ゲームの力でこの世界を生きていく   作:疾風の警備員

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どうも、疾風の警備員です。

この話からヴァーリと美歌はしばらく登場しません。

最後にヴァーリ達に新たな危機が迫ります。

では、どうぞ。


臆病なVampire

「封印されていた僧侶……ですか?」

 

ある日の放課後、千歌と鞠莉と善子はグレモリー達に連れられ旧校舎に来ていた。

 

「ええ、前回の事件で魔王様から戦力を強化する為に私の僧侶の封印を解く事が決定したと通知が来たの。それで、今回は貴方達に顔見せをしようと思ってね。」

 

「どんな人なんですか?」

 

「人間と吸血鬼の混血で神器所有者よ。ただ神器の力が強すぎて私じゃまだ抑えきれないからって事で封印されていたの。」

 

それを聞いて千歌は少し悲しそうな顔をする。悪魔の駒を使った転生は悪魔の都合で作られた物なのに、その都合に合わないからと封印するのは、勝手が過ぎるのではないかと……

 

「さっすが上層部の方々はやる事が違うわね。自分達の保身しか考えてないじゃない。」

 

「私達はヴァーリの眷属でluckyだったわね。」

 

「どういう事かしら?」

 

「私と千歌は最初、上層部の奴等から封印しろって言われていたのよ。」

 

善子の話した内容にグレモリー達は驚く。こんな身近に封印を宣告されていた者がいたからだ。

 

「千歌はエクソシスト研究機関で天才と謂わしめた存在、私は人間でありながら()()()()()()程の魔力を保持してたんだもの。そりゃ、お偉いさん方が危険視するわよ?」

 

そして語られたのは善子と千歌がヴァーリ達の所に来た頃の出来事。来てすぐに封印なんて言われていい顔をする者は滅多にいない。しかし逆に疑問も浮かんだ。上層部が封印の解除を認めるのはよっぽどの理由がないとありえない。ならば、彼女達はどうやって解放されたのかと……

 

「でも、リゼヴィム様とヴァーリは違った。そんな事を上から命令されても全て突っ返して、実力行使してきたのは同じく実力行使で捩じ伏せた。それだけじゃない、ちゃんと私達が力の制御が出来る為の特訓メニューを作って、それに自分まで付き合ってくれたんだもの。そして制御が出来る様になって、これを理由に上層部を黙らせた。だから私達は上の連中には嫌悪しかないし、リゼヴィム様とヴァーリには感謝しかないわ……だから、こうやって眷属として仕えてるの。」

 

「そんな事が…」

 

(私にそれが出来るだけの力があれば……あの子に不自由な思いをさせずに出来たのかしら…)

 

彼女の話を聞いて、リアスは顔を俯けそう思う……と、朱乃がリアスの肩を叩いた。

 

「過ぎた事を悔やんでも仕方ありませんわ。これからは、そんな事を起こさせない様に皆で頑張っていきましょう?」

 

そう言われ、視線を裕斗と小猫に向けると二人も笑顔で頷いた。

 

「……そうね、あの子にこれ以上窮屈な思いをさせない為にも……皆で頑張りましょうッ‼」

 

「「「はい、部長‼」」」

 

グレモリーの言葉に眷属達が結束を強めるが、この中に錬二の姿はない。彼はクロノスの一撃で犬○家となり、まだダメージが治ってないので学校を休んでいる。それでも次は自分が勝つと豪語してるらしいが……

 

そんな事をしていたら、その眷属が封印されている部屋の前に着く。その扉は警察が使うKEEP OUTのテープで頑丈に止められていた。

 

「これが……封印?」

 

「いえ、これは一般生徒が入らない様にするための見せかけですわ。本物はリアスが掛けた封印術式です。」

 

朱乃の言葉通り、リアスが扉に手を翳すと魔法陣が浮かび上がりすぐに砕け、扉の鍵が開いた。

 

「それじゃ私と朱乃であの子を呼ぶから、皆は扉の外で待っててちょうだい。」

 

「あれ?皆で入らないんですか?」

 

「実はここにいる子は……すごい人見知りなんですの。だから先ずは私達からという事です。」

 

「あ、なるほど。」

 

リアスと朱乃が中に入っていくのを見送り、扉の前で待っている間、善子は小猫に話し掛ける。

 

「小猫、そいつはそんなに人見知りが激しいの?」

 

「いえ、あれは人見知りというより…」

 

小猫がそこで言うかどうか迷っていると……

 

「イィィィィィィヤアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼‼‼」

 

部屋の中からとてつもない声量の悲鳴が聞こえてきた。

 

「うえッ!?な、何ッ!?」

 

「高海さん、これは僧侶の子が部長達に驚いて悲鳴をあげただけだよ。」

 

「身内でこれって…」

 

あまりの大声に千歌は驚くが、木場の説明で何とか落ち着き、善子は呆れていた。

 

「落ち着いてギャスパーッ!?私達は貴方の封印が解かれた事を教えに来ただけよッ!?」

 

「これでもう自由ですわ。」

 

「イヤだアアアアアァァァァァァァァァァッ‼‼お外怖いいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ‼‼‼」

 

「………………これ、完全に引きこもりのセリフじゃない?」

 

「アハハ…」

 

善子の言葉に木場は苦笑いしか出来なかった。

 

それからしばらくするとリアスが外にいる者を中に入る様に呼び、千歌達が中に入ると中は部屋の中央に棺桶がある以外は人形等の可愛らしい物が多い部屋だった。

 

「へぇ~、棺桶ってこんな感じなんだ~。」

 

「それでリアス、そのBishopは何処なの?」

 

鞠莉の問いにリアスが視線をずらす。その方向に彼女達も視線を向けると、部屋の端に置いてある段ボール箱……その後ろに金髪の子がこちらに背を向けて座り込んでいた。

 

「ごめんなさいね、前々から写真とかで教えてはいたんだけど…」

 

「実際に会うのはやはり怖いそうなんです。」

 

「もはや、対人恐怖症ね…」

 

善子やリアス達がどうやって話をしようか悩んでいたら、千歌がその子に近づいていった。その右手には棒つきキャンディ。

 

「ひぅッ!?」

 

「ほ~らほら、恐くな~い恐くな~い……食べる?」

 

相手を怖がらせない様に優しく声をかけ、それに多少恐怖がとれたのか顔を千歌へと向けた。中性的な顔立ちは幼さが残りとても可愛らしい。

 

「あ…」

 

そして飴に目が行くと、それを取ろうと段ボール箱の陰から出てきて手を伸ばす……

 

「それ♪」

 

が、それに届く直前に千歌が手を少し引っ込め、空振りしてしまう。

 

「む…」

 

それに対抗心が芽生えたのか、再び手を伸ばすも千歌が手を引っ込めるので空振りになる。

 

「おいでおいで~…る~るるる~る~♪」

 

それを何度か繰り返していくと、僧侶はいつの間にかリアス達の前まで出てきていた。因みに小猫も飴を取りにいこうとしたが、リアスと朱乃に抑えられていた。

 

「フフ…‼とりゃッ‼‼」

 

「あ…‼」

 

充分に連れ出したと判断した千歌は飴を上に投げる。僧侶は釣られて上を見てしまい、その隙を逃さずに千歌が抱きつく。

 

「捕まえたッ‼」

 

「ぴゃああああああああああああッ‼‼!?!?!?」

 

突然の事に暴れるも千歌の方が力があるのか、その場でもがくだけ。そして投げた飴が僧侶の子の口に……

 

「……えい…‼」

 

「ああッ!?僕の飴ええええぇぇぇぇぇぇッ!?!?!?」

 

入る前にリアス達を振り切った小猫が飛び出し、空中でキャッチして横取りされてしまった。

 

「はい、もう1つあるから。」

 

「わぁ…‼ありがとうございます‼」

 

新たに出した棒つきキャンディ(小猫がイチゴ味で僧侶がメロン味)に僧侶は目を輝かせてお礼を言った。まさしく餌付けである。

 

「私の苦労は一体…」

 

「落ち込まないでください、リアス。」

 

その後、話をする前にリアスは僧侶の子にお菓子を見せられても知らない人には絶対についていかない様に厳しく言いつけたそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では改めて……この子が私の僧侶の【ギャスパー・ヴラディ】よ。人間と吸血鬼のハーフで神器持ちなの。」

 

お説教が終わり僧侶…ギャスパーの紹介を始めるが、当の本人は知らない人がいる事に緊張してるのか、視線が色んな方向に向き冷や汗が流れまくっている。

 

「封印の原因って、やっぱりその神器なの?」

 

「ええ……【停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)】と言って、()()()()()()()()()()()()()力があるの。」

 

「それって…‼」

 

「クロノスのポーズと似てないかしら?」

 

「Ohッ‼もしかしてその子の力でクロノス攻略法を…‼」

 

リアスの言う通り、彼の能力はクロノスのポーズと酷似している。ならばそれを使ってクロノスの攻略法を見つけられないかと思っていたが……

 

「いいえ、クロノスのポーズとは似ても似つかない……よくて下位互換ってところね。」

 

善子がそれをバッサリと切り捨てた。

 

「理由を聞いても?」

 

「私は天才魔導師……だから神器についてもある程度は知ってるわ。その神器は視界に映る物のみで所有者の力量次第で停止出来ないものもある……でもクロノスは違うわ。アイツは展開されたゲームエリア内にある【全て】を停止させる……それこそ神も魔王も関係ないわ。動けるのはただ一人、クロノスのみ…」

 

そう、クロノスのポーズは時間や力量といった制限が殆ど無い。例え似たような力を持っていようと、弱点が違えば何の意味もないし、むしろ弱点だらけな神器でクロノスの攻略法を探すなど時間の無駄に等しいのだ。

 

「それじゃ、クロノスの攻略法は無いって事にならないかい?」

 

「現状だと……そうなるわね。」

 

そこまで説明し、再びギャスパーを見る。

 

「だから、そいつの能力でクロノス攻略法なんて絶対に見つけられないってこと。」

 

「うわあぁぁぁぁぁぁぁんッ‼‼出てきて早々ディスられたあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼‼」

 

善子の遠慮が無い言葉にギャスパーは泣きながらリアスに抱き着いた。

 

「よしよし……さすがに言い過ぎじゃないかしら?」

 

そのリアスの言葉に、善子は表情を怒りにそめた。

 

「こっちはクロノスを何としても攻略しなくちゃいけないのよッ‼そんな生半可な事をやってる余裕なんて無いわッ‼‼」

 

そのあまりの迫力にグレモリー眷属達はたじろいだ。

 

「ど、どうしたのいきなり…」

 

「こっちはそっちほど呑気にしてられないのよ…‼アイツのガシャットを悪用されてるだけでもムカつくのに、下手すれば…‼‼」

 

善子の叫びが部室にこだまする中、部屋に突然魔法陣が浮かび上がった。

 

「この魔法陣は、グレモリー家の…」

 

そして魔法陣から出て来たのはリアスによく似た男性悪魔……彼女の兄で現魔王の一人【サーゼクス・ルシファー】だった。

 

「やあリアス、それにヴァーリ君の眷属達も。」

 

「お兄様ッ!?どうしてここにッ‼」

 

「それは今回のコカビエルが起こした事件について、三大勢力で会談をすることが決定してね……この学園を会談場所にする事になったんだ。」

 

「ここでですかッ!?」

 

「ああ、それでリアス達とソーナ君、ヴァーリ君と眷属達に今回巻き込まれた人間の子達にも出て欲しいんだ……ヴァーリ君達は強制だけどね?」

 

そう言い千歌達を見る目には、困惑が浮かんでいたのが鞠莉と善子には分かった。

 

「それはどういう意味?」

 

「……」

 

サーゼクスは鞠莉の言葉に俯いて黙るが、やがて意を決したのか顔を上げ……

 

「実は三大勢力がヴァーリ君とその眷属……そして君達が所属している会社【幻夢コーポレーション】が今回の事件に関与していると思っているからだ。」

 

そう……口にした。




いかがでしたか?

次回からは三勢力の会談になります。久し振りにお祖父ちゃんが出てきます。もちろんポッピーも久々登場です。


次回【三大勢力とConference‼】

「このワシ……リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの名において、ここに宣言する…」


では、次回でお会いしましょう。

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