フランは成長するのか?   作:天澤星三

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第四十話 ~エンドロール~

 幻想郷を世間から隔離した歴史的な事が起こった次の日。昼間だというのに薄暗い紅魔館の地下室で、フランが帰ってきた祝いとばかりに魔理沙が本気の弾幕ごっこに付き合ってやっていた。

 しかし一ヶ月間人里に言っていたフランはブランクがある。さらにブランクがあるからと手加減するほど魔理沙は甘くはない。手加減されてもフランが怒るので、魔理沙は鬼畜なまでに本気でフランの弾幕ゴッコにあたった。

 結果は言うまでもなく、フランの完敗だった。

 

「はあはあ……」

 

 魔理沙の弾幕に叩き落され、帽子も服もぼろぼろになったフランは大の字になって地下室の天井を見上げていた。

 今は夏の終わり、秋の初め。だがまだまだ気温は高い。それに対し石造りの地下室の床はひんやりと冷たい。弾幕ゴッコで火照った体をクールダウンするのに丁度いいようで、フランはすぐに立ち上がらず、全身を床に付けたまま動かない。

 

「まだまだ甘いぜ」

 

 憎まれ口を叩きながら、箒の上に座った魔理沙がひらひらと、舞う葉のように仰向けに倒れているフランの周りを回って降りてきた。そんな魔理沙の憎まれ口に返す余裕もないらしく、フランはまだ息を上げている。

 

「よっと」

 

 魔理沙はフランに歩み寄り、帽子を脱いで胸に当てるところんと寝転がった。手を枕代わりに頭の下へ、足は組んでリラックス。フランと同じく、床の冷たさを堪能しているかのように目を細め、やがて瞼を閉じる。

 

「はぁはぁ……なによっ……寝転んじゃって」

 

 それに気付いたフランが息きれぎれになりながら、自分と同じ格好をする魔理沙を横目に睨みつける。

 

「負けた奴がどんな気持ちで天を仰いでるのかと思ってな」

 

 返ってきた答えは哀れみのかけらもない言葉。敗者であるフランへの追い討ち以外の何者でもなかった。

 

「馬鹿魔理沙!」

 

 とフランは叫んで魔理沙に背を向けて横になる。

 勝った者へは何を言い返そうと負け犬の遠吠え、勝者にとっては賞賛の言葉となってしまう。それを分かっていて魔理沙はやっているのだから意地が悪い。

 それを見て魔理沙は笑っているだけだったが、やがてぼそりと呟くように放った言葉にフランは目を丸くすることになる。

 

「フラン、お前弱くなったな」

「えっ」

 

 フランは驚いてビクつくように身を跳ね上げ、魔理沙の表情を伺う。その魔理沙の発言の真意を確かめるために。しかし魔理沙は眠っているかのように目を閉じていて表情が読み取れない。

 

「ど、ど、ど、どひゅこと!?」

「焦りすぎだ」

 

 表情が読み取れないため問うしかない。

 口をプルプルと震わせてカミカミになりながら身を乗り出して魔理沙にその真意を尋ねる。そこで初めて魔理沙は目を開けて焦るフランを目にとめて呆れたように笑う。

 フランが焦るのも無理はない。相手を一方的に打ち負かす事を喜びの糧としている者以外、勝負を楽しむには互いに同等の技術を持って臨む必要がある。その戦術や心理の駆け引きがあるから楽しいのであって初めから勝ち負けが決まっている勝負など、ただの喜劇でしかない。

 フランと魔理沙はどちらかといえば後者であり、それが前者にとって変わろうとしているのだ。そうなればどうなるか。

 

「だ、だって! ……だって……魔理沙は私と遊ぶの楽しくない……かな」

「はぁ……そうだな」

 

 不安で潰れてしまいそうなフランに魔理沙はため息混じりに天井に向き直り、さらりとそんな言葉が吐き出される。

 フランはもうやめてくれと言わんばかりに口を開けたまま動けないでいた。いわゆる絶句という状況に陥っている。

 

「だからお前にはもっとがんばってもらわねぇとだぜ」

「う、うんっ、がんばる」

 

 とりあえず魔理沙はこれからも弾幕ごっこは続けてくれるらしい。

 身を乗り出すフランを魔理沙が手で制すと冷たい床にぺたんと腰を下ろした。しかしそのフランの声にはいつものような自信や元気がない。

 一日サボるとその感覚を取り戻すのに三日必要だと言われている。と言う事は約三ヶ月必要だと言う事になる。三ヶ月は魔理沙は楽しむ事は出来ないだろう。

 しかし、フランがそういうことで悩んでいるのではない、ということは魔理沙にも分かっていたようだ。

 

「歯切れが悪い返事だな。なにか悩み事があるならきくぜ? っていうかどうせ新之助とか言う野郎のことなんだろうが」

「え!? 何で分かったの!? 魔理沙伊藤!?」

「……」

「エスパーでしょ?」

「いや、知ってっけどさぁ……お前未練タラタラだな」

「うぅ……」

 

 魔理沙にそう言われてフランは股の間でたるんでいるスカートを握り締め、床に付くまで拳で押し当てた。

 

「だって、そう簡単に忘れられるわけ……ないじゃん」

 

 フランはそう吐き捨てて俯いてしまう。

 余程の力が込められているのだろう。スカートを握り締める手は震えている。それで出来るしわはもう戻らないだろう。

 年齢を重ねるスカートを眺めながら魔理沙はまたため息。

 

「全く……うじうじしやがって。そんなに気になるなら会いに行けばいいじゃねぇか」

「ダメだよ」

 

 即答。

 魔理沙がスカートから視線を上げるとフランは俯いて、握り締めたスカートを見つめていた。

 

「よく分かったよ。人間に関わったらろくな事にならないって」

 

 それは事実ではあるがフランにとって受け入れたくないことだ。その想いの強さはフランの握られた拳が強く明示している。加えてフランの表情は寂しげでこれには魔理沙も苦笑いせざるを得ない。

 

「でも今度はうまくいくかもしれないだろ」

 

 寂しさを埋めることが出来るのはその対象となっている人物だけ。だから魔理沙はそんな希望の小石をフランの心に放り投げてみる。

 フランの弁は自分で自分に言い聞かせ、本当の自分を隠すための仮面だ。しかしそれは自分を変えるではなく、偽るための仮面。しかもフランが作った仮面だ。魔理沙にとってそれは小さな吐息で剥ぐことができるくらいに薄い仮面だと思っていた。だから簡単にはがせると高をくくっていたのだが、その薄っぺらい仮面は風で飛ばされないよう、硬く結ばれ、固定されていた。フランの表情には哀愁の中に決意のようなものが見え隠れしているのだ。

 

「そんなに簡単に上手くいくなら昔だれかやってるよ。でも誰も出来なかった」

 

 魔理沙の投げた小石で出来る波紋は限りなく小さい。

 

「私は人間だぞ?」

「吸血鬼に勝てる人間なんていないと思う!」

「じゃあ私はなんなんだよ」

「エスパー」

「ガキかよ……」

「ガキじゃないもん! 熟女だもん!」

 

 フランはまた身を乗り出すが魔理沙に片手で制されてしまう。

 

「はいはい、でも、そっか……お前はそれで納得したんだな」

「うん。時間は掛かるかもしれないけど、新之助のことは忘れようと思う」

 

 フランは学んだのだろう、今回の事や昔あった悲惨な出来事で。人間と妖怪との間にある厚く高い壁を。交わる事の難しさ、空しさ、分かれることの寂しさを。

 

 幻想郷と人里、今後一切交わる事はないだろう。時折人里に現れはするだろうがそんなこと、人間は気付きはしない。幻想郷は本当の意味で幻想郷になった。

 

 フランはそれを理解し、あきらめるという道を選んだ。周りから見れば消極的なその決断も避けては通れない時も必ずある。その決断が出来た時、フランは間違いなく成長しているはずだ。それは人里での計画は決して無駄ではなかったという何よりの証。

 

 フランの顔は寂しそうだがどこか毒気の抜けたすっきりとした顔だ。今後、フランも人里に行きたいなどと言い出さないだろう。それが成長の証でありフランが少し大人になった証拠だ。

 

「でも、楽しかったなぁ……」

 

 しかしその思い出はいつまでも消えることは無い。思い出など消す事は出来ない。忘れはしても心の片隅には必ずあるものだ。だからその思い出を大切に胸にしまい、また新たな道を歩めばいい。それを繰り返す事でまた成長できるのだから。

 

 これにて「フランは成長するのか?」終幕

 

 

 

 

〈cast〉

フランドール・スカーレット

れみりあ・すかーれっと

ぱちぇ

さくや

えいみん

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

「ふんふん~」

「フラン……何書いてんだ?」

 

 フランが何やらお絵かき帳のようなものに寝転がって鼻歌交じりに何か書いている。そこに魔理沙が立ち上がって上から覗き込む。

 

「えんどろーる! エンディングには書かないといけないんだって~」

 

 フランはこの物語を締めくくろうとしていた。しかしそれは自分の名前以外、平仮名や略称だらけの見るに耐えないエンドロールだ。

 そして魔理沙はそんな見るに耐えないエンドロールは見たくないしフランに書かせたくもない。

 しかし先程投げた小石ではフランの心には響かなかった。ならば大きめの石ではどうか。

 フランが書いたエンドロールに魔理沙がいちゃもんをつける。それはフランが作るエンドロールが見るに耐えない、という理由からではない。

 

「そんなエンディングで大丈夫か?」

 

 どこかで聞いた言葉にフランは心得たとばかりにニヤリ。

 

「大丈夫だ! 問題ない!」

 

 フランはまたエンドロールを書く作業に戻ったのであった。

 

「ちげぇっ、ちげぇよ! 別にネタじゃないからのらなくていい」

「へ? どゆこと?」

「お前の気持ちを聞かせろってことだ」

「気持ちって?」

「本当の気持ちだ」

「分かった!」

「では、オホン!」

 

 もう一度魔理沙はあの台詞を繰り返した。

 

「大丈夫だ! 問題ない!」

「ぶ」

 

 そして同じ言葉が返ってきたのだった。

 フランは諦めの悪い魔理沙に肩をすくめてさめた視線を送る。

 

「はぁ……さっきも言ったじゃない。私はそれで納得したんだよ。だから邪魔しないでよねっ」

 

 三度、フランはエンドロールを書く作業に戻る。

 フランの心の波紋は静かになった。

 

「エンドロール書くの楽しいか?」

 

 フランの後ろから魔理沙が覗き見て言う。

 その口調は嫌味とかではなく、小さな子供のお絵かきを見守る母親のように優しく。だからフランは魔理沙がやっと諦めたと思った。嫌味ならともかく、優しい口調で問われたとなると邪険に扱うわけにもいかない。だがフランはそれが楽しいわけでもない。バッドエンドのエンドロール作成など、楽しいわけがないのだから。

 フランは少々不機嫌に口を尖らせる。

 

「……別に」

 

 尖らせた口から出る言葉はそんな短い言葉。

 そこで魔理沙はニヤリ。

 この物語はバッドエンド。だからフランの行為は楽しいはずがない。それを魔理沙はあえて楽しいかと聞いた。

 今まで投げた普通の石では波紋はすぐに収まってしまう。普通の石ではダメだ。だから魔理沙は内面から衝撃を加えるため、導火線のついた爆弾を投げたのだ。

 

「ハッピーエンドなら楽しい作業になったろうに」

 

 誰に語りかけるわけでもなく。ただ独り言のように言う背後の魔理沙を、フランは横目とジト目で睨みつける。魔理沙はわざとらしく視線を逸らして口笛を吹いている。

 フランはまた書く作業に戻るが筆が止まって動かない。

 

「……そんなの、出来るわけ――」

「出来るとしたら?」

 

 全て言わせずに魔理沙が言葉でスパッと切り込んでいく。フランに希望を持たせ行動させるために。

 

「ああっもうっ! 私は大人なの! 魔理沙みたいな聞き分けの無い子供は――」

 

 だがそれを振り払うように、フランは振り向きながら怒鳴り散らそうとする。しかしそれを最後まで言えず途中で停止したのは魔理沙が目の前に移動していたからだ。更に上半身だけを持ち上げたフランを裏返して押し倒した。虚を突かれたフランは簡単に背を地に着けるしかない。

 

「聞き分けがいいだけが大人じゃないとしたらどうだ?」

 

 諦めが悪く、強引な魔理沙に参ったとばかりに首を傾げて視線を逸らすフラン。

 

 

「……魔理沙って意外と諦め悪いよね」

 

 その一言で魔理沙の表情がニヤついたものに変わっていく。

 フランがその表情に横目で気付くと、眉根をしかめてしまう。また何か企んでいるなと。

 

「いいかフラン、よく聞け」

「……」

 

 ニヤついた表情で押し倒している者の話など聞く気にはなりはしないのだが、ここで突き放しても後が面倒だ。だからフランは目を瞑って口を閉ざす。勝手に話せということなのだろう。

 その話は話というほど長いものではない。ただ一言。

 

「ハッピーエンドは諦めの悪い奴のところにしか訪れない」

 

 目を開けたその先には先程とは違う、魔理沙の不敵な笑みが浮かんでいる。

 諦めの悪いとは一体どういうことか。

 慧音が歴史を改変した時、フランはただ指をくわえて見ているだけではなかった。当然その理不尽な運命に抗った。諦めずに博霊神社を飛び出して、霊夢を怒鳴り散らして抗ったのだ。

 それでもダメだった。それを魔理沙は諦めがいい奴だと非難するのか。そんなことはそんな辛い経験をしたことがない奴の台詞だ。フランはそう考えていた。

 だが相手はトラブルメーカーである魔理沙だ。魔理沙なら何か良い策があるのではないか。もしかしたらバッドエンドの壁を破壊し、その先にある新たなエンドを見れるのではないか。という一縷の望みをその視線に込め、魔理沙の瞳をただみつめる。

 続いて魔理沙はフランの小さな手を取って引き、体を起こしてやる。もちろんその間も、二人の視線は外れることはない。

 

「聞きたいか?」

「……人里に行けっていうんでしょ?」

「お前がそう思うんならそうなんだろ?」

 

 そんな無責任な魔理沙にフランはむっとして唸り、眉を歪めて口を尖らせる。

 何か策を用意しているからフランを煽っているのだろうが、本人のことに便乗するとはどういうことか。本当に策を考えているのか怪しくなるが、それが正解というのなら特に問題はない。

 

「でも、やっぱり無理だよ……霊夢が通してくれないし」

「誰がお前にそうしろって言ったんだ」

「だから霊夢が――」

「霊夢のせいにするなよ」

「はぁ!?」

 

 魔理沙の投下した爆弾が今爆発する。揺れに揺れるフランの心の波紋は一気に大津波クラスへ成長を遂げる。

 人里に行くのなら霊夢を通さないといけない。現状はそれしかいく方法がないのだ。仕方がないといえばないのだが、それを魔理沙は霊夢のせいだとフランを非難する。その理不尽な魔理沙にもちろんフランはおかんむりだ。だがそんなお怒りのフランに魔理沙は言葉を浴びせかける。

 

「自分に命令できるのは自分だけなんだぜ?」

「わけわかんないんだけど!」

「そりゃ人のせいにしてうじうじしてりゃあ楽だろうぜ。今自分がこうしているのは全部霊夢のせいだって言い訳できるんだからな」

「ちがうもん! 霊夢がそうしろって……幻想郷を守るためだって言うから……仕方ないじゃん」

「お前はこの先ずっとそうしていくつもりかよ? 誰かがああいったから仕方がない、誰かがそうしろといったから諦める、それが大人な行動なんだからと理由をつけて」

「だって……霊夢が……」

 

 さっきまで大人だなんだと図に乗っていた自分が恥ずかしくなったのだろう。まくし立てる魔理沙の言葉に、今にも泣きそうな声で言った言葉は、最後まで霊夢のせいにする言葉だけだった。

 

「誰がなんて関係ねぇんだよ。それを聞いて、それを判断して、行動するのはおまえだろ。霊夢の言った事はお前にとって判断材料でしかねぇんだよっ」

「じゃあどうしろって……いうのよ」

「考えろっ。考えて考えて考え抜け! 自分は今何がしたいのか、どの選択が最良でどうしたら今の状況をぶち壊せるか」

 

 それは魔理沙が日ごろ行っていること。考えて考えて考え抜いてどんなトラブルを起こせば誰がどうなるか。周りはたまったものではないが。

 そのほとんどが魔理沙の得意分野だが、その言葉の中にフランでもその真価を発揮できることがある。

 

「ぶち壊す?」

「ああ、お前の得意分野だろ?」

 

 フランはそんな魔理沙を見上げ、ただボーっとしている。

 

「なんだよ」

「何だか大人って子供みたいだね」

 

 魔理沙はその言葉に一瞬あっけにとられ、直後にふきだした。続けて「そうだな」と肯定する。

 

「でも、知ってるか? 大人は子供以上に我侭なんだぜ?」

「え!? 本当!?」

 

 徐々にフランもテンションが上がってきたようだ。大人だから我侭を言わないというフランの自責の念もこれで解決する。

 

「ああ、本当だ。ただ一つ、子供と違うところがある」

「何?」

「自分の行動に責任を持つ事だ」

「どこかで聞いたような……」

 

 それは霊夢が小島当主の処遇をフランに押し付けた時の台詞だ。他の誰でもなく、自分の責任で人を裁けと。

 

「へぇ。誰が言ったんだ?」

 

 霊夢はその責任という言葉を責任逃れで使っていた。それが良いか悪いかはさておき、フランは以前それを学んだはずだったのだが。

 

「う~ん……わすれた!」

 

 忘れたらしい。そのありがたい言葉を。これを知れば霊夢はどんな顔をするだろうか。きっとお札か何かがかえってくるだろう。

 

「はは、お前らしいな……で、お前は何がしたい?」

「新之助に会いたい!」

 

 フランは魔理沙を見上げていつものように元気一杯の笑顔と声でそう願う。

 もうフランが被っていたうすっぺらな仮面は剥がれ落ちた。

 自分のやりたい事をやる。ただそれだけだ。

 

「それでこそフランだぜ!」

 

 そして魔理沙もフランの元気に当てられて声を張り上げる。だがしかしその勢いはすぐに止まることになってしまう。

 

「あ」

「ん? なんだいきなり。ノリの悪い奴だな」

「幻想郷に行くには霊夢にお願いしないとなんだった……」

 

 そう、誰がなんと言おうと自分のやりたい事をやればいいと言った魔理沙の意見には色々な障害が付きまとう。新之助に会いに行くにもまず人里に行かなければならない。人里に行くには霊夢の許可が要る。

 

「結界壊せば良いじゃないか」

「え!? 本気で言ってるの!?」

 

 結界を壊そうとしたところで紫に何かしらの妨害を受けるだろう。もしかしたら殺されるかもしれない。

 

「本気で言ったとしたら?」

「……却下」

「正解」

「え? あっ……」

 

 魔理沙が自分で出した提案を却下し、それが正解。フランはわけが分からず、目をぱちくりさせて魔理沙を見つめるが、その表情がにやけていたのですぐにフランにもその不可解なやり取りの意図が理解できた。

 

「もう! 私を試さないでよ!」

「ははは、まあまあ落ち着けって。私みたいな上級の大人はな、大人予備軍であり、やりたいことがあっても知能が低くて出来ないお前に助言をしてやることができるんだぜ?」

「ふ~ん……結界壊せって言う人が助言なんて出来ないと思う」

 

 そんな最もなフランの反撃に魔理沙は頬をカリカリと書くしかない。

 

「あんなの冗談だろ?」

「じゃあ、どうやったら霊夢に幻想郷つれていってもらえるか……ちょっとなら聞いてあげてもいいかもねっ」

「霊夢なんてちょろいぜ? 私に任せな」

 

 自信満々に笑顔で言うがそんな魔理沙の笑顔はフランに取ってペテン師の笑顔以外の何者でもなかった。

 

「嘘だね! もう騙されないから! 出来るわけ無いよ!」

「できるできねぇじゃねぇんだよ! この世はやるか、やらないか、それだけだ!」

「お、おお……かっこいい!」

「お前はどっちだ?」

「やる!」

「よし。でもこれは秘密の作戦だぜ? 私が言ったって言うなよ?」

 

 一応保身の為、釘を刺しておく。フランは頷いた。が、恐らくばれるだろう。フランに秘密なんてものはあってないようなものだ。本人にその気がなくとも。

 そんな時、フランの表情に不意に笑みがこぼれる。それは魔理沙の秘密をばらしてやろう、というわけではなさそうだ。

 

「なんだよその笑みは、気持ち悪いな」

「だって嬉しいんだもん。魔理沙が私のためにそこまでしてくれるなんて」

 

 誰かが自分の味方をしてくれる。それはとっても単純なことだが今まで過酷な生活をしてきたフランにとって、それはとても重要な事だったのだ。

 そして素直にそんな事を言われると、どこかむずがゆい気持ちになってしまう。いつもトラブルメーカーとして皆に迷惑を掛けている魔理沙にとっては全身かゆくてたまらないだろう。

 

「いつまでもしけたつらして弾幕ごっこなんかされたらかなわないからな」

「むぅ……」

 

 だからかゆさを紛らわせるために憎まれ口を叩き、その場をやり過ごす。それを額面どおりに受け取ってしまうフランだから魔理沙のかゆみはすっと引いていくことだろう。

 

「でもいいの?」

「ん?」

「私を人里なんかに……ばれたら後で怒られるよ?」

「いいんだよ」

 

 フランの為ならばどんな危険でも冒すことができる。などとロマンチックな事を考えているわけではない。

 

「約束したからな」

 

 それは紫と交わしたあの約束だろう。

 

「約束って?」

 

 そして紫はそれを期待しているといったのだ。応えてやらない手はない。

 

「秘密だぜ」

 

 魔理沙はそれを実行に移すのだった。

 

 

 

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