちゃんの治めてる町かぁ。結構いい感じに治めてると思うんだけど」

 

私が城下町をみてそう言うと隣にいた長い黒髪の少女、愛紗ちゃんが同意するように頷いた。

 

「そうですね、この時期にしてはかなり良い方だと思います」

 

「鈴々もそう思うのだ!」

 

 そしてその近くにいた背の小さい目の………ちっちゃい少女の鈴々ちゃんも頷き、おいそうな匂いがしたのか近くの露天へと走って行った。

最後に私の隣にいる光る服、えっと確かぽりえすてる?の服を着たご主人様が私と愛紗にそう聞いてくる。

 

「へぇ~そうなのか?」

 

「そうだよ、ご主人様」

 

「酷い所ではもっと寂れていますから………特に袁術の統治している町でとよく耳にします」

 

「そうなの?愛紗ちゃん」

 

「はい、桃香様。税が高い上に治安が悪いと言われてます」

 

「最悪じゃねぇ?その町」

 

「それでも警邏のいない村などよりもましでしょう。一応は賊には襲われないのですから」

 

そう愛紗ちゃんは言うと何かを耐えるような顔になって俯き、その姿に私は愛紗ちゃんが何か憤っているように見えた。

 

 

「愛紗ちゃん?」

 

 

 私が愛紗ちゃんの名前を呼ぶと彼女はハッと何かに気が付いたように顔を上げて慌てて私たちに「何でもありません」と言った。

 

「あんまり無理しちゃだめだよ?愛紗ちゃんの身体は愛紗ちゃんだけの物じゃんないんだからね」

 

「桃香様……」

 

 私が愛紗ちゃんの目を至近距離で見つめながら手を取ってそう言うとなぜか愛紗ちゃんは少しだけ顔を赤らめながら私の言葉にしっかりと頷いた。

しかしその隣ではなぜかご主人様と周りの人達が私たちを見て顔を赤らめている。

 

「うん?」

 

私は不思議に思ってご主人様の方を見るとなぜかご主人様はつーと目を静かに逸らす。

 

ザワザワザワ

 

(あの二人はできてるのか?)

(そうじゃないの)

(だってあんなに熱い目でお互いに……)

(でも女性同士だろ?)

(いや、陳留のほうではいるらしいぞ?)

(いるってなにが?)

(何がってアレだろ)

(アレって?)

(そりゃあアレだよ)

(アレか)

(美人なのにアレなのか)

(残念だな)

(兄ちゃんも頑張れよ)ポン←同情的に肩を叩かれる音

(そうだぜ)ポン←慰めるように肩を叩かれる音

(まださっきの小さい子がいるじゃねか)ポン←励ましの肩を叩かれる音

「だああ!うるせー!それに俺はロリコンじゃねぇ!」=その優しさに耐えられなくなった者

(世の中って広いんだなぁ)

 

ろりこんって何だろ?

 

 私は周りの人たちの妙に熱っぽい視線に対して何か変なことをしたのかわからずに不思議がっていた。

そして目の前にいる愛紗ちゃんもその視線が何を意味するのか、また何が起こってるのかがわからず小首を傾げている。

 

「えっと……それじゃ、早く白蓮ちゃんのところに行こっか?」

 

「え、ええ、そうですね。なら私は鈴々を呼んできます」

 

「うん、お願いね?」

 

「お任せください」

 

 そう言って愛紗ちゃんは鈴々ちゃんを連れてくるために屋台へと向かって行った。そしてその場に取り残されたご主人様と私は白蓮ちゃんのところに行くのに何か手土産は必要はないのかと話し始めた。

 

どうやらそれはご主人様の天の国での風習ということらしい。

 

とりあえずご主人様の話を聞くために近くにあったお店の中に四人で入ることにした。

 

 

桃香達が城下町を訪れる少し前

 

 

―――――――幽州啄群・公孫賛居城 執務室 白蓮side

 

 星が私の客将になってからいくらかの日が経った。彼女との私の関係は当初の固い関係ではなく、形としては主上関係だが長年の知り合いのように話せる関係になったのだ。

 

 ついさっき黒蓮からの伝令が届いて、もう少しでこっちに到着するらしい。そのためは私は妹の黒蓮を紹介するために星をこの部屋に呼び出していた。

 

 そして今、彼女は仕事をしている私の目の前で椅子に座りながら堂々と壺いっぱいに入ったメンマを酒のつまみとして食べている。

 

「白蓮殿、一体どうしたのです?(もぐもぐ)いきなり私を呼んだりして(ごくごく、ぷはッ)折角の非番が大台無しですぞ(もぐもぐ)………それで?何かあったのですか?(もぐもぐもぐもぐ)」

 

「うん、とりあえずメンマは没収だな」

 

 そう言って私が彼女の手にしてるメンマの壺を取り上げようと手を伸ばしたら、彼女の手が予備動作なくブレて私の手を叩き落とした。無駄に洗練された動きで後ろに後退し、私の手の届かない場所まで距離を取る。そして猫のようにフー!と私を威嚇してからメンマの壺を大事そうに片手に抱え、鋭い眼光で睨みつけながらビシッ!と私に指をさして

 

「いくら白蓮殿でもこの趙 子龍のメンマを易々と取り上げられるなどとは思わぬことですぞ!」

 

と言った。

 

言いやがった。

 

重要だから二回言ったんだよ?

 

こいつを今すぐに牢屋にぶち込んでもいいと思ったのは私だけだろうか?いや、私だけじゃないはずだ。

 

「とりあえずそれを食うのはやめてくれ、頼むから」

 

 私は頭に手を当てながら大きくため息をつき、星に言う。これはアレか、問題児を相手にしてる私塾の先生の気持ちか。

 

「うむ?白蓮殿がそこまでおっしゃるのなら仕方ないですな」

 

 その問題児とも言える彼女はというとメンマの壺に蓋をするとしっかりと縄で縛り、「接触禁止」と書かれた布をかぶせて誰にも触らせぬよう自らの腕に抱いた。

 

「それで?どういったようなのですかな?」

 

ああ、やっと本題に入れるのか。なんでここまでくるのにこんなに疲れるんだろう。

 

「もう少しで私の妹の黒蓮がここに着くという伝令が来たから紹介しようと思ってな」

 

妹のことを聞いた星は何か心当たりがあるのか訝しむよう顎に手を当てて唸る。

 

「ふむ、白蓮殿の妹と言いいますと……」

 

「妹の名は越、ここでは公孫越と言った方が分かりやすいのかな」

 

そして妹の名を聞いた瞬間にハッとして何かに気が付いたように顔を上げて何度も頷いた。

 

「ああ、公孫越殿ですか。どういった方なのです?城下ではお優しい御仁だと聞いていますが」

 

「ああ、優しい奴だよ、黒蓮は。ただまあ、身内の人間だけだけどね」

 

「身内、と言いますと?」

 

そのことを聞いた星は不思議そうに私の顔を見る。

 

「敵や賊に対してはまったく容赦ない。逆に私や幽州の人々にはかなり温厚だな。だから会う時は気をつけていた方がいい。もしかしたら見知らぬ奴が城内いたらいきなり斬りかかってくるかもしれないから」

 

私がそう星に言ったところでちょうど執務室の扉が叩かれ、私の妹が中に入って来た。

 

「失礼する。姉さん、たった今こちらに……」

 

 そして部屋の中にいた星を見た瞬間に黒蓮には珍しく目を限界にまで開いて驚いて扉の所で固まってしまっていたのだ。

 

 

 

―――――――幽州啄群・公孫賛城外 黒蓮side

 

 私が姉さんの呼び出しで居城近くに部隊と供に着くとそこには姉さん直轄の精兵「白馬義従」を含む正規兵の大軍と義勇軍らしい装備が乏しい集団が城下町付近で野営していた。

そこに私の「黒馬義従」が近づいていくとにわかに野営の陣地が騒がしくなっていく。特に私達の隣の義勇軍らしい陣地では、私たちを近くで見た兵たちから絶句していく様子がよく分かる。

 

 なぜ彼らが私たちを見て絶句しているのか言うとそれは至極簡単、私たちの鎧についている夥しい黄巾賊の返り血が目立っているからだ。以下にもついさっきまで戦闘していた風貌でこの陣地に私たちは来てしまったのである。まあ、あながち間違っていないが。

そして隊の中でも特に酷いのは私と一緒にまず始めに突撃する第一陣だ。それは行軍途中で見つけた黄巾賊を片っ端から殲滅していったため、何度も私たちは戦闘し、返り血を浴びることとなったからだった。

 

しかし私たちはその視線を慣れたように気にすることなく野営するべき陣地へと向かっていく。

 

「すごいですね」

 

「ああ、これは本当に大きい戦でもあるのか」

 

「そうだと思います。私達が潰したいくつかの黄巾の部隊も西の大部隊に合流しようしてましたし」

 

 私たちは陣地へ向かいながら私の副官はそう言うと、さらに偵察部隊の報告が書かれた竹簡を私に差し出した。

それを馬上で開くと「西の大部隊は最低でも三万以上、しかしほとんどは元農民だと思われる」と書かれていた。他にもその部隊が黄巾賊であること相手の装備なども書かれている。

 

「最低でも三万か………予想よりもだいぶ多いな」

 

「はい、どうやら南部の冀州から来た者も多くいるようです」

 

 私はその報告聞いて軽く舌打ちをする。冀州からこっちの幽州まで来るなんてこちらからしてみればかなりはた迷惑なことだ。

なぜなら黄巾賊の本隊は冀州にあるのにわざわざ本隊よりも遠く、北にある幽州まで賊が来たからだ。

 

「冀州だと董卓が討伐に当たっていたはずだがまさか敗れた一部がこっちに逃れてきたのか?」

 

「でも黄巾党の本隊は冀州にあるはずです。わざわざ幽州まで来る必要はないと思いますが」

 

 それじゃあ何のためにこっちまで来たんだ?いくら黄巾賊がやられているとしても本隊よりも北に来る意味が分からない。

本隊に合流するだけならいつまでもあそこにとどまっている必要はないし、本隊に敵が迫っているのならばなおさら移動し続けてもいいはずだ。そっちの方が私達などに補足されにくく、無駄に兵力を浪費させることにはならない。これが黄巾賊ではなく、ただの賊ならばあんなところで野営せずにどこかの町などを襲っているはずだ。

 今の黄巾賊の動きをみるとそんなそぶりは少しも見せていないし、むしろ襲いにいくどころか何かを待っているように見える。それにわざわざ隊を複数にして周りに散らして偵察に出して、それらを私たちの隊が潰しているのが今の状況だ。

 

ん?何かを待っている(・・・・・)だと?

 

「おい、私達が潰した黄巾賊は何か変わったことはなかったか?」

 

「確か物資や兵糧がやたら多かった気がしましたが」

 

「ビンゴ」

 

 私はその副官の言葉を聞いて独りそう呟いた。隣にいた副官は不思議そうに私のことを見ているがそのことは気にせずに自分の考えを黙ってまとめていく。

 

「仲珪様、何かわかったのですか?」

 

「ああ、こっちの黄巾賊は物資や兵糧を調達し、本隊に送るための補給部隊だということだ」

 

「物資や兵糧を?」

 

副官は私の周りにいる兵たちと一緒に私の言葉を関心をしめすように聞き入っている。

 

「そうだ。黄巾賊の本隊は確か十万以上いたはずだ。そいつらを兵にするのにも物資が大量に必要だし、そもそも軍を維持するのには莫大な兵糧が必要だ。おそらくは大陸中の各諸侯達が賊軍討伐に乗りだしたことで押され始めたから北方の守りをしているこっちに来たのだろう」

 

「そう言うことですか。確かに最近では羌族も活発な動きを見せていると国境からの報告も来ていましたね」

 

そして納得がいったのかうんうんと頷きながらそう言った。周りの兵たちも一緒になってへ~という顔をしている。

 

「ああ、姉さんも放っておくことはできないはずだ。だから正規兵を送っているはずだろう。3~4日前に移動させているなら今頃は国境近くにいるか、それとももう砦に入っている頃だ。それに私や姉さんがこっちにいるということはあっちの指揮官は何時も通り青怜(シィーレイ)だ。まず突破されるどころか近づくこともできないだろう」

 

「従妹の子則様でしたか?どのよう方なのです?我等は遠目でしか見たことしかありませんが」

 

 子則というのは私たちの従妹である公孫範の字だ。私達姉妹が幽州内部の治安や問題を解決するのに対して従妹の青怜は北方の匈奴や羌族の監視、撃退を主にしている。

 これは私が提案して決まったことで、それは指揮官が何回も変わることは兵たちに混乱を呼ぶし、北方民族戦闘経験を積めばそっちのスペシャリストとなれる強みがあるからだ。

 逆に青怜に何かあった時なんかは私達だけでは手に負えなくなることにはならないと思うが手こずる可能性が高い。それを解決するために私達姉妹はそれぞれ年に何回か北方砦に遠征をして、実際に青怜に北の動きと防衛の仕方を教えてもらっている。

 

「ふむ……………ありていに言えば馬鹿?」

 

 それを聞いた近くの兵たちは困惑に満ちた顔をしている。それは普段私が身内を馬鹿などとはほとんど言わないため、それを言う青怜とは一体何者なのかが気になっているのだ。

 

((((仲珪様に馬鹿と言われる子則様は一体何をしたんだ?))))

 

 そんなことをしていたら私たちが野営する場所に着いていた。私は副官に野営の準備をするように指示をだし、一方の私は報告のために姉さんのいる居城へと足を進めた。

 

 

 

 

―――――――幽州啄群・公孫賛居城 執務室前

 

 私が居城に着いてからしばらく廊下を歩いていると近衛兵や女官から挨拶をされ、それに一つずつちゃんと返していく。

 

日本の常識だからな。社会人そこは守らないと。

 

そして姉さんの執務室前までつくとその扉を守るように両脇に控えていた近衛兵に挨拶される。

 

「お帰りなさいませ、仲珪様」

 

「護衛ごくろう。私がいない間に何か変わったことはないか?」

 

「数日前に伯珪様が武官を一人客将として迎えました」

 

「姉さんが?」

 

その報告を聞いていないぞ、客将として迎えて大丈夫なのか?

 

「はい、なんでもその武官はとても優秀だそうです」

 

ほう、それはいいことを聞いた。この世界の来て死亡フラグを回避するために武術を鍛え、ついには内氣功まで使えるように至った私の武力、試してやる。

それに今まで雑魚しか相手にしてなかったし、これから始まる三国志じゃ呂布や関羽みたいな化物がいるからな。

それに近い実力のある人とやってみたい。そんでもって通用するか確かめたい。

いや、せめて死なない程度に生き残れる力があるか知りたい。死にたくないから、最近切実にそう思う。

 

「その武官は?どこにいる?」

 

「ちょうど今伯珪様とお話し中です」

 

「ありがとう」

 

「いえ、自分たちの仕事をしたまでです」

 

 私は会社の面接を受ける学生のように妙に緊張している気持ちを抑えるために深呼吸を何回か繰り返して心の準備をすると執務室の扉をノックして開け、部屋の中に入った。

 

「失礼する。姉さん、たった今こちらに……」

 

そしてその扉の向こう側の様子を見た瞬間、あまりにも予想外の光景に私の全身は驚きで固まってしまった

 

なぜならそこにいたのは薄水色の髪をして、蝶のような白い服を着ている前世の画面で見覚えのある(・・・・・・・・・)女性だったからだ。

 

その女性の名はあまりにも三国志で有名な蜀の勇将の趙 子龍、その人だった。

 

やば、死んだかもしんない。いきなり趙子龍なんてどんな無理ゲーだし。

 

 そう思いながらも感情を隠す前世の社会で培った鋼鉄の仮面をかぶり、臆することなく趙 子龍のもとへと踏み出す。身の安全を考慮に入れ、全身で警戒しながら何をされても対応できるぎりぎり距離で立ち止まる。

 

「貴殿が姉さんが新しく客将として迎えられた武官か?」

 

「うむ、そうですぞ」

 

 そう言いながら私は趙 子龍の全身をくまなく目で観察していく。自然体でいるにも関わらず不自然なほどに隙がない。それでいて身体は人を倒すための、いや戦場で生きていけるように無駄なく洗練されて鍛えてあることがわかる。

わかる奴にはわかると思うがそこら辺の一般兵にはわかるはずはない。一部の壁を越えた者だけが到達することができる領域に彼女は間違いなくいる。

それらに加え彼女がただならぬ強者としての雰囲気を醸し出していることが私の生存本能と勘がはっきりと告げる。

そしてそれらを確信させたのが私の目に写った彼女の顔に浮かぶ自信過剰大胆不敵がお似合いの挑発的な笑みだった。

 

 

 

これこそが英雄と呼ばれる人種。

 

 

 

そしてこれが本物の将軍。

 

 

 

フッ、面白い!

 

 

 

 私はさっきほどの緊張がなかったように一武人として気分が高揚し、気が付かないうちに自然と笑みを浮かべていた。そして私が趙 子龍を見て笑みを浮かべたことが理解できなかった姉さんは訝しそうに私のことをまじまじと見ている。

 

「黒蓮?」

 

 そして私は姉さんの言葉を聞いて高揚していた気分からはっとして平静の気持ちに戻り、していなかった自己紹介を始める。

 

「失礼した。私の姓は公孫、名が越、字が仲珪と言う。貴女のような者を客将として公孫家に迎えられたことを幸運に思う」

 

「うむ、私は姓が趙、名が雲、字が子龍と申します。こちらこそ貴殿のような武人と出会えたこと、光栄に思いますぞ」

 

 お互いに目を見合わせると私と彼女は同じ笑みを浮かべていた。どうやら私と同じことを考えていると言うことらしい。自ら死亡フラグ近いことに首を突っ込むなんて随分と武人の考えに慣れてしまったな。

 

「ふむ、考えていることは同じか?子龍殿」

 

「そのようですな」

 

 私はそのことに喜び、子龍殿も同じように感じたのか自然と浮かべていた笑みに深みが増した。一方の姉さんは今の話の流れが良くわからず、一人で混乱していた。

 

「ん?何がだ?」

 

 しかし、私達二人にはもう姉さんの姿は目に写っていない。ただ私たちの目に写る物は目の前にいる強者のみだけだった。

 

「それでは練兵場に行くとしようか」

 

「いいでしょう。久々に楽しめそうですな」

 

 子供のような無邪気な笑みを浮かべる子龍殿と同じように笑う私はバトルジャンキーか何かか、こっちに生まれたときにはなるまいと思っていたが今はもう関係ないな。

 

「フッ、子龍殿がそう思うなら間違いなく、な」

 

「フフフ」

 

 二人して笑いながら部屋を出ていくとその流れについていけない姉さんが訳も分からずにポツンと一人部屋に残された。

 

「え?え?」

 

 この空気の読めなさと普通の武将ステータスこそがステルス迷彩(影が薄い)の原因かもしれない。本気でそう思った。

 

 


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