真・恋姫で地味ヒロインの妹してます   作:千仭

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今回は誤字脱字がないと願いたいですが

ありましたら何時も通りにご指摘してくだされば助かります。

さて今回はメンマさんのすごさがわかります。

ではお楽しみください!!


立ち直る理想主義者

義勇軍天幕 桃香side

 

 私はあの軍議の後、この天幕で自分の身体を抱きながらずっと蹲っていた。あの最後の言葉を聞いてから白蓮ちゃんの妹さんの姿を見るのも怖い。

 

あの子に言われた言葉が痛い

 

あの子の考えていることが恐ろしい

 

あの子が私を冷たい目で見ることが怖い

 

あの子が戦場で行うことが許せない

 

罪なき人が―――――――黙って死んで行くのを見たくない

 

 そんなことを考えては首を振ってその考えを頭の外へと追い出していく。でも再び頭の中を空っぽにするとあの妹さんの言葉を思い出してしまう。

 そんなことをしばらく繰り返していると天幕の外がにわかに騒がしくなっていく。そして私の天幕に愛紗ちゃんやご主人様の手を振りほどいた白蓮ちゃんが入ってきた。

 

「大丈夫か?桃香」

 

「うん、大丈夫だよ?」

 

 白蓮ちゃんが優しく私の肩に手を置きながら心配した様に聞いてくる。それに私はこれから戦場に立つ白蓮ちゃんに心配かけないよう精一杯明るく答えた。しかし私がそう答えると、白蓮ちゃんに私が嘘をついていることをあっさりと悟られる。

 

「嘘をつくなよ、顔が真っ青だぞ?無理だけはするな」

 

「……うん」

 

 さっきの返事と裏腹に今度は力なく返事をすると白蓮ちゃんは少しだけ額に手を当てて何かを考えた後、軍議のことを、妹さんのしでかした行為を謝ってきた。

 

「はぁ、内の妹が悪かったな」

 

「ううん、白蓮ちゃんの妹は悪くないよ。悪いのはむしろ私の方だよ」

 

そう、彼女は悪くない。甘すぎた私がいけなかった。

 

 そう思っていたら白蓮ちゃんがいきなり私の顔を覗き込んできた。私は負の思考ループに耽っていたため、その白蓮ちゃんの行動に気が付くことができずに驚いてしまった。そうすると白蓮ちゃんは「やっぱりか」と小さな声で呟いて次に私の目を見て口を開いた。

 

「悪いが桃香は今回の戦にでるな」

 

「え?」

 

 そして私はその言葉を聞いて耳を疑ってしまい、思わず自分の口から気付かずに声を出してしまっていた。

 なぜならご主人様たちと一緒に義勇軍に参加するためにここに来たのに白蓮ちゃんは戦場には出でるなと言ってきたからだ。

 

「北郷達に義勇軍の指揮を任せる。桃香はしばらく休んでろ」

 

「で、でも」

 

 私がその言葉を聞いてなおも食い下がろうとすると白蓮ちゃんは急に私の頭を撫でてきた。そしてそのまましばらく撫でられていた私に向かって白蓮ちゃんは大きなため息をこれ見よがしに私の目の前でつくと親友として私のことを心配している目で私のことを見ている。

 

「はぁ~、そんな顔で言っても無理だ」

 

あれ?私そんなにひどい顔してるのかな?

 

「ああ、頬に泣き後があるし、顔が真っ青だ。無理してるんだろ?」

 

「そんなふうに見える?」

 

「何年私が桃香と一緒に居たと思ってるんだ?」

 

私がそう白蓮ちゃんに聞くと彼女はしっかりと頷いて心配してくれている。

 

「……うん、ありがとう」

 

「じゃあ、そう言うことだ、今はゆっくりと休んでくれ」

 

 そう言って白蓮ちゃんは私の頭にポンと手を置き、優しく何度か撫でた後そのまま背を向けて天幕を出て行こうする。私はその背中を静かに見ていたが、ふとさっきの軍議のことを思い出して白蓮ちゃんにある疑問が思い浮かんだ。そして思わず私はその場で勢いよく立ち上がり、大声で白蓮ちゃんに声をかけていた。

 

「………白蓮ちゃんちょっと待って!!」

 

私が白蓮ちゃん聞きたいこと。

 

「うん?どうしたんだ、桃香?」

 

 私が声をかけると白蓮ちゃんはその場で立ち止まり私に振り返って真っ直ぐと私のことを困惑の目で見ている。

 

「ちょっとだけ白蓮ちゃん聞きたいことがあるんだけど」

 

「別にいいぞ?」

 

それはさっきの軍議で最後に私が見たときのあの『眼』の真意を。

 

「……………白蓮ちゃんもあの子と同じように思ってるの?」

 

「……………」

 

 そして勇気を振り絞って私は白蓮ちゃんの真意を聞く。そうすると白蓮ちゃんは少しだけ眉がピクッと反応し、私の目を真っ直ぐと見つめて無言で佇んでいる。

 

「あの子と同じように多くの人のためなら、幽州の人のためならたとえ罪なき人でも全員殺しちゃうの?」

 

「……………」

 

「答えてよ!?白蓮ちゃん!!」

 

 何も答えないでただ黙っている白蓮ちゃんに痺れを切らした私は目の前にいる親友に思いきり大声で怒鳴っていた。

 

なぜなら私は親友を信じていたかったから。

 

そんなことは思っていないはずと信じたかったから。

 

 そして目の前にいる親友は瞼を閉じると何かを瞑想して次に瞼を開いた瞬間に彼女の雰囲気が劇的に変わっていた。それは今まで私が見たことがなかった瞳に少しだけ重圧がました態度。

 

そう、その目はあの時の彼女が、仲珪さんが見せた“覚悟”をした『眼』だった。

 

「……………ああ、そうだ。治める啄郡のためなら、それが必要ならば私は喜んでこの手を血で染めよう」

 

「……………ッ!!」

 

 そして目の前の親友がそう言い放った瞬間に私は絶句し、彼女の背負っているものの重さを感じた。目に見えない重圧が私を襲い、彼女の覚悟ある『眼』が容赦なく私を貫く。全身の毛が逆立つようゾクッと冷たい戦慄が私の身体に走った。

 

「守るべき者のために最善を尽くす―――――――それが太守である私の義務であり矜持だ」

 

 そう次の言葉を述べた白蓮ちゃんの言葉一つ一つに目に見えない重さがあり、それを背負っている彼女には一体どれほどの重さが掛かっているのかが分からなかった。そして彼女が背負っている物の一部に無理に触れたことにより私はその場でただただ黙ってしゃがみこみ、泣いていることしかできなかった。

 そして信じたくなかったが、昔の彼女なら絶対やらないと思うが今の彼女ならやってしまうと私の本能がそう告げる。

 

 私がその言葉を聞いて信じられずに泣いていると白蓮ちゃんは振り向きざまにただ「ゴメン」と一言だけ言って天幕を出て行った。

 そしてその入れ替わりに今度はさっきの軍議に参加していた趙子龍さんが天幕の入り口からご主人様や愛紗ちゃん達を連れて入って来た。

 

「桃香様!?どうしたのですか!?」

 

「大丈夫なのか!?」

 

「大変なのだ!?」

 

 私が泣いていることに気が付いた三人は慌てて私のところへ寄ってくる。それに対して趙子龍さんはただ私たちのことをただ黙って見ているだけで何も言ってこない。

 

「今度は白蓮殿が桃香様を泣かせたのですか?」

 

「きっとそうなのだ!」

 

「確かに謝りに来ただけって言ってたのに」

 

 私が泣いていることで三人ともここにはいない白蓮ちゃん達の悪口を言い始める。だがそれを聞いた趙子龍さんが大きな声で笑った瞬間に愛紗ちゃんたちがきつい眼差しで彼女を睨み始めた。

 

「何がそんなにおかしいんだ!!」

 

「いや、あなた達は馬鹿の集まりだと思いましてな」

 

 そういう子龍さんに愛紗ちゃんが食ってかかった。その隣にいるご主人様たちもさっきの軍議のこともあってか殺気立っている。しかしそれでも子龍さんはどこ吹く風と言ったように愛紗ちゃん達の怒気や殺気をまるでないように続きを述べる。

 

「なんだと!?貴様も我らを侮辱するのか!?」

 

「ありていに言えばそうですな」

 

「貴様!!」

 

 そして子龍さんは再び私たちに向かって挑発するように小さく笑いかけて、それに一々反応する愛紗ちゃんたちをからかっているようだった。でも子龍さんが次の言葉を言った瞬間に彼女の態度は一変して真面目になり、私たちを見る目も真剣さを帯び始める。

 

「それにしても白蓮殿達は随分とお優しい方々でしたな。そうは思いませんか?天の御使い殿」

 

え?どういう意味なの?

 

「それはどういう意味なんだ?」

 

 そう子龍さんに聞かれたご主人様は私と同じように思ったのか、子龍さんにその意味を聞き返す。

 

「簡単ですぞ?あなた方は本来白蓮殿達の軍議に参加することも軍隊の指揮権を渡されるのもましてや意見を対等に出すことさえできないというのに」

 

「それは確かにそうだと思うけど」

 

 確かにここ2~3日ぐらいに来た私たちを他のところだったらまず客将としていきなり扱われることもないし、軍議で太守である白蓮ちゃん達に意見する事なんてできるはずがない。

 

「ここが幽州ではなく、曹孟徳が治める陳留ならばあなた方は不敬の罪で頸を斬られてもおかしくはないのですぞ?」

 

「でも桃香様は白蓮殿と友人であり、同じ私塾に通われた仲でもあるのだぞ」

 

「それは個人的付き合いであろう。公の場では普通区別するものだ。しかしそれを白蓮殿はまったくしておられないのです。ましてやただの兵であるあなた達の青臭い言葉などをまともに答える必要なんてないはず、それを律儀に黒蓮殿は論破し、白連殿は劉備殿を心配して謝罪に来る必要もないというのに」

 

 子龍さんがやれやれといった感じに愛紗ちゃんの質問に答える。私も彼女の言っていることには賛成であり、太守である白蓮ちゃんがそういう態度をとるのは仕方ないことだと思う。むしろ友人だからと言って私以外の愛紗ちゃんたちまでも普通のところでは考えられないほど待遇がいいと言っても過言ではない。

 

「それは」

 

「これを聞いたとしてもあなた方はまだ彼女らが優しくないとおっしゃる気ですか?」

 

「だが、それとこれとは話が違う!」

 

「いえ、同じことですぞ?いや、むしろ今回被害が出ていなかっただけありがたいと思った方がよろしい」

 

「なんだと!?」

 

 そう聞いた私は頭の中をガツンと何かで殴らたような感覚に陥った。そしてまたさっきのような負の連鎖に陥る寸前の状態になってしまう。

 

「もし今回のことで黒蓮殿があなた方を否定していなければ確実に彼女が言ったようなことが起こるのは明白、それをわざわざ教えて下さったのは誰でもない白蓮殿たちなのですぞ?」

 

「でも!彼女たちは間違っている」

 

 さらに続ける子龍さんの言葉を何も聞きたくないようにしゃがみこんで蹲って耳をふさぐ。しかしいくら強く耳に手を当ててもこんなに近くで愛紗ちゃん達と同様に大きな声とはっきりと意志のこもったハリのある声が私の耳に容赦なく聞こえてくる。

 

「確かに仁徳を持ってしてみればそうなるのでしょう。しかし今のあなた方がそれを否定するほど力や実力がおありなのですか?」

 

「くッ、しかし!」

 

私は心の中でやめて!!と叫んでも子龍さんはためらいもなく私の目の前で言葉を紡ぐ。

 

「いくら言葉を美辞麗句で飾り、良いものだとただ言うだけなら簡単です。しかしあなた方はその言葉に責任をとれるのですか?あなた達の理想のために戦って命を散らす兵たち全員にそうはっきりと自信を持って言えるのですか?」

 

「……言える訳がない」

 

 そう子龍さんが言うと愛紗ちゃんは悔しそうに握り拳をしながら俯いて答えた。それは私たち言われずともわかっている。今の私たちにはそんなことを言える力も何かをする実力もない。

 

 

「そう、今は(・・・)無理でしょう。だったらあなた方はするべきことを探せば良いのです」

 

 

 そして私は子龍さんのその言葉を聞いた瞬間、暗くよどんでいた心の中に何かがストンと落ちてきた様に感じた。それは私の心の中の淀みを少しずつ浄化してくれるようなものであり、今の私が一番欲しいと思っていた物であった。

 

「する…べき……こと」

 

 私は思わずその言葉の意味を言い直してしまう。そして俯いていた顔を上げて子龍さんのを見ると彼女は私に向かって優しく微笑みかけてくれた。

 

「それともなんですかな?あなた方の『理想』という物はたかが一人の言葉ごときで壊される軟な物なのですか?」

 

 そして子龍さんはすぐに愛紗ちゃんの方を向くと今度は挑発的な笑みを浮かべながらここにいる私たち全員に向かって問いかけてきた。

 

 

―――――――あなた方はたった一回否定されただけで諦めるのか?

 

 

―――――――あなた方の目指したものはこんなところで終わるのか?

 

 

―――――――あなた方の『理想』とやらはそんなにも脆く、小さいものなのか?

 

 

――――――――――――それはあなた方が無理だと……この世にありえないものだと認めてしまうのか(・・・・・・・・)

 

 

「そんなはずない!!」

 

 

 私は思わずその場で子龍さんに向かって大声で叫んでいた。私がいきなり大声で叫んだことで私の近くにいたご主人様たちは驚いてこちらを見ている。

 

 

「私の夢は………私たちの夢は!!」

 

 

 そして私はその場から立ち上がって涙を袖でふき取って、心の思うままに自分の気持ちを言葉として紡いでいた。

 

 

「私たちが作り上げていく物(・・・・・・・・)なんだから!!」

 

 

 私がそう言うと子龍さんはまるですごく面白いものを見つけた子供のように私のことを笑って見ている。そして愛紗ちゃんたちもお互いに頷き合って私の言葉に賛成してくれた。

 

「その通りだ!!桃香様たちと誓い合ったものはたかが言葉ごときで壊れるようなものではない!!」

 

「そうなのだ!!鈴々たちの誓いは凄く固くできているからそんな心配いらないのだ!!」

 

「俺もそう思う。だよな?桃香」

 

 愛紗ちゃんたちがそう言って全員で笑いながら私のことを見てくる。その皆の目にはさっきまでのような暗く沈んでいた影はなく、作り上げていくんだという“覚悟”を決めた目であり、私たちが『理想』に向かって本当の(・・・)一歩を踏み出した瞬間でもあった。

 

「うん!」

 

 そして私も元気よく頷くとここにいる皆の気持ちが一つになったような気がした。子龍さんはそのことに満足したように頷き、早速と言わんばかりに私たちが何をするべきなのかと聞いてきた。

 

「ならば早速今すべきことを見つけなければなりませんぞ?」

 

「皆なにか思い浮かぶことはある?」

 

 とりあえず私が皆にそう聞いて見ると全員その場でう~んと悩みながら頭を捻っていると子龍さんはこれだからこそ面白いと小声で呟き、しかたないですなという態度で私たちに向かって助言をする。

 

「やれやれ、では先ほどの軍議の際白蓮殿や黒蓮殿は無知である貴方達の理想を正面から否定しました」

 

「……………」

 

「それはなぜかお分かりですかな?」

 

 私たちは黙って子龍さんの話しを真剣に聞く。そうすると子龍さんは私たちにわかるように丁寧に話し始めた。

 

「それは私たちが無責任だったから」

 

「そうです。あなた方の言葉はあのお二方よりもずっと軽い(・・)。それはあなた方がまだ人の上に立った経験がなく、治める領地を持っていないからなのです」

 

 それはもうさっきの話から嫌というほど分かっていることだった。あれほど真正面から容赦なく言われればよほど馬鹿でない限りは気が付く。

 

「ならどうすればいいの?」

 

「来たるべき時まで学ぶのが良いでしょう。ちょうど良い先生がお二人ほどあなた方の近くにおられるではないですか」

 

 私がそう子龍さんに聞くと彼女は親切に私たちのこれからの未来に対して道を教えてくれる。私はそんな子龍さんにいつの間にか全幅の信頼を気が付かない内に置いていた。こんな人が私たちのことを手伝ってくれればいいのにと半ば本気で思ったが子龍さんは子龍さんのやりたいことがあるから強制はできない。

 そしてそんなことを考えながら子龍さんの問いを考え始める。

 

え~と、まずは太守である白蓮ちゃん。それと子龍さんかな?

 

「えと、白蓮ちゃんと子龍さん?」

 

「いえ、私は違います。白蓮殿と黒蓮殿のお二人です」

 

 私がそう答えあると子龍さんは頭を横に振って自分のことは否定し、その代わりに妹さんの名を上げた。

 

「「「「え~!」」」」

 

 それを聞いた私たちは思わず全員揃って驚きの声を上げる。正直言うともうあの子には極力関わりたくないのが私たち全員の共通意見になっているからだ。

 

「白蓮ちゃんはともかく妹さんもなの?」

 

「私も同感です」

 

「鈴々もそう思うのだ」

 

「俺もかな、太守である白蓮ならわかるけど」

 

 私たち全員がいやいやにそのことを言うと子龍さんは仕方がないことなのですよと苦笑いしながらも私たちを説得し始めた。

 

「確かに黒蓮殿はあまり内政ではご活躍しておられない。むしろ姉の白蓮殿に頼りっぱなしですな」

 

「だったら……」

 

「しかし白蓮殿もまた黒蓮殿に頼りっきりでもあるのです」

 

「どういうことなんだ?」

 

 ご主人様の疑問に子龍殿は答えた。その疑問には私たちも気になっていることだったので皆で黙ってそのことを聞く。というか納得がいく理由が今は切実に欲しいだけの気もするけど。

 

「つまりは白蓮殿が内政を担当し、黒蓮殿が軍や治安などを担当しておられるということです。そのため人材不足の公孫家では必然的に二人とも扱う範囲が広くなり、背負う責任も重くなります。そしてそれを実行するためには普通よりも多くの知識と行動力が必要になり、啄郡を見る限りでは十分だと言えるでしょう」

 

「うん、確かに」

 

 私がそう頷くと皆も同じように頷いて納得したようだった。

 

やっぱり子龍さんは優しいなぁ~。無愛想な誰かさんと違って。

 

―――――――無愛想な誰かさんとその姉

 

「くしゅん!!」

 

「ん?風邪か?」

 

「いや、そんなはずはないんだが……」

 

「なら別にいいんだが、気をつけろよ?」

 

「ああ、わかっている。心配するな」

 

―――――――桃香side

 

「だったらここにいる間は様々なことをお二人から見て直接学ぶといいでしょう。白蓮殿はともかくああ見えて黒蓮殿は面倒見がよろしいですからな、ちゃんとお願いすれば教えてもらえるでしょう」

 

「「「「嘘でしょ(だ)(なのだ)!?」」」」

 

子龍さんが信じられないようなこと言ったので私たちは大声で彼女に向かって突っ込みを入れていた。

 

そんなことありえないもん!!

 

「本当ですぞ?だからこそ彼女は兵たちにも町の人たちにも白蓮殿同様に人気が高いのです」

 

 私たちがまだ信じられないようにしていたため、子龍殿はおもしろがっている。なんだか私たちが彼女に遊ばれているような気がするけど子龍さんならない……と思う。

 

「そう……なんだ」

 

「特に白蓮殿よりもあなた方はまず、黒蓮殿方を先に知ることから始めたらよいでしょう。彼女のような人がいることを知ることは後々絶対にためになるでしょうから」

 

「そんなにすごい人のなの?白蓮ちゃんの妹さんって」

 

「ええ、恐らく黒蓮殿ようなお方は今の漢朝では希少種と言っていいほど愚直でいて、そして真っ直ぐに筋が通っている方なのですから」

 

 私がそう聞くと子龍さんは妹さんの希少性を私たちに説明してくれる。どうやら妹さんはこの乱世においてかなり重要で珍しい人だと言うことだ。

 

「筋?」

 

「そうです。少なくとも私は彼女ほど筋の通っていて劉備殿たちのように一切ぶれることのない人は見たことありませんので」

 

 私がそう聞きなおすと彼女は自信を持って頷く。それほどまでに子龍さんは妹さんのことを評価しているということが彼女の態度や言葉から分かった。

 

「………うん、わかった。まずは妹さんのことを知ることから始める」

 

「そうですか、では私はこの後の準備があるのでもう失礼しますぞ」

 

 そして話が一段落したところで子龍さんはそろそろ出陣の時間だということで準備をするために天幕を出ていこうとする。

 

「うん、色々とありがとう子龍さん」

 

「いえいえ、それと私のことは星と呼んで下され」

 

「わかった、星ちゃん」

 

「フフフ、私はあなた方の『理想』とやらを応援してますぞ。もしかしたらその内お邪魔させていただくかもしれませんから」

 

 私が星ちゃんにお礼を言うと彼女は初めて私たちの『理想』を認めてくれた。そして応援してくれてさらにはお手伝いするかもしれないとまでも言ってくれたので私は思わず嬉し涙が出そうになった。今の私たちでもちゃんとわかってくれる人がいる、そう思っただけで心が軽くなる。

 

「えっ、ほんと!?」

 

「さあ?それでは」

 

 そう言って笑いながら星ちゃんは私達の天幕から足取り軽く出て行った。そして私たちの『理想』は本当に今この瞬間から始まったような気がした。

 

 

 

―――――――星side

 

「フフフ、やはりあの方々はおもしろい」

 

 私は天幕を出た後、堪えきれずに一人で笑っていた。周りの兵たちが私のことを見て何やら不思議そうに見ているがそんなことは今の私には眼にも入らない。

 

「白蓮殿たちには悪いと思いますがあの方々の礎になってもらいましょう。その方が面白いですからな」

 

 そして私は視線をずっと先に向ける。そこには黒い鎧を装備し、髪を結いあげた一人の女性が白い鎧をつけた髪をまとめた女性と話し込んでいる。

 

 

「それにしても貴女も随分と面白い人ですね」

 

 

私はその片方を熱い視線で見つめながら本当に心愉快になる。今にも踊りだしそうだ。

 

 

「―――――――黒蓮」

 

 

そして私がそう一人で小さく呟くと視線の先にいた女性が私の方に振り向いた。

 

 

ええ、本当に楽しみです

 

 

私はそのこと表に出さないまま彼女に向かって行った。

 




メンマさん……あなたって人は。

①黒蓮を劉備たちにけしかける
②劉備たちを撃墜させる
③そこにメンマさんが優しく慰める
④劉備たち立ち直る→メンマさん劉備たちの中では超いい人
⑤一方主人公を意図的に悪者にし、都合のいい教師としても活用する
⑥結果面倒くさいことは全て黒蓮達に丸投げかつ自分だけはいいとこどり

なにそれメンマさん怖い

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