ゲームの力でこの世界を生きていく   作:疾風の警備員

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せ「いや~、今期は特撮アニメが面白いですね歩夢さん!!」

歩「……………………………………」

せ「私としては、GRIDMAN UNIVERSEのSSSS.DYNAZENONがオススメです!! 心に傷を持つ主人公達の人間ドラマに怪獣とロボットの戦い、ロボット形態のダイナゼノンからドラゴン形態のダイナレックスへの合体変形など見所が満載で、2話から始まったOP映像もオーイシさんの楽曲とマッチしてて最高ですよ!!」

歩「……………………………………」

せ「やっぱりあの作品は、また私達を退屈から救いに来てくれましたね!!」

歩「……………………………………」

せ「ちょっと歩夢さん、聞いてます?」

し「せつ菜先輩…歩夢先輩は今、暴走状態なんですから分かりませんよ…」


全てを救うGod Beast

『メタルクラスタホッパー!! It's High Quality.』

 

果林によってゼロワン・メタルクラスタホッパーとなった歩夢。

 

変身時は苦しみの叫びを上げていた彼女だったが、それが完了すると、まるで全ての感情を失くしてしまったかの様に不気味に立ち尽くしていた。

 

「あ、歩夢先輩…?」

 

「今は声を掛けない方がいいよ」

 

そんなゼロワンを心配して近づこうとするバルキリーに、迅が警告する。

 

「どういう意味ですか!?」

 

その警告の真意を知るためにせつ菜が問い、エマが答える。

 

「今の歩夢ちゃんは、一種の暴走状態みたいなものだからだよ。たぶん、敵も味方も区別できてなくて……全部が敵になってるんじゃないかな?」

 

「そんな危険な物を、歩夢さんに使ったのですかッ!?」

 

「これは私達にとって……そして、そっちにも必要な事だからなの」

 

「私達にとっても…?」

 

「はーい、話はそこまでよ」

 

その重要な部分を聞こうとするせつ菜だが、果林がそれを遮った。

 

「そろそろ時間よ。戻りましょ」

 

「「はーい♪」」

 

「あいよ」

 

「了解」

 

そして転移の魔法陣を描き、その場から離脱しようとするのを見てせつ菜が叫ぶ。

 

「待ってください!! まだ話は…」

 

「近いうちにディオドラ・アスタロトが、ヴァーリ・ルシファーに対してレーティングゲームを提案してくるわ。それを受けなさい。そこで……全ての決着をつけましょう?」

 

だが果林はそれに答えず、最後にそう伝えてから転移した。

 

「逃げられましたか…!!」

 

「とりあえず、今は歩夢先輩を何とかしましょう」

 

「……そうですね」

 

「何とかって…動かないうちに、ベルト取っちゃえば簡単じゃん♪」

 

果林達を逃した事を悔しがるせつ菜だが、しずくに言われ頭を切り替えたところで、かすみがいつの間にかゼロワンの傍に移動していた。

 

「ッ!?かすみさん、迂闊です!!」

 

「だ~いじょうだって(グリンッ)……へ?」

 

それをしずくに注意されるも、楽観していたかすみは聞き流しながら更に一歩踏み出した瞬間だった……今まで動かなかったゼロワンが頭を動かし、かすみを視界に捉えると次の瞬間……

 

―ブウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!!―

 

装甲の一部を無数の金属製のバッタにして、かすみへ襲い掛からせたのだ。

 

「うひゃああああああああああッ!?」

 

「かすみさん!!」

『SHOT RIZE!! ラッシングチーター!!』

 

その攻撃に驚いて動きを止めたかすみを助ける為、しずくはバルキリーになると全速力でかすみの元に向かい、左腕に抱き抱えて離脱するも…

 

「くぅ…!!」

 

右腕がバッタの群れの中に入ってしまい、素早く抜くも激痛が走り顔をしかめる。そのバッタ達は曜達にも向かっていくが栞子と彼方が縮地で近づいて抱き抱え、素早く移動した事で事なきを得た。

 

「ありがとう…!!」

 

「いえ、ここは危険です。早く避難を……」

 

「しず子ッ!?」

 

「だ、大丈夫です…!!」

 

そんな中で心配するかすみにバルキリーがそう答えるも、右腕の装甲は虫食いのように所々が抉られ、中の機械が露出して、一部からは血が流れていた。

 

「全然大丈夫じゃないじゃん!!」

 

「でも、歩夢先輩を助けなきゃ…!!」

 

「ここは私達に任せて、しずくさんはかすみさんと一緒に避難している人達の護衛をお願いします」

 

「ッ!!……分かりました」

 

そんな状態でもゼロワンを助けようとするバルキリーだが、栞子が傍に寄ってそう諭す。確かに、今のゼロワンの能力を広範囲に行われた場合、避難している生徒達を守れない可能性が出てきてしまう。だからこそ、怪我をしているバルキリーを後方に下げつつ、守りを確保するために提案したのをバルキリーは理解し、悔しくもあるが仕方ない事と思い、それを承諾した。

 

「行こう、しず子」

 

「はい……皆さん、ご無事で…」

 

最後にそうエールを送って、バルキリー達は下がって行く。

 

「でも厄介だね~? さっきの攻撃は~…」

 

「ええ、おそらく【こう害】がモチーフかと…」

 

「こうがい?…あの環境問題の事ですか?」

 

その意味を少し勘違いしているせつ菜に、栞子が正しい内容を説明する。

 

「いえ、【(おおやけ)】ではなく【(いなご)】という漢字の蝗害です。これは各国の神話にも綴られている程の災害でして、空を覆い尽くすほどに大量発生した飛蝗の群れによって水稲や畑作等の草木類、文化レベルによっては木造建築の家すら食い尽くされてしまい、酷い時は国レベルの飢餓に陥れてしまうものです」

 

「それは……物理的にも精神的にも、よろしくない災害ですね…」

 

その光景を想像したのか、せつ菜は顔を青くしてブルッと体を震わせた。確かに、空を覆い尽くさん程の大量の虫が、目の前に迫ってくるのは気持ち悪いものがある。

 

「でもこれだと、下手に近寄れませんね…」

 

「止めるには、ベルトを剥がすのが一番なんですが…」

 

その蝗害攻撃をどう対処しようか、栞子とせつ菜が頭を悩ませていると、彼方が2人の前に進み出た。

 

「彼方先輩? 何を…」

 

「それなら、あの攻撃は彼方さんが囮になって引き受けるよ~」

 

「なッ!? 1人でなんて無茶です!!」

 

その提案に2人は驚く。あの攻撃は1人で対処するには規模が大きすぎる上、一匹でも当たってダメージを負えば一気に食い荒らされてしまう恐れがあるからだ。なので栞子が止めようとするが…

 

「大丈夫だよ、彼方さんには秘策があるからね~。2人は左右からの挟撃をお願いね~」

 

そう言って、そのまま進んでいってしまった。

 

「あ、ちょッ!?…仕方ありません……優木先輩は右からでお願いします。私は左から…」

 

「了解です!!」

 

なので栞子は頭を切り替え、せつ菜と共に挟撃の準備に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼方side

 

栞子ちゃんの忠告を無視して、私は歩夢ちゃんの元へと歩を進めながら、タッチペンのような棒が一本出てる大きな紺色のライドブック【キングライオン大戦記】を手にする。

 

「待っててね歩夢ちゃん……今、助けるから」

 

そして腰にソードライバーを装着して、ライドブックのページを開いた。

 

『キングライオン大戦記!!』『自然を超越した蒼き鬣が、装甲を纏い王座に轟く…』

 

それを閉じてドライバーの中央スロットに装填し、流水を引き抜く。

 

『流水抜刀!!』

 

「変身」

 

するとライドブックが左右に開き、下から水のオーラが吹き出て体を包み、周りを青い獅子が駆け回る。

 

『Rhyming!! Riding!! Rider!! 獣・王・来・迎!! Rising!! Lifull!!』

 

そして青い獅子と1つになりながらオーラが弾けると、今までのとブレイズと違い、走査線の走るバイザーに近未来チックな紺色の鎧に両肩には銀色の砲台を備えたブレイズに変わる。

 

『キ・ン・グ・ライオォーン!! 大・戦・記ィ~!! それすなわち、砲撃の戦士!!』

 

これが()()、私がなれる一番強い形態【キングライオン大戦記】だ。そして流水を構えると、私を標的と決めたのか歩夢ちゃんが金属バッタ達を飛ばしてくる。

 

うへぇ~……やっぱり気持ち悪い…でも、今はそんな事言ってられないよね~…!!

 

「全集中、水の呼吸…」

 

覚悟を決めた私は剣先を下げて、技の発動体勢に入る。すると私の周囲に荒れ狂う水面が幻視される。

 

「拾壱の型」

 

そして迫りくる金属バッタ達を視界に入れながら、意識を研ぎ澄まし…

 

『凪』

 

それらが間合いに入った瞬間、私を中心に波紋が広がり荒れ狂ってた水面が、波1つ起きない静かな凪いだ状態になる。そして金属バッタ達が間合いに入った瞬間、流水を神速の速さで振るって、それらを全て捌いていく。

 

(でも……数が多い!!)

 

だけどバッタ達はとんでもなく硬くて斬れないし、物量で押し潰そうとしてるのか、金属バッタの数がどんどん増えていく。

 

このままじゃ、後6秒が限界かな~…?

 

それでも囮の役目を果たすために、全神経を尖らせて捌き続ける。そしてそろそろ限界という時…

 

「でやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

『ASSAULT CHARGE!!』『MAGNETIC STORM BLAST FIVER!!』

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

『必殺読破!!』『烈火抜刀!!』『ドラゴン・イーグル・西遊ジャー!! 三冊斬り!! ファ・ファ・ファ・ファイヤー!!』

 

せつ菜ちゃんと栞子ちゃんが、最高のタイミングで挟撃する。

 

これなら、さすがに避けられないよね~?

 

これでダメージを与えて、その隙にベルトを取ればいいと楽観的に考えていた私だけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ガギィィィィィィィィィィィン!!―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「へ…?」」」

 

2人の必殺技は、歩夢ちゃんの周囲に出来た歪な金属の壁によって防がれてしまった。

 

まさか……攻撃だけじゃなくて、防御にも使えたの~!? そんなの聞いてないよ~!!

 

その能力に驚いていると、盾が形を変えて矢じりのようになると、それを伸ばして2人に何度も突き立てた。

 

「「キャアアアアアアアッ!?」」

 

「栞子ちゃん!! せつ菜ちゃん!!」

 

至近距離だった2人は避けきれず、直撃して吹き飛ばされてしまった。おまけに栞子ちゃんにいたっては変身まで解除されてしまう。そして歩夢ちゃんは狙いを栞子ちゃんに絞ったのか、彼女へと向かって歩き始めた。

 

いけない…!?このままじゃ栞子ちゃんが!!

 

そう思った私はその場から駆け出し、2人の間に入って歩夢ちゃんに剣を向ける。

 

(一緒にお昼ご飯を食べたばかりだから心苦しいけど……今だけはごめんね?)

 

「はあッ!!」

 

心の中で歩夢ちゃんに謝りながら、私は彼女へと剣を振るう。もちろん、彼女が張る盾によってそれは防がれちゃうけど、そんなのは予想済み~。

 

「全集中、水の呼吸…参の型」

 

剣の角度を変えて盾表面を滑らせながら独特の歩方で、彼女の周りをぐるぐる回りながら、緩急をつけつつ次の攻撃へと移行する。たとえ防がれても、同じように何度でも攻め立てる。

 

「流流舞い」

 

これで歩夢ちゃんの動きを何とか封じるけど、やっぱり決め手にはならないかな~?

 

「そのまま止めておいてください!!」

 

そう思っていた時だった。せつ菜ちゃんが大きな銃を構えていたのを見たのは…

 

あれって……確かさっきまで、歩夢ちゃんが使っていた武器だっけ~?

 

『Progrise key confirmed.Ready for buster.』

 

その武器に…ゴリラかな?…そんな絵が描かれた灰色の箱みたいなのを入れ、銃口にエネルギーを溜めていく。

 

後輩の子がここまで頑張ってるんだし、私も先輩として頑張らなきゃだね~…!!

 

発射までの時間を稼ぐ為、先程より攻めを増やしてその場に歩夢ちゃんを釘付けにし…

 

「離れてください!!」

 

「ッ!!」

 

その言葉で私は一気に飛び退く。そして…

 

『バスターダスト!!』

 

―ドゴォォォォォォォォォォン!!―

 

その音声と共に黒い手甲型の弾丸が放たれ、歩夢ちゃんに直撃した。

 

「ありがとうございます。時間を稼いでもらって…」

 

「いえいえ~」

 

この威力なら、さすがに変身解除されたかな~?

 

そう思って私達が少し気を弛めた時だった。

 

『メタルライジングインパクト!!』

 

「「ッ!?」」

 

爆煙の中から音声と同時に、()()()()()()()()()()が飛び出して来て、私達にライダーキックを叩き込んだのは…

 

メ タ ル

イ ン パ ク ト

 

「「キャアアアアアアアッ!?」」

 

直撃を受けた私達は地を転がり変身が解除された。

 

「う……ぐぅ…!!」

 

激痛に魘されながらも、顔を上げた私の視界に映ったのは……分身らしきもう1人のゼロワンがバッタの群れになって鎧を形成し、落ちていたアタッシュケース型の剣を持って栞子ちゃんの元へと歩く歩夢ちゃんだった。

 

いけない!! このままじゃ、取り返しのつかない事になっちゃう…!!

 

「ダ…………メ…それ……い…じょう……は……!!」

 

彼女を止めようと手を伸ばそうとしたけど、痛みに耐えきれなかった私はそこで意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼方とせつ菜を倒したゼロワンが次に目をつけたのは、震える足で何とか起き上がろうとしている栞子だった。

 

落ちていたアタッシュカリバーを拾い、ゆっくりと歩を進めていく。

 

「上原先輩……目を…覚ましてください…!!」

 

息も絶え絶えにそう口にする栞子だったが、ゼロワンには届かない。

 

「やっぱり……こうするしか…」

 

説得が効かない事に悲しみつつ、ソードライバーを装着する栞子。そしてブレイブドラゴンを開こうとした時…

 

―ビュン!!―

 

「え…?」

 

ゼロワンがそれを阻止するために、アタッシュカリバーを栞子目掛けて投げつけたのだ。

 

(迎撃を…ううん無理……なら回避?…ダメ、間に合わない…)

 

しかし、対処しようにも自身の体の状態では全てが無理と、体が本能的に理解してしまった。

 

「しお子ッ!!」

 

「栞子さん!!」

 

彼女の耳に助けに来ようとするかすみ達の声が聞こえるが、距離が離れすぎてるので到底間に合わない。

 

(ここで終わり…?)

 

栞子がそう思ってしまったその時……

 

―ブォン、ドオォォォォォン!!―

 

「きゃッ!?」

 

彼女の前に何かが現れ、衝撃波を放ってアタッシュカリバーを弾き飛ばしたのだ。

 

「え?何が……ッ!?」

 

状況を把握する為に、衝撃波を起こしたものへと目を向ける。それは一冊のワンダーライドブックだった。黒を基調に表紙にはブラックホールのようなものを持った骨の龍が描かれ、左上部分に骨の手の装飾があった。

 

「あれは……まさか!?」

 

それが何か悟った栞子だったが、そのライドブックが彼女の眼前に来て紫のオーラを纏うと、栞子の瞳からハイライトが消え、本のオーラと同じ紫に輝いた。

 

「………………………………」

 

そしてそれを無言で掴み取り、ページを開いた。

 

『プリミティブドラゴン!!』

 

すると、骨を鳴らす様な音のメロディが流れ、栞子は無言でプリミティブドラゴンの中にブレイブドラゴンをセットする。

 

『ブレイブドラゴン!!』『ゲット!!』

 

それをドライバーの右スロットにセットすると、今度はホラーチックな待機音が流れ始める。その中で栞子は肩や首の骨を鳴らすように動かしながら、烈火を逆手で掴み…

 

「アァ………ヘンシン」

 

勢いよく引き抜いた。それに合わせ、プリミティブドラゴンライドブックのパーツが動き、右側には薄い水色のセイバーが彫られており、開いた手のようなパーツがブレイブドラゴンライドブックをガッシリ掴んだ。

 

『烈火抜刀!!』

 

『バキッ!! ボキッ!! ボーン!! ガキッ!! ゴキッ!! ボーン!!』

 

そして栞子の背後に骨のドラゴンが現れ、抱き締めるように彼女を包み込んでしまう。それから解放されると、そこには両腕や両足に骨格の装甲を纏い、右肩には竜の頭の骨、右胸は竜の大きな手の骨の鎧を付け、左胸から左肩にかけてはブレイブドラゴンの表紙が描かれており、顔は水色の炎のに赤い線が入った異質なセイバー【仮面ライダーセイバー・プリミティブドラゴン】になっていた。

 

『プーリーミーティーブ!…………ドラゴォーンッ!!』

 

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

そして竜の咆哮を思わせる雄叫びを上げ、腰を屈めて逆手の烈火を構えるが、先程までの剣士としての構えではなく、野生の獣のようなものになっていた。

 

「し……しお子?」

 

「一体何が…」

 

先程の衝撃波で吹き飛ばされていたかすみとしずくも、そのセイバーに畏怖を覚える。

 

「ガアアアアアッ!!!!」

 

そこでセイバーがゼロワンへと向かって駆け出す。それにゼロワンは金属バッタの群れ【クラスターセル】を放つが、セイバーは跳躍で回避してゼロワンへと組み付き、烈火を何度も突き立てた。

 

「ガアッ!! ウウッ!! ウガアッ!!」

 

「……………………ッ!!」

 

幸い装甲を突破する事はなかったが、それが鬱陶しかったのかゼロワンはセイバーを振り払い腹に蹴りを入れる。

 

「グゥ…!!ウガアアアアアアアアアッ!!」

 

しかし、それは一歩後ずさるだけでセイバーの怒りを買い、再び猛攻が始まる。獣らしい荒々しい攻撃だが、剣術のセオリーから外れた予想外な動きに対応しきれないのか、ゼロワンは何度か攻撃を受ける。だけどゼロワンもやられるだけでなく、アタッシュカリバーを回収し、烈火と何度も斬り結ぶ。

 

「ガアアアアッ!!!!」

 

「……………ッ!!!!」

 

互いが暴走している……でも片方は機械的で的確に急所を狙い、片方は野生的な予想外の動きで互角の勝負を繰り広げた。

 

そんな中で栞子の意識は、見知らぬ森の中にあった。

 

「ここは? どうして私はこんな所に………確か、プリミティブドラゴンが目の前に来て…そうだ!! 上原先輩は!?」

 

いつの間にか学園ではない場所にいる事に戸惑いを見せるが、すぐに状況を思いだして周囲を見渡す。だが、そこには彼女以外誰もいなかった。

 

「一体此処は…『初めまして』ッ!?」

 

そこに自分以外の声が聞こえ、そちらを見ると民族衣装を着た小学校低学年くらいの少年が立っていた。

 

「貴方は…」

 

『お姉さんは、何のために戦うの?』

 

いきなり問いかけてくる少年に、彼女は嫌な顔をせずそれに答えた。

 

「昔、お祖父様が経営する本屋で読み聞かせてもらった好きなお話みたいに……私も辛い思いに沈んでいる人に手を差し伸べて……友達になりたいからです。」

 

『お話…?』

 

それに頷いて、栞子は話を続ける。

 

「はい。そのお話はひとりぼっちになってしまったドラゴンが仲間を探して旅をし、誰とも出会えず生涯を終えようとしていた時に、大自然がドラゴンに語りかけるんです…君は1人じゃないよ、友達ならすぐ傍にいるよと…」

 

『それって…』

 

「土は懐かしい匂いがし、風は楽しそうに踊り、水は優しく歌い、火はとても温かい……そしてそれは元素の竜となってドラゴンの手を繋ぎ、共に仲良く暮らしていくお話が…だから、私は手を伸ばしたいんです。今、凄く苦しんでいる人を助ける為に」

 

『…………そうなんだ』

 

少年は少し顔を俯けてから再度顔を上げ、栞子に微笑むと一冊のワンダーライドブックを取り出し、彼女に手渡した。

 

「これは?」

 

全体がクリアレッドで、炎の竜が描かれている見た事の無いそれを栞子が眺めていると…

 

『それは友達の【トウマ】から預かってたものなんだ。何時か、僕が信じられる人が来たら渡してほしいって…』

 

「トウマ? それって…」

 

その名前に聞き覚えがあった栞子が問おうとしたが、少年は既にその場にいなかった。

 

「あ、あれ…?」

 

『ありがとう、僕の物語を好きと言ってくれて…』

 

その時、彼女の前を2体の竜がやって来る。1体は水色の骨の龍、もう1体は炎の龍だ。2体は栞子の周りを何回か回った後、空へと仲良く飛んでいった。

 

「僕の物語? それに骨と炎の2体のドラゴンに友達のトウマ……それってやっぱり【飛羽真お祖父様】の事ですよね…まさか、お祖父様が先代のセイバー?」

 

そこで祖父の衝撃の事実に気づいたと同時に、栞子の意識もここから飛ばされ自身の体に戻り、変身も解除された。

 

「ここは……戻って来れた?」

 

「しお子ッ!?危ない!!」

 

「ッ!!」

 

現実に戻った事に戸惑いつつも、かすみの声で眼前に迫るゼロワンの攻撃に素早く反応し、飛び退く事で回避しソードライバーを装着。右手にプリミティブドラゴンを、左手には先程もらったクリアレッドのライドブック【エレメンタルドラゴンワンダーライドブック】を持ち、勢いよくページを開く。

 

「上原先輩……貴方は、私が助けます!!」

 

!!』『そして太古の竜と手を結び、全てを救う神獣となる!!』

 

そしてそれを閉じると、今度はプリミティブドラゴンを開き、その中にエレメンタルドラゴンを入れる。

 

!!』『ゲット!!』

 

燃えるようなロックのメロディーが流れる中で、それを頭上に掲げてからドライバーの右スロットに装填し…

 

「覚悟を越えた先に……希望はある!!」

 

烈火を力強く引き抜いた。

 

『烈火抜刀!!』

 

「ハァァァァァァ……変身ッ!!」

 

そして烈火から斬撃を飛ばすと、背後の巨大ライドブックが開く。プリミティブドラゴンは大きな骨の手が動き、エレメンタルドラゴンには炎の手が描かれていて、その2つが組合わさるとまるで2体の竜が握手しているような絵になった。そこから、プリミティブドラゴンとエレメンタルドラゴンが出てきて、栞子の周りを何回か回った後、彼女の前で互いの手を握り合う。

 

『バキボキボーン!! メラメラバーン!!』『シェイクハーンズ!!』

 

その手が栞子の胸元に重なると、その姿を一気に変える。黒かったボディスーツは紅蓮に染まり、両手足や右肩、右胸はプリミティブドラゴンのものだが、左肩には炎の竜の頭部を象り、左胸は炎の手に覆われている。そして仮面も水色の部分の大半がオレンジ色に変わり、まさしく燃え盛る炎となっている。

 

エ・レ・ル! ドラゴーン!!』

 

『エマシマシ!!』『キズナカタメ!!』

 

これがプリミティブドラゴンの暴走を克服した姿…【仮面ライダーセイバー・エレメンタルプリミティブドラゴン】である。

 

「……………………………………」

 

「この戦いの結末は……私が決めます!!」

 

無言で剣を構えるゼロワンに、烈火をゼロワンへと向けセイバーは走り出した。倒すためではなく、助ける戦いをするために…




いかがでしたか?

中途半端ですが、長くなりそうなのでここで切ります。

次回はセイバーVSゼロワンのバトルとその後になります。


次回【ELEMENTを司りしドラゴン】

「森羅万象…我が太刀は全」


それでは次回で、お会いしましょう。

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