幻想氷留記-A Humanbeing Trips Opposite World- 作:プエラリア炉端
レミィに頼まれたから、《前回までのあらすじ》を。
紅魔館で住む事が決まった氷秋は、うちの門番・紅美鈴があずかる事に。
最初こそ馬鹿にしていた様だったけれど、暴漢に襲われたところを助けられてすっかり惚れちゃったみたいね。
さ、続きを見てみましょう。どうなることやら・・・。
陽が昇るか昇らぬか、まだ空も薄暗い頃、美鈴は既に修行に勤しんでいた。
指立て伏せ、三本指倒立歩行、型、瞑想・・・。
どれもこれも毎日欠かす事なく続けているというから、改めて彼女の凄さを実感させられる。
私は美鈴さんより少し遅く起きて、同じ様に修行しようとして怒られてしまった。
「最初からこんなのやったら、流石に死にますよ!!」
・・・そうだ。そうなのだ。
段階を踏んで少しずつ上達するのが普通なのである。
だが私は、『死ぬ』という事に抵抗があまりなくなっていた。
こっそり美鈴さんと同じメニューで修行しようとして、既に何十回と死んでいるからである。
私の《過去を繕う程度の能力》は、何も死なないと発動しないわけではない。
願えば過去に戻れる。いつでもチャンスを取り戻せる。
この力は控えめに言って『ズル』だ。『バグ』と言っても過言ではないだろう。
だが、私はそんな『ズル』を利用してでも、少しずつ上達していった。
普通の人間ならまずいくつ命があっても足りないだろう鬼畜メニューを、美鈴さんも驚きのハイスピードで習得してしまった。
ある日、私はレミリアお嬢様に呼び出されて、館の中へと赴いた。
「氷秋・・・。私の能力が何か、貴女に判るかしら?」
いいえ、と素直に答えるとお嬢様は仰った。
「何故か貴女には使えないのよ、私の能力が。
・・・私は、人の《起こり得る可能性》が全て見える」
解らない、というのを顔に出すと、お嬢様は分かりやすく言い換えて下さった。
「要するに私には、人の《運命》が見える」
「運命、・・・ですか」
それがどういう事を指すのか、今度はすぐに解った。
私には辿る運命がない、という事だ。
「貴女の運命を視ようとすると、貴女すら視えなくなってしまうの。
貴女はもしかして、存在していないのかしら?」
「どういう事でしょう?」
「貴女は《外》から来た、と言っていたわね。
存在しているとは即ち、人々の記憶に残っているという事と同意よ。
ここは忘れられたモノが集まる世界だけれど、貴女の場合違う。
《忘れられていないのに、存在が無い》の」
最早私の脳裏には、その説明の最悪な結び方しか浮かばなかった。
「私はそもそも、存在していない・・・?」
失意の中私は美鈴さんの元へ戻ろうとした。
門まで歩いて、私はレミリアお嬢様に言われた事を思い出した。
《忘れられていないのに、存在が無い》
どういう事なんだろう。
考えるとますます、謎しかなかった。
門の前にある噴水の縁に座って、思考にふける。
時間が過ぎるのも構わず、どんどん深みへ落ちていく。
内向世界、精神の内側へと。
『・・・やあ(・З・)/。久しぶりだね?』
「・・・誰?」
『忘れちゃったの?私だよ、わ・た・し!!』
「私だよ、って言われても。貴女の事、解らないの」
『じゃあ同じじゃん。私だって貴女の事解らないもん』
「久しぶりじゃないじゃないの」
『私の事無視してたくせに。私自身の事を』
「・・・え?」
『私を思い出して。貴女にとって強い力にもなり、良き頭脳になり、最初から最後まで、貴女と共にあるモノ』
「・・・!」
目が覚めると木造の天井がお出迎えしてきた。
ここは紅魔館ではない。だとすれば・・・?
「目覚めたのね、良かった」
紫のサラサラの髪の毛、赤い眼、そして兎の耳。
・・・うさみみ!?
「貴女、見ない顔だけれど人里の人?・・・じゃないよね。服が村に売ってる感じじゃない」
「・・・えっと、貴女は?」
「私?・・・ここで医師見習いをやってる、鈴仙よ」
そう言って鈴仙は、『師匠ー!!』と誰かを呼んだ。
「起きたのね《外国人さん》?いいえ、《外》の人、って言うべきかしら?」
赤と青の派手なナース服を着た女性が、奥の方から現れた。どうやらこの人が鈴仙の師匠らしい。
「私は八意永淋。早速だけど貴女を、テストするわ」
永淋の言うテストとは何なのか?
次回第3話に続きます。