幻想氷留記-A Humanbeing Trips Opposite World- 作:プエラリア炉端
よっ!魔理沙だぜ!
現世で生活していた女の子・氷秋。
それをあの紫が《幻想郷》に連れて来ちまったんだ!
しかも、《過去を繕う程度の能力》を与えて・・・。
それは《やり直したい》と願う度に過去に戻ってやり直しできる、なんてチートな能力だった。
氷秋が来た事で、幻想郷に、また新たな騒動が起きる・・・かも?
それじゃ第2話、始まるぜ☆
「うーん・・・」
魔理沙は悩んでいた。
圧倒的に、部屋の広さが足りない。
というのも、行く宛のない氷秋を泊めているからである。・・・と言いたくはないところなのだが、研究中の魔法の材料やら紅魔館の図書館から借りてきた魔導書やらで部屋の大半が埋め尽くされているからである。
・・・紅魔館、そうだそれだ!!
思い立ったが吉日、魔理沙は彼女を呼んだ。
「おーい氷秋~?」
二階にいたらしい、氷秋が上の方から声を発した。
「はーい?」
「今から一緒に出掛けるぞ~!」
「・・・ほーい」
紅魔館は霧の湖のほとりに建つ、赤レンガの洋館。
そこには吸血鬼スカーレット姉妹をはじめとして、数々の住人が住まっている・・・と魔理沙は言う。
そして魔理沙が用があるのはその中の一人。
何冊もの借りっぱなしになっていた魔導書を箒に吊るし、氷秋も連れて真っ直ぐ地下へ。
少し進むとそこに、突然大規模な空間が開ける。
「・・・ここが、紅魔館の大図書館・・・」
現世にはオペラハウスを改修して造った図書館がある、と写真で見た事があったが、こちらも中々、でかい。
天井に届きそうな程高く連なった本棚のほとんどはしっかりと厚い古書で埋め尽くされ、圧巻。
「えーっとパチュリーは・・・あ、いた!」
魔理沙は氷秋を箒に乗せ、一気に本棚の森を駆け抜けていく。
物凄いスピードに意識を持っていかれそうになり、すんでのところで堪える。
「おーいパチュリー!!頼みがあるんだ!」
「盗っ人に恩を売るつもりはないわよ」
藤色の寝巻きを来た、お人形のような少女が、魔理沙の視線の先に座っていた。
「・・・そこの娘は?」
「コイツは氷秋。しばらくの間、コイツ預かってくんね?」
「盗人の頼みを聞く義理は無いわ」
「これで見逃してくれ!!」
と、箒で吊るして持ってきていた大量の本をドンと積む。
「・・・今回だけよ」
「ありがとうなパチェ!!」
「貴女にそのアダ名で呼ばれたくないわね」
パチュリーさんは魔理沙とは仲が良い様だった。
「よろしく、と言いたいところだけれど。
・・・とりあえずレミィに許可を取らないといけないわ。彼女がこの館の主人ですもの」
スカーレット姉妹の片割れと、とうとうご対面という事か。と私は思わず身構えてしまう。
「フフ、初々しいわね。その内実験させて頂戴」
遠慮させて頂きたいです、と言いたかったが、その前に目的の人物・・・とまではいかなかったが、ニアミスの人物が現れた。
「妹様、お待ち下さい!!」
妹様?と頭に疑問符が浮かんだが、その直後、悠長に考え事できなくなった。
《妹様》が図書館の、本棚の一角に突っ込んでいったのだ。
ドォンと爆音が鳴り響く。図書館だからか、余計巨大な音で。
「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!」
妹様はそして、こちらへ直角に軌道を変更して飛翔してきた。
箒とかなくても飛べるのか!!
と今更知って、戦慄が走った。
しかも姿がいわゆる《ロリ》だった事が、その戦慄をさらに増強した。
と、私と妹様は直撃した。
上に跨がられ身動きの取れない私を妹様は、とても興味津々な目で見つめてきた。
金髪に紅いくりっとした眼、七色の飾り羽に色白な肌。
私のイメージした吸血鬼とは少し違う気がした。
「ねぇパチェ。これ、人間でしょう?」
「ええそうよ。貴女のオモチャではないけれど」
え、今オモチャって言って・・・。
と思考は再び遮られた。グニャッとした感覚の直後、妹様の姿が忽然と消えたのだ。
「咲夜、ご苦労様」
「いえ。これも私の仕事ですので・・・」
と、先程までいなかったメイドさんが姿を現した。
左手には妹様を抱えている。
銀髪に青地のメイド服、白いエプロン。まさにイメージ通りのメイドさんである。
「氷秋さんですね。館主レミリアお嬢様がお待ちです」
こちらへ、と咲夜さんに手をとられ、不覚にもドキッとしてしまう。
咲夜さんは妹様を背中に抱え直すと、指をパチンと鳴らした。
一瞬、何があったのか解らなかった。
どこか別の場所に、瞬間移動していたのだ。
丁寧に、咲夜さんは三回ノックして、声を発した。
凛とした声が廊下に響く。
「レミリアお嬢様。来客がお見えです」
「・・・入りなさい」
部屋の中から聞こえたのは幼い声だった。
おそるおそる扉を開く。
「失礼します・・・」
「掛けて。怖がらなくてもいいわ」
紅い瞳に白い肌、コウモリの羽にチラリと覗く八重歯。
まさに吸血鬼。名の通り《紅いヴァンパイア》だった。
幼くもただならぬ気魄を持った紅眼が、私を見て言った。
「初めまして。私はこの紅魔館の主。
レミリア・スカーレット。貴女は?」
「・・・私は氷秋と言います。《外》から来ました」
「奇遇ね。実は私達もよ」
と言ってもかなり昔だけれど、と言って微笑する。
「許可するわ。貴女をここに住まわせてあげましょう。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「貴女はもう少し鍛えなきゃ。咲夜」
「はい」
「美鈴にこの娘を任せてみましょう」
「・・・御意に」
うわあ、本当にこんなやり取りあるんだあ、と感動に浸ってしまった。
主人の命令に、『御意に』という従者の応答。
王道かつ至高の主従関係だ・・・。
「・・・それでは氷秋さん、こちらへ」
私はこうして、紅魔館で暮らす事になった。
とりあえず、明日までは生きていられそうだ。