フランは成長するのか?   作:天澤星三

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第三話 ~フランの恐怖~

「紅魔館の吸血鬼の娘、妹の方また事件を起こしたらしい」

「ああ、他の紅魔館の連中は常識ってもんをわかっちゃいるがあの妹だけはもうかんべんならねぇ」

「霊夢さん! どうにかしてくだせぇ! わしら怖くて怖くて!!」

 

 ああだこうだと議論する町の人々。上座に向かって縦にニ列で向かい合うように座っている。しかしその視線は前に座っている町民ではなく上座に座している巫女に向けられていた。

 それは町民に呼び出され渋々やってきた霊夢だった。赤と白の巫女装束に身を包み正座し、そしてだるそうにしていた。

 これはフランの暴挙に耐えられなくなった町民が霊夢を呼び出してどのような対策を採るか協議しているのだった。と言うよりもそんなフランを野放しにしておく霊夢を皆で攻めているといった方がいいかもしれない。

 フランが町のすぐ近くで暴れまわり壊しまくるせいで怖くて仕方がなく、どうにかして欲しいというのが町民の要望だった。

 

「といわれてもねぇ……」

 

 霊夢は肩を落とし、ぬらりくらりと町民の抗議をかわしていた。

 

「警告くらいできるでしょう!? もう暴れまわらないでくれって!」

「注意しても聞くような子じゃないのよねぇ……」

 

 霊夢が注意なんかしにいったが最後、辺りを破壊し尽くす勢いで襲ってくるだろうし、その後片付けも面倒だ。何よりもフランの遊び相手は骨が折れる。

 紅魔館の住人は相手をしてくれて助かると大喜びするだろう。が、そんな事霊夢にはたまったものではないのだ。

 この案には霊夢は渋い顔をする。

 

「じゃあ殺してくだせぇ! まだ人里に被害が出ていないことが不思議なくらいでさぁ」

「でもそれで殺すのもねぇ」

 

 これが町民の本音なのだろうが、もしそうなれば紅魔館の連中が黙っているわけがなく、関係者全員を倒していかないといけなくなるだろう。そうなった時の被害(主に霊夢の)は計り知れない。更に霊夢が失敗した場合、紅魔館の連中は町に仕返しに来るかもしれない。そっちの方が被害が大きくなるだろうしやっかいだ。それにせっかく築きあげた友好関係を壊してまでそんなことするのはナンセンスというもの。

 だからこれにも霊夢は渋い顔をする。

 

「じゃ、じゃあどこかに幽閉するとか!?」

 

 町民の気もそう長くないようだ。だんだんあせりの色を見せ始める。それもそのはずで、唯一頼みの綱である霊夢がずっとこんな調子なのだ。

 

「う~ん……閉じ込めるのは可愛そうじゃない?」

 

 だからこんな霊夢の妖怪の肩を持つような一言についに町民の一人が痺れを切らした。

 

「霊夢さん! あんた巫女でしょう! 博麗神社の巫女でしょう!! 妖怪なんかに味方するなんてどうかしてる!!!」

 

 怒号のような啖呵が室内に轟き響く。のらりくらりと攻めをかわしていた霊夢もついに来たかと、こうなる事は分かっていたので耳をふさぐ。だがあまりの迫力に自然に姿勢がのけぞってしまう。

 更に悪い事にこの場には同じ不満をもった町民が大勢いる。同じ志を旗に掲げ啖呵をきれればそれに続くの人が集まり続くのが世の常だ。一人では出来ないがこのように皆で集まって抗議する、という連中にはここが攻めどころだろう。

 それを明示するように仰け反り戦く霊夢に他の町民が次々に野次を飛ばす。

 

「そうだ! アイツは妖怪だ! 巫女のあんたが助ける道理はないんだど!?」

「いや! やつは悪魔だ! この間なんて山が丸ごとなくなってただ!」

「明日はわが身だべ!?」

「そうだそうだ! こういうときこそ動いてくれないとわしらは何のために博麗神社を崇拝しお賽銭を入れてたんじゃ!」

「お賽銭……全然なかったんですけど……」

「じゃかぁしい!」

「ひゃっ」

「それはあんたがしゃんとしとらんせいじゃろう!」

「それがあんたの日ごろの行いの結果じゃ!」

「だから胸もそんななんだ!」

「腋出しゃいいってもんじゃねぇぞ!」

「恥をしれ! 恥を!」

 

『だまれこの愚民ども! 黙って聞いてりゃいい気になりやがって! いい!? 私の日ごろの行いが悪いからお賽銭が少ないんじゃないの! あなた達のお賽銭が少ないから私がこうなってしまったのよ!』

 

 などと言えば賽銭が0になってしまう可能性があるから言えず。(言っても自分がだめなのは変わらないのだが)

 押されっぱなしの霊夢。これは収まりがつかないなと、一旦打開策を練ることにした。座禅を組み手を組む。

 さすがは巫女というべきか。精神統一し、もう周りの騒音は聞こえない。

 そんな霊夢の異様な雰囲気に気付いたのか町民もいつの間にか静かになり、息を呑んで霊夢を見守る。何かいい案が出てくるに違いないと、あつい期待を胸に町民は待つ。

 ポクポクポクと木魚の音、直後に『チーン』と響く鐘の音。次の瞬間、霊夢の目が見開かれた。生唾を飲み込み町民が霊夢を凝視する。口をへの字に結び、目を見開き眉にしわを寄せる。

 霊夢が突然大げさな動作で脇をふんだんに見せて片手を天に掲げ掌を広げる。そこから、ゆっくり地面と水平になるまで降ろし、町民に掌を見せるように手を突き出す。まるで歌舞伎でも見ているかのようだ。

 その歌舞いた霊夢が一言。

 

「後五分待って」

 

 町民はキレた。切れた町民の一人が霊夢の胸倉を掴んで持ち上げる。

 

「おんどりゃあああ! なめとんのかああああ!」

「ただわしらに腋を見せただけじゃねぇか!!」

「後五分ってなんだ! 寝るつもりか!? もうすこし~ってか!? 早く目覚めろおおお! その間違いから覚めろおおおおお」

「ちょっ苦しい苦しい! ギブギブ! 死ぬううぅぅ……」

 

 霊夢はあくまでも巫女であり、この町唯一の頼みの綱だ。あまり手荒な事はしてはいけないと思ったのだろう。すぐに開放された。まだ霊夢に襲いかかろうと構える連中を別の町人が抑える。その間に霊夢は乱れた服装を正し息を整える。

 

「ふう。今のはちょっとした冗談よ。」

「じょ、冗談!?」

 

 よいしょ、と、もともと座っていた上座の位置に座りなおす霊夢。礼儀正しく正座で膝の上に両手を乗せる。

 そして釣り目気味にまっすぐ前方にいる町民達を睨みつける。すると唐突に

 

「つまりまとめさせてもらうとこういうわけよね」

 

 ときりだした。頭で事の成り行きを整理するように目をつぶる。そして一呼吸するかしないかの間に霊夢は目を見開いた。

 

「あなたたちは結界が張られているにもかかわらず、町の周りでやり放題やっている、町へ入ってこれもしない幼い妖怪が、怖くて怖くて仕方ないから殺せ、と?」

 

 いきなり真顔になって一息のうちに、少し低めの声で一気に言い放つ。そんな霊夢の言い回しにあっという間に飲まれていく町民。

 それもそのはずだ。襲って来もしないもの、いや、襲いたくても襲えないものに恐れ戦き、喚き散らした哀れな町民達。それ今の自分達の姿なのだ。それを霊夢の言葉が鏡となって町民達の姿を映し出す。

 哀れな自分達の姿を見た町民達はもう何も言うことも出来なかった。霊夢の威圧感もあいまって誰も口を開けない。

 

「全く、さっきまでギャーギャー喚いていたのにもうだんまり?」

 

 町民は皆そろってうつむき誰一人として喋らない。

自分達の愚かさ、結界を信用していなかった事に対して霊夢の怒りを買ってしまった事。霊夢の切った啖呵は自責の念を町民の仲で大暴れさせていた。

 

「警告しろだの殺せだの、物騒な事を喚くならそれ相応の、私が納得する理由を持って来なさいっ」

 

 もう誰も喋ろうとするものはいない。一人あきらめたように座る。それを機に一人、また一人と座っていく。まるで親に怒られた子供のように背を丸めうつむく町民。座っていても町民を見渡せるほどは言いすぎだろうがそれほど皆縮こまってしまっていた。そして霊夢はというと、

 

(くぅう~、たまんないわ、この調子に乗った愚民どもを言い負かした時の優越感! 嗚呼、幸せ)

 

 等と、思っていたりした。巫女として、人間として最低である。

 

「オホォン!」

 

 霊夢はしょんぼりと落とした町民達の視線を強引に押し上げ引き寄せる。

 

「という事で、議論の余地はないと判断します。誰も反対意見は無いわよね? これにて解散ってことで」(早く帰って連ドラドラドラドラえも~んなんちゃって。)

 

 と、そこにルンルン気分の霊夢の解散を妨げ手を上げるものが一人。

 それはフランに常識を学ばせるための計画の場所となっている大島酒蔵のライバル店、小島酒蔵当主の小島雄大だ。

 肥満体系の初老の男。白髪の禿げ上がった頭に顔にはしわがいくつも刻まれている。

 

「ん? 何? 早く連ドラ……早く帰って修行の続きをしないといけないんだけど?」

 

 小島当主は手を下ろし不敵な笑みを浮かべている。

 霊夢はいやな予感がした。もしそれを言われると一気に立場が逆転する泣き所。それどころか袋叩きに会うかもしれない。どうするかを考えるまもなく、小島当主は芝居がかった演技で斜め上を見ながらそして思い出しながら『たしか~』と切り出した。

 

「これは噂で聞いた話なんだがね。その娘、特別な能力をもつらしい」

 

 とは、『ありとあらゆるものを破壊する能力』だろう。これが今の霊夢の泣き所だった。

 それは全て、何でも、壊せるという事である。石だって、山だって、ダイヤだって、それはもう霊夢が張った強力な結界だって同じ事。

 それは同時に霊夢の切った啖呵が通らなくなるという事だ。あんな啖呵の切り方をし、あまつさえ町民をコケにしていた。

 それが町民を問い正した神聖な叱咤からただの暴言と化すのだ。更に霊夢がそれを知っていたとなると火に油だろう。

 町民は皆両隣の顔と顔を見合わせる。

 霊夢の作った綺麗なシナリオは今崩れ去ろうとしている。

 

「誰か知っているか?」

「いやぁ、しらないなぁ」

「あ、あれよ……だっぺ、血を吸う能力だっぺ」

「ああ、そりゃ吸血鬼だぁ。あたんまえだっぺぇ」

「なんだぁ、そんなこと知ってるっぺよ」

「もぉ、小島さんもおちゃめやねぇ」

「んだんだ。ワシらてっきり霊夢さんに逆転できる位に危険な能力かと思ったっぺ」

「できる」

「ちっ」

 

 霊夢がのさり気に話を逸らすシナリオも小島当主の肯定によって簡単に弾かれてしまう。

 

「ありとあらゆるものを破壊する能力、だったかな? 霊夢さん」

 

 ニヤリ、と片方の口を吊り上げて多いしわをより多く、そしてより深く刻ませ、霊夢に問いかける。

 町民達の視線は小島当主から一気に霊夢へ移される。流れは完全に小島当主だ。

 

「ええ……」

「なっ」

「じゃあ強力な結界も壊されてしまうじゃねぇべか!」

「霊夢さん! あんた知ってて」

「え……と、どうだったかな~ちがったような~」

「どうなんだ霊夢さん!」

「あんた、本当に知って!」

「ひい!」(ころされるうううう!)

「あんた分かってたな! ワシらが知らないと思ってあんな事!」

「こ、この! もうこんなヤツ巫女として認められねぇ!」

「そうだそうだ!」

 

 奮起した町民達が次々に立ち上がり霊夢に飛びかかろうとする。

 

「みんなやっちまえええ!」

「待ってください!」

 

 さっきまでニヤニヤ笑っていた小島当主がその声の主を睨みつける。それは新之助だった。小島当主経営の小島酒蔵のライバル。大島酒蔵当主、大島新之助だ。

 新之助は困っている霊夢を見ていられなかったのだ。心の優しい青年なのだ。

 しかしこんなど修羅場に待ったをかけるのは無謀だ。怒りの矛先が自分に向いてしまうかもしれない。新之助のお付のものもわなわなと震えて新之助を思いとどまらせようと必死だ。

 

「ああ!? 何だ! 青二才が! こいつは俺たちのこと馬鹿にしてたんだぞ!? もう我慢なられねぇ!!」

「はい、でもそれには何か理由があると思います」

 

 新之助に突っかかってくるのはガタイのいい大男だ。農作で鍛えたのだろう。こんな男に殴られたら新之助などひとたまりも無い。

 しかし新之助は臆す事はなかった。

 

「理由?」

「僕達を不安にさせないよう、こっそり裏で解決しようと。そしてそんな事で慌てふためく僕達にこれからも不安な事は一切無いと、安心させようとしてやった事ではないでしょうか?」

 

 筋は通っている理屈。その穴も見つからない。皆の勢いは一瞬そがれる。町民はその場で棒立ち状態。

 しかし新之助の言った事は理屈はいいが憶測だ。憶測で言う理屈などどこまでいったって屁理屈にしかならない。

 

「僕達を馬鹿にしたのだってその事を気付かせないように、カモフラージュするためでしょう。そうですよね? 霊夢さん」

 

 だから反論される前に釘をさす。町民は霊夢の方を見る。

 

「ええ、皆をあまり不安にさせたくなかったの」

 

 そしてこの変わりようである。いけしゃあしゃあと言い放ち少し残念そうに目を細める演技までしている。そんな霊夢に困惑気味の町民。後一歩、霊夢はそう判断した。

 

「皆にあんなこと言って私も心苦しかった……でも、ばれたなら謝らなきゃね。ごめんね、だって私……皆のことが大切だったから!」

 

 ハリウッド女優も真っ青の演技である。決して名演技ではない。

 

「わ、わしらは間違っていたのか……まさか霊夢さんがそんなにわしらの事を……」

「連ドラ見たいなどと言って早く帰えろうとしたのは準備しようとしていたのかっ」

「すまんかった!霊夢さん!なんてお詫びしたらいいかっ」

 

 町民は口々に謝罪の意を示し始めた。

 

「いいんですよそんなの、お賽銭さえ入れてさえくれさえすれば」

 

 霊夢は跪いて謝る町民の方をポンポンと叩く。そして誰もが癒される天使スマイルを放つ。

 そんな仲で霊夢は新之助に軽くウィンクするのだった。新之助はそれには苦笑い。苦笑いするあたり霊夢の意図はお見通しでその場を納めるためにあんな事を言ったのだろうが。

 

「で、では霊夢さん! あの吸血鬼の娘を討伐してくれるんでぇ!?」

「あの悪魔を本当に退治してくれるんですかぃ!?」

 

 町民達もうすうすは感づいてはいるだろう。しかし新之助が言ったこの流れに乗れば霊夢はフランをどうにかしてくれる。霊夢をいためなくてもすむ。ここが落としどころだろう。そう自分に言い含めて更に霊夢に釘を刺す。

 そしてこうなったら後に引けない霊夢。

 

「わかったわ。私にドーンと任せなさい!」

 

 トンと胸を叩く。町民は歓喜し霊夢を崇め奉る。

 

「おお~霊夢さん万歳!」

「これで安心だべぇ!」

 

 

現在

 

「私人里に行ったことなんかないよ!? 人を襲った事もないし!」

 

 座った体勢から動いたせいなのか、昼間の猫ではないが今のフランはそんな風に四つん這いになり、身を乗り出す。

 身長差もあって体をそり返し新之助に詰め寄って睨む。というよりも何かを訴えかけるような目で困ったような表情をしている。

 フランの大きな赤い瞳が月の光に照らされ明るい紫に色が変わっている。それがとてもよく分かるくらいにフランの顔が新之助に近づけられる。

 本人に意図は無いだろうがその姿はまるで何か撮影のポーズをとっているかのようだ。胸はないものの自分達とは違う異型の、人形のように美しい顔立ち。さすがの新之助も顔を赤くする。

 

「そ、そうだね、確かに君は何も危害は加えてないけど」

「じゃあなんで!?」

 

 そんなフランの表情は困ったようなそれから怒ったものへ変わっていく。

 

「でもすぐ近くで危ないことをされると、自分達にもいつか災いが降り注ぐんじゃないかって思っちゃうものなんだ」

 

 新之助はゆっくりとなだめるようにフランに言い聞かせる。

 

「そんな……」

 

 フランのその言葉に理不尽だ、と言う感情が露骨に表れていた。

 今新之助が言った事は人間の本質であり吸血鬼であるフランには理解できない事だった。恐怖という異物に人間は敏感なのだ。それ故少しでも危険を察知すると逃げる、守る、守られる、迎え撃つ、そう言った身の安全を保障する何かの存在を見出さなければ不安で不安で仕方が無いのだ。

 先ほどの会議での町民の騒動も決して大袈裟なものではないのだ。

 

「皆怖いんだよ。それで君をここで」

「それであいつら私を……許せないっ」

 

 顔はうつむいてもう月の光も届かず表情は読めなくなった。『あいつら』とは紅魔館の住人だろう。自分を助ける事を放棄し、ただここに放り込んで幽閉させるか否か運任せの『あいつら』という意味だろう。

 

「違うんだフランちゃん!」

 

 もうフランには聞こえていなかった。なにやらぶつぶつ言っている。自分の世界に入ってどうやって皆を殺そうかと考えていることだろう。

 

「皆……八つ裂きにして――」

 

 そんなフランの両肩を新之助は掴む。フランは驚いて自分の世界から引き戻される。そしてふっと顔を上げた。

 フランの少し色素の薄い金髪のサイドテールが一瞬フランの顔の前を通る。通り過ぎた後には真剣な今までに無い新之助の表情があった。

 肩をつかまれて驚いた事もあり、一瞬新之助と目が合うがすぐに顔を背けてうつむいてしまう。その瞳は長いまつげによって隠れ、もう見えない。それでも新之助は続けて話す。

 

「聞いてフランちゃん。あの時決まったのは霊夢さんがフランちゃんをどうにかするという事だけで具体的にまだ何も決まってはいなかった。だからあの後また会議が開かれたんだ」

「……?」

 

 

回想

 

「今日は何を話し合うだ?」

「あれだろ? どうやってあの吸血鬼を黙らせるか」

「殺しちまえばいいだよ。それが一番だっぺ」

「んだんだ。霊夢さんなら簡単にやれるだ」

 

 そこは前と同じ会議が行われた場所。前のように上座に向かって二列に並び町民は向かい合って座っている。唯一違うところは上座に霊夢の姿はないということ。

 

「しかしどうしたんだ? 言い出しっぺの霊夢さんがいないっぺ」

 

 会議開始の時間はとっくに過ぎている。もしかして忘れているのではないか。と、そんな疑惑が話題になり始めそうな時に会議室の扉がガラガラと開く。

 

「ごめんなさい、すこし遅くなったわ」

「やっときただか」

「霊夢さんおそ――」

 

 霊夢が入ってきた瞬間、町民達の時間が止まる。霊夢を除いて。

 

「ん? どうかしたの?」

 

 町民は誰も喋れない。恐らく喋っただけで彼女の怒りをかい八つ裂きにされるかもしれなかったからだ。

 

「ひっ」

 

 町民の小さな悲鳴が静かな会議室の中を駆け巡る。それもそのはずだった。

 

「な、何でそんなやつらを」

「私に任せるって言ったじゃない。正確には任せろだけど、あなた達も納得したでしょ?」

 

 その者は幼い体に大きな二枚の羽を背中に有し紫色の髪に赤い瞳。ゆっくりとそして堂々とした歩みで部屋に入ってくる。

 実に堂に入ったその歩みは周りの雰囲気を一気に変えるほどのカリスマを発していた。

 なんとやってきたのは渦中の人、フランの実の姉レミリア=スカーレットだった。

 そして咲夜が斜め後ろを付いて行くように入ってくる。

 

「こんばんは」

 

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