ゲームの力でこの世界を生きていく   作:疾風の警備員

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どうも、戦姫絶唱シンフォギアAXZの【旋律ソロリティ】を早くフルで聞きたい疾風の警備員です。アレはシンフォギアシリーズの中でも屈指の神曲だと思ってます。

今回でフェニックス編は終了です。

ドラゴネス・レベル99となった一誠の力を少しだけど出して、フェニックスを圧倒していきます。

では、どうぞ。


シンフォギアAXZの4話のBlu-ray予告を見て、しばらく切ちゃんの抜剣を聞くと思い出し笑いしそうwww


笑顔のTear

一誠side

 

「仮面ライダードラゴネス……レベル99…」

 

「またレベル99だとッ!?しかし貴様は人間‼さっきの小娘と違い能力的には圧倒的に下ッ‼それで俺様に勝てると思う…「だから、うっせぇよ。」なびゃッ!?」

 

さっきからしつこく鳴く鳥ヤローを黙らせるため、俺は一気に懐に飛び込んで腹に拳をめり込ませた。

 

「お…‼うぐ…」

 

「相手を見た目で判断しないのは、喧嘩の鉄則だ…ぜッ‼」

 

「ブッ!?ガッ!?ブグォッ!?」

 

「ついでだッ‼‼」

 

「オギュバァッ‼」

 

腹を抱えて前のめりになるヤローの頭を両手で掴み、そのツラに3度膝蹴りを叩き込む。そして手を離し右ストレートを顔の中心部にお見舞いする。

 

「まだまだいくぞッ‼‼」

 

『ガシャコンガントレット‼』

 

籠手を装着し、Bボタンを3連打して再び接近を開始する。

 

『Boost!!Boost!!Boost!!』

 

「このクソガキがアァァァァァァぁぁぁぁッ‼‼」

 

ヤローは火の玉を飛ばしてくるが、それら全てを拳で叩き落とし、右手で腹を殴る。

 

「グォッ!?」

 

「今度はこっちだッ‼」

 

『ガ・キーン‼』

 

『Divide!!Divide!!』

 

Aボタンで籠手を盾モード変え、Bボタンを2連打してから左手で顔を2度殴る。

 

「ぶッ!?バッ!?」

 

「吹っ飛べッ‼‼」

 

そして回し蹴りで遠くへと蹴り飛ばした。

 

「な…なんだ…?奴の力が上がっている…だと…!?」

 

「【ガシャコンガントレットで自由に自身や相手を強化・半減出来て、その効果は変身解除するまで持続する。】それがセイヴァー・サバイバルの最大の能力なのさ。」

 

ようは2つのゲームが混ざった事で互いの欠点を消し去り、俺向きになった感じだな。

 

「覚悟しろよ?テメェは既に俺の怒りに火を付けたんだからな…‼」

 

さっき倍加された力で一気にヤローの眼前まで移動し、その顔面を左拳で打ち抜く。

 

「ゲボァッ!?」

 

「まだ終わりにはしねぇぞ?テメェには曜を……俺の恩人を傷つけた礼を、百万倍にして返さないといけねぇからな。」

 

「ガハッ‼お……恩人だと…!?」

 

「そうだ、俺の心が暗闇の底に沈まない様に、ずっと手を握ってくれていた俺の大切な人だ。」

 

俺はそこで曜と出会った頃の事を思い出した。

 

小学校低学年の頃、俺は今みたいなやさぐれた性格ではなく、感情を表に出さない根暗なやつだった。こうなったのは目立つ事であのクソ兄貴と比べてくる周りの人間と関わるのに嫌気が差していたからだ。

 

だからあまり外で遊ぶ事はなかったし、外に出ても公園のベンチに座って空を眺めたり携帯ゲームをやっているくらいだった。

 

『ねーねー、何やってるの?』

 

そんなある日、俺が外でゲームをやっていたら一人の女の子が俺に話し掛けてきた。

 

『別に……ゲームしてるだけ。』

 

その時俺がやっていたのは、現実世界とネットの世界を主人公とそのアバターナビで行き来しながらボスを倒して事件を解決するアクションRPGで、シナリオは終わっていた俺はやり込み要素であるバトルアイテムの収集をやっていた。

 

『へー、見ててもいい?』

 

『好きにすれば。』

 

隣に座ってきたその子の言葉に素っ気なく返して、俺は再びゲームに意識を向けた。残っていたのは裏ボスが落とす最高ランクのアイテムだけだったので、対裏ボス用にアイテムデッキを編成してフィールドを歩き回り、ソイツと出会った。

 

『わわッ‼何か強そうなの来たよッ!?』

 

『うるさい。』

 

ソイツの声を鬱陶しく思いながらも、俺はネットなどで調べた瞬殺コンボを使って僅か15秒で倒し、最後のアイテムをゲット出来た。

 

『よし、これでコンプリート。』

 

『わあッ‼スゴいスゴーいッ‼あんなに強そうなの、一瞬で倒しちゃった‼』

 

『別に凄くないよ……ネットで攻略方法を調べたから。』

 

『えー……でもでも‼知ってるからって出来る訳じゃないんだよ!?私もお母さんにお料理習ってるけど全然美味しく出来ないし…』

 

『ふーん…』

 

その子の話を軽く聞き流しながら俺はセーブしたゲームの電源を落とし、ベンチから立ち上がった。

 

『あれ、どこいくの?』

 

『家に帰る。』

 

『そっか……ねぇ、また会える?』

 

『さあね。』

 

そのまま俺はスタスタと歩いて、家に帰った。

 

次の日、俺は今度は世界中で大人気の携帯獣のゲームを持って再び公園のベンチで遊んでいた。

 

その時はまたあの子が来るのかどうかは気にしていなかった。

 

『う~んと……あ、いた‼』

 

『ん?』

 

そこに大きな声が聞こえたので、画面から目を離すと昨日来た女の子がいた。

 

『今日もゲームしてるの?』

 

『別にいいだろ。何してようが俺の勝手だ。』

 

『じゃあさ、一緒に遊ぼうよ‼』

 

『やだ。』

 

『えーッ!?』

 

『俺は一人でゲームやってる方が楽しいから。』

 

そう言って視線をゲーム画面に戻すと、顔をその子の手で挟まれ強引に視線を上げられた。

 

『なにすんの?』

 

『ゲームばっかりやってたら、目が悪くなっちゃうよ‼』

 

『そんなの君に関係ないでしょ?』

 

『むーッ‼』

 

彼女はそう言われて頬を膨らます。

 

俺は顔を押さえられているので、自分と彼女の顔の間にゲーム機を持ってきて再び始めようとしたら、彼女は顔から手を離し今度は俺の両手を掴んできた。

 

『ゲームなら後で出来るでしょ‼だから一緒にあ~そ~ぼ~う~よ~ッ‼』

 

『い~や~だ~ッ‼』

 

そして俺を引っ張ってきたので、負けじと抵抗した。

 

『曜ちゃ~ん‼何やってるの~?』

 

こんなやり取りをやってたら、また一人女の子がやって来た。

 

『この子に一緒に遊ぼうって言ってるのに、遊んでくれないの~ッ‼』

 

『だから嫌だって言ってるだろ~ッ‼』

 

『こ~らッ‼二人ともそこまでッ‼』

 

そのまま引っ張り合いが続くかと思ったけど、新しく来た子が俺達を引き剥がしてくれた。

 

『曜ちゃん、あんまり無理に誘っちゃダメだよ?』

 

『だって~…』

 

『だってじゃありません。』

 

『はぁ~い…』

 

『君も何で一人でいたがるの?』

 

『俺は誰とも遊びたくないから。それにどうせ何やっても兄ちゃんと比べられるだけだし。』

 

『お兄ちゃんがいるの?』

 

『双子のね。もういい?ゲームしたいんだけど。』

 

『あ、うん。曜ちゃんがごめんね?』

 

『別に…気にしてないから。』

 

『今度会ったら、絶対に遊ぼうね~ッ‼』

 

そう言って離れてく二人を少し見送った後、ここでゲームをやる気分じゃ無くなったから、俺はそのまま家に帰った。

 

そしてそれから4日経ち、今度はピンク玉の腹ペコ生物のゲームをその公園でやっていたら…

 

『やっと見つけた~ッ‼今日こそは一緒に遊ぼう‼』

 

例の女の子がまたやって来た。

 

『はあ~…』

 

俺はため息を吐いてから、ゲームをセーブして電源を落とし、彼女を見た。

 

『ねえ、何でそんなに俺と遊びたいの?』

 

『え?』

 

『俺みたいなのと一緒にいるよりも、兄ちゃん達みたいなのと遊んだ方が楽しいと思うけど…』

 

『私は君と遊びたいのッ‼』

 

『なんで?』

 

『う~ん………………私が一緒に遊びたいからッ‼』

 

『へ……?』

 

その言葉に俺は唖然とした。そんな理由で自分に話しかけてくる奴なんていると思ってなかったからだ。殆どの奴等は自分をだしにして兄ちゃんと仲良くしたい奴ばかりだったからな。だから、自分を自分と見てくれているこの子の言葉が嬉しかった。

 

『初めてだよ、誰かからそんな風に言われたの。』

 

『そうなの?』

 

『うん。ねぇ、君の名前は?』

 

『わたし?私は【渡辺 曜】っていうの‼』

 

『曜ちゃんか……俺は兵藤 一誠、よろしく。』

 

『よろしくね、一誠君‼』

 

それからは曜とその幼馴染みの【松浦果南】と一緒に遊ぶ様になった。ただし、なるべくクソ兄貴とは会わない様にして……

 

クソ兄貴と会った女の子は何故かアイツに惚れるらしい。効かない子もいるみたいだけど。

 

それから数年経ち、中学に上がると俺の性格も大分改善し、それなりに友達も出来たがやはり曜達と一緒にいる事が多く、周りからは恋人なんじゃないのかと勘繰られる事もあり、それを否定するとその日の二人の機嫌が悪くなって、スイーツを奢らされるなんて日もあったりしたが、楽しい日々だった。

 

それと同時に、クソ兄貴の取り巻き達が好き勝手やる様になり始め、俺は二人に危害がいかない様になるべく注意するようにしていた。だけどある日、俺がトイレに行っている間にそれは起きた。

 

俺が教室に戻ると曜の姿がなく、それに嫌な予感がした俺はすぐにカナ姉に連絡を入れながら教室を飛び出し学校中を探していたら、校舎裏に連れられていく曜の姿を見た。

 

慌てて追うと、壁に追い込まれ怯えた表情をする曜が見えた。

 

その瞬間、頭の中が真っ白になり気づいたら地面に倒れて呻いている取り巻き達と背後に曜がいた。

 

『俺は……一体…』

 

『クソッ‼覚えてろよ、兵藤一誠ッ‼』

 

それを聞いて俺は理解した。この現状は俺がやったのだと。

 

『そうか……俺は…』

 

『一誠君…‼』

 

その時、後ろから曜が俺に抱き着いて来た。

 

『うぐ…‼怖かったよぅ…‼』

 

『もう大丈夫、大丈夫だから。』

 

『一誠君ッ‼曜ちゃんッ‼』

 

曜を落ち着かせ様としたら、そこにカナ姉と呼んできた先生達が到着し、事情を担任に説明した俺はカナ姉と一緒に曜が落ち着くまで保健室で傍にいてあげなさいと言われ、そこで曜はしばらく俺から離れる事がなく、その震えが俺にもずっと伝わっていた。

 

俺は自分が情けなかった。本当だったら今も根暗で誰とも関わらず、最悪世界に嫌気が差して自殺なんてしていたかもしれない自分をいつも見ててくれた存在を守れなかった自分が。だから俺は自分を鍛える事にした。それが他人との喧嘩だとしても。

 

そこで俺は過去を思い出すのを止めて、目の前の鳥ヤローを再び睨む。

 

「アイツは俺の心を救ってくれた。なら、俺はアイツを守る力になる。それが俺がアイツに出来る恩返しだと思った……でも、今回も俺は曜が傷つくのを防ぐ事が出来なかった。そんな事態を起こしたテメェらに……それよりも曜を守れなかった自分に腹が立って仕方ねぇ。だからお前には俺の……八つ当たりのサンドバッグをやって貰わねぇとな。」

 

「この俺を……フェニックスであるこの俺を八つ当たりのサンドバッグ扱いだと…‼‼」

 

「そうだよッ‼‼」

 

強化された力で倒れているヤローに近づくと、その顔を全力で踏みつけた。

 

「ブギュルアッ!?」

 

「だからお前の考えてた事は勘違いなんだよ、曜。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曜side

 

「勘違い……?」

 

部屋のスピーカーから聞こえてくる一誠君の言葉に、私は首を傾げた。

 

だってあの時…一誠君は…

 

『どうせお前は、俺が相手に自分の存在を認めさせるために喧嘩してると思ってたんだろ?』

 

「…‼」

 

そこで図星をつかれた私は言葉に詰まった。

 

『そんな事しても無駄さ。どうせすぐに忘れるような単純な頭してる奴等ばかりなんだからよ。それにそんな事なんざどうでもいいさ。』

 

こっちの声は聞こえていないのに、まるで私の考えている事を解っているかの様に彼は話す。

 

「どうでもって…それは一誠君にとって……‼」

 

『だってそんなもん……お前がとっくにしてくれてるじゃねぇか。』

 

「……え?」

 

私が……一誠君の存在証明を?

 

『つか、こっちにお前の声は届かないから一方的に言わせてもらうぞ?』

 

一誠君は踏んでいた相手を蹴り飛ばして、上を見た。

 

『お前がガキの時、俺と遊びたいと言ってくれた瞬間に俺という存在はもうこの世に認められたんだよ。だから、お前が俺の傍にいてくれるなら、俺は俺でいられる……いつだって、どんな時だってな。』

 

「あ…」

 

『そうさ、俺という存在は既に……ここにいるッ‼‼』

 

そう言って打ち出された拳は相手の顔の中心を的確に捉えて、思いっきり吹き飛ばして校舎に激突させた。

 

『そんでもって俺が喧嘩にのめり込んだのはお前のせいじゃない…俺が強くなりたくて勝手にやってる事だ。そんなの気にすんな……って既に趣味になって心配させてる俺の言うセリフじゃねぇか。』

 

「……………ほんとだよ…毎回私が……どれだけ………心配してると思ってるの…」

 

彼の言葉に返事しようと思っても、上手く言葉が出ず視界も霞み始める。

 

『まあなんだ………とにかく俺が言いたいのは…ハアッ‼』

 

彼は土煙から飛んできた火の玉を籠手で後ろに弾き、その場に確りと構える。

 

『お前は俺が絶対に守る。この拳に賭けてな。だから……昔みたいに笑ってくれ。お前は笑ってる方が可愛いんだからよ。』

 

背後の爆発に照らされながらそう言う一誠君は、滲みながらも私の目にスゴくカッコよく見えた。

 

「……その言い方………なんか……ズルいよぅ…‼」

 

(兵藤君の考えは分かんないから、私の勝手な想像だけどね?たぶん彼の願いはそれじゃないと思う。)

 

そこで私は前に千歌ちゃんに言われた事を思い出した。

 

そうか……一誠君の願いは一緒に戦う事じゃなかったんだ……ただ…一緒に笑い合えればそれでいいんだ……

 

「曜ちゃん、おいで?」

 

そこに果南ちゃんが優しい顔で私に向かって両手を広げていた。

 

「……ごめん……少しの間だけ………お願い…」

 

私はそのまま彼女に抱き着いた。

 

「ずっと悩んでたもんね………一誠君の人生を変えちゃったんじゃないかって。でも、彼の心は…願いは昔から変わっていない。」

 

「うん…うん…‼」

 

「なら早く元気にならないとね。そんな顔じゃ逆に心配させちゃうよ?」

 

「うん………頑張る…‼」

 

私はしばらく、果南ちゃんの胸の中で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠side

 

「さて………言いたい事は言ったし、そろそろケリ着けようぜ?」

 

「ふざけやがって………ふざけやがって…‼‼人間風情が…混血風情が………どいつもこいつもふざけやがってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ‼‼‼」

 

俺が構え直すとヤローはキレながら全身を炎に変えると、その身を火の鳥へとした。

 

「貴様ら全員、骨の1本も残さず灰にしてやるッ‼‼」

 

「ハッ‼その前に俺がテメェをブッ飛ばすッ‼‼」

 

『ガッチョーン、ウラワザ‼』

 

ベルトのレバーを閉じ、右足にエネルギーを集束させていく。

 

「消えろ、人間んんんンンンンンンンンンンッ‼‼」

 

「消えやしないさ…」

 

『ガッチャーン‼ SAVIOR SURVIVAL!! CRITICAL DESTROY!!』

 

「俺を俺として見てくれる奴がいる限り、絶対に…なッ‼」

 

その身を炎として突っ込んでくるヤローを確りと見ながらレバーを開き、右足での上段後ろ回し蹴りをヤローの顔に決め、再び校舎にぶつかると壁を突き抜け、建物の反対側で仰向けに倒れ、顔中が膨れ上がったるヤローが見えると、光と共に消えていった。

 

『ライザー様、リタイア。これによりこのレーティングゲームはルシファー様の勝利です。』

 

「「「「「やったあ~ッ‼」」」」」

 

このアナウンスに高海達は抱き合いながら喜んだ。

 

「お疲れ。」

 

「ああ。」

 

俺はルシファーが出してきた拳に自分の拳をぶつけた。

 

『それでは人間界に戻しますので、少々お待ちください。』

 

「一誠、後で聞きたい事があるから時間をくれ。」

 

「………オメェには今回の件の礼があるからな………いいぜ、聞きたいこと全て話してやるよ。」

 

「助かる。」

 

そして足下に魔法陣が出来、光と共に転移し空を見ると何時もの夜空が広がっていた。

 

そうそう、やっぱ夜っていったらこうじゃねぇとな。

 

「一誠君~ッ‼」

 

「ん?…うおっと!?」

 

空を見上げていたら曜が駆け寄ってきて俺に飛び付いてきたので、倒れそうになる体を何とか踏ん張って維持した。

 

「危ないだろ?どうした…「うぐ…ひっぐ…‼」えッ!?な、なんで泣いてんだッ!?」

 

そして突然泣き出した曜に俺は完全にパニクってしまった。

 

「一誠君は曜ちゃんが泣き止むまで、しばらくそのままでいること。これ、お姉ちゃんからの命令です。」

 

「カナ姉ッ!?」

 

「他の皆さんは生徒会室に来てください。リゼヴィムさん達がお待ちですわ。」

 

「解りました、一誠………ガンバれ。」

 

「オイコラッ‼どうしろってんだよ~ッ‼」

 

だが、俺の叫びは全員にシカトされてしまい、俺と曜だけがこの場に残されてしまった。

 

「えっと………だ、大丈夫か?」

 

「………大丈夫じゃない…」

 

「う………な、ならなんか飲むか?」

 

「………いらない…」

 

俺が何か言っても全て拒否され、曜は抱き着く力を強めてくる。

 

正直、今の俺は理性を保つのに結構必死だ。早くこの状況を何とかしなければッ‼

 

「だったら、何かしてほしいのか?」

 

早く脱出するためにこう言ったが、これがまさか余計に自分を苦しめるとは思わなかった。

 

「………なら、一誠君もギュッてして。」

 

「………………………………………………………………………はい?」

 

その返答に、俺の頭は一瞬真っ白になった。

 

ちょっと待て、今曜の奴は何て言った?

 

「一誠君もギュッてしてくれたら、離れてあげる。」

 

現実逃避したかったが、そんな事は許されないようだ…

 

「いやお前ッ!?そ、それはだな…‼」

 

「…お願い…」

 

無茶言うなッ!?ただでさえ女の子特有の甘い匂いとか、体に当たってる胸の感触とかが俺の理性をクリティカルブレイクしそうなんだぞッ!?

 

「………心配かけた罰…だめ…?」

 

「うぐッ‼」

 

更にここで涙目の上目使い……だと…ッ!?

 

「~~~~~~~~~~ッ‼わかったよ…」

 

根負けした俺は、暴走しそうになる理性を全力全開で保ちつつ、曜を抱き締めた。

 

「…んぅっ…」

 

その瞬間、耳元で曜の艶やかな声が聞こえた。

 

ヤメロッ!?そういう色っぽい声出すなッ‼本気で理性が保てねぇッ!?

 

そんな状態が5分(体感時間は一時間ほど)続き、曜が離れてくれた。

 

「もう大丈夫、ありがとう。」

 

「………………………おう…」

 

よく耐えた、俺の理性ッ‼‼

 

鳥ヤローとの勝負(ケンカ)以上に疲れた俺は、耐えきった自分を誉めつつその場で大きく深呼吸して平静を取り戻した。

 

「心配掛けたな、悪かったよ。」

 

「本当だよ………待ってる方の身にもなってよね?」

 

「………なるべく気にかけとくよ。」

 

「うん♪」

 

そう言って俺に笑顔で頷く曜。

 

ダメだ、いくら物理的に強くなってもこの笑顔には勝てねぇや……

 

「んじゃ、ルシファー達の所に行くか。何か聞きたい事があるみたいだからな。」

 

「じゃあ行こっか。」

 

気恥ずかしさに少し離れて二人並んで歩き、生徒会室に着いて扉を開けようとしたら………

 

「それは本当の事なのかッ‼‼!?」

 

中からルシファーの大声が聞こえてきた。

 

「ど、どうしたんだろう…?」

 

「アイツがここまで取り乱すなんて珍しいな………何かあったのか?」

 

とりあえず扉を開けて中に入ると、そこにはルシファーがよく似ているじいさんに詰め寄ってる姿があった。

 

「ホントホント~、やんなっちゃうよね~?」

 

「バカッ‼そんな暢気にいってる場合かッ‼‼()()が敵にまわるという事がどんなに危険だと…‼‼」

 

「それについてはこっちで考えがあるから大丈夫~、ほらコレ。」

 

じいさんはルシファーに何かのUSBメモリーを手渡した。

 

「なんだコレは?」

 

()()に対抗出来る力の一つとして用意してたプランだよ。お前ならコレを作れる。」

 

「………わかった、早速取り掛かる。」

 

そう言ってルシファーは急いで転移していった。

 

「おいおい、人に聞きたい事があるっていうから来たのに、何も言わずに帰るなよ…」

 

「ありゃ、君達ゴミンニ~。ちょっとウチのゴタゴタでさ?」

 

「………なら、仕方ねぇか。」

 

俺は簡単に引き下がったが、内心ではかなり心が高ぶっていた。

 

(アイツがあそこまで焦るような相手………どんなのか楽しみだぜ‼)

 

その後聞いた話で、鳥ヤローの処分は自分達が売っている特殊アイテムを今後、日本神話に定価の百分の一で毎月製造する量の3割を売る事になった上に本人の再生能力も戻さない事だそうだ。ザマァ。

 

 

 

 

 

 

 

パラドside

 

「これで二つ目か………だけど、そろそろ俺も表に出ないといけないな。」

 

公園のベンチに寝そべりながら俺はそう呟く。でも、これが俺のやるべき事だからな。

 

懐に手を入れ、一枚の写真を取り出す。そこには5人の男と1人の女………そして俺が写っていた。

 

「安心しろ。お前の運命は………………俺が変えてやる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、とある悪魔領………

 

「ハァッ‼…ハァッ‼…ハァッ‼」

 

森の中を一人の男の悪魔が走っていた。その男の表情は怯えており、まるで何かから逃げている様だった。

 

「こ…此処まで逃げれば…‼」

 

「この私から逃げられると思っているのか?」

 

「な…!?」

 

木陰で一息つこうとしていたが、突然聞こえた声に男は驚き周囲を見渡すが、誰もいなかった。

 

「何処だッ‼………姿を現せッ‼」

 

「君の言葉に従う義理は無い。」

 

その時、男の周りにオレンジ色の光の粒子が降り注いだ。

 

「これは………がッ!?アグ…!?ガアァァァァッ!?」

 

それを浴びた男は突然苦しみ出し、体にノイズが走り始めた。

 

「君は選ばれたのだよ。その力の苗床としてだがね?」

 

「や…やだッ!?死にたくない………死にたくないッ‼‼死にた…」

 

男は必死に叫ぶが、次第に身体が透明になっていき、そして粒子となって消えた。

 

『ウィーン、ピピピ。起動確認、レベル50。』

 

そしてその場に散った光が集まると、右腕に巨大なアームを着けた赤いロボットみたいな存在が立っていた。

 

「【ゲキトツロボッツ】のガットンか………これで全てのデータが揃った。」

 

ロボットの様な存在…ガットンの前に一人の男が現れるとそれを手に持ったアイテム【ガシャコンバグヴァイザーⅡ】の中に取り込んだら、差してあった物に絵柄が浮かび上がった。

 

「だが、これだけではまだ不十分………使える駒を探さねばな。私の右腕たる存在を…」

 

そして男は緑のノイズになりながら消えた。




いかがでしたか?

次回からは、コカビエル編に入っていきます。

そこで、千歌の過去が明らかに…‼

では、次回でお会いしましょう。

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