白猫プロジェクト~賢者と黒竜を従えし者と冒険者達の学び舎~ 作:九戸政景
リオス「どうも、リオスです。
さて……前回はプロローグって事で、オリジナルストーリーをやったわけだけど、今回からは茶熊学園イベントのストーリー通りに進めていく形になるのか?」
政実「えっとね……基本的にはそうだけど、時折オリジナル回を挟んでいくつもりだよ」
リオス「なるほどな。
さてと……それじゃあ、そろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは、第1話をどうぞ」
第1話 桜色の春と転入生
春―それは暖かな気候の中、桜の花びらが舞い、人々が新たな生活に胸を膨らませる季節。
そしてそれはここ、冒険家養成学校【私立茶熊学園】でも別ではなく、この春から学園に通う学生達が賑やかな声を上げながら、次々と登校していた。だがそんな中、学園の校門の前に静かに立ち、一人学園の様子を眺めている少年がいた。
「へぇ……ここが例の学校ね。どんなところかは知らないが……ま、俺が通ってた学校に比べたら天国だよな」
少年―ソウマ・ホクト・バスクナは静かに言うと、自身の体から発せられるソウルを納め、あらゆる気配を殺した。この状態のソウマは、誰からも知覚されないため、静かに行動する際には最適な手段と言えた。
そしてソウマは、その自身の様子に満足げに頷いた。
「ようし、これで良い。そういや朝飯がまだだったか」
ソウマはカバンからサンドイッチを一つ取りだすと、それを静かに口にくわえた。
しかしその時、
「あ、あ、あ、朝飯を忘れたでござる-!」
クロワッサンを口にくわえた花の都の島出身のくのいち―フラン・ポワリエが、焦った様子で背後から走ってきたと思うと、勢い良くソウマへとぶつかった。
「のわああ!!」
「誰かにぶつかったでござる!?」
誰か―ソウマの声は聞こえたものの、その姿を知覚出来ないため、フランは不思議そうに首を傾げた後、そのまま走り去っていった。
「く……! 一体何が……!」
フランとの衝突で生じた痛みに耐えながら、ソウマがゆっくりと立ち上がったその時、
「やっべー、朝までギターの練習してたら遅くなっちまった!」
食パンの耳を口にくわえた革命軍の少年―ザック・レヴィンが、先程のフラン同様、とても焦った様子で背後から走ってきたと思うと、そのまま勢い良くソウマへとぶつかった。
「ぐああああ!?」
「やべっ、 誰かにぶつかっちまったか!?」
ソウマの声を聞き、ザックが周りを見回すも、今の状態のソウマを知覚出来ないため、不思議そうに首を傾げた後、急いでその場を走り去った。
「おいおい……二度同じ事があるって事は……」
ソウマが更に強くなった痛みに耐えながら、ゆっくりと立ち上がろうとしたその時、
「プール掃除忘れてたぁ-!!」
コッペパンを口にくわえた帝国海軍所属の少女―カモメ・ナルミが、先程のフラン達同様、焦った様子で背後から走ってきたと思うと、勢い良くソウマへとぶつかった。
「どあああああ!!」
「え!? 誰かにぶつかっちゃった!?」
ソウマの声を聞き、カモメも周りを見回したが、やはりソウマの姿を知覚出来ないため、不思議そうに首を傾げた後、プールがある方へと走り去っていった。
「……やっぱり三度あるよな……」
酷くなってきた衝突の痛みに顔をしかめつつ、ソウマがゆっくりと立ち上がると、
「ふふふ、小鳥さん、おはようございます」
桜の木に留まっている小鳥達に挨拶をしながら、氷の国の王女―ソフィ・R・ファルクがゆっくりと歩いてきた。
「おっ」
「えっ!? 何か見えないものにぶつかったような?」
ソフィは不思議そうな様子で周りを見回したが、すぐ近くに立っているソウマの事を知覚出来ないため、カモメ達と同様に首を傾げた後、ゆったりとした様子でその場を去っていった。
「ふぅ……流石に四回も突き飛ばされたりはしないみたいだな」
その様子を見て、ソウマが安心した表情で独りごちていたその時、
「朝はパンをくわえ……走る!」
バゲットを縦にくわえた不死者の帝王―ヴィルフリート・オルクスが、背後からとても綺麗なフォームで走ってきたかと思うと、先程までとは比べものにならない程の勢いでソウマへとぶつかった。
「べかしこ!?」
ソウマがぶつかった衝撃で妙な声を上げ、そのまま地面に倒れ込みそうになったその時、
「な、なに? 何みんな走ってるわけ!?」
学友達の様子を不思議に思いながらも、思わず自身も走りだしてしまったシスター姿の悪魔―ミラ・フェンリエッタが、バランスを崩しているソウマへと勢い良くぶつかった。
「ずべらー!?」
「何かぶつかった!? でも走らなきゃ!! 走らなきゃ、アタシ!!」
実際走る必要はまったく無いのだが、走らなければ行けないという思いに駆られたミラは、どこからか聞こえたソウマの声を不思議に思いながらも、そのまま急いで走り去った。そしてその場にはここまでの衝突のダメージによって、満身創痍と言っても過言ではない様子で倒れているソウマだけが残された。
「……本当に何なんだよ、一体……」
もはや立ち上がる気力すら無くなりそうになりながら、ソウマは静かに呟いた。
すると、
「みんな何を走っているんだ? まだ登校時間には余裕があるのに」
バルラ国出身の騎士―クライヴ・ローウェルが、先程のミラとは違い、学友達の様子に疑問を抱きながらもゆっくりとした足取りで歩いてきた。そしてそんなクライヴに、数人の生達が挨拶をするために後ろから声を掛けた。
「おはよう、クライヴ」
「おはようございます、クライヴさん」
「おはようございます、クライヴさん」
「クライヴさん、おはようございます!」
「(はよーっす、クライヴー)」
『おはようございます、クライヴ様』
声に気付いたクライヴが後ろを振り返ってみると、そこにいたのは大いなるルーンを求め、様々な島を巡っている飛行島の面々だった。
「ああ、おはよう、みんな」
クライヴが微笑みながら挨拶を返すと、アイリスが微笑みを返しながらクライヴへと話し掛けた。
「ふふっ、気持ちが良い朝ですね」
「そうだな、良い朝だ。何だか俺も走り出したい気分だよ」
「(俺もって……誰か走ってたのか?)」
「ん? あぁ、さっきザックやミラが走って行ったのを見掛けただけだよ」
「あ、なるほどね」
クライヴとリオス達が仲良く話しながら歩いていたその時。
「……ん?」
突然リオスがそんな声を上げた。その様子を見て、ナギアが不思議そうな顔でリオスに訊いた。
「リオス、どうかしたのか?」
「いや……あそこに倒れてるのって、もしかしなくても人、だよな?」
「え……?」
リオスが指差す方に一同が目を向けると、そこには先程までのダメージによって、地面に倒れているソウマの姿があった。
「あ、本当だわ!」
「それにかなり傷ついてるみたいだし、急いで手当てをしないと……!
急ごう、皆!」
リオスの言葉に頷くと、一同はソウマの元へと急いだ。
「大丈夫ですか!?」
アイリスがソウマに近づいてそう訊くと、
ソウマは誰にも聞こえないほど小さな声でポツリと呟いた。
「……なんなんだ、この学校は……」
「まずはこの傷をどうにかしないと……!
リオス、手伝って!」
「分かった!」
アイリスの頼みに答えながら、俺は背中に差していた【ソードオブマギア】を構え、鍔に収められているオーブに籠められている水の魔力を高めた。
「【イノセントヒール】!」
「【ブルーヒーリング】!」
俺達の治癒魔法の光が倒れている人を包み込むと、その人の傷は見る見るうちに消えていった。
(ふぅ……これでとりあえずは大丈夫なはずだけど……)
【ソードオブマギア】を背中に差しながらその人の様子を見ていると、
「何だ……? 体が急に、楽に……?」
不思議そうな声で言いながら、ゆっくりと立ち上がった。そして俺達の方へ振り返ると、俺達の事を見ながら話し掛けてきた。
「アンタ達が……俺の事を……?」
「ええ、そうよ」
「(……まあ、正しく言うなら、リオスとアイリスが、だけどな)」
キャトラとネロが小さく笑いながら答えると、その人は不思議そうな表情を浮かべながらキャトラとネロの事をジッと見つめた。
「……今、その猫と竜が喋らなかったか?」
「喋ったわよ? ね、ネロ?」
「(ああ。
……まあ、俺の場合はちょっと特殊だけどな)」
再びキャトラとネロが答えると、その人は額を抑えながら小さな声で呟くように言った。
「……おいおい、本当にこの学校は何なんだよ……」
「何って言われてもねぇ……まあ、それはさておき……」
キャトラはそう言うと、その人の事をジッと見始めた。そしてその様子を見ると、その人は少し警戒した様子でキャトラに訊いた。
「な……何だよ、一体……?」
「いや……何であんなにボロボロになってたのかなぁって思ってね」
「……あぁ、その事か。ちょっと転んじまっただけだよ、まったくついてないぜ」
「傷は治っているようだが、一応保健室に行ってはどうだ?」
「いや、さっきよりは確実に楽にはなってるから、大丈夫さ」
「うーん……アンタが大丈夫なら良いけど……」
その人の言葉にそう返事をしたが、キャトラはまだ少しだけ納得していない様子だった。
(……まあ、キャトラの気持ちも分からなくは無いけど、本人が大丈夫って言ってるんだし、とりあえず大丈夫って事にしとくか)
心の中でそう結論づけていると、
「あ……」
突然ナギアが何かを思い出したように声を上げた。
「ん? どうかしたのか?」
「そういえば、自己紹介がまだだったなぁと思ってさ」
「あー……言われてみれば……」
「ふむ、確かにそうね……」
キャトラは顎に前足を当てながら言った後、俺達の事を見回しながら言葉を続けた。
「せっかくだし、ここらで自己紹介でもしときましょうか」
「そうだな。それじゃあ、まずは俺達から……」
そう言ってカバンの中からワイズを出した後、俺は自己紹介を始めた。
「俺はリオス、冒険家兼この茶熊学園の生徒だ、よろしく」
「よし、次は俺だな。
俺はナギア、リオス達と同じで、冒険家兼茶熊学園の生徒だ、よろしくな」
「私はアイリス、リオス達と同じで、冒険家兼茶熊学園の生徒です。よろしくお願いします」
「アタシはキャトラよ、よろしくね」
「俺はクライヴ、リオス達と同じ茶熊学園の生徒だ、よろしくな」
「(俺はネロだ、よろしくな!)」
『私は賢者のルーンのワイズと申します、どうぞよろしくお願い致します』
ワイズが自己紹介を終えた時、その人はまた不思議そうな顔になった。
「賢者の……ルーン……?」
『はい。幾つかの制約に抵触しない限り、この世界のあらゆる事についてお教えするルーン。それが私、賢者のルーンなのです』
「……なるほどな」
その人は呟くように言った後、落ち着いた様子で自己紹介を始めた。
「それじゃあ、今度は俺だな。俺はソウマ・ホクト・バスクナ。この茶熊学園の転校生だ、よろしくな」
「ああ、よろしく」
そう返事をした後、俺達がソウマと握手を交わしていたその時だった。
「おーや、これはこれは皆さん。おそろいで」
校舎の方からのんびりとした声が聞こえたため、俺達は声の方へ視線を向けた。するとそこにいたのは、いかにも学校の先生らしい格好をし、手にとても厚い本を持ったカムイさんだった。
ソウマはカムイさんの姿を見ると、一瞬真顔になった後、不思議そうな顔で俺達に訊いた。
「……今、この熊が喋った気がしたんだが?」
「喋ったわよ。ね、カムイ」
「ええ。磨穿鉄硯の精神を持ってすれば、雲外蒼天ですから」
「アンタは……一体……?」
ソウマが不思議そうに訊くと、カムイさんは角帽を脱いでからソウマの質問に答えた。
「あ、申し遅れました。私は茶熊学園の学長、カムイと申します」
「学長!? アンタが!?」
「ええ。さて、それはさておき……」
カムイさんはアイリスの方へ向くと、ニコニコしながらアイリスに話し掛けた。
「アイリスさん。制服、とても良くお似合いですねぇ。ちょっとこう……クルッて回ってみてくれませんか?」
「こう……ですか?」
アイリスがその場でゆっくりと回ると、カムイさんはとても良い笑顔で大声を上げた。
「ああ、良い! 実に素晴らしい! 巨額の資金を投入した甲斐がありましたよ!」
「(巨額の資金って……この制服に、か……?)」
「はい」
カムイさんがしれっとした様子で答えると、キャトラが毛を逆立てながらカムイさんに怒り始めた。
「学長ともあろうものが、学園の資金を趣味に使い込むんじゃないわよ!」
「いや-、これも学園に人を呼び込むためですからね-。
ほら、制服が可愛い~とか学園の設備が良いものだ~とかで話題になれば、それが次の入学者アップにも繋がるじゃないですか」
「う……それについては反論できないわね……」
(いや……まだ反論の余地はある気がするんだけど……)
心の中で静かにツッコミを入れていると、カムイさんがソウマの方へと顔を向けた。
「ところで、貴方はソウマさん……でしたよね?」
「そうですけど。何すか、カムイ学長」
「実は……学園の方から、貴方にこれを渡せと言われてまして……」
そう言うと、カムイさんはどこからかシャケの形をした物を取り出し、ソウマへと手渡した。ソウマは渡された物をジッと見た後、少し警戒した様子でカムイさんに訊いた。
「これは……何なんですか?」
「これは二対一体の武器、つまりは双剣の類いのようです。貴重な品らしいですよ?」
「誰が俺にこんな物を? 俺は天涯孤独だっていうのに……」
「それが誰かは僕にも分かりません。ですが……これほどの物を貴方に託すくらいですから、その人はソウマさんにとても期待しているのかもしれませんね」
「……期待、ね」
ソウマはシャケの形をした双剣を何度か握り直したりした後、カムイさんの方へ向き直った。
「わかった。ありがたく使わせてもらうぜ」
「はい! 僕も期待してますからね、ソウマさん!」
「うっす!」
ソウマが返事をした後、カムイさんはうんうんと頷いてから俺達に話し掛けてきた。
「さて、そろそろ全校朝礼の時間ですし、僕達も講堂に参りましょうか」
そのカムイさんの言葉に俺は頷きかけたが、先にネロを竜舎へと連れて行く必要がある事を思い出したため、竜舎の方向へと体を向けながら、俺は皆に声を掛けた。
「俺はネロを竜舎に連れて行くから、皆は先に行っててくれ」
「ん、分かった」
「それじゃあ、また後でね」
「ああ。よし……行くぞ、ネロ、ワイズ」
「(おう!)」
『はい』
こうして俺達は、竜舎へ向かって歩き始めた。
竜舎に着いた後、俺はネロをその中の一室に繋ぎ、背中をポンポンと叩きながら声を掛けた。
「昼と放課後になったら来るから、それまで待っててくれよ?」
「(おう。お前らの事は適当に待ってることにするから、安心して授業を受けてこい)」
「ああ、分かった」
返事をした後、俺は部屋の外へと出た。そしてネロの方を振り返ってから再び声を掛けた。
「それじゃあ、また後でな」
『それでは、また後で』
「(おう!)」
ネロの返事を聞いた後、俺達はナギア達が待つ講堂へと急いだ。
講堂に着いてみると、既に他の生徒達が楽しそうに話をしたり、身だしなみを整えていたりしながら、全校朝礼が始まるのを待っていた。
(さて……ナギア達はどこかな?)
ナギア達を探すために周りを見回していると、突然後ろから肩をポンポンと叩かれた。
(ん……?)
振り向いてみると、そこには微笑みながら俺の事を見ているナギア達の姿があった。
(どうやら探す手間が省けたみたいだな)
俺はフッと笑った後、ナギア達に話し掛けた。
「お待たせ、皆。見たところ、まだ全校朝礼は始まってないみたいだな」
「うん。でもそろそろ始まるとは思うわよ?」
キャトラがそう言ったその時。
「ハイハーイ、皆さん、朝礼を始めますよー」
カムイさんが置かれているマイクを使いつつ、のんびりとした声で話を始めた。
「えー、皆さん。現代の社会の発展には、優れた冒険家の活躍が欠かせません。しかし冒険家というのは、ただ魔物を討伐したり、遺跡で遊んだりしてれば良いわけではないのです。知られざる世界を切り開き、人々の生活に貢献する。これこそが冒険家なのです。皆さんもこの学園でしっかり学んで、立派な冒険家になって下さい。
……以上で、朝礼を終わります」
カムイさんは一礼をした後、静かにマイクから離れた。そしてそれを見て、他の生徒達が次々と講堂の外へと出て行った。
「朝礼って言うから、それなりに時間が掛かるもんだと思ってたけど、意外と早く終わったな」
「そうね」
ナギアとキャトラの会話を聞きながら講堂の入口を見ていると、手に紙のような物を持ったミラが、急いで講堂の外へと出ていく様子が見えた。
(どうやら講堂から出てくる生徒を相手に布教活動をするつもりみたいだけど……あんなに急ぐ必要が果たしてあるのかな……?)
ミラの行動に少しだけ疑問を抱きつつ、俺はナギア達に声を掛けた。
「それじゃあ、俺達もそろそろ行こうぜ」
「おう!」
「うん」
「うん!」
「ああ」
他の生徒達が出て行くのに続いて、俺達も講堂の外へと出て行った。
講堂の外に出てみると、ニコニコ顔のミラが講堂から出てくる生徒達に次々と持っている紙を渡していた。
(あはは……やっぱりか)
心の中で苦笑いを浮かべながらミラの近くを通ろうとした時、
「そこの人も、はいどーぞ!」
ミラがニコニコしながらソウマに紙を渡した。ソウマは渡された紙を一読すると、不思議そうな顔になった。
「……何だこれ? 白い聖女教……?」
「そうよ! 今入信すれば、もやし栽培セットも付いてくるのよー!」
ミラが眼鏡をクイッと上げながら言うが、ソウマは不思議そうな顔のままで返事をした。
「……やっぱ、知らねぇなぁ……?」
「アンタ知らないの? さてはモグリね! 今世界中で大フィーバーしてるってのに!!」
「そ、そうなのか……?」
ソウマが訊くと、ミラはぱあっと顔を輝かせながら言葉を続けた。
「興味を持ったわね!? それじゃあ、詳しく教えてあげるわ!!」
「あ、いや……えーと……」
ぐいぐい来るミラにソウマがかなり戸惑っていると、キャトラがミラの事を呆れた様子で見つつ、呟くように言った。
「ミラったら、またやってるのね……どうして懲りないのかしらね?」
「……さぁな」
ミラとソウマのやり取りを静かに見守っていたその時、突然どこからか大砲の音が聞こえてきた。
「な、何だ!?」
ソウマが慌てた様子で周りを見回していると、再びどこからか大砲の音が聞こえてきた。
(まただ……でも一体どこから……?)
不思議に思いながら周囲を見回すと、少し離れたところに何隻もの軍艦の姿が見えた。
軍艦……って事は、もしかしてカモメの関係者か?
そんな事を考えながら軍艦の様子を窺っていると、カモメが軍艦の方へ向かってビシッとした姿勢で立ち――
「敬礼であります!」
大きな声で言いながら軍艦へ向かって綺麗な敬礼を見せると、船の上にいた船員達もそれに応えるように敬礼を返してきた。そしてその様子を見ると、アイリスが納得した様子でカモメに声を掛けた。
「カモメさん。もしかしてあの人達は、帝国海軍の人達ですか?」
「はい! 私にとってとても大切な同輩達であります!」
カモメがニコッと笑いながら答えると、カムイさんは心の底から安心した様子で小さく息をついた。
「ふぅ……驚かさないで下さいよ……じゃあこれは、いわゆる礼砲ですね」
「礼砲? 何それ?」
「軍艦が敬意を込めて、空の大砲を撃つという儀式ですよ。おそらくカモメさんの入学祝いかと」
「じゃああれは、カモメのために撃っていたのね」
「えへへ……ちょっと照れますね」
キャトラ達の言葉を聞き、カモメが頭を掻きながら答えていると、ソフィさんが船を見ながら弾んだ声で言った。
「あれは、帝国海軍第七艦隊旗艦、チャーチワイデンですね!」
「ご存じなんですか、ソフィさん?」
「我が国の式典にご招待をしたことがあるのです」
「そうだったんですね」
ソフィさんとアイリスが話していると、ワイズがカバンの中からチャーチワイデンについての説明をしてくれた。
『チャーチワイデンは第四世代のルーンシップの一つで、帝国の船の中でも古い設計の船です。
戦艦として初めてスクリューを搭載し、そして動力にルーン蒸気機関を備えておりまして、無骨なその見た目から、ウミガメというあだ名も付けられています』
「へぇー、そうなのね」
「そして衝角による突撃で飛行船を撃沈したという逸話でも有名な、七海戦争の武勲艦なのであります!」
カモメが誇らしげな顔で補足説明をしてくれている内に、チャーチワイデンは礼砲を撃ち終わったらしく、砲塔から白い煙を出しながら静かに佇み始めた。
「もう終わったみたいだけど……ずいぶんな数撃ってたわね」
「因みに礼砲は、敬意を表す人の偉さによって、撃つ数も決まっているんですよ」
「あ、そうなのね」
「はい。
えーと……今回は11発でしたので、帝国の礼式だと……」
そう言った次の瞬間、カムイさんの顔に驚きの色が浮かび、呆然としながらカモメの事を見始めた。その様子を見て、キャトラとカモメが不思議そうな顔で訊いた。
「どうしたのよ、カムイ。カモメの事をジッと見つめて」
「カムイ学長殿、どうかされましたか?」
「あ……い、いえ、何でもありません……」
カムイさんはキャトラ達に答えた後、服のポケットからハンカチを取りだし、額の汗を拭き始めた。その様子を見つつ、俺はこっそりワイズに話し掛けた。
「……ワイズ、11発の礼砲って、帝国の礼式だとどういう意味になるんだ?」
『……11発ですと、特命公使を讃える礼砲ですね』
「なるほどな……」
ワイズの答えに納得していると、カムイさんが落ち着きを取り戻した様子で俺達に話し掛けてきた。
「ところで皆さん。部活はもうお決めになりましたか?」
「部活?」
「うん。学校の授業とは別に、趣味やスポーツをするためのクラブを作ることが認められてるの」
「へぇ……そんなのもあるのねぇ」
「でも、俺達はまだ決まってないとして……他のみんなはどんな部活に入ってるんだろうな?」
「それは授業が終わってから、みんなに訊いてみましょう?」
「それもそうだな。
よし……それじゃあまずは、授業を受けるとしようか」
『おー!』
キャトラ達の返事を聞いた後、俺達は授業を受けるために茶熊学園の校舎へと向かった。
政実「第1話、いかがでしたでしょうか」
リオス「この流れだと……次回は部活見学回か」
政実「うん、一応そのつもりだよ。ただ、それに何か+αな要素を付け加えられそうなら、そうするつもりだよ」
リオス「そっか。
さて……次回の更新予定は?」
政実「出来る限り1週間後くらいには更新するつもりでいるよ」
リオス「分かった」
政実「そして、この作品や本編への感想や意見もお待ちしてます」
リオス「よし……それじゃあ、そろそろ締めていくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは、また次回」