ゲームの力でこの世界を生きていく   作:疾風の警備員

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どうも、疾風の警備員です。

この章では時系列を変えて、授業参観は無しにプール清掃は最後の方にします。

なので今回は二人の男と一人の女の子の様子を描きます。

では、どうぞ。


ヴァンパイア編
神のTalentと野獣のFist


ヴァーリの研究室では今、診察台(見た目はCRのベッド)の上にジャージに着替え、顔には機械的なバイザーを掛けた美歌が横になっており、その横でヴァーリが5つのキーボードを使って高速で何かを入力していた。

 

「なるほど、ならばこのデータを…」

 

パソコンに表示される画面は次々に変わり、そこに様々なデータを一心不乱に入力していく姿は、鬼気迫るものだ。

 

「ねぇ、そろそろ何をやってるのか教えてくれないかしら?」

 

診察台から起き上がった美歌はバイザーを外し、少し不満そうな顔でヴァーリに尋ねる。

 

「決まっているだろ、神にも等しき事さ…‼」

 

「いやわからないから。」

 

「そんな事より、お前はあのときの事をもっと強くイメージしろ‼」

 

「はいはい、分かったわよ。」

 

素っ気ない応対に美歌は呆れながらも、再びバイザーを掛けて横になる。しかしこの体勢になって既に3時間が過ぎていて、その間動くこともできずにその場で横になってイメージしているだけなのだ。さすがに飽きがくる。だが、そんな事は今のヴァーリには関係ない。

 

「これさえ出来れば……これさえ出来ればァ…‼」

 

(完全に研究モードに入っちゃったか…)

 

そしてそれから更に2時間を過ぎ…………

 

「もう少しダァ……もう少しデェ…‼」

 

ヴァーリは休みも取らず何処かの引きこもり探偵よろしく椅子に体操座りし、人差し指のみでタイピングをしていた。顔の表情も恐い笑顔になっていて、普段の美形はどこへやら……

 

(あ~……やっと終わるのね……)

 

ようやく終わりが見えた事に美歌がホッとしたら……

 

「ヴェアーハッハッハッハッハッ‼………ウグッ!?」

 

一瞬の呻き声の後、ヴァーリが真っ白になって机に突っ伏した。

 

『GAME OVER』

 

何故かそんな音声まで聞こえてくる。

 

「えッ!?」

 

それに驚いた美歌は飛び起き、彼に駆け寄ろうとした所で部屋のドアが開き、大きめの皿を持った梨子が入ってきた。

 

「お待たせ~…って、早速切れちゃったんだ。」

 

「ちょっと梨子ッ!?ヴァーリが急に…‼」

 

「気にしないで、研究に熱中したときによくある事だから。」

 

「へ?」

 

慌てる美歌に梨子はそう言って落ち着かせ、皿の上にある黒い物を1つ取り、ヴァーリの口に入れた。

 

「ヴァーリはどうしたの?」

 

「研究に没頭し過ぎて頭の糖分が切れちゃったの。それで今口に入れたのは、糖分補給用の激甘チョコ……その名も【コンティニューチョコ】よ。因みに個数は99個♪」

 

その説明の最中に倒れていたヴァーリはムクリと起き上がった。その顔はさっきまでの表情とは違い、普段のそれと変わらない。

 

「残りチョコ、98個。悪いな梨子。」

 

「大丈夫?あまり根を詰めすぎないでね、美歌ちゃんも大変なんだから。」

 

「わかってる、美歌は少し休憩してこい。俺は今までのデータを纏めてるから。」

 

「助かった…‼」

 

暫しの解放に喜びを噛みしめる美歌だったが、この10分後に再び作業が始まると知ると、その表情は絶望に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァッ‼‼」

 

「フフッ、こっちよOgreさん。手の鳴るほうへ~♪」

 

時を同じくしてルシファー家の特訓施設の実戦練習場では、生身の一誠がレーザーになった鞠莉と至近距離で向かい合って拳を突きだし、レーザーの方は余裕でそれを回避していた。

 

「イッセーッ‼もっと先を読め‼目に映るものだけに惑わされるなッ‼‼」

 

「ウスッ‼」

 

そんな一誠にそれを見ているグラファイトからの檄とアドバイスが飛ぶ。

 

「は~い、残り10秒~。」

 

「クソ…‼」

 

善子の言葉に一誠は焦りだし、それが動きにまで反映されてしまって雑になった動きではレーザーを捉える事はできず時間切れとなった。

 

「時間が無いからと焦る奴があるか。どんな時でも冷静に……だが、やる気は燃え上がらせろ。この時間内で倒すとな。」

 

「ハァ……ハァ……了解…‼」

 

「なら30分の休憩の後に、次の訓練に移る。」

 

グラファイトがそう言い、それまでの間に一誠はなるべく体を休め、時間が来たら練習場の中央に立つ。そして彼の前に仮面ライダーヨハネに変身した善子が出てくる。

 

「それじゃ本気で行くけどいいのよね、番長先輩?」

 

「たりめーだ。手抜きすんじゃねぇぞ?」

 

「OK‼」

 

ヨハネは空中に飛び上がると、専用アイテムの【極夜の書】を開いて魔法を発動させ、一誠の周囲に大量の光球が浮かび上がる。その数、約100。

 

「次は回避訓練だ。周囲から襲ってくる魔力弾を1発も喰らわずに避け続けろ。時間は30分……始めッ‼」

 

「フォトンランサー・ジェノサイドシフト……撃ち抜け、ファイヤッ‼‼」

 

「おっしゃ、来いやァッ‼‼」

 

ヨハネの気合いの入った声と共に周りの光球から光弾が次々と撃ち出されていく。それを一誠は走り、跳び、時にはブレイクダンスを思わせる様な動きで避けていく。

 

「よし、5分経過‼弾幕を強化しろ‼」

 

「了解…‼」

 

訓練を始めて5分、グラファイトの指示がヨハネに飛ぶと撃ち出される光弾の数が増え始めた。実はこの回避訓練、5分経つ毎に弾幕が強化されていくのだ。

 

「チィッ‼」

 

一誠は舌打ちしつつも、より小刻みに動き回避していく。

 

「そうだ、周りをよく見ろ‼弾の動きを予測して最適な動きをするんだッ‼」

 

それから回避訓練は続いていくが、15分を過ぎたところで、足に弾がかすった。

 

「く…!?」

 

「もらいッ‼」

 

それでバランスを崩し、立て直そうとする間に大量の弾丸が一誠を襲った。

 

「グアアァァァァァァァッ!?」

 

「善子、そこまでだ。」

 

グラファイトの言葉で弾幕が消えると、ボロボロになった一誠が倒れていた。

 

「グ……クソ…‼」

 

「バランスを崩したのを無理に立て直そうとするとそうなる。崩れたのなら、その勢いまでも利用しろ。それは相手も予想つかない動きになる。そうして生まれた隙を決して見逃すな。」

 

「う……ウス…‼」

 

「善子、回復しろ。」

 

「はいはい…もう、人使い粗いんだから…」

 

変身を解除し文句を言いながらも、善子は一誠に回復魔法を掛ける。

 

「それで回復したらもう一度だ。今度は30分耐えてみせろ。」

 

「了解ッ‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日後の朝、家でシャワーを浴びた善子は何気なくヴァーリの研究室に寄った。

 

「一体何をやってるのかしら?ここにいるから何かを作ってると思うんだけど…」

 

そしてドアを開けたら……

 

「ヴェアーハッハッハッハッハッ‼ハーハッハッハッハッハッ‼」

 

椅子に座り、何故か高笑いしているヴァーリと診察台に寝ている美歌がいた。

 

(連続の徹夜でついに壊れた?でも、あそこまでテンションが高いってことは…‼)

 

「もしかして…何か出来たの?」

 

「ヴェアーハッハッハッハッハッ‼」

 

「ねぇ、何が出来たのッ!?」

 

彼がどんなものを作ったのか気になる善子は彼に聞くが、返ってくるのは笑い声ばかり。そして再び聞いたら……

 

「ダメだアアアアアァァァァァァァァァァッ‼‼‼」

 

返ってきたのは、真逆の返答だった。

 

「だああぁぁぁぁッ‼‼紛らわしい笑いしてんじゃ無いわよッ‼‼‼」

 

それに善子は怒るが、そこで部屋のある時計に視線がいく。それは仕事のし過ぎにならないように梨子が用意したもので、ヴァーリが部屋に入ったら動きだし、どれだけいるのかを教えてくれる物だ。

 

そしてそこに表示されていた時間は75:38……つまり、丸三日程ここにいる毎になる。

 

「ちょっとッ!?ここに丸三日もいるのッ!?少しは休みなさいッ‼‼」

 

「ダマレエエエェェェェェェェェェェェッ‼‼‼………………あ…」『GAME OVER』

 

善子の進言をヴァーリは拒絶するが、そこで立ったまま真っ白になった。例の音声付きで。

 

「ああもうッ‼‼面倒掛けないでよッ‼‼」

 

そう怒りを露にしながらコンティニューチョコを手に取り、無理矢理ヴァーリの口に捩じ込んだ。

 

「はッ!?残りチョコ、82…‼」

 

「食べ過ぎよッ!?糖尿病になっても知らないからね?」

 

「半分とはいえ悪魔の体ナメんな。」

 

そして美歌の元に行くと彼女の足を掴み、バタバタと上下に動かし始めた。どうやらコンティニューしても、徹夜のテンションまでは戻らない様だ。

 

「美歌アアアアアァァァァァァァァァァッ‼‼お前の思いはそんなもんじゃ無いだろおおぉぉぉぉぉぉぉッ‼‼ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ‼‼‼」

 

「ちょッ!?女の子になにやってんのッ‼‼」

 

善子はそれを止めようとするが、彼女の力ではヴァーリを抑える事は出来ない。

 

ところで皆さん、考えてみてください。ここ数日ずっと……多少の休憩を除いて同じ体勢で動けず眠ることも許されなかった状況でこのような事をされれば、どの様な反応をするのかを。

 

その答えはただ1つ……

 

「うるっさいわねッ‼‼‼‼‼‼‼」

 

そう、ブチギレるである。

 

「アンタこそ黙って作業してなさいよ…‼」

 

そう言う彼女の目は徹夜続きだったからなのか血走っており、迫力により拍車を掛けていた。

 

そして再びバイザーを掛け横になる。残るのはションボリしながら立っているヴァーリと、この状況にニヤニヤしている善子。

 

「怒られちゃった♪」

 

善子は楽しそうにそう言って練習場へと転移していった。そして後に来た梨子は黒いオーラを纏って横になっている美歌と、今までのテンションが何処にいったのかもの悲しげにパソコンを打つヴァーリに首を傾げたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ‼」

 

「く……デリャッ‼」

 

練習場ではドラゴネス・レベル99になった一誠がバグスターとなったなったグラファイト、レーザーとなった鞠莉、ヨハネとなった善子と1対3で戦っていた。しかも、ジェノサイドシフトの中でだ。全周囲から襲いかかる弾幕の中を高速で動き回るレーザーに圧倒的な力量を持つグラファイトとの戦いで彼に掛かる負担は相当なものとなっている。

 

「お前の様なタイプは、実戦の中での方が効率良く学べる。さあ、この中で生き残ってみせろッ‼」

 

「わぁーてるよッ‼」

 

後ろからの弾を蹴り飛ばし、右から来たレーザーに斬られるも腕を掴み弾幕が多い方へと投げて盾にするが、直後にやって来たグラファイトの紅蓮爆龍剣を喰らい一誠も吹き飛ばされた。

 

「グアッ!?」

 

「注意力が足りんッ‼攻撃中や防御中も周囲に気を配れッ‼」

 

「おうッ‼」

 

グラファイトのアドバイスに一誠はやる気になり、それから数が増えた弾幕に二人からの怒濤の攻撃を防ぎ捌き、時には弾幕の弾の硬度を強化してそれを掴みレーザーやヨハネに投げるという離れ技をやってのけていた。

 

「番長先輩…………人間辞めたわね…」

 

「勝手に辞めさせんな、俺は人間だ。」

 

そう言うが、襲ってくる弾丸を掴む時点で人間技ではない。

 

「お前達ッ‼何を悠長に話しているッ‼‼」

 

「その隙、貰っちゃうわよッ‼」

 

「おおっと。」

 

武器を振るう二人から距離を取るために後ろに飛ぶと、背後から弾幕が襲ってくる。だが一誠は回し蹴りで近くに浮かぶエナジーアイテムに触れて取り込む。

 

『反射‼』

 

その効果によって弾丸は一誠に触れた途端に、元のルートへと飛んでいった。

 

「ふぅ~、大分攻略法が分かってきたぜ……んじゃこっからは、反撃させてもらうぜッ‼‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、花丸は一人学園からの帰り道を歩いていた。

 

学園では行方不明になったダイヤの話で持ちきりだった。何故、行方不明なのかというと先の事件で体を残さず消滅してしまった為に死亡と断定させる事が出来なかったからだ。

 

「ルビィちゃん……大丈夫かなぁ…」

 

そしてあの事件以降、ルビィは学園を休んでいる。彼女や果南、曜達でお見舞いに行ったりもしたが生きる気力を全て無くしてしまったかの様な顔で、軽く返事をするだけなのが、余計に心配心を煽っていた。

 

まるで……何時ダイヤの後を追ってもおかしくないくらいに。

 

「ダメダメッ‼マルまで弱気になっちゃ余計にルビィちゃんが立ち直れなくなっちゃうッ‼」

 

そんな気分を吹き飛ばすように頭を左右に振っていたら、彼女の視界にある人物が入った。

 

「あの人は…」

 

その人物は河原の岩の上に座り、まるで座禅をしているかの様に見えた。その人物へと花丸は神器を出して近づいていく。

 

「何の用だ?」

 

「ズラッ!?」

 

こっそりと近づいていたのに目当ての人物【パラド】に簡単にバレて驚くが、それでも逃げる事はしない。

 

「貴方に……聞きたい事があります。」

 

「何だ?」

 

「貴方は…………【完全体】なんですか?」

 

その質問にパラドは一瞬目を見開くが、すぐに楽しそうな表情に変わる。

 

「そういやお前の神器は相手の情報を見れるんだったな。迂闊だったぜ…」

 

「マルの神器の事まで…‼」

 

「知ってるぜ?お前が誰に恋心を抱いてるのかまでな♪」

 

「ズラァッ!?」

 

唐突なパラドの言葉に彼女は顔を真っ赤にする。

 

「安心しろ、誰にも言いやしないさ。」

 

「本当ズラかッ!?本当ズラねッ!?」

 

「ああ、俺は約束は守る男だからな。」

 

「うう~ッ‼」

 

そう言うパラドを彼女は睨むが、顔が赤く涙目上目使いの睨みに迫力はなく、むしろ可愛いの部類に入るだろう。

 

「ま、マルの事はともかくッ‼……さっきの質問については?」

 

「それはお前のソレに写ってる通りだ。」

 

その回答に花丸は驚き、同時に疑問が浮かぶ。

 

「だったらおかしいズラッ‼もしそれが本当なら…」

 

そこで彼女はそれを口にするのを躊躇った。でも、聞くチャンスは今しかないと思い、その疑問を彼にぶつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「番長先輩は…………()()()()()()()筈ですッ‼」




いかがでしたか?

この章でパラドの謎を少しだけバラしていく予定です。

次はあのビビリ君の登場回になります。

では、次回でお会いしましょう。

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