でもできるだけ早く投稿したいと思っています
それでは今回もお楽しみください
練兵場 黒蓮side
「私の姓は公孫、名が越、字が仲珪という。先ほどは本当にすまなかった」
そう言って私は姉さんの方を向く、そうすると姉さんの横には桃色の髪をした少女が口を膨らませながら精一杯私を睨んでいる。とりあえずさっきのことは私が悪かったので素直に謝っておくことにした。
しかし私も彼女のことを目を少し細めながら睨み返す。そしてぶっきらぼうに謝罪の言葉を言う。
「つい天の御使いと聞いて興味がわいてしまったのだ」
「つーーん」ぷい
私から顔をそむけた桃色の髪をした少女、もとい劉玄徳は私が彼女を見続けて反応を待っていてもそのままつーーんを続けている。
これがあの蜀の当主になる奴か……はっきり言ってただのガキだろ。こんなのが戦場に出て義勇軍を率いるとは胸糞わるいわ。それにこいつらがあの三国志の英雄かよ、趙子龍とはえらく違うな。はっきり言って失望した。
「…………………(はぁ)」
「つーーーーーん(ぷい)」
そんなことをしばらくやり続けていたら、姉さんが助け船を出してくれて劉備に近寄っていき、ごにょごにょと何かを耳打ちすると彼女はこっちを向き、たいした眼力もないまま私を睨む。
「私は劉備、字は玄徳と言います。さっきのことはもう何も気にしていません」
そう言いながらも彼女は私を睨むことをやめない。隣では姉さんが”また問題が増えたか”と言った顔をして本日何度目かわからない大きなため息をする。
「わかった、なら別にいい。それと私は別に貴女方と慣れ合うつもりはない。だからそちらも私のことは気にせず好きにすればいい」
「なッ!」
私がそう言うと劉備は驚いて言葉を発すことなく少しだけ顔を赤くしながらプルプルと肩を震わせている。その隣でも姉さんが”何してんだお前は!!”と怒っていたが私はこいつらが気に入らないから私がどう思われようと気にはしない。
こんなガキに付き合ってられん。とっとと挨拶して飲みに行くか。
そして私はさっさと黒髪の少女の方へ向き、再び自己紹介を始めるが黒髪の少女こと関雲長はそのきつい眼差しと怒気、さらには警戒心を剥き出しにして私を見ている。
「私の姓は関、名は羽、字は雲長と言います。こちらこそよろしくお願いします」
そう言って嫌っている相手にまで律儀に頭を下げるあたりはさすがは蜀の委員長的だなと素直に思う。私も関雲長に礼を返すと次はその隣にいる小さい少女こと張翼徳の方を向くと彼女はう~と唸りながら私を威嚇していた。
ふん、こんなガキどもの手を当にしないといけないなんてさすがは公孫賛軍、率いてる我ながら泣けてくるな、袁紹に滅ぼされたのも納得がいく。
「鈴々の名は張飛、字は翼徳なのだ」
そのままぷいと明後日の方向に顔をそむけた彼女と劉備たちを冷たい目で一瞥しながら、次に趙子龍殿の下へと向かう。
「今回の手合せは実に良い経験になった。礼を言う」
「気にすることはありませんよ、私もあなたのような武人と手合せできて光栄です。またお時間がありましたらよろしくお願いしますぞ?仲珪殿」
そう言って再びあの挑発的な笑みを浮かべる彼女に私も同じような笑みを浮かべ返す。私たちの周りいる者達の反応は様々だったが特に姉さんが頭を抱えて「またやるのか?ここの修繕は誰がやると思ってるんだ」とかなんとか言っていたが聞かなかったことにする。
「それはこちらからお願いしたい。それとあなたには私のことを真名の黒蓮と呼んでほしい」
「ふむ、なら私も星と真名で呼んでくださって結構ですぞ」
「ならば星、今夜は私のおごりで一杯いかないか?もちろん良いメンマのある店だぞ?」キラーン☆
そう言って私は星に向かってアイコンタクトを送ると彼女も私の言葉(以心伝心)が届いたのか同じようにアイコンタクトで返してきた。
「ほう、抜かりはありませんか。なら今すぐにでも行きましょう!!」キラーン☆
そう言って私たちはすぐさま城下へと酒を飲みに向かった。その後ろでは姉さんが何か言っていたような気がするがまあ、気のせいだろう。
今日は珍しく飲みたい気分なんだ。放っておいてくれよ?姉さん。
練兵場 桃香side
「う~白蓮ちゃんの妹なのに感じわ~る~い~」
私がふてくされながらそう言うと白蓮ちゃんは苦笑しながらも妹のことを謝罪すると彼女のことを弁護し始めた。
「悪かったな、桃香。あれでもあの子はいい子なんだが、最近は一段と機嫌が悪かったのがいけなかったか?」
「え?」
あれって機嫌が悪かったからご主人様にあんなことをしたの?私にあんなこと言ったの?それってもしかしてただの八つ当たり?
「そうなのですか?私達にはとてもそうだとは思えませんが」
私と愛紗ちゃんがそう白蓮ちゃんに聞くと白蓮ちゃんは隠すことなく素直に答えてくれた。私の隣でもご主人様と鈴々ちゃんが何故あんなにも嫌われたのか興味深そうに聞いている。
「ああ、桃香たちは私たちが人手が足りないのは知っているな?」
「うん、だから白蓮ちゃんのところに来たんだけど……それと何か関係があるの?」
幽州ではあまり人材がいない。それはすぐ南に洛陽などの大都市があるためにそれより北に来る人がいないからだ。それに陳留にはあの有名な曹孟徳がいるから優秀な人材を集める彼女のところに名を高めたい人が行くのは必然。それに対して北方の雄とされる幽州の白蓮ちゃん所にはあまり人が来ないのは当たり前だ。
だって白蓮ちゃんよりも知名度も家柄も実力さえも上な曹孟徳を選ぶのは当然だと思う。
「まあね、今私たちが必要としている人材は武官でなおかつ軍の指揮を任せられる人間だ。黒蓮のことだ、愛紗たちの実力は見抜いていただろう。桃香達の中で軍を指揮できるのは愛紗だけって判断したのさ」
確かに私たちの中で司令官をやれそうな人は愛紗ちゃんしかいないと思うけど、それでも義勇軍としてやってきた私たちに、特にご主人様にいきなりあんなことするなんてやっぱり好きになれない
「それが機嫌の悪い理由なの?」
「いや、正確には違うと思う。それに頼らなくてはならない自分達の軍の不甲斐無さと賊をここまで大きくしてしまったことが黒蓮自身を責めているのだろう。あの子は昔から責任感のある子だったからな」
「へ~でもやっぱりいきなりあんなことを言う子なんて好きになれない」
「そうですね。いきなり我らが主にあのようなことをするなんて失礼極まりないです」
「そうなのだ!」
「俺は彼女の気持ちはわかるかな」
私達が彼女を非難しているそんな中でご主人様だけが彼女の弁護に入った。私たちは不思議そうにご主人様の方をまじまじと見ているとその視線を意に介さず彼女が出て行った入り口の方を見ながらその理由を答え始める。
「俺の国ってさ、戦争なんてもうずっとしてないんだよ。それで国民は戦場なんて一生死ぬまで戦場なんて行かない。それは俺たちを守ってくれる軍隊みたいなものがあるからなんだ」
「天の国ってそうなのか?」
「ああ、俺の国ではそうだった。それで戦争になった時に誰よりも先にその人たちが戦わなくちゃいけないんだ。だからその軍隊みたいな人たちってさ、国民を守るだけの実力がなくちゃいけない」
――――――――――じゃないと何かあった時に何も守れないから
そうご主人様が言うと白蓮ちゃんは感心したようにご主人様を見ている。そして何度もうなずいてから何か心当たりがあったのかご主人様に気が付いたことを問う。
「つまり私達の軍は義勇兵を集めてしまった時点で民を守る実力がないというわけか?」
「ああ、たぶんだけど彼女も同じように感じてると思う」
「はぁ~痛い言葉だな。それにそう言うことだから黒蓮はあんなに義勇兵を集めることに反対したのか」
義勇兵を集めるということはイコール今あるだけの白蓮ちゃんの軍だけでは力不足だということに他ならない。白蓮ちゃんの率いる幽州軍の中心的な彼女から見ればそれは悔しいことだろう。
「でもそれって仕方がないことなんじゃないの?だってそうしなくちゃ襲われちゃうんだよ?何も守れないんだよ?苦しむ人が増えていくんだよ?」
逆に義勇軍を集めなかったら町なんて簡単に襲われてそこにいる人たちが被害にあう。そしてその町を略奪した後はまた新たな得物を探して違う町を襲う。なぜなら彼らは民ではなく賊であるからだ。何も生産していない非生産的な彼らだからから襲わなくちゃ生きていけない。無から有を生み出せないことと同じようにある場所から奪わなければ生きていけないから。
「確かに桃香の言う通りだ。でも賊の彼らだって好きで賊になったわけじゃないんだよ、桃香。元農民の彼らが苦しんで生活できなくなったから、賊にならざるを得なかったから賊になったんだ。それは民を導く為政者の責任であり、黒蓮もまた太守の私の部下である以上はその責任はあるんだ」
つまりは元農民が生きていけなくなったその土地を捨てて賊になったということだ。それはその地方を治めている為政者が重い税なり、理不尽な政策だったりと、とにかく農民がその土地を捨てるまで追い込んだためにこの黄巾賊は生まれたということ。それの原因は言わずもがなその地方を治めている為政者であり、それを起こさせた責任もまた為政者にある。
「そしてあそこに集まった賊の中にはここ幽州で集まった民たちが少なからずいる。そうさせてしまった責任は誰でもない、ここを治めている私達の責任だ。
そしてそうやって集まった本来守るべき民たちを――――――――――戦って殺すのもまた統治している私達の責務なんだ。
そうしないと私たちが守るべき民がもっと被害を被ることになる、私達が戦わないと守るべき者達を守れないからな」
そう力強く私たちに言った白蓮ちゃんの言葉に私は目に見えない重さがあると感じてしまった。いや、今だに治める立場ではない私にはその重さを感じざるを得なかった。
これが今までこの啄群を治めてきた太守としての本来の白蓮ちゃんの姿だと思う。それと同時にその姿は私にとって初めて白蓮ちゃんに大きな差をつけられたと感じた瞬間でもあった。
随分と差をつけられちゃったね。
「そこに俺みたいな特別に力を持っているわけでもない訳も分からないような人間が乱世を治める天の御使いだって目の前に現れたら誰だって嫌うのは当たり前か」
そう俯きながらご主人様は一人自分を責めるようにつぶやいた。その声はしっかりと私たちの所まで聞こえていて、私と愛紗ちゃん、鈴々ちゃんもみんなばつの悪い顔をしている。
「私達は彼女より、力も責任もある立場でもないのに目の前で乱世を治める天の御使いを名乗った主をお連れしたから、彼女の目には私たちが無責任だと写ったわけですか……」
「ああ、確かにそれは為政者でもあり、軍を率いる私たちにとって言葉だけの無責任なことだと思う」
愛紗ちゃんが力なくそう言うとそれを否定することなくむしろ肯定するように白蓮ちゃんは言葉を紡いだ。それを聞いた私達は全員なんて馬鹿なことをしてしまったんだろうと思ってしまう。力も何もないのに言葉だけ無責任なことを彼女の前で言ってしまった。
そうやって私たちが意気消沈しているのを見かねた白蓮ちゃんはまるで母親のように優しく私たちを元気づけるために言い聞かせた。
「そうだけど………
もし桃香たちが言っていることを実現できれば………
為政者としてちゃんと責任をもつ立場になれたなら………
桃香たちが言ったことは無責任にはならない」
と、白蓮ちゃんのその言葉を聞いた瞬間に私は目から鱗が落ちたような気がした。そして白蓮ちゃんの方を向くと彼女はにっこりと笑いかけてくれた。そして私も”親友”に向けてしっかりとほほ笑むと胸の前でぐっと握り拳を作り、新たな決意をした瞬間だった。それは私だけではなく隣にいた愛紗ちゃんや鈴々ちゃん、そしてご主人様も同じような決意をしたと愛紗ちゃん達を見た瞬間に感じたことだった。
「それじゃあ、久しぶりに会ったことだし宴にするか」
そう言って白蓮ちゃんの言葉がこの場を締めた。私たちもさっきのような憂鬱な雰囲気はどこにもない、むしろこれからのことに、私たちの理想に向かって行くことに胸が高鳴っている。
「いいよ白蓮ちゃん、それに私白蓮ちゃんの妹に少し興味だってわいてきたし」
それに彼女のことが少しだけ気になるし、何時かは二人で話し合いたいとも思う。
「黒蓮のことか?別に話すのはいいけど」
「確かにそうですね。私も彼女のことは少し気になります」
「鈴々もなのだ!」
「俺も彼女と二人で語り合いたいかな?」
「「「「えっ!!!」」」」
そんな中でもご主人様はご主人様だった。
居酒屋 黒蓮side
私達が居酒屋に来て酒とつまみのメンマを頼むと星はさっきの劉備たちのやり取りのことを話題に出した。
「随分と劉備殿たちをお嫌いになったのですな、黒蓮は」
「ああ、彼女たちはどうにも好きにはなれない」
私がそう言うと星は興味深そうに私のことを見ている。そして”ほら、その理由をとっとと吐いてしまいなさい”と言っているようなキラキラした目で私のことを見続けている。私は酒の勢いもあってか私の心の内を星にためらいなくしゃべった。
「特に北郷が乱世を終わらせるとかなんとか言ってる天の御使いって言うのが気に食わない」
「ほう、それはなぜですかな?乱世が終わるならそれはいいことだと思いますぞ?」
「それは別に気にしていない。むしろ喜ぶべきことだ」
そう言って私は目の前の杯一杯に入った酒を一気に飲み干す。その横では星がメンマをつまみながら好奇心の目で見てくる。
「なら何が気に食わないのです?」
「無責任な立場から何も根拠がないのに一方的に乱世を終わらせるとか言ってるのが気に食わない。そんな北郷達の言葉一つで乱世が終わらせられるなら今まで私たちや各州牧がやってきたことは一体なんだったんだ?他にも陳留の曹孟徳しかり、五胡の盾になっている西涼領主の馬寿成、名門袁家の袁本初も、他の為政者達もが実力があるのにこの乱世を平和にできていない。それなのにをあいつらのような何も力を持っていない者達がその言葉を言う資格あると思うか?私はないと思う、いや責任ある立場でもないのにその言葉を易々と口にする資格すらない」
私が酒の勢いに任せてそう言うと星は一瞬きょとんとした後、少し笑いを堪えてていたが徐々に堪えきれずに少しずつ笑い、最後には大きな声で笑い始めた。
「何がそんなにおかしい」
私が少し拗ねたように言うと彼女は目に涙を浮かべながら私に謝った。そして彼女はそのまま少し笑いながらも話しを続けた。
「すまぬ。黒蓮が思っていたより頑固ではなく、実は嫉妬深いとは思わなかったのでな」
「嫉妬深い?私がか?」
私が星の言ったことに怪訝な顔で聞き返すとまたも星は笑った。
「そうですぞ、本来ならそのような小言など無視すればよいのに、なぜ黒蓮は真に受けているのです?。それは貴方が北郷殿らにあこがれているからでしょう?」
「む………そうなのか?」
「そうだと思いますぞ?」
少し頭の中で考えていたら確かにそうかもしれないと私は思ってしまった。いつの間にか私はこの乱世に慣れてしまっていたのだろう。昔はそう同じように思っていた時もあった。しかし私もこの世界に慣れてしまったのか次第にこの幽州のみを守れればいいと思ってしまった自分がいることに星の言葉で気が付いた、いや、気が付かされたのか。
そう思ったら私はさっきまで北郷たちにイラついていたのがバカバカしくなってきてつい笑ってしまった。
「クックックックックッ」
「どうしたのだ?いきなり笑い出したりして」
星が突然笑い出した私をおかしな人を見るような目で見てくる。若干星が距離を離したような気がするがたぶん気のせいだろう。
失礼だな、別に私はおかしい人間じゃないぞ?そんな目で見るなよ。
「いや、自分の器の狭さを思い知ってな。随分と私は小物じゃないか」
私は自虐めいたふうにそう言うと一気に杯の中に入っていた酒を飲み干す。それに対して星も同じように入っていた酒を笑いつつ飲み干した。
「ようやく気が付きましたか」
そして皮肉めいたふうにそう言って私の杯いっぱいに酒を注いだ。私も手に持った酒瓶を傾けて星の杯いっぱいに注いでお互いの顔を見て笑い合う。
「ああ、おかげさまでな」
そう言って私達は二人で一緒に杯の酒を飲み干した。
今回も何か感想やアドバイスがありましたら気軽に
書いてくれると助かります
よろしくお願いします