白猫プロジェクト~賢者と黒竜を従えし者と冒険者達の学び舎~ 作:九戸政景
リオス「どうも、リオスです」
政実「今回は部活動見学回の運動部編です」
リオス「タイトルに+αって付いてるのは、前回言ってた俺の所属する部活についての話もあるからか?」
政実「うん、その通り。まあ、この第3話の中では軽くしか触れてないけどね」
リオス「了解。
さて……それじゃあ、そろそろ始めてくか」
政実「うん」
政実・リオス「それでは、第3話をどうぞ」
グラウンドへ出てみると、フランが他の生徒達と一緒に運動をしていた。
(あれって……たしかラクロスっていうスポーツだったな……)
「へぇ-、あの網が付いた棒でボールを取ったり投げたりするのね」
「みたいだな」
フラン達の様子をキャトラ達と一緒に眺めていると、フランが手に持った棒からボールを凄いスピードでゴールへと投げ込んだ。
「物凄いスピードだったね」
「だな。それにしても、みんなあんなスピードで投げられるもんなのかな?」
「うーん……どうなのかしらね。ラクロスの簡単な説明もかねて、ワイズに訊いてみましょうか?」
「そうだな」
キャトラに返事をしながら、俺はカバンの中からワイズを取りだした。
「ワイズ、ラクロスについて教えてもらっても良いか?」
『はい、畏まりました。
ラクロスはクロスと呼ばれるあの網が付いた棒を使って、重さ150kgのボールを奪い合い、そしてゴールに入れた得点を競い合うスポーツです。競技人口もそれなりに多く、女性だけではなく、男性も行っているスポーツです。
尚、男子ラクロスはトッププレーヤーのシュートが時速160kmを越えることから、【地上最速の格闘球技】と呼ばれています』
「【地上最速の格闘球技】……それに時速160kmって……」
「あはは……流石に速すぎるよな……」
ワイズの解説を聞いて、キャトラが驚きの声を上げ、ナギアが苦笑いを浮かべていると、フランが俺達の事に気付き、手を振りながら近付いてきた。
「ボンジュール! モナーミ!!」
「あら、フラン。お疲れさま」
「えへへ、ありがとうでござる、キャトラ殿!」
キャトラの言葉にフランが嬉しそうにお礼を言っていると、アイリスが微笑みながらフランに話し掛けた。
「フランさん、ラクロス出来たんですね」
「いやー……実は、ラクロス部に入るまでやったことがなかったでござるよ」
フランが頬を掻きながら言うと、キャトラが意外そうな顔をしながら答えた。
「あら、そうだったの? でもそれにしては様になってたわよ?
ね、ナギア」
「ああ。それに、見てるこっちまで楽しくなってくるほど、楽しそうにやってたしな」
「オーララ~……
恥ずかしいでござるよ~……」
キャトラ達の言葉を聞いて、フランが頬を赤く染めている中、ソウマはラクロスの試合をジッと見つめていた。
「ラクロスねぇ。何だか元気の良いスポーツみたいだな」
「ああ、そうだな」
ソウマの言葉に返事をしながらラクロスの試合を観ていたその時、ソウマが不思議そうな顔をしたかと思うと、突然フランの方へと顔を向けた。
「どうかしたの? ソウマ」
キャトラが不思議そうに訊くと、ソウマはフランから視線を外さずに俺達に質問をしてきた。
「……この子は双子なのか?
ソックリなのが試合に参加してるみたいなんだが……?」
「双子って、フランが……?」
「ああ……いや、ちょっと待て」
そう言うと、ソウマは再びラクロスの試合の方へと顔を向けた。俺達もそちらへ顔を向けてみると、そこにはフランと同じ姿をした生徒が二人おり、さっきまでのフランと同じように楽しそうにラクロスをしていた。
「あー……なるほど。そういう事ね」
キャトラが納得した様子で言う中、ソウマは更にわけが分からないといった顔をしながらフランの方へと向き直った。
「……アンタは三つ子、なのか……?」
「プルクワ? 違うでござる! あれは……」
フランが説明をしようとしたその時、試合終了を告げるホイッスルの音が鳴り響いた。そしてそれと同時に、試合に参加していたフラン達の姿が白い煙を残して消えた。
「おおおおっ!?」
「あー……やっぱりそうだったのね」
フラン達が消えた事にソウマが腰を抜かしそうな程に驚いている中、キャトラは静かな声で言った後、フランの方へと顔を向けた。
「やっぱりあれって、アンタの分身だったのね」
「ウィ! その通りでござる!」
フランが微笑みながら返事をしていると、ソウマが驚いた顔のままでフランに話し掛けた。
「……まさかアンタ、本物の忍者なのか?」
「そうでござるよ。これはお近づきの印の洋ナシでござる!」
「サ、サンキュー……」
ソウマはフランから洋ナシを受け取ると、とても小さな声で俺達に話し掛けてきた。
「……なぁ、この洋ナシはどこから出て来たんだ?」
「どこからって言われてもな……」
「実は、俺達もよく分かってないんだよ、その洋ナシがどうやって出てきてるかが……」
「そう、なのか……世界は本当に広いな……」
ソウマは呟くように言った後、難しい顔で洋ナシを見つめ始めた。
(……まあ、この件については考えてもしょうがないし、そろそろ次の部活動でも見に行くか)
そう思い、皆に声を掛けようとしたその時だった。
「えっほ、えっほ、えっほーい!」
そんな掛け声を口にしながら、ミラが農具などを背負ってグラウンドへと走ってきた。
「……アンタ、何してんのよ?」
その様子を見て、キャトラが不思議そうに訊くと、ミラは背負っていた荷物を地面へと降ろしながら返事をした。
「何って……園芸部なんだから、畑を作るに決まってるじゃない?」
「畑って……何の畑を作るつもりなんだ?」
ナギアが首を傾げながら訊くと、ミラは額の汗を首に掛けていたタオルで拭きつつ答えた。
「小豆の畑よ」
「小豆って、あの餡子とかにする小豆?」
「そうよ、小豆よ!
このグラウンドを小豆畑にするのよ!」
ミラはグラウンドの方へ体を向けると、グラウンド全体に響き渡るほど大きな声で言った。
(ここ全部を小豆畑にするって……流石にカムイ学長も首を縦には振らないと思うんだけどな……)
苦笑いを浮かべながらそんな事を考えていると、キャトラが少し驚いた様子でミラに話し掛けた。
「もやしって小豆の芽だったの?」
「それだけじゃないけど、大豆だったり、エンドウ豆だったり……まあ、だいたい豆ね」
「つまり、もやしはお豆の芽だったんですね」
「ええ。せっかくもやしに拘るからには、豆から拘りたいもの。
……さぁて、それじゃあ早速……!」
ミラが農具を持って作業に取り掛かろうとすると、フランがジトッとした目でミラを見ながら声を掛けた。
「ミラ殿……グラウンドを掘り返しちゃダメでござるよ?」
「えっ! そ、そうなの……?」
「ウィ、当然でござる」
フランが静かに返事をしながら頷くと、ミラは辺りをキョロキョロと見回した後、
「あ~……そ、そうなんだ~……
ひゅーん、ひゅひゅひゅーん……」
目だけそっぽを向きながら、口笛を吹いているように声を出し始めた。
「……口笛、吹けてないわよ」
「うっ……! い、良いのよ! そんな事は!」
ミラは怒ったように言ったが、すぐにガクッと項垂れると、落ち込んだ様子で呟くように言った。
「はぁ……そうなると、また色々と考え直さなきゃ無いわね……」
すると、フランがゆっくりとミラへと近付き、そのまま隣に立つと、肩をポンポンと叩きながら優しい声で言った。
「ミラ殿、大丈夫でござる。セッシャも一緒に小豆を植えるのにちょうど良いところを探してあげるでござるよ」
「フラン……でも、良いの?」
「ウィ! もちろんでござるよ、ミラ殿!」
フランがニコニコしながら言うと、ミラの顔がぱあっと輝き始めた。
「フラン……! ありがとう……!」
「えへへ、どういたしましてでござる♪」
ミラからのお礼の言葉に、フランは嬉しそうな表情で答えた。
「ミラさん、元気になったみたいだね」
「うん」
アイリスとキャトラが微笑みながら話をしていると、ミラが拳をギュッと握りながらフランに大きな声で話し掛けた。
「よぉし……!
それじゃあ、早速探しに行くわよ、フラン!」
「ウィ!
……と言いたいところでござるが、先にラクロス部の片付けをしないといけないでござるよ……」
「あぁ、それならあたしも手伝ったげるわよ。フランにだけ手伝ってもらうのも何か悪いからね」
「メルシーでござる! ミラ殿!」
「どういたしまして。
それじゃあ、早速片付けをしに行きましょうか」
「ウィ!」
ミラはフランの返事にコクンと頷いた後、俺達の方に顔を向けた。
「そういや、アンタ達って部活動見学中だったわよね?」
「ああ、そうだけど……」
「さっきここに来る途中でなんだけど、体育館でソフィを見掛けたわ」
「ソフィさんって事は……新体操部の活動だな」
「たぶんね。まあ、興味があったら行ってみると良いと思うわ」
「分かった。ありがとうな、ミラ」
「どういたしまして。それじゃあね」
「サリューでござる、みんなー!」
そう言って、ミラとフランはラクロス部の部員達の所へと歩いていった。それを見送った後、俺は皆に声を掛けた。
「よし……それじゃあ、情報ももらったことだし、早速体育館に行ってみるか」
「おう!」
「うん」
「オッケー!」
「ああ」
そして俺達は、新体操部の活動を見に行くべく体育館へと向かった。
体育館に着いてみると、中から凄い大きな歓声が聞こえてきた。
「何だかスゴい盛り上がってるわね?」
「だな。とりあえず、中に入ってみよう」
ナギアの言葉に頷いた後、俺達は体育館の中へと入った。中ではソフィさんが流れている音楽に合わせて、華麗な演技を披露していた。
「ふふ、ソフィさん素敵ね」
「ああ、そうだな」
アイリスとナギアが微笑みながら、ソフィさんの様子について話を始めた。それを聞きながらふと周りを見てみると、腕を組みながらソフィさんの演技をジッと見つめているクライヴさんの姿が目に入ってきた。
俺はクライヴさんのところへ近付き、小さな声で話し掛けた。
「クライヴさん、さっきぶりですね」
「……ん? ああ、お前達も来ていたんだな」
「はい。クライヴさんはどうしてここに?」
「何だか騒がしかったのでな、自主的に体育館の警備をしていたんだ」
「なるほど」
俺達が話をしていると、ナギア達も俺達の所へと歩いてきた。
「こんにちは、クライヴさん」
「クライヴさん、こんにちは」
「やっほー、クライヴ」
「よぉ、クライヴさん」
「ああ、こんにちは」
クライヴさんが皆の挨拶に返事をしていると、キャトラがニヤッと笑いながらクライヴさんに話し掛けた。
「ところでクライヴ。さっきソフィの事をジッと見てた気がするんだけど?」
「そ、そんな事はない! 断じてそんな事は!」
「ふ~ん……? まあ、それならそれで良いんだけどね~?」
キャトラがニヤニヤと笑いながら、クライヴさんに返事をしていると、流れていた音楽が止み、周りの生徒達が拍手を始めた。
(どうやら話してる内にソフィさんの演技が終わってたみたいだな)
そんな事を考えていると、演技を終えたソフィさんがゆっくりと俺達の所へと歩いてきた。
「皆さん、ごきげんよう」
「お疲れさま、ソフィ。それにしても凄い人気ね」
「はい。皆さんに演技をご覧頂いて……私、とても嬉しいです」
キャトラの言葉を聞いて、ソフィさんが穏やかな笑みを浮かべながら返事をしていると、その様子を見たソウマが小さな声で話し掛けてきた。
「何か気品のある人だな。どこかのお嬢様なのか?」
「王女様よ? 氷の国の」
「王女!? 本当なのか!?」
ソウマが驚きながら訊くと、ソフィさんは静かに頷いた。
「その通りです。ですが、学園内ではあくまで一人の生徒ですので、お気になさらないで下さいね」
「あ、ああ……」
ソフィさんが微笑みながら言うと、ソウマは少し戸惑ったような返事をしながら頷いた。
(……まあ、気持ちはわかるけどな)
ソウマの様子に苦笑いを浮かべつつ、ふとクライヴさんの方を見てみると、クライヴさんは真剣な顔でソフィさんのことを見ていた。
「クライヴさん、どうかしたんですか?」
「……ん? あぁ、いや……何でもない」
口ではそう言いながらも、クライヴさんはソフィさんの事をジッと見つめ続けていた。
(うん……これは完全に惚れてるな。けど……)
当のソフィさんはそれに気付いている様子は無く、ニコニコとしながら俺達に話し掛けてきた。
「皆様も、新体操をやってみませんか? 体を動かすのは楽しいですよ?」
「新体操ねぇ……そういえば、さっきのリボンをくるくるってやるの、中々素敵だったわね。思わずじゃれつきたくなっちゃったわ」
「ふふ、ありがとうございます、キャトラ様。新体操はリボンだけでなく、こういったこん棒やロープも使うんですよ」
ソフィさんが近くに置いてあったこん棒やロープを手に持ちながら説明をしてくれていると、その近くに置いてあったボールを持ちながらソウマが訊いた。
「このボールも使うのか?」
「はい。ちょっとお借りしますね」
ソフィさんはソウマからボールを受け取ると、華麗にボールを操りながら演技を見せてくれた。
「スゴい……まるでボールが生きてるみたい……」
「これはたしかに凄いな……」
アイリス達が演技についての感想を言っていると、演技を終えたソフィさんが額の汗を拭いながらニコッと笑って答えた。
「私など、まだまだです。これからもっと研鑽を積まなくてはなりませんから」
(……ソフィさんのこの姿勢、俺も見習わないとな)
そう強く決心した後、ふとクライヴさんの事を見てみると、クライヴさんは未だにソフィさんの事をジッと見つめていた。その様子を見て、キャトラが呆れたような顔でクライヴさんに話し掛けた。
「……クライヴ、また目移りしてるわけ?」
「そんな事は無い。ただ、新体操に興味が出来ただけだ」
「ふ~ん。まあ、良いけどね」
キャトラ達が話をしていると、それを聞いていたソフィさんが顔をぱあっと輝かせながらクライヴさんの両手を取った。
「嬉しいです、クライヴ様! 早速レオタードに着替えましょう!」
「クライヴのレオタード姿……ねぇ」
ソフィさんの言葉を聞いて、キャトラが呟くように独りごちていると、クライヴさんが静かな声で話し始めた。
「ソフィ殿、貴女のお言葉は大変嬉しく思っておりますが、風紀委員としての勤めが少々残っておりますので、本日のところは辞退させて頂きます」
「クライヴ様……」
ソフィさんは静かな声で呟いた後、ニッコリと笑いながら返事をした。
「分かりました。それでは、クライヴ様と共に演技が出来る日を楽しみに待たせて頂きますね」
「はい。
……では、俺はこれで……」
クライヴさんはソフィさんに深々と一礼をした後、ゆっくりした足取りで体育館の入口へと歩いていった。そしてクライヴさんが体育館から出ていった後、キャトラが俺達に話し掛けてきた。
「さてと……それじゃあ、そろそろ部活動見学に戻りましょうか」
「ああ。まだ見てない部活もあることだしな」
「うん。
……あ、そうだ」
そう言った後、キャトラはソフィさんの方へと顔を向けた。
「せっかくだから、ソフィも私達と一緒に来ない?」
「え……でも、よろしいのですか?」
「ええ。ねっ、みんな」
キャトラの言葉に俺達は静かに頷いた。
「皆様……」
俺達の様子を見て、ソフィさんは呟くように言った後、ニッコリと笑いながら言葉を続けた。
「分かりました。それでは、よろしくお願いいたしますね」
「うん!」
キャトラが元気良く返事をすると、ソフィさんは周りに置いてある道具達を見ながら静かに口を開いた。
「それでは、先にこの道具達を片付けてしまいますので、少々お待ち下さい」
「あ、それならアタシ達も手伝うわよ? みんなでやれば早く終わるでしょうし」
「そう……ですね。分かりました。それでは皆様、よろしくお願いいたします」
「はい、任せて下さい」
「それじゃあ、早速作業開始よ!」
キャトラの言葉に頷いた後、俺達はソフィさんと一緒に新体操の道具を片付け始めた。
新体操の道具を片付け終えた後、俺達はソフィさんと一緒に部室棟の周りを歩き始めた。
「さて、次はどこに行こうか」
「そうだな……」
俺とナギアが次の行き先について話しながら周りを見回していたその時、プールが目に入ってきた。
(プールか……そういえばさっきカモメが水泳部に入ったって言ってたし、ちょうど良いかもしれないな)
プールを見ながら教室での会話を思い出した後、俺は皆に声を掛けた。
「よし……それじゃあ、次は水泳部に行ってみるか」
「水泳部……そういえば、教室でカモメが水泳部に入ったって言ってたもんな」
「そうね。それにせっかくプールが目の前に見えてるのに行かないのもアレだものね」
「そういう事だ。ということで、早速行こうか、皆」
こうして俺達は、水泳部の部活動見学のためにプールへと向かった。
プールに着いてみると、そこには水中に足を付けながらプールサイドに座っているカモメの姿があった。
「よっ、カモメ」
ナギアが片手を上げながら声を掛けると、カモメは俺達の方へと顔を向けた。そしてスクッと立ち上がると、綺麗な敬礼をしながら挨拶を返してきた。
「これはナギア船長! それに皆さまも! お疲れさまであります!」
「やっぱりここにいたのね。カモメ上等兵」
キャトラがカモメに近づきながら言うと、カモメは得意そうな顔で返事をした。
「ふっふっふっ……キャトラ航海士、私はもう上等兵ではないでありますよ?」
「おっ? その顔はもしかして……?」
「また昇進されたんですか?」
キャトラ達が訊くと、カモメはとても嬉しそうな顔で返事をした。
「そうなんです!
ですので、今日から私の事はカモメ伍長とお呼び下さい!」
カモメは勢いよく敬礼をしながら言った後、何かを思いついたような顔で言葉を続けた。
「あ、そうだ。せっかくですので、皆さんも泳いで行かれませんか?」
「そうだな……とりあえず、今日の所は見学だけさせてもらおうかな」
「了解であります! リオス副船長!」
俺の言葉に元気良く返事をした後、カモメはプールの方へと体を向けた。
「それではカモメ伍長、発進致します!
ヨーソロー!」
カモメが勢いよくプールへと飛び込み、そして凄まじい水飛沫が上がったかと思うと、凄い速さでプールを往復し、そのままゴールした。
「はやっ!」
「流石は帝国海軍の伍長、凄い速さね」
ソウマとキャトラが今の泳ぎについての感想を述べていると、カモメはゆっくりとプールサイドへ上がってきた。
「ふぅ……中々タイムが縮みませんね。もっと、スタートのフォームを変えた方が良いかもしれません」
「そんだけ速いのに、まだタイムを縮めるつもりなのか?」
ソウマが不思議そうな顔で訊くと、カモメは頷きながら返事をした。
「はい、バショウカジキに追いつくのが私の夢ですから」
「バショウカジキって……たしか魚の中でも泳ぐのがかなり速い奴だよな」「はい。もう少しで追い付けそうだったんですが、ダメだったんですよね」
「そ、そうか。アンタならきっと……追い付けるだろうぜ」
「ありがとうございます! ソウマさん!」
顔を引きつらせながらいうソウマの言葉に、カモメは元気良く返事をした。
(何というか……カモメなら無くはない気がするんだよな。バショウカジキに追い付くとか)
そんな事を考えていると、突然カモメが両手をポンッと合わせながら声を上げた。
「あ、そうだ!」
「どうした? カモメ」
「たしかナギア船長とリオス副船長は海の近くに住んでらっしゃいましたよね?」
「まあ……海の近くといえば、海の近くだよな」
「へへっ、だな。それに体力を付けるために、一応水泳とかもやってたしな」
「そうだな」
俺達の話を聞くと、カモメは顔をぱあっと輝かせた。
「それでしたら、水泳部はいかがですか! もちろん、他の皆さんでも大歓迎です!」
「水泳部か……」
「水泳も良いかもね、全身運動だし」
俺達が話をしていると、ソフィさんが微笑みを浮かべながら話に入ってきた。
「私は寒中水泳しかしたことがないので、プールの授業が楽しみですね」
「寒中水泳……さすがは氷の国ね」
「氷の国は名前の通り、とっても寒いんですよね?」
「はい、普通の国の冬が私の国の真夏くらいです。でも氷の家の中はあったかいですし、温泉もあるのでとても良い国なんですよ?」
「寒中水泳の後の温泉……! 良いですね! 機会がありましたら、お伺いしますね!」
「ふふっ。はい、お待ちしてます」
ソフィさんとカモメが楽しそうに話をしていたその時、カモメがふとプールへ目を向けると、何かに気付いたように声を上げた。
「……おや? プールの中に何かが落ちてますね」
「え?」
「なになに、何が落ちてるの?」
「ちょっと見てきますね。
……はっ!」
カモメは掛け声と共にプールへ飛び込むと、そのままその何かへ向けて潜っていった。
「ぷはっ!」
そしてそれから程なくして、カモメはカニのような物を手に持って水面から顔を出した。
「これは何なのでしょうか?」
「さぁ……どことなくハンマーのようにも見えますが」
「カニのようなハンマーねぇ……」
カニのような物について話をしていると、カモメが再び何かに気付いたように声を上げた。
「あれれ? まだ何かあるようですね」
カモメはカニのような物をプールサイドに置くと、再び水中へと潜っていった。
「このプール、色んな物が沈んでるのね」
「そうだな。それに今の感じだと、見た目よりもだいぶ深そうだな」
「そうね」
キャトラとソウマがプールについて話をしていると、再びカモメが手に何かを持って水面から顔を出した。
「これが沈んでいました!」
「カニの鋏っぽい物に魚の骨っぽい物みたいね」
「誰かの食べ残し、でしょうか……?」
「食べ残しだとしたら、このプールは海と繋がってることになるな」
「海と繋がってるって、そんな馬鹿な……」
俺達が話をしていると、カモメはまた何かに気付いたように声を上げた。
「まだ何かありますね」
そしてカモメは持っていた物をプールサイドに置くと、三度水中へと潜っていった。
「本当に色んな物が沈んでるわね」
「だな。それにしても……こんなに色んな物が沈んでるなら、プールの授業をやる前に皆で掃除した方が良いかもしれないな」
「そうですね」
俺達がプールを覗き込みながら話をしていたその時、突然水面が泡立ち始めた。
(え……今度は一体何が沈んでるんだ?)
不思議に思っていた次の瞬間、俺達の目の前に巨大な岩を両手で支えているカモメが姿を現した。
「何で岩なんか沈んでんだよ!?」
ソウマが驚きの声を上げていると、キャトラ達が不思議そうな顔で岩を見始めた。
「……あれ? 何かその岩、見たことある気がするんだけど……」
「たしかにこんな岩を必死に壊したような……?」
「こんな岩みたいな物を必死に守った気もするような……?」
ナギアとアイリスが不思議そうにしている中、俺は鞄の中のワイズに話し掛けた。
「……ワイズ、あの岩ってどこかで見たことあるよな?」
『はい……私の記憶が正しければ、ピレント島で見た物に似ているかと』
「ピレント島か……」
(そういえば、そんな事もあったな……)
ピレント島での出来事を思い出していたその時、
「とりあえず、この岩は片付けちゃいますね」
カモメが軽い調子で言いながら、両手で支えていた岩を海の方へと放り投げた。そして岩が落ちた瞬間、とても大きな水飛沫が上がり、その辺りにだけまるで雨が降っているかのように水飛沫が降り注いだ。
「あんな岩を放り投げるって……アイツ、どんな腕力してるんだよ……」
驚いた様子でソウマが独りごちている中、カモメが満足げにプールから上がってきた。
「ふぅ……さっきの岩でプールの中に沈んでいた物は全部みたいです」
「お疲れさまです、カモメさん」
「ありがとうございます、アイリス機関長」
アイリスの言葉に敬礼をしながら答えた後、カモメは俺達の方へと顔を向けた。
「さて……話を戻しますが、水泳部はいかがでしょうか?」
「良い部活だとは思うけど……」
「もう少し色々と見たり考えたりしてから決めようかな」
俺とナギアが答えると、カモメは少し残念そうな顔になった。
「そうですか……でも、皆さんの入部は待っていますので、ご検討の程、よろしくお願いします!」
「ああ、分かった」
カモメに静かな声で答えた後、俺は皆に声を掛けた。
「よし……それじゃあ、次の部活動を見に行くか」
「おう!」
「うん」
「オッケー!」
「ああ」
「はい!」
そして俺達はカモメに別れを告げ、プールを後にした。
「さて、ここまで色々な部活を見てきたわけだけど……」
「色々ありすぎて、逆に決まらないな……」
「だな……」
ソウマの言葉に俺はため息をつきながら答えた。
プールを出発した後、俺達は様々な部活動を見学していたが、どの部活に入るか未だに決められずにいた。
(別に必ず入らなきゃないわけでは無いけど、せっかくだから何かの部活には入ってみたいんだよな……)
夕暮れの空を見上げながら考えていると、ソフィさんがナギア達に話し掛けた。
「ナギア様とアイリス様とキャトラ様はどの部活動に入るか決めましたか?」
「えっと、ここまで色々と見てきたんですが……私はお裁縫が好きなので裁縫部を創部しようかと思います」
「それじゃあ、俺も裁縫部にしようかな。アイリスがやってたの見て、前々から興味はあったし」
「アタシもアイリス達と一緒で裁縫部にするわ! 裁縫は出来ないけど、マスコット枠としてなら問題は無いからね!」
「ふふっ、たしかにキャトラ様がマスコットなら人気が出そうですね」
「ええ! この招きキャトラ様にお任せよ!」
ソフィさんの言葉にキャトラが胸を張りながら答えた。
(皆は裁縫部か。俺も一緒にしたいところだけど……それも何か違う気がするしな……)
皆と一緒に歩きながらそんな事を考えていたその時だった。
「それでは、私はここで失礼致しますね」
茶熊学園の女子寮の前に着いた時、ソフィさんが微笑みを浮かべながら俺達にそう言った。
「うん、分かったわ。今日は付き合ってくれてありがとね、ソフィ」
「いえ、私も皆さまと一緒に色々な部活動を見ることが出来てとても楽しかったです」
「そっか。それなら良かったわ」
「ふふ、はい」
キャトラの言葉に小さく笑いながら答えた後、ソフィさんは鞄を持ち直してから言葉を続けた。
「それでは皆さま、また明日です」
「はい、また明日です、ソフィさん」
「ソフィさん、また明日!」
「また明日です、ソフィさん」
「まったねー!」
「それじゃあな、ソフィさん」
俺達が挨拶を返すと、ソフィさんは静かに一礼をした後、ゆっくりと女子寮の方へと歩いて行った。そしてそれを見送った後、キャトラがソウマの方へ顔を向けた。
「さて、アタシ達はネロを迎えに行くけど、アンタはどうする?」
「そうだな……せっかくだし、俺もついていくぜ。あの竜―ネロとはまだあまり話してないからな」
「オッケー! それじゃあ、早速行きましょうか」
キャトラの言葉に頷いた後、俺達はネロが待っている竜舎へ向けて歩き出した。
竜舎に着いた後、俺達は竜舎の中へと入り、ネロが入っている部屋まで歩いた。すると、ネロは部屋の中で静かに寝息を立てていた。
(まあ、だいぶ待たせちゃってたし、仕方ないか)
そんな事を考えた後、俺はネロの体を揺さぶりながら声を掛けた。
「ネロ、そろそろ帰るぞ」
「(……ん? あぁ、お前らか……)」
「ああ、待たせてすまなかったな、ネロ」
「(いや、別に良いぜ? 昼飯を食ってからずっと寝てたからな)」
「あはは、そっか」
ネロの言葉に小さく笑いながら答えつつ、俺はネロを部屋から出した。
(よし……これでいつでも帰れるな)
そんな事を考えていた時、ナギア達の話が耳に入ってきた。
「やっぱりリオス達が一緒にいるのを見ると、何か落ち着くわね」
「あはは、たしかにそうだな」
「私達にとっては、リオス達が一緒にいるのがもう当たり前みたいなものだもんね」
(ネロと一緒にいるのが当たり前、か。たしかに俺が部活を決める基準の中で、最優先になってたのはネロの事だったもんな……)
そんな事を思っていたその時、俺はある事を思いついた。
(……そうだ。これなら問題は無いはずだ。そして後は……)
その事について考え始めたその時、
「……リオス? どうかしたのか?」
そんな声が聞こえたため、顔を上げてみると、ナギア達が不思議そうな顔で俺の事を見ていた。
(そうだ、ナギア達にも一応話しておくか)
そう考えた後、俺は思い付いた事をナギア達に話した。ナギア達は俺の話を聞くと、少し驚いた様子を見せたものの、すぐに微笑みながら賛成をしてくれた。
(よし……それじゃあ、飛行島に帰ってからこの案について纏めていくか)
そう思った後、俺は皆に声を掛けてから竜舎を出た。
翌日、俺達は最初の授業が始まる前に学長室へと向かった。そして学長室の扉を二回ほどノックすると、
「はーい、どうぞー」
というカムイさんの声が聞こえたため、俺達はゆっくりと扉を開けて中に入った。
「失礼します、カムイ学長」
「おや、リオスさん達ではないですか。学長室に何かご用事ですか?」
「はい。俺とアイリスで別々の部活動を創部しようと思ったので、その書類と後はナギア達の入部届をもらいに来ました」
「ほう、創部ですか。因みにどんな部活動を作るつもりなんですか?」
カムイさんに訊かれ、まずはアイリスがそれに答えた。
「私は裁縫部を作ろうと思っています」
「ほほぅ、アイリスさんは裁縫部ですか~
それで、リオスさんはどんな部活動を?」
そう訊かれ、俺は静かな声で昨日思い付いた事を話し始めた。
「俺は騎竜部を作ろうと思っています」
「騎竜部……ですか?」
「はい。
まず、カムイ学長もご存じの通り、俺にはネロという相棒の黒竜がいますよね」
「はい。最初は見た目のインパクトからちょっと身構えてしまいますが、実際に話してみると中々気さくな方なんですよね~」
「はい。ですが、俺はまだアイツの事、正確には竜についてまだまだ知らない事が多い気がしたんです」
「なるほど。たしかに竜と一口に言っても、様々な種類がいますからね」
「それでアイツともっと仲良くなるため、そして竜についてもっとよく知るため、更には他のドラゴンライダー達が自分の相棒について知るための場所が必要だと思ったんです」
「つまり、リオスさんのようなドラゴンライダーの人達が自分の竜などについて学ぶための部活動という事ですね?」
「理由の半分はそうですが、もう半分は他の人達にも竜について知ってもらう機会を作るためです」
「他の人達にもですか?」
「はい。竜の国の人達のように、自分達の生活の中に竜という存在が根付いている人達もいますが、一般的に竜は恐れられたりする事が多いです」
「たしかに、ギルドからの討伐依頼の対象となっていたりしますしね」
「はい。もちろん、ネロのような竜もいるのですが、一般的にみれば竜は少し怖い物だと思われがちなのが現状です。
そこで、この部活動内で竜の生態や種類などといった情報を集め、そしてそれを何かしらの機会で発表することで竜について様々な人達にも知ってもらいたいと思ったんです」
(竜について色々な人達に知ってもらう事で、竜のイメージの向上にも繋がる反面、竜の鱗とかを手に入れるために、竜狩りの真似をしようとする人、もしくは竜狩りに依頼しようとする人だって出てくるかもしれない。
けれど、そういう人だけじゃなく、竜を守ろうとしてくれる人だって増えるかもしれない。
そう考えたからこそ、俺はこの騎竜部を立ち上げようと思ったんだ。もうあんな事を、ラピュセルの母竜の時のような悲劇を生み出したくないから)
そう考えながら、俺はジッとカムイ学長の事を見つめた。カムイ学長は腕を組みながら少し考えた後、俺達の顔を見ながら静かな声で話し始めた。
「分かりました。アイリスさんの裁縫部、そしてリオスさんの騎竜部の創部を認めましょう」
「ありがとうございます、カムイ学長」
「ありがとうございます」
俺とアイリスが頭を下げながら言うと、カムイ学長は朗らかに笑いながら返事をした。
「ほっほっほ、二つとも認めない理由がありませんから。それに……」
カムイ学長は俺の方に顔を向けてから言葉を続けた。
「リオスさんの騎竜部は、これから入ってくるであろうドラゴンライダーの生徒さんのためにもなりますしね。
リオスさん、アイリスさん、期待してますよ?」
「「はい」」
俺達が声を揃えて返事をすると、カムイ学長は机の引き出しを開け、中から二枚の書類を取りだした。
「こちらが創部届です。こちらに部活動の名称や創部時点の部員名や部員数といった必要事項を書いて、書き終わりましたら私に提出して下さいね」
「「分かりました」」
俺達は返事をした後、一枚ずつ創部届を手に持った。
(これで騎竜部が創部出来るけど、必要な物はまだまだあるし、ここからが大変だな……)
創部届を見ながら考えていたその時、学長室のスピーカーから予鈴の音が鳴り響いた。
「おや、もうそんな時間でしたか」
カムイ学長はスピーカーを見ながら独りごちた後、俺達の方へと向き直った。
「それでは、リオスさん、アイリスさん。授業、頑張って来て下さいね」
「「はい」」
声を揃えて返事をした後、俺達は静かに学長室を出た。そして授業を受けるために、教室へと急いだ。
政実「第3話、いかがでしたでしょうか」
リオス「まさかのオリジナル部活だったわけだけど、この終わり方からするに、次回は創部をするための準備回になるのか?」
政実「うん。このまま第3話中にやっても良いかなとは思ったんだけど、そうすると第3話だけがかなり長くなりそうだったから。それにオリジナル部活にしたからには、騎竜部についてピックアップした回も欲しいと思ってね」
リオス「なるほどな。
さてと、次回の更新予定はいつ頃になりそうなんだ?」
政実「出来る限り1週間以内に更新する予定だよ」
リオス「分かった。
そして、この作品や本編についての感想や意見などもお待ちしていますので、よろしくお願いします」
政実「よし……それじゃあ、そろそろ締めよっか」
リオス「ああ」
政実・リオス「それでは、また次回」