幻想氷留記-A Humanbeing Trips Opposite World- 作:プエラリア炉端
と、爆発が先程と同じ様に起きた。
この幻想郷では毎日、こんな感じで何度も爆発が起きるのだろうか?
とりあえず逃げよう・・・と思って止まった。
さっき逃げたら私、死んでたよね。しかも無様に。
脚は爆発に怯えながらも、その場から逃げる事もせず留まった。
爪先を爆発の起きた森の西の方へと向け、ただ見ている他なかった。
「おい氷秋、お前ただの人間なんだろ?逃げないとまずいぞ!!」
「大丈夫」
精神的には大丈夫ではなかったものの、最早強がるしか、自らの雀の涙ほどもない勇気を振り絞る手立てが私にはなかったのである。
「・・・お前が言うならそうなんだろうな。
私は爆発の中心見てくるぜ」
そう言って魔理沙は先程と同じ様に箒で空を翔けていった。
と、いつぞやの《スキマ》が中空に生まれた。
「こっちの生活はどうかしら、氷秋ちゃん?」
「まだ生活するほど長くはいないです」
そうよね、と彼女は微笑んだ。妖艶な微笑に同性ながら心がキュンキュンする。
そういえば、この綺麗な人。名前を聞き忘れていた。
「ところで、貴女の名前は?」
「フフフ。私は八雲紫、こう見えて妖怪よ」
え、と驚愕の一言。
私は少なくとも妖怪や幽霊などは今まで信じてこなかった。
ところがここに来て魔理沙を見たとき、妖怪や幽霊もここには、ここにならいるかもと思わされてしまった。
だがまさか、この美しい女性が妖怪だったとは。
「私は貴女をあっち側へ帰す事が出来る」
「それは本当ですか!?」
私は疑心暗鬼、彼女の言う事を半分ずつ、信じるのが半分、疑うのも半分。
「私をあっちに!現世、でしょ?」
「そうよ。でも、帰してあげない」
「何でです?」
「・・・ここで貴女が成長するのを見ていたいのよ。
貴女が、かつて私と共にあった少女のように、ね」
何を言っているのかまるでさっぱりだったが、そのうち解るのだろう。
私は仕方なく目の前の《スキマ》に別れを告げ、次回入荷を待ちながら私は息を吐いた。
と、紫さんがとんでもない事をいった。
「貴女の能力はね、境界を操る能力なの」
目はこちらではなくどこか遠い場所に向けられていた。
「さて、・・・貴女の能力、教えてあげるわ。」
「貴女の能力は、《失敗をやり直す》能力。・・・厳密には《過去を繕う程度の能力》」
「過去を・・・繕う・・・」
思わず反復して、噛みしめる。
とんでもない事になってしまったのかも知れない、と今更思ったのだった。
「まあ、せいぜい頑張りなさい。ゲームみたいに《やり直し》の効くその力で、ね」
そう言うと、紫さんは《スキマ》の奥へと引っ込んで、その姿を消した。
・・・生きなきゃ。
能力とか何とか関係なしに、生きなければいけない。
そんな気がした。
「お~い!!」
と、爆発見物を終えた魔理沙が戻って来た。
「よし、お前をどうにかあっち側に送ってやるぜ」
「いや、私もう少しここで生活したい」
「そうかそうか・・・・・・はぁ!?」
これから始まるだろう物語は私の物語。
幻想郷という別世界で騒動に巻き込まれつつ、時に死んでしまいつつ生き続ける、私の物語。