真・恋姫で地味ヒロインの妹してます   作:千仭

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投稿お待たせしました。

いやーリアルがひと段落ついてやっと書き上げることができました。

一応自分なりに今回は精読したつもりですが誤字脱字があるかもしれないので

見つけたら教えてくれると非常に助かります。

それではお楽しみください。


賊殲滅戦(前)

――――――――――黒蓮 side

 

 私は今、自らの愛馬の上から整然と隊列を組んだ第二軍団を率いて賊と対陣している。中央本軍では姉さんが率いていてさらにその奥の第三軍団では星が率いている。そしてあの役立たずどもは私たちの後衛で義勇軍と供に予備兵として待機しているがおそらく彼女達の出番は今回はないだろう。

 そう考えていたら私はふと全身が震えていることに気が付いた。前世にも何度も感じた慣れ親しんだ感覚―――――レース直前の高揚感と緊張からくる武者震いだ。私はそれを理性の力によって抑え込もうとする。

 軍を率いる立場の者は短絡的ではいけない、勘だけで戦をしてはしてはいけない。理性に支えられ、事実と予想、確率の高い情報を全て利用して行うものだと少なからず私は思っている。

 しかしそう頭が思っていたとしても身体の疼きが止まらず、逆に抑えようとすればするほど疼きが高まってくる。戦斧を持つ手に自然と力が入り、否応なく氣が高まっていく。私の愛馬もそれを感じ取ったのか一度その場で大きく嘶いた。

 

「お前も胸の高まりが収まらんか」

 

私はそう言いながら愛馬の項を撫でるとそうだといわんばかりに首を高く待ちあげ、再度嘶いた。

 

「ふむ、なら今回はこの高まりに身を任すか?」

 

 なぜ私が珍しくもこんなにも高揚しているのか、それは簡単に説明できる。なぜならあの劉備とかいう馬鹿で馬鹿と言う馬鹿のおかげで何時もの政務からくるストレスだけじゃないストレスまで余計にあるからだ。人様のところで遠慮なく問題起こしやがってとかなりいらつているからだった。

 

「まあ、今回ぐらいはいいだろう。目の前には木偶の棒が無限に近い数がいるんだ」

 

 そう言って私は殲滅すべき獲物を高鳴る胸の鼓動をおさえながら睨みつける。それは獲物を狩らんとする飢えた獣のようであった。そしてその表情を浮かべていたのは私だけではなく、その後ろに率いている直属の重装甲騎兵である「黒馬義従」も同類であった。

 長年隊長である黒蓮といた彼らは自分たちの主がいついかなる時にどういう行動をとるのかがわかっており、彼女の氣が高まるにつれて隊の軍氣が一斉に高まっていく様子は周りから見ればひとつの獣を連想させたのであった。まさにそれは精鋭中の精鋭と言っては過言ではなく、幽州最強と言われるだけの貫禄と実力を持っている証拠でもあった。

 

 

 

 ここで黒蓮という人間を説明しよう。彼女は身内には度がすぎるほど優しいのは啄郡では有名である。そして逆に敵だと一度認識したらかなり厳しいというか容赦がないのも暗黙の了解として啄郡ではある意味有名である。啄郡に仇為す者はよっぽどの相手じゃない限りサーチ&デストロイを素で行うほどだ。それは啄郡の民にとってはよいことであり、犯罪者にとってははた迷惑である。そのため啄郡では犯罪が少なく、治安がいい原因でもあった。

 そして今回目の前にいる黄巾賊を敵と認識した彼女はもはや元農民だとしてもただの獲物や殲滅すべきものと認識しており、また彼女の理念である「他勢力の啄郡侵攻は許さず、啄群の平和の維持、啄郡に被害を与えない」この三つを守るためなら彼女はどんな手だって使う。暗殺や弾圧、殲滅に失脚などどんな黒いことにでも手を出すし、自らの手だっていくらでも血で染めてみせることにもためらわないほどだ。さらにそれに加えてストレスを発散できる場は戦場にしかなく、戦うことでしか発散できないというバトルジャンキーになっているため、戦場では本当に鬼人ではないのかと噂されている。

 

 それに対して姉の白蓮は妹のような過激ではなく、なるべく穏便に物事を解決しようと思っている。最終手段にはやはり武力による解決を行うが、そこまで行くのが非常に長い。あれこれ妥協案や救済措置なども考案したり、実際にやってみたりする。そして仕方がないときにしか武力は使わない、それが妹との明白な線引きであり、啄郡がうまくいっている理由でもあった。政務や外交関係は温厚的であるが、一度牙をむけば一切の容赦がないので周りからの評価は扱いにくく危険であるとされ、ちょっかいを出しにくい郡になった。

 

 かつて犯罪組織が郡をまたいで活動していたときがあった。それに支援していた豪族もいてそれに対して白昼堂々と軍を率いてその本拠地を容赦なく潰した。途中で何度もその豪族がやめろと言ってきて終いには軍を派遣されたがそれすらも容赦なく木端微塵にしたことは幽州全体では子供でも知っている。そしてそれに対して何か罰はないのかと言われるとちゃんと証拠や証言を提示し、正規の方法でその反論をつぶし、最後には啄郡からの圧力により解決する。それを何度も行ってきた彼女には姉の白蓮も多大な苦労をさせられている。

 

 

 

 そして姉さんが私たちの前に白馬に跨って出てきた。そこから私たち全体を一度だけ隅々まで見渡すと目を瞑って大きく息を吸った。姉さんは限界まで息を吸うと瞑っていた目を大きく開き、氣で強化された声が軍の隅々まで届いた。

 

 

公孫の勇猛な兵たちに告げる!!

 

 

我等が啄郡には今、賊が迫っている!!

 

 

我等が先祖が築きあげたもの奪おうと!!

 

 

我等の地の安寧を崩そうと!!

 

 

そして我等の血の繋がった愛する者達を殺そうと!!

 

 

私は断固それを認めない!!

 

 

我等が公孫の兵たちはどうだ!!

 

 

それを認める者は今ここから立ち去れ!!

 

 

 そう姉さんが言っても誰もがその場から立ち去ろうとはしなかった。それは義勇軍も同じであり、この場にいる誰もが姉さんの次の言葉を黙って待っている。それを見た姉さんは納得したように大きく頷いた。

 

 

お前たちの答えは今ここで見せてもらった!!

 

 

その答えを選んだ誇り高き公孫の兵たちよ!!

 

 

ならば戦え!!

 

 

我等の祖先が築き上げたものを守るために!!

 

 

我等が望む安寧を崩さぬために!!

 

 

そして何より我等が愛する者を失わないために!!

 

 

征くぞ!!

 

 

我等が誇り高き公孫の兵たちよ!!

 

 

我等が平穏を我等の手で切り開くのだ!!

 

 

「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」

 

 

 そう言って最後に姉さんが剣を大きく掲げた。それとともに多くの兵たちの心に猛火が付いた。姉さんに合わせて軍の誰もが自らの武器を掲げ、大声で叫んでいた。その声はこの平原に轟き、黄巾賊はもはや私たちに飲み込まれている。

 

「第一陣!!前へ!!啄郡を脅かす賊徒どもを殲滅せよ!!」

 

 姉さんの指示が各軍隊に下り、私によって調練された各前衛が揃って動き始める。そして今この瞬間から約三〇〇〇〇人の殲滅という戦が始まった。

 

 

――――――――――桃香side(白蓮演説前)

 

 私は星ちゃんに言われた通りにできること、つまりは初めて経験する大軍の戦いを見て学ぶことにした。私たちは各軍の後ろに付き、今回は戦うことはないだろうとさっき白蓮ちゃんに言われた。そして今は後ろから公孫兵たちを馬の上から見ていると私たちに近い各軍の後衛はバラつき、練度が低いことが分かった。

 

「どうやら公孫の兵たちは練度が低いようですね」

 

「確かに」

 

 それを見た愛紗ちゃんがそう言うとご主人様と鈴々ちゃんが頷いた。私もそう思い、そして白蓮ちゃんたちの軍が練度が低い軍だと思った瞬間に少し拍子抜けだと感じた。

 そう感じて少し落ち込んでいるとそこに再び星ちゃんが白馬に乗ってこちらに来た。その手には長い直刀槍を持っていて準備万端のようだ。

 

「ふむ、どうですかな?このような戦場に立ってみて」

 

「うん、学べることは学ぼうと思うよ」

 

 私が少し落胆した声でそう言うとご主人様たちも同じようで私の言葉に頷いた。そして私の声を聞いた星ちゃんはというと一瞬だけ眼を細くした後、いつも通りの顔に戻った。

 

「では白蓮殿の軍を見てどう思ったのですか?」

 

「えっ?それはその………いい軍だと思う」

 

 私が星ちゃんの質問に少しだけ言いよどんでしまう。確かに軍としては素人の目から言っていい方だと思うが精兵ではないと思う。

 

「でも精兵ではないとも思う、ですかな?」

 

「うん」

 

「私もそう思います。各軍の後衛を見れば練度が低いことがわかります」

 

 私の頷きに続いて愛紗ちゃんが指を差しながらそう言うと星ちゃんは納得したように頷いた。

 

「それは当たり前でしょう。彼らは数合わせのために召集された兵たちですから。ほとんどがおそらく今回が初陣でしょう」

 

「そうなの?」

 

「ええ、その証拠に各軍団の前衛をよく御覧なさい。ここから見ても後衛と比べて落ち着いていることがわかるでしょう?」

 

 星ちゃんがそう言って指をさす前衛を見てみると確かに落ち着いている。誰もが目の前の賊を見ているのに微塵も恐れてはいなかった。それどころが張りつめた空気がピリピリとしており、戦意が異様に高いことがすぐでもわかった。それは各前衛が何度も戦闘を経験している証拠でもあり、それを生き残ったから彼らはここにいるのだ。

 

「そうだね、みんな落ち着いてる」

 

「む、言われてみればそうですね」

 

「みんな強そうなのだ!!」

 

「いえ、強そうではなく、強いのですよ彼らは」

 

 そう言うとさらに星ちゃんは白蓮ちゃんが率いている白馬に乗った部隊と妹さんのいる黒い部隊を指差した。白馬に乗っている白蓮ちゃんの部隊をよく見ると全員が短い弓と剣を持っており、軽装の鎧をつけていて軽装騎兵だとわかる。それに対して妹さんの黒い部隊は全身が固いと思われる鎧をつけており、手には長槍と盾を装備している。

 

「特に白蓮殿の白馬義従は弓攻撃を主としている幽州で……いえ、華北で一番機動力がある部隊です。それに対して黒蓮殿の率いる黒馬義従は全身に鎧をつけ、さらには馬の前面にも鎧をつけた重装騎兵です。こちらは曹孟徳や呂奉先を含めて中華最強の騎兵部隊と言っても過言ではありません」

 

 そして星ちゃんが言った妹さんが率いる部隊の評価を聞いた瞬間に私たち全員度肝を抜かれた。あの厳しそうな妹さんのことだから強いと思っていたがまさかそこまで強いと私達全員思ってはいなかったからだ。

 

 なぜそんなにも強いかというとこれには少し訳がある。この時代の軍の主体は歩兵であって騎兵はそこまで重要視されていない。馬の育成費や維持費が通常の歩兵よりも高いからだ。しかしそこに目をつけたのが公孫家である白蓮と黒蓮だった。あえて他の軍主力である歩兵に力を入れるのではなく、騎兵に力を入れることによって機動力と瞬間破壊力を高くし、中華内部での優位性を確立したのである。さらに遊牧民である南匈奴などと交流を持つことによって独自の兵法を生み出し、そして対騎兵の歩兵の兵法さえ生み出したのである。

 

「なっ!?」

 

「嘘でしょ!?」

 

「まさか!?」

 

「信じられません!?」

 

 私たちが信じられないと思っていたら星ちゃんが私たちにそれが本当だということをわからせるようにゆっくりとなだめるように言う。

 

「いえ、事実ですよ」

 

「その証拠は?」

 

「まずは彼らの乗馬している馬です。あれらは全て北の遊牧民から高い金を払って輸入したものです。中華の馬と比べるもなく良い馬たちでしょう」

 

 確かに白蓮ちゃん達の馬は私たちが見たことないようないい馬たちであった。それは幽州のみではなく、華北でも有名である。あそこはいい馬をたくさん持っていると、そのため確かよそのところから馬の交易が盛んだと私塾で習ったし、白蓮ちゃんもそう言っていた。

 実際にも南匈奴との交流は盛んにおこなわれていて特に馬関係においてはかなりの金額が動いている。

 

「次に彼らの装備している鎧ですが、あれは幽州で独自に開発された従来よりも軽くて耐久力のある鎧です。それを馬の前面にまで装備しているのです。馬も兵も通常の騎兵よりも防御が倍以上にあります」

 

 それは本当なのかはわからないが星ちゃんが言うのだから本当だろう。そしてあの妹さんのことだからそんな細かいところまで気を使っていそうなのが余計にそのことを現実味を帯びさせていた。

 これは現代の知識を少し持った黒蓮主導で行われているもので専属の鍛冶師を雇いながら日々進化や実験が進んでいる。

 

「そして最後に兵たちの調練度と絆です。彼らは皆、黒蓮殿が初めて戦場に立った時から彼女に付き従っている部隊で、その戦闘経験と絆の強さは華北一を誇ります。それに加え黒蓮殿は厳しく彼らを調練し、優遇することによって彼らの誇りと自信を育て、それによって黒馬義従は高潔な武人が数多くいる精鋭中の精鋭となったのです。そして彼らはいつ何時も戦闘体勢であり、その彼らが一つの一団となって槍の如く敵陣に突撃する破壊力は想像を絶するものです」

 

 あまりにもその力の入れぐあいに私たちはただただ驚くばかりであった。そこまで精鋭を育てるのに一体どれだけのお金と時間、そして戦闘を繰り返してきたのだろうか。それを私たちは想像できなかった。常に戦場にいて命をさらし続けている彼らに私は畏敬すら思い始め、それを供に歩み進んできた妹さんがどれだけすごいのかを思い知らされたようだった。

 実際に彼らは黒蓮が初陣したとき、今から5年ほど前から常に同じ部隊かつ黒蓮と同じ戦闘を経験をしている。そして黒蓮はというと戦闘に関して必ずと言っていいほど一番早く駆けつけるため、彼女の部隊は常時戦闘体勢なのだ。それを知っている黒蓮は部隊の者達を他の兵よりもずっと優遇もするが厳しい規律も守らせる。そうさせることによって彼らは自らが最強であり、規律をも破らない誇り高い部隊だと自覚し、幽州での黒馬義従の地位は兵の中の最強と規律の象徴にまでなっている。

 

「恐らく今回もその強さの一端を見れるはずです。よくよくお見逃しのない様に」

 

 そう言って星ちゃんは自分が担当する第三軍団に戻っていった。私たちはあらためて妹さんの方に注意を向けながら戦場を見渡す。そうしたところでちょうど白蓮ちゃんが前に出てきたのだった。

 

 

――――――――――黒蓮 side

 

 姉さんの指示が出されたことによって軍団が生き物のように動き出した。黄巾賊はそれに対して弓を射はじめるが矢避けの板を上に掲げた公孫兵たちにあまり効果はないようだった。そしてこちらも同じく弓を射始め、矢避けをしていない相手の数を確実に減らしていく。

 まずは中央本軍が弓の雨を掻い潜った黄巾賊と大盾と槍を持った第一陣と衝突する。そして手に持っていた大盾を構えて相手の連携がないばらばらの突撃の勢いを受け止めた。中央の公孫兵たちは受け止めた後すぐさま容赦なく高度に洗練された動きで中央の賊たちを打ち取っていく。そうして中央の前線には一気に夥しい数の黄巾賊の血と死体が量産されていった。

 

 そしてこちらにも同じく弓の洗礼を掻い潜った敵が突撃してくる。敵はそのままの勢いでこちらもばらばらに突撃してくる。

 

「第一陣!!前へ!!」

 

 私がそう指示を出すと前衛の兵たちは慌てることなくいつもの調練の時のように綺麗な陣形を組み、盾を持ち、槍を構えた。後ろから見てもその陣形に乱れはなく、綺麗に歩兵の槍が横一線に並んでいる。その陣形のまま第一陣は徐々に前進していく。

 

「来るぞ!!まずは敵の勢いを殺し、そして押し返せ!!」

 

 こちらもすぐさま敵と衝突した。そして十分に調練された精兵たちがばらばらの敵を容赦なく殺し、敵の勢いを削いでいく。自軍の怒声と相手の苦痛に満ちた悲鳴が全前線で鳴り響き、数で圧倒されていた劣勢を早くも崩し初めて押し返していく。

 

「フッ、さすがは私が育てた精兵たちだ」

 

 私はそれを見て満足したように頷き、小さく一人で笑った。そうしたところで敵がほんの近くまで迫っている。私はそれを一瞥だけすると内氣功で高められた腕を無造作に横にふり、数人まとめて薙ぎ払った。装備をまともにつけていない敵などそれだけで胴体が分断され、赤い鮮血の雨を降らす。

 

ふん、そろそろ始めようか!

 

そして私は大きく息を吸うと目の前の敵に向かって堂々と名乗りを上げた。

 

「我が名は公孫仲珪!この第二軍団の総大将なり!我が首がほしければ誰でも良い!!かかってこい!」

 

 そう敵の目の前で名乗ると私に向かって大量の敵が雪崩のように襲い掛かってくる。まるで私を押しつぶすかの如く私のところに敵が集まってきた。

 私はそれを馬上から正々堂々真正面から迎え撃ち、私の戦斧が敵をまとめて両断して血肉ごと後方へと吹き飛ばしていく。

 そしてそれにひるまずに続々と敵が襲い掛かってこようとする。それを見て私の脳は徐々にアドレナリンが多く分泌され、内氣功が自然と高まっていき、気分が高揚していった。

 

 

「さあ、まだまだ始まったばかりだ!!」

 

 

 そう言いながら私は敵の真ん中まで口元を歪ませながら突き進む。それに続いて公孫兵たちも私に続いて進んで行った。戦が始まってからまだ序盤だが公孫軍はすでに敵を押し返し始めていた。

 

 

――――――――――桃香side

 

 白蓮ちゃんの指示によって各軍が揃って動きだし、敵と衝突した。その様子を後ろから見ていると黄巾賊のやられ具合が半端ないことがわかる。統率された軍隊と有象無象の賊じゃこんなにも違うのかと初めて教え込まされた瞬間だった。

 

「我が名は公孫仲珪!この第二軍団の総大将なり!我が首がほしければ誰でも良い!!かかってこい!」

 

 そうしたら右翼の方から妹さんの声が聞こえ、みんなでそっちを見ると彼女がただ一人敵の真っただ中に躍り出る光景が見えた。そして彼女は縦横無尽に戦斧を使って敵を容赦なく殺し、それに続いて彼女の軍も徐々に前進し始めていた。軍の将が前線に出ているのにもかかわらず、彼女の軍は乱れずに統制を保っている。また前に出た彼女も所々で周りを見渡しながら味方を鼓舞し、指示を出している。その様子には素人臭さはなく、まぎれもなく私たちが初めて見る歴戦の将の姿であった。

 

「すごいね、白蓮ちゃんの妹さんは」

 

「ええ、そうですね。あれだけの乱戦なのに的確に指示を出すとは」

 

「あんなの初めて見たのだ」

 

 そう私たちが感心していると一人ご主人様だけが青いを通り越して白い顔をしている。どうやら気分が悪くなっているらしい。

 

「大丈夫?ご主人様」

 

「……ああ、何とかね」

 

 私が心配になってご主人様に尋ねるとご主人様は私たちに心配をかけないように無理やり笑って見せた。しかしその姿は私たちから見るとかなり無理をしている。

 

「本当に?」

 

「……少しだけきついかな。ごめんちょっと休んでくるよ」

 

「あっ……」

 

 そう私たちに告げてご主人様は天幕の方へ向かっていった。それを心配そうにみんなで見送っていると前線の方で何か動きがあったのか私たちのところに伝令がやってきた。どうやらすでに戦況は決まったようで包囲をするために軍を両翼に大きく展開させるため、その後衛を務めて欲しいということだった。愛紗ちゃんがそれを了承すると兵に指示を出していき、ゆっくりと私たちは前進していった。 

 

 

――――――――――黒蓮 side

 

 戦闘が始まってからどれくらいたったのだろうか。私はそんなことを思いながら馬上から戦況を確認する。もともと鶴翼の陣で敵を迎え撃ったため、中央の敵は戦闘が始まってから徐々に厚みを増しているが、逆に両翼は押し返されて薄くなっている。

 

そろそろか。

 

 そう思って私は一度前線から引き揚げて第二軍団本陣へと戻る。そして第一陣が少しだけ疲れを見せ始めていたので第二陣と入れ替えさせた。そのまま交代した第一陣は第二陣の後ろに付き、第三陣を相手の脇へと移動させるために準備させる。

 そうしたところで姉さんから伝令が入り、どうやら仕上げに入るとのことだった。それが左翼の星にも伝わったのか第三軍団の後衛も動き出しているのが強化した視力で見えた。

 そして姉さんからの合図が出ると同時に両翼の第三陣が相手の脇へと移動し、徐々に敵を中央へと押し込んでいく。相手は真正面だけはなく横からのとっつきにより、中央へと押し付けられていった。

 

 私はその最後の仕上げとして相手の後ろから騎兵により攻撃をするため本隊の指揮を副官に任せると黒馬義従を率いて敵の背後まで移動し始める。そうすると逆側から第三軍団の騎兵が移動してきており、その騎兵を率いているのはなんと第三軍団の総大将である星だった。そしてそのことに驚いていると星と目が合い、彼女は私に向かってニヤリと笑った。

 

なんでお前までここにきてんだよ、コラ!

 

 そう思いつつ隊を進めていると後ろから姉さんの白馬義従が合流する。隊を率いているのは姓が厳、名が綱、字は公維という姉さんの副将だった。私達と違って髪は伸ばしておらず、短髪で紺色の髪をしている目つきがキツイ女性だ。ちなみに真名は絃央(いとお)である。

 

「黒蓮様、私たちはいかようにしますか?」

 

「絃央か、何時も通りだ。頼むぞ?」

 

「承知しました」

 

 そう言って彼女はすぐさま馬を走らせると陣形を作り始める。私達もこの後の最後の仕上げのために突撃陣形を組み始める。星はというと私たちの両翼に部隊を配置させ、どうやら私たちと一緒突撃をするらしい陣形をとっていた。

 

「さて、そろそろ始まるが準備がいいか?お前ら」

 

 私が後ろを振り向かずに部隊の奴らに聞くと彼らはそんなものはとうの昔にできているように自ら持っている長槍を天に向かって突き上げ、私の名が入った旗を高く掲げた。

 

「もちろんです、隊長。そうだろ!!野郎ども!!」

 

「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」

 

 そう言った私の第二副官(第一は本軍指揮中)に続いて身長が高く体格のいい猛者たちが次々に大声を上げる。その一五〇〇人の精鋭たちの声は大空に轟いた。それは次第に騎兵隊全体に広がり、いつの間にか総大将である姉さんの演説よりも大きくなっていたほどだ。

 

 

そんな大音量の中、戦場を見据えながら私は小さく呟いた。

 

 

「さあ、始めようか」

 

 

私が育てた隊の力を見せつけろ!

 

 

「一方的な蹂躙を」

 

 

阻むものを全て貫き!

 

 

「全隊!!」

 

 

敵の命を全て狩りつくせ!

 

 

「突撃!!」

 

 

この瞬間から黄巾賊にとって最悪の幽州最強騎兵部隊「黒馬義従」の蹂躙が始まった。

 




う~ん、戦況の書き方がいまいちよくわかりませんが

何か気が付いたことでも何でもいいので書いてくれるとうれしいです。

よろしくお願いします。

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