女提督は金剛だけを愛しすぎてる。改   作:黒灰

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チラ裏で投稿します。あくまで実験です。今のところ。
実戦投入の覚悟が出来たら通常投稿にします。


naka kill you・改

 これは現実?

 それとも、ただの幻なのかな?

 

 けれど、崩れ落ちた足場は、確かに。

 風はどちらにしても吹くけれど、人生はいろいろあるけれど。

 

 哀れな私。風に流されて、流されるままに生きてきて。

 

 殺してしまったんだね。

 

 ねぇ。

 私、こんなことするために生きてきたのかな?

 

 

 ●

 

 

 海鳴りが聞こえる。命の海の息吹が鳴らす音。まるでオーケストラ。宵闇に篝火も付けずに奏でる音楽。波飛沫はシンバルのよう。海風は管楽器の荒い息吹のよう。そして、闇夜は降りた暗幕。一筋の光も漏らさない幕。

 

 なら、これは、観客の居ない演奏会。差し詰め、リハーサルみたいなもの。そう、孤独な。

 

 そこで、私は何なんだろう?分かる?

 そう、一人舞台に立つ一人のお道化。

 誰も見ていないところで、お道化の役割を演じている。

 

 お題目はすごくベターで、決まりきっていて、何のひねりもない。

 

 人類を守るんだ!選ばれし乙女達!

 

 ああ、ああ、なんてお約束。いつかの時代に通り過ぎた、あまりにあんまりなお約束な物語体系。

 それならばきっと結末はわかりきっているよね。

 そう、勝利という名のハッピーエンド。どれほどの陰鬱さで、どれほどの起伏で飾り立てても、最後に待つのがそんなものなら。

 みんな、わかってるんでしょ?

 

 分かっているなら、見る価値なんて無いじゃない。

 だから、見ないで。

 私なんて見ないで。

 見ないでよ。

 

 私が、私じゃない。演じているお道化なんて私じゃない。

 私が、私じゃない。私なのに私じゃないの。私以外も、私以内も、私じゃない。

 私なんてどこにもいないよ。だから、見ないでよ。

 

 夜が明けるまで、その目を閉じていて。

 お願いだから。

 こんな、夢に浮かされて弄ばれるマリオネットの私を、見ないで。

 恥ずかしくて、とても私には耐えられないから。

 お願い。

 見ないで。

 こんな、私じゃない私なんて、見ないでよ。

 

 これを、私だなんて呼ばないでよ。

 

 

 ●

 

 

 深夜の3時45分。

 冬の夜。

 夜明けは遠くて無限の距離みたい。

 

 見上げれば曇り空。どっしりと重くて、まるで壁のよう。そう、天井って言うより、壁みたい。コンクリートで出来た空。なんて気が塞ぎそうな空!

 月なんて影も形もない、だって空はコンクリート!ついでに鉄筋なんて通っていそうな、そんな石造りの空の下。

 そんなお天気の空に、影はない。だって、見れば見るだけ全てが影と呼べるんだから。

 

 一方で目の前は薄明かりみたいにぼんやりだけれど、見えている。

 波。波の群れ。吹き荒む風に駆り立てられるように、海面が跳ねて走っている。鼓動を絵にしたなら海になるのかもしれない。だからみんな海を見ると心が動くんだね。

 

 さてさて、そんな水が群れを生して跳ね回る、海という水平の上に、ぽつんと影が見える。見渡す限り影の世界の中でも、ひときわ濃くて、でも薄明るいそれ。

 

 見つけた。

 深海棲艦。

 海からやって来るわるいやつ。

 

 人の形をしているけれど、それは彼女たち――――――――女?でも、きっとあれはおんなの形。そいつらは人の形に近いほどに強い。でも、関係ない。落とす。この水の底まで、落としてあげる。

 でもなんて大物なんだろう。人型深海棲艦。この周りじゃそんなに見掛けないけれど、とっても珍しいお客さん。お客さんは落としてあげよう。まるでサーカスのブランコに乗せられた、無辜の観客みたいに。

 あ、でもあなたは悪いやつ。悪いやつは、死んじゃえばいい。

 

 ――――――――私も。

 

 那珂ちゃんは、悪いやつをやっつけるのがお仕事。

 お仕事をするんだ。

 

 右手がぽきり、と破裂音を鳴らす。腕が鳴るって言うか、指が鳴る。握った右手は、気合の証。

 さぁ、構えよう。

 

 すぐに指を開いて、太腿にセットした魚雷発射管に右手を伸ばす。

 全弾装填、大入りのそこから、指と指で挟んで四本の魚雷を引っ張り上げる。

 そして、羽のように右腕を広げる。もしかして、爪なのかも。

 左も同じように。

 ああ、肩甲骨ってもどかしいね。切り落せば羽みたいにもっと広げられるはずのこの羽は、まるで地上に縛られたコンドルみたい。

 

 深呼吸を一回。なんだか目が冴えていくみたい。それに、じーっと見ていると彼女がはっきり見えてくる。どんどんと、白い点みたいにはっきりと。狙うべき的みたいに。狙うべき的だから。

 

 さぁお立ち会い。魚雷はどうやって発射するの?

 そうだね、魚雷発射管から投げ出して、海の中を駆けていくのが魚雷。

 だけれども、私の方法は普通じゃない。体で覚えたこの方法は、体が思いついたこのやり方は。

 

 頭の中で繰り返してみよう。そして、それを現実にしてみよう。

 

 全身から力を抜いて。魚雷の重さに任せて、扇を描くように、腕を動かす。

 手首はスナップ。ドラムスティックを打面に叩きつけるように。そう、これは音楽!

 

 だから、

 

「おっ仕事―!」

 

 狙いを定めて、打つべし、だね。

 ドラムは投げるように叩くもの。投げるのに余計な力なんていらない。右回転で捻った体を、発条仕掛けみたいに戻す。一緒に腕を振り下ろす。手首は勢いに任せて軽く曲げて、水切りみたいに、アンダースローで魚雷を海面に投げた。左も同じように、左回転にひねって、戻して、投げる。同じことを左右対称に繰り返す。天秤みたい。

 

 すると、魚雷は投げられた勢いのせいで、スクリューの意味なんて無いくらいに海中を走っていく。まるでミサイル、いや、ロケット。

 そんな私の花火は、闇の中の遠く、波を叩いて走る彼女に向かっていって、

 

「あは」

 

 爆発。花火は爆発するもの。サーカスの昼花火、イベントの夜花火。どちらも美しいけれど、戦いのハッピーエンドには爆発はつきもの。

 美しい軌道を描いて飛んだロケットは、悪いやつを吹っ飛ばして炸裂した。綺麗に。

 八発の雷鳴が、闇の水平線でいびつに半球を描いて弾けた。

 

 爆音と波音が掻き消えて失せる寸前、私の耳には歓声のような断末魔が聞こえてきた。

 

「あはは」

 

 いいよ、すごくいいよね。

 サーカスにはそれがなくっちゃ!

 

 あは。

 那珂ちゃんのサーカスへようこそ。夜の天蓋はコンクリート、ペントハウスは石造りの海。

 夜は透き通って、ありありと演者達を照らすスポットライト。

 あなたも那珂ちゃんも、泣いて笑うお道化、クラウン、ピエロ。サーカスの花形、アイドルなの。

 

 あはは。

 サーカスへおいでよ。放り込んであげるから。

 泣いてよ。笑ってよ。喚いてよ。叫んでよ。

 いつのまにかあなたもクラウン、那珂ちゃんはクラウン、一緒にサーカスで踊ろうよ。

 さぁ、サーカスへ放り込んであげる。あなたの命がただの幻だったように、空中ブランコから、回って震える天秤から落としてあげる。

 こんなスリル、どこでも味わえない。まるで戦争みたい。だから、あなたは綺麗に赤く咲いてね。咲いたね。

 

 じゃあ次のお客さんはどこかな。サーカスはどこでも興行中。この無限に続く闇夜の中は、全部がペントハウスの中身なの。

 

 いた。もっと遠くに、違う方角に。また人の形をしている。人がいる。敵。的。わるいやつ。

 今日もサーカスは大入りだ。魚みたいなのから人未満、人型まで、ずっとたくさんお客はいるけれど、本当に大入りだ。長い黒髪をなびかせて走る姿。白い長髪をはためかせて駆ける姿。

 みんなで踊ろうファンダンゴ。

 

 踵を水面に叩きつけるように蹴る。前に体を進ませる。そして方向よ変われ、と念じる。すると舵が効いて軌道が曲がっていく。主機一杯。妖精さんがきゃあきゃあと喚いて那珂ちゃんを引き留めようとする。

 だめだよ、舞台から降りちゃいけないんだから。

 

 遠くの彼女たちとしばし並走。那珂ちゃんにまだ気付いていない。那珂ちゃんはずっと見えているのにね。

 

 那珂ちゃんは左腕と背中の“腕”を持ち上げる。そして、それが持つ砲塔を回転させて、背中の”腕”から二発、それと左腕から三発。

 炸薬が砲弾と空気をキックする。ズドン、と。バスドラムのような音。胸を打つような、低くて済んだ音。

 

 砲弾の五連打が、お客さんに向かってひゅいっと飛んで行く。音も追い越した速度で。そして、

 

「あはは」

 

 炸裂!ドカーン!英語じゃカブーンなんて言うんだっけ。とにかく大爆発。気持ちいいくらいに海面が爆ぜているのが見える。全部大当たり。すごい。那珂ちゃんすごい。那珂ちゃん最高。流石艦隊のアイドル。艦隊のセンター。だから一番強い。那珂ちゃん天才。超天才。

 

 那珂ちゃん、凄いね。

 凄いよ。那珂ちゃんは凄い。

 凄いから那珂ちゃんなんだ。

 那珂ちゃんは強いんだ。

 強い。

 凄い。

 アイドル。

 センター。

 那珂ちゃん。

 那珂ちゃんは、那珂ちゃん。

 那珂ちゃんは、那珂ちゃん。だから強い。

 那珂ちゃんは、那珂ちゃん。だから凄い。

 那珂ちゃんは。

 那珂ちゃんは。那珂ちゃんは。

 

 あれ?

 

 じゃあ、私は、

 誰?

 

 違う。

 私は、――――――――私なんだ。

 

 那珂ちゃんじゃない。

 

 

 ●

 

「那珂ちゃん?どうかしましたか?」

「え」

 

 気がつくと、ただ私は立ち尽くしていた。

 振り向いて目の前には、――――――――神通。

 私の、姉がいる。

 

 心配そうな声。心配げな顔。でも、何が起きたか分かっている。

 

 わかってるくせに。私に何が起きているのか分かっているくせに。

 目の奥で、失望の色が瞬いている。

 

 そう。

 この人は、私に失望している。

 私を”こんな風”にしておいて、でもそうでなくなった今の私に失望している。

 沈痛な面持ち。そんな顔の奥底では、きっと激しい怒りが渦を巻いているんだ。

 鉢金が灯りを弱めた探照灯の光を薄く照り返している。だから、こんな暗すぎる夜でも、彼女の姿ははっきり見えた。夜に慣れた目もその理由ではあるけれど。

 

 

 

 私は、彼女の顔から目を逸らす。そして俯いた。

 

 嫌だ。顔、見たくない。見られたくない。

 見ないで。見ないでよ。

 まるで怒られる子供みたい。

 みっともない私。惨めな私。

 

 いやだ。一緒にいたくない。何処かに行ってよ。私のことなんか、放って置いてよ。

 家族なのに、そうなのに、私は、彼女が憎くて、でも愛しているのに、こんなにも大事なのに、なのに、なのに、なのに。

 なのに?それしか言葉が、もう思い浮かばない。どうしてこうなってしまったんだろう。

 

 夢から醒めた自分は、こんなにも悲しい。

 

 怒られる。きっと怒られる。

 ”また”だ。

 また、儀式のお時間が始まる。

 

「ごめんなさい」

「那珂ちゃん」

 

 やめてよ。そんな名前、私じゃない。

 私以外、私じゃない。それ以外で呼ばないで。

 せめて、那珂とは呼ばないで。

 

「ごめんなさい、もう、やめてください」

「那珂ちゃん」

「やめてよ!」

 

 やめて。やめて。やめて。それだけは嫌!耐えられない、もう私が私じゃなくなるのは嫌だ!

 嫌だ!やめてよ、お願い!お願いします、だからもうそう呼ばないでって!

 

「那珂ちゃん」

「嫌!」

 

 駄々をこねてるなんてわかってる。

 けれど、

 

「いや――――――――」

 

 お腹を殴られた。頭を、左のこめかみを殴られた。

 脳が揺れて、頭が急速にぼやけていく。

 気が遠くなる。

 

 やめて、お願い、痛いのは嫌。怒られるのも嫌。助けて、お願い、こんなのもういやだ。

 

 右手で前髪を引っ掴まれて、顔を近づけられた。

 

 ああ、ああ、ああ、儀式が、始まってしまう。

 

「あなたは、誰?」

 

 私。

 

「私は、わ、た――――――――」

 

 腹を殴りつけられる。さっきより、深く、沈み込むような一撃。

 

「、ぃあ」

 

「あなたは誰?」

「いや、いや、い――――――――」

「あなたは誰?」

「ちが――――――――」

 

 否定する都度、みぞおちを殴られて、胃の中がシェイクされる。

 そして、

 

「ちが、う、――――――――うっ」

 

 繰り返される腹へのブローで、

 

 吐き気が、する。

 それを堪らえようと喘ぐように息を荒立てる私に、

 

「あなたは誰」

 

 もう一発。そして、

 

「い、いや、い、う、うぅぅあ、う」

 

 胃の中身を、吐き出させられた。

 海面に吐瀉物が勢い良く叩きつけられて、潮風と饐えた匂いが混ざって吐き気を更に加速させる。

 その勢いのままに、また残りを吐き散らす。

 

 ブラックアウト寸前の視線の向こうで、やっぱりお姉ちゃんは無表情なままに私を叩き続ける。私が催したものは器用に避けて。お腹を。胸を、その中心を。腹の中の内臓が揺さぶられて、その感覚が頭にも回って、何も考えられなくなる。思考を奪われる。私の人格の権限を奪われる。制御が外れていく。

 

「あなたは誰」

「あ、あぁ、は、ぁ、うえ、お、おうぅ」

 

 吐き出しきった私は、横隔膜の痙攣に合わせて不快な呻き声を漏らす。漏らさせられる。

 体が痙攣、ひくひくと、何かに怯えるみたいに、怯えるなんて感情どこかに行ったはずのなのに。

 

「那珂ちゃん」

「あ―――――はぁ―――うぁ――――ゔぁ―――――」

 

 絶え絶えな息の中で、その名前が聞こえる。

 違う。

 違う。

 違う。

 それだけは違う。

 

 違う。

 

「私は神通です」

 

 違う。

 

「ち、が」

 

 また殴られる。

 深く青あざの彫り込まれたお腹の真ん中を、抉るように。

 

「ゔぁ」

 

 もう吐き出すものなんて無い。吸ってないんだから、息すらも。

 

「那珂ちゃん」

 

 ひくついた体を打ち貫くように、また拳が刺さる。

 なのに、なぜかその一撃で私は息を吹き返す。

 

「――――――――はぁっ―――――――ゔぁ――――――――」

 

 身を反らして、はちきれそうな程に吸い込んだ空気。

 急激に供給された酸素が、脳を刺すように駆け巡る。

 

 そして、

 

 ――――――――

 ――――――――

 ――――――――

 ――――――――

 

 

 ●

 

 

「那珂ちゃん」

「那珂ちゃん」

「那珂ちゃん」

 

 那珂ちゃん。

 那珂ちゃん。

 

「な――――――――か」

 

 なかちゃん。

 

 那珂ちゃん。

 那珂ちゃん。

 那珂ちゃん。

 

 那珂ちゃん。那珂ちゃんってなんだろう。でも、那珂ちゃんは那珂ちゃんで、那珂ちゃんが、那珂ちゃん。

 那珂ちゃんの、那珂ちゃんが、那珂ちゃんに、那珂ちゃんを、那珂ちゃんは、那珂ちゃんと、那珂ちゃん。

 

「私は神通です」

 

 神通。神通。神通。神通。

 

 那珂ちゃん。

 神通。

 

「あなたは、艦隊のアイドル、那珂ちゃんです」

 

 那珂ちゃんって、なんだろう。艦隊のアイドルなんだろう。

 艦隊のアイドルなんだ。そうか、那珂ちゃんは艦隊のアイドルなんだ。

 艦隊のアイドル、那珂ちゃんです。

 

「那珂ちゃん」

「私が神通ですから、あなたは那珂ちゃんでしょう」

 

 そう、神通の那珂ちゃん。那珂ちゃんの神通。神通と那珂ちゃんはお姉ちゃんと妹。お姉ちゃんが神通だから妹の那珂ちゃんは那珂ちゃん。

 

「――――――――う、ん。那珂ちゃんは、那珂ちゃんです」

 

 那珂ちゃんは那珂ちゃんです。

 

 

 ●

 

 

「那珂ちゃん」

 

 那珂ちゃんを呼ぶ声がする。

 神通お姉ちゃんが那珂ちゃんを呼んでいる。

 それに応えて、那珂ちゃんは一回転。スケートの選手やプロのダンサーばりのターンを決めちゃうのだ。

 

「うん、那珂ちゃんにあとはおまかせ!」

 

 海面はスケートリンク、それともダンスフロア。踊れる場所。踊る場所。

 深海棲艦?お客さんだ。お客さんなら那珂ちゃんの手の平の上。ピースオブケイク。朝飯よりももっと前。

 

 

 

「――――――――じゃあ、また様子を見に来ますから」

 

 こないで。

 

 ――――――いいよ!那珂ちゃんはそう思う。そう思うのが那珂ちゃんだから、那珂ちゃんはそう思うんだ。

 

「大丈夫!那珂ちゃんはー、艦隊のアイドル!サーカスのヒロインなんだから!」

 

 そう、那珂ちゃんは艦隊のアイドル。サーカスのヒロイン。一人舞台を満たして埋める素敵な演者。

 那珂ちゃんは目から星を飛ばすポーズ。ウインクしてピース。腰もくいっと左前に曲げて。

 上目遣いはアイドルの定番ポーズ。

 そして那珂ちゃんは左足を軸にもう一度回転。今度は二回。二回もなんだぞ。

 

 那珂ちゃんが元気に那珂ちゃんだから、神通はその場をニッコリと笑顔で後にしていく。

 ひどいことされてもアイドルはスマイル。スマイルなんだ。それで全てがオーケーなんだから。いつだってスマイル。

 素敵な那珂ちゃんでニッコリ笑顔になったから、やっぱり那珂ちゃんはスーパーアイドルなんだね。

 

 あは。

 あははは。

 あははははは。

 

 さぁ。

 

 さぁ。

 

 さぁ!

 

 那珂ちゃんのステージは続くよ!続くんだ。ショウは続かなくっちゃ!続けなくっちゃいけないんだ!

 少なくとも今夜は。今夜というステージが終わるまでは。那珂ちゃんのステージはこの夜そのものだから。

 

 全速力。

 

 那珂ちゃんに気がついた深海棲艦のお客さんを出迎えに行く。Welcome to ようこそ!

 那珂ちゃんのサーカスへようこそ!

 とっても綺麗なサーカスだよ!

 夜に放り込まれたコンクリートのペントハウスなんだ!

 泣いているの?笑っているの?わかんない?だったら関係ない。関係ないくらい最高の、感動のショウを見せてあげるよ!

 だから、みんな那珂ちゃんと一緒にお道化てみようよ、軽く地獄へGO招待なんだからね!

 

 

 走る。海の上を駆ける。まるで滑車みたいに、滑るみたいに。下り坂のトロッコみたいに。

 トロッコの行き先は知ってる?

 

 地獄だよ!

 きっと地獄なんだよ!

 でも連れてってあげる!那珂ちゃんは空中ブランコ。ブランコに垂れ下がる戯けて惨めなピエロ。

 笑ってよ。嘲笑ってよ。そうしてみせてよ。笑って地獄のサーカスへ行こうよ!ワニ女だって見せちゃうよ!あなたの脳のキャパシティが足りるならね!

 

 那珂ちゃんの脳内で、サーカスのBGMが流れ始める。

 基本的にマイナーキー、優雅で奇妙な旋律が満ちていく。きっとあなたにも聞こえるはずだよ。

 聞こえるよ。きっと。那珂ちゃんが飾る舞台で、それが聞こえないはず無いんだから。

 

 あなたも空中ブランコに乗せてあげるよ。今度はどこに飛ぶと思う?

 

 あの世だよ!

 那珂ちゃんは天才クラウン、世界一のアイドル、天性のヒロインだもの。ラストシーンは感動的になるよ!

 一流の道化師はお客さんだって一流の演者に変えちゃうんだ。

 だから、だから、

 

 みないで

 

 ――――――――みんな、華やかに死んでね!そうして他のお客さんをお楽しみさせてね!

 紫の空に闇が溶けるまで、いつでもお客さんは大歓迎だよ!

 

 




一度書いたものをプロットとして再利用、という改稿方法を取ってみようとしましたが意外と途中からはうまく行かなくなりました。まだ一話やぞ。
ぶっちゃけ実験なので更新速度とか完結するかとかはあまり期待しないで下さりますよう願います。

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