リゼロ短編集   作:コーンスナック菓子

9 / 9
※複数の話が詰め込まれています。

アヤマツルートの妄想話。
一話一話が短かったため、三話詰め込みました。
読みづらいこと必至。ごめんなさい。

《アヤマツのフェリス》→フェリスが洗脳される話。スバルは何度か死に戻ってます。
《壊された運命》→ラインハルトの話。フェルト可愛い。※円盤特典の微ネタバレあり
《月に溺れて》→アヤマツスバルと本編エミリアの話。サテラさんが嫉妬しません。


『アヤマツルート妄想詰め』

《アヤマツのフェリス》

 

 

 頭、痛い。

 私、どうして? 殿下……殿下。

 

「その殿下って、誰のことか教えてくれないか?」

 

 誰か教えて。私は、殿下は、誰と?

 痛い。頭が、体が。イヤだ。殿下、殿下。誰か教えて。

 

「青さんは殿下と仲が良かったんだね」

 

 やめてやめてやめて。

 グチャグチャ。グチャグチャ。頭グチャグチャ。

 死なせて。殺して。殿下のもとに逝かせて。ーーーー。ーーーーって誰? 誰がいたの? 誰か、誰か教えて……。

 

「へー……、それで?」

 

 怖い痛い体が、心が。嫌だ。壊れる。やめて。

 分からない分からない。

 殺して、殺して。殿下。ーーーー。

 

 頭、体、熱い。壊れる、壊れる、死。

 

「とりあえず必要な情報が集まったかな。ありがとう青さん。……苦しませてごめんな」

 

 殿下、殿下……ーーーー様……

 

 

 * * * * * * * *

 

 

 白い霧。私はみんなと白鯨に立ち向かった。

 

 でも、なんでそんなことをしたのか思い出せない。

 今まで、なにをして生きてきたのかも思い出せない。

 私は誰を守ろうとしていたの? 私は誰の屋敷に住んでいたの? なんで騎士になろうとしたの? どうやって殿下と出会ったの? 誰があの暗闇から私を救い出してくれたの?

 私は、なんで? 誰かが、いないといけないのに。なのに、誰が、誰がいたの?

 私の覚悟は、決意は、心は、過去は、未来は、幸せは、誰のーーーーーーーーーー

 

 

 そこで私の思考は停止した。

 

 

 ちくりという痛み。そして、何かが体の中に流れ込む。

 無理矢理、精神が侵されていく。

 

「あ……、あぁ……」

 

「落ち着いた?」

 

 目を開けると黒髪の少年がいた。

 

 知らない人。

 私は、ぼんやりとその少年を眺める。

 

「死なれたら困るからね」

 

 少年は言った。

 でも意味がわからない。理解できない。思考が働かない。

 わかるのは、私の心と記憶が穴だらけなこと。

 

「誰か……誰か教えて。私は、何を? 殿下は、誰と一緒に……」

 

 私は霧がかった頭で、うわ言のように呟いた。

 

 記憶に手を伸ばしても空を掴む。

 まるで初めから何もなかったように、そこには何もない。

 

 でも、確かにそこには何かがなくてはいけないのだ。

 私の全て。私の人生。大切で大切でーーーーな、なにか。

 

「私は……私は……」

 

 今まで、なんのために頑張ってきたのだろう?

 

 矛盾、不理解、虚無感。

 土台が歪み、柱を失った建物は崩壊するだけ。

 そんな建物のように、私も壊れていく。

 

 

 そんな壊れていく私の頭を、目の前にいた少年が優しく撫でてきた。

 

「フェリス、俺は君を助けたいんだ」

 

 優しい手。心が溶けてしまいそう。

 

「私を……? でも私は……」

 

 生きている意味が見つからなかった。死にたかった。

 だけど、少年は言葉を紡ぐ。

 

「今の青さんを見たら、フーリエさんも悲しむはずだ」

 

「ーーーー」

 

 言葉に詰まった。

 

『ーー必ず戻れ。余は、このようなことで友を失いたくない』

 

 殿下がそう言ったのは私があの家に帰るとき。

 でも、どうして私はあの家に行ったんだろう。絶対、帰るはずないのに。

 すべての記憶、殿下との思い出までぼやけてしまって、よく思い出せない。

 

「君は、殿下を……?」

 

「ああ、よく知ってる」

 

 殿下を知ってる。それはフェリスにとって希望に見えた。

 彼なら、フェリスの穴を埋める何かを知っているかも知れないと思った。

 

「君は誰? 殿下とはどんな……」

 

「俺の名前はナツキ・スバル。フーリエの意思を継ぐ者だ」

 

 殿下の、意思。

 ……そうだ。殿下には夢があった。

 殿下はーーーーがーーで。 ーーーー、いつまでも一緒に。だから私は騎士にーーーー……

 分からない。思い、出せない。

 どうして? 殿下は何を望んでいたの? 誰か、誰か教えて。教えて……

 

「生きようぜフェリス。そして殿下の願いを叶えよう」

 

 少年はそう言って私に手を伸ばす。

 暗闇に伸ばされた手。それはまるでーーーーのようで。

 

「誰なの? 殿下……殿下ぁ…………」

 

「ゆっくりでいい。ゆっくり癒していこう。俺が側にいてやるから」

 

 あたたかい手。

 それはーーーーとーー、暗闇からーーーーーーくれた。ーーーー。ーーーー。ーーーー様。

 

「スバル……スバル様……」

 

 空いた空白は塞がらない。

 私は、縋るようにその手を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

《壊された運命》

 

 

「あなたは龍に……いえ、運命に選ばれたのです」

 

 フェルトとの出会い。

 それはラインハルトにとって、まさに運命だった。

 

 笑う者もいるが、運命はラインハルトにとって確かに存在する。

 

 運命に逆らえるの人間は極わずかだと、ラインハルトは考えている。

 それは資格を持ち、覚悟と勇気を持つ人間だけだと。

 

 そして、ラインハルトは運命に抗える人間ではない。フェルトもそうだ。

 皆、運命のままに生きていく。それも、また運命だと。

 

「運命! くだらねーな、オイ! そんな言い訳、クソ喰らえだ!」

 

 だが、それでもフェルトは運命に抗い続けた。

 

 

 それから時間が経ち、王になる決意を固めたフェルトは、以前のようにラインハルトを突き放さなくなった。

 彼女に認められたこと。そのことをラインハルトは嬉しく思った。

 

「茨の道。それを切り開くのが、僕の務めですよ」

 

「で、その道を踏み荒らすのがアタシの役目か。はっ、楽しみだな」

 

 荒々しくも強くて優しい輝きを放つ、王の器を持つ少女。

 

「はい。楽しみですね」

 

 彼女がつくる国を見てみたい。

 未来を望むその言葉は、確かに本心からだった。

 

 

 その時、自分がいつもとは違う、心からの笑顔で笑っていたことを覚えている。

 

 

 

 

 ーーだから、だろうか。

 彼に、行き場のない怒りを感じるのは。

 

「……勝ち逃げか」

 

 龍をあざむき、家族やフェルトを殺し、ラインハルトを英雄から引きずり下ろすためだけにルグニカ全土に火を放った狂人。

 ラインハルトは経験にない激情をどうしていいのか分からず、ただ剣を強く握りしめる。

 

 

『俺は、お前になりたかったよ、ラインハルト』

 

 最後に彼はそう言った。

 だが、彼の気持ちなどとても理解できない。

 いったい、この不自由な身の何が羨ましいというのか。

 

「きっと、僕は君を恨み続ける」

 

 無いにも等しい細い糸を手繰り寄せ、たった一つの『今』を切り開いた大罪人。

 

 燃える国。死んだ人々。失った絆。消えない怒り。

 すべて、彼が運命に逆らった結果だ。

 

 力はないが運命に逆らう資格を持ち、望む未来を勝ち取った少年。

 自分とは真逆の存在。

 

「ーー羨ましいよ」

 

 その幸せそうな死に顔に、小さな本音を投げ捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《月に溺れて》

 

 

 ーー満足した。

 

 愛に包まれた深い暗闇に沈んでいく中で、君の夢を見た。

 俺の隣で、君が笑っている夢だった。

 

 俺は君のために生きて、君のために死ねた。

 君に名前を呼んでもらえて、君に泣いてもらえた。

 それだけで俺は幸せだった。

 でも、

 

「やっぱり君は笑ってるのが似合うね、エミリアたん」

 

「……? 急にどうしたの、スバル」

 

 側にいて、言葉を交わして、笑いあって……こんなふうに君と生きる道があったのだろうか?

 だとしたら、それはとても幸福な未来だろう。

 君にこの命を使えたことはまったく後悔してないけれど、そんな道も見てみたかったと、少し思う。

 

 

「エミリアたん。笑って」

 

 俺がうながすと、エミリアは不思議そうに目を瞬かせた。

 俺が知っているエミリアよりも、少し仕草が柔らかい。

 こんな君もいたんだね。

 

「ほら、笑って」

 

 俺は自分の口角を指で引っ張り、「にーっ」と言いながら笑って見せる。

 すると、エミリアもクスクスと笑いながら「にーっ」と俺の真似をした。

 

「これでいい?」

 

「おう、完璧プリティーもうばっちりさ!」

 

「変なスバル」

 

 どんな君でも、君は変わらず優しい。

 俺は幸せだな。最期の最後に、こんな夢が見られるなんて。

 

 

 エミリアと笑い合いながら、しだいに意識が遠くなる。

 きっと、夢も見ない深い眠りにつくのだろう。

 

 誰のおかげか知らないが、いい夢だった。

 

 

「ありがとう、エミリア」

 

 深い眠りに落ちていきながら、俺は最後に、彼女の幸せを願った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。