48番目の逸般人   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・クロスオーバー先が『自由度の高いゲーム』のため、とある動画のプレイ内容を色濃く受けている。(重要)
・クロスオーバー先が『自由度の高いゲーム』のため、とある動画のプレイ内容を色濃く受けている。(重要)
・上記を表す簡潔な説明:【マクスウェルの悪魔】、【そんな発想あってたまるか】、【問題ありません!】
・クロスオーバー先のゲームシステムがFGO世界を侵食している。(重要)
・クロスオーバー先のゲームシステムがFGO世界を侵食している。(重要)
・物理法則が完全崩壊している。(重要)
・物理法則が完全崩壊している。(重要)
・「こいつが人類最後のマスターで人理修復が成し遂げられるか」に関してはノーコメント。


【主人公】
マックスウェル(本名不詳) 10代後半
・人当たりのいい笑顔を浮かべている好青年。困っている人を放っておけないお人好しの平和主義者。
・常にノートを持ち歩いている。彼にとって、このノートは特別なものらしい。


ケース:マックスウェル(本名不詳)の場合
スーパースクリブルオーダー


 カルデアに来て早々、マックスウェルはうっかり寝落ちしてしまったらしい。有識者曰く『入館手続きを終えた直後、戦闘シミュレーターを強制的に体験させられた弊害』とのことだ。しかも、レイシフト前の説明会――マスター候補生たちは要全員参加――が始まるのだという。

 そのことを教えてくれたレフ・ライノールとマシュ・キリエライトは、マックスウェルに「速く向かうように」と促すと、一足先に会議場へと向かった。一緒に行ってはくれないようだ。彼や彼女たち――魔術師にとって、今顔を会わせたばかりの一般人に対して助言するだけでも破格の対応なのだろう。

 

 

(僕だったら、()()()()()()()()()、説明会に間に合うようにしつつ案内してあげるんだけどなぁ)

 

 

 血も涙もへったくれもない環境だとマックスウェルは思った。

 

 「破格の対応をしているのだから許せ」という彼等の態度からして、自分が一番偉いのだと思い込んでいる集団が、本当に世界の危機を回避できるのか疑問である。

 あれでまともな部類だとしたら、一般的な思考回路を持つマックスウェルなど生まれたての猿みたいなものだ。基本的人権が保障されているかも怪しい。

 献血のお兄さんから世界の危機を伝えられてホイホイ参加したのは悪手だったか。マックスウェルは己のお人好しさ加減に苦笑したが、後悔はしなかった。

 

 自分に与えられた課題は『早く会場に辿り着くこと』だ。

 説明回の会場はレイシフトが行われる指令室。会議が始まるまで時間はない。

 

 

(()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

 

 ――なんてことはない。いつものことだった。

 ――身構える必要も、難しく考える必要もない。

 ――課題の乗り越え方は、マックスウェル自身が良く知っている。

 

 マックスウェルはノートを取り出した。どのページも真っ白で、何かが書かれた筆跡はない。

 だが、このノートこそ、マックスウェルにとっては使い慣れた万能ツールだった。

 

 ペンを取り出し、流暢に文字を書きだす。文字を書き綴るマックスウェルの手の動きには、一切の迷いがなかった。

 

 

【ハネノハエタ コウソクノ ソウジュウデキル メイ】

 

 

 小気味良い破裂音が響く。そこに現れたのは、姪だった。

 

 背中に羽を生やした姪は、空中にふわふわ浮いたまま静止している。マックスウェルは躊躇うことなく、姪に飛び乗った。

 姪は文句も反抗もすることなく、マックスウェルの行動すべてを受け入れていた。マックスウェルは慣れた様子で姪を運転する。

 一気に高度を下ろして床ギリギリまで接近したとき、マックスウェルはノートを取り出した。ノートに新たな文字を書き綴る。

 

 

【あな】

 

 

 カルデアの廊下に大穴が開いた。大穴の底に着地したマックスウェルは、一端姪から飛び降りる。間髪入れず、マックスウェルは再び姪に飛び乗った。

 次の瞬間、マックスウェルは文字通り“壁の中にいた”。常人だったら身動きが取れず発狂するような現象であるが、マックスウェルにとっては慣れた現象である。

 取り乱すことも右往左往することもなく――むしろ、どこか生き生きとした様子で――マックスウェルは姪を操縦して壁の中を進んでいった。

 

 壁の中を突き進むうちに、マックスウェルはマシュとレフを追い抜く。レフが何かを叫ぶような声が聞こえた気がしたが、己に課せられた課題を乗り越えるために気にする必要性は皆無だったので問題ない。マックスウェルは振り返ることなく、姪を操縦して壁を突き進んだ。

 すると、目的地である管制室内部に到着することができた。扉を開けることなく壁の中を突き進んで入って来たマクスウェルを見て、人々が顔を真っ青にして悲鳴を上げる。マックスウェルは気にすることなくノートを取り出した。迷うことなく文字を書き込む。

 

 

【あな】

 

【てつのもん】

 

【れいとうじゅう】

 

 

 管制室の床と壁の境目に、大穴が出現した。マックスウェルの足元には鉄の門が現れる。

 間髪入れず、マックスウェルは冷凍銃で鉄の門を撃ち抜いた。

 

 鉄の門が冷気に晒され大きな氷塊へ変貌する。その勢いを利用し、マックスウェルは壁の中から飛び出した。自分の登録番号と同じ番号――48番と書かれている机へ向かい、姪共々椅子の上に着地した。

 『会議が始まる前に、会場に辿り着く』――与えられた課題は滞りなく果たされた。マックスウェルが満足したのと、顔を真っ青にしたレフが管制室に駆け込んできたのと、所長と思しき少女が発狂したように金切り声を上げたのはほぼ同時。

 

 

「あ、あんた、一体どうしてくれるのよぉ!?」

 

 

 「私のカルデアが」と悲鳴を上げて頭を抱える所長らしき女性を見返し、マックスウェルは満面の笑みを浮かべて答えた。

 

 

「カルデアに穴が開き、壁の中には鉄の門が凍ってできた氷塊が残留したままですが、会議が始まる前に会場入りしたので問題ありません!」

 

 

◆◆◆

 

 

 空き部屋で楽しくおやつタイムをしていたら、空き部屋に割り振られたマスターが部屋にやって来た。ロマニ・アーキマンの楽園はこの瞬間に潰えてしまったらしい。がっくりと肩を落とす。

 彼がレイシフトに参加できなかったのは、今回の人理修復やレイシフト、カルデアについての知識が人並み以下だったためらしい。「所長を怒らせてしまったせいで待機を命じられた」と苦笑したマックスウェルに親近感を抱く。

 ロマニも、魔術師の思考回路に染まっている人々――特に、所長であるオルガマリー・アニムスフィアからは昼行燈呼ばわりされているクチだった。医療技術と人柄は評価されていることが数少ない救いだろうか。

 

 マックスウェルは人当たりのいい笑顔を浮かべる好青年だった。カルデアに来たのは一般人枠のスカウトである。

 スカウトに同意した理由は「困っている人を放っておけなかった」という。成程、魔術師では珍しいお人好しなのだろう。

 

 外見も性格も「普通」という言葉がよく似合う青年で、彼はロマニの「友達になってくれ」と頼みにも二つ返事で頷いてくれた。

 

 

「友達と話すなんて初めてだ! なんだろう、柄にもなくワクワクしてきたぞぅ……!」

 

「そうなんですかー」

 

 

 自己申告通り、今のロマニは柄にもなく浮かれていた。三十路のおじさんがキャッキャしているのを見ても、マックスウェルはドン引きせずに微笑んでいる。

 

 自由意志など持つことが許されず、ただ粛々と装置であり続けるしかなかった嘗ての自分。周りにいた人々は舞台装置としての自分を敬ってくれていたけど、そんな自分と自ら進んで友人になってくれた人間は存在していなかった。

 舞台装置から抜け出た後も、ロマニは理由(わけ)あって、医学の勉強一辺倒に打ち込んできたクチだ。友達作りや青春なんてものに興味を示すことなく、来るべき瞬間に備えて入念に準備をしてきた。失敗が許されない一発勝負に勝つために。

 

 

「それじゃあ、友達のしるしとして……」

 

 

 マックスウェルはノートを取り出すと、さらさらと文字を書き綴る。

 

 

【マックスウェルのノート】

 

 

 次の瞬間、小気味良い音を立てて何かが目の前に現れた。マックスウェルが持っているノートと瓜二つの、緑の表紙をしたノートブックだ。

 

 

「お揃いのノートとか、どうでしょう?」

 

「お揃いかあ。誰かとお揃いのモノを持つのは初めてだなあ」

 

 

 ロマニは緑の表紙をしたノートブックをしげしげと眺める。どこからどう見ても、何の変哲もないノート――ロマニの思考はそこで一端中断された。

 

 ノートが震えている。別にロマニが動かしたわけではない。ノート本体が、勝手に振動しているのだ。

 その違和感に気づいて首を傾げたのと、小気味良い炸裂音が響いたのは同時。

 

 

【シンダ ライオン】

 

 

 次の瞬間、ロマニの足元にライオンが転がった。ライオンは力なく床に頽れ、ピクリとも動かない。

 ……いいや。そもそも、生きているときに感じるべき熱はなく、瞳孔も完全に開き切っている。

 

 

「……な、なんでここに、ライオンが……? いや、このライオン、死んで――!?」

 

 

 ロマニの言葉は続かない。ノートが再び振動し、炸裂音が響いたからだ。

 

 

【プレゼントヨウニホウソウサレタ ニジイロノ シンダ ライオン】

 

【コウラガラノ シンダ ライオン】

 

【ソヨカゼノ ミニ シンダ ライオン】

 

 

 目が痛くなるようレベルでサイケデリックな虹色のライオン――しかも、頭部にきちんと贈答用のリボンがついている――がロマニの足元に転がる。先程転がったライオンと同じく、生きているようには見えない。

 緑の甲羅柄のライオンと、小柄のライオンがまたロマニの足元に転がる。心なしか、小さなライオンから心地の良いそよ風が漂ってきた。だが、この2匹も、先程転がったライオンと同じく、生きているようには思えなかった。

 

 ロマニはパニックだった。友達から貰ったノートが勝手に振動し、その度に死んだライオンばかり現れる。

 視覚表現として様々な形容詞がついているが、現れる物体が“死んだライオン”であることは揺らがない。

 おろおろしている間にも、死んだライオンたちは次々とこの場に現れては消えていく。

 

 やたらとねばねばする巨大な死んだライオン、剣を持ち発火している死んだライオン、羽が生えた死んだライオン、勝手に自己増殖する死んだライオン――。

 

 

「な、なんだこれっ!? マックスウェルくん、これは一体――ッ!?」

 

 

 顔面蒼白になったロマニは、自分にノートをプレゼントしてくれた張本人であるマックスウェルに視線を向けた。マックスウェルは満面の笑みを浮かべて告げる。

 

 

「僕の出したノートが死んだライオンばかり出していますが、ロマニに友達のしるしとしてプレゼントを渡したので問題ありません!」

 

「待って! これどこからみても問題しかないからねっ!!?」

 

 

 なんだかヤバイ人とお近づきになってしまった――ロマニはマックスウェル評を大幅修正せざるを得なかった。少し前の自分を殴って目覚めさせたいと本気で思った。

 マックスウェルの笑顔には、後ろめたさや悔いみたいな感情が欠落している。悪びれる様子も一切ない。それどころか、賭け値無しの善意であると言わんばかりに澄み切っていた。

 魔術師としての側面からみた倫理観の欠如なら見たことあるが、マックスウェルの反応は、おそらく『世間一般で言う模範的なサイコパス』のそれであった。

 

 この異常事態を持ち込んだのはマックスウェルである。同時に、この異常事態をどうにかできるのも彼しかいない――ロマニは直感した。土下座して頼み込もうとしたとき、ロマニの端末に連絡が入る。

 

 正直、ロマニは自分の周囲に起きた珍現象で手一杯だった。同時に、レイシフト関連の異常では決して自分が呼ばれることはないとタカを括っていた。

 まさか端末から要請が来るとは思ってなかったロマニは目を見張る。適当なことを言ってごまかそうかと思ったが、

 

 

『助けてくれロマニ! マックスウェルくんに投げつけられた薬を浴びたら妊娠してしまったんだ!!』

 

「はぁ!? キミは何を言っているんだいレフ!?」

 

 

 女性が妊娠したのならまだ分かる。端末の向こう側から響くのは、レフ・ライノールの声だった。大分発狂しているらしく、普段の理知的な口調は吹き飛んでいる。自己申告で「妊娠した」と叫ぶのだから、余程とんでもない現象が起きているのだろう。

 

 

『あああああああ!? 産まれる、産まれるぅぅぅ! うわああああああああああああああああーっ!!』

 

「レ、レフ!? レフー!!?」

 

 

 断末魔の悲鳴を思わせるような叫び声が轟いた。彼の声はそれっきりだったが、端末の向こう側からは他の人々の阿鼻叫喚が聞こえてきた。

 『レフ教授が触手を産んだ』、『真っ赤な目をした紫の触手』、『出産おめでとうございます! 史上初の男性妊娠および出産という快挙』云々。

 管制室は、48番目のマスターの私室以上に異常事態だった。死んだライオンの群れに囲まれたロマニなど、大したことではなかったのだ。

 

 このままだと、レフだけでなく、他のマスター候補たちが危険である。肉体でも精神でも、向うは完全に大混乱だ。

 双方のダメージを抑えるためには、医者である自分が何と化せねばならない。ロマニは立ち上がり、即座に管制室へ向かって走り出した。

 

 マックスウェルに「絶対ここから出てこないでね!」と言い含めて。

 

 

 

 

 

 

 ――その約束は、守られることはない。

 

 

 数時間後、マシュと一緒にレイシフト唯一のマスター候補がマックスウェルであり。

 機材に潰されていたマシュを助け出し、身体を治療した人物が彼であることを知り。

 

 

「約束は破りましたが、マシュが無事なので問題ありません!」

 

 

 満面の笑みを浮かべて言い切ったマックスウェルに対してある種の恐怖を覚えることになるだなんて――このときのロマニには、一切予測できないことだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「嫌、嫌、嫌! 私死にたくない! まだ死にたくないっ!!」

 

 

 オルガマリーの身体は、引き寄せられるようにカルデアスの中枢へと向かう。膨大な情報の塊であるカルデアスに放り込まれたら、単なる霊体であるオルガマリーがどうなるかなんて明白だ。膨大な情報の海に押しつぶされ、自分の死に様に発生する苦痛を延々と演算され、死んでいく。

 自分が頼りにしていたレフは、人理焼却を引き起こした敵だと言う。オルガマリーを爆弾で吹き飛ばした張本人だと言う。オルガマリーを殺す日を虎視眈々と狙っていたと言う。頭が真っ白になる程の衝撃を与えられた果てに、オルガマリーの命は風船の灯となっていた。

 

 

「オルガマリー所長!」

 

 

 そんな自分に手を伸ばすのは、数時間前に別な意味で管制室を阿鼻叫喚に陥れた張本人――48番目のマスター候補生、マックスウェルだった。

 ありとあらゆる罵詈雑言をぶつけたと言うのに、彼は笑ってそのすべてを受け入れてくれた。知らないことは素直に訪ね、説明を終えたオルガマリーを労ってくれた。

 労られたり褒められたりしたのは人生で初めてのことだ。「オルガマリーから教えを請いたい」と言われたのも、人生で初めてのことだった。

 

 ――認めてもらえたような気がしたのだ。だから、オルガマリーも認めかけていた。長い努力が報われるかもしれないと、希望を抱いた。

 

 それなのに、オルガマリーの努力は無に帰そうとしていた。一番信頼していたレフの手によって、自分の人生に無価値の烙印を押されようとしていた。

 足掻く。足掻く。だけどその手は届かない。無情にも、お互いの指先が掠めただけだ。オルガマリーのすべてが、絶望一色で染め上げられる。

 

 

「いやあああああああああああああああああああっ!!」

 

「まだまだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 絶望したオルガマリーとは対照的に、諦めなかったマックスウェルが咆哮する。彼はノートに何かを書き記した。

 

 

【む】

 

 

 カルデアスに引っ張られる力を、何かが上回った。オルガマリーの身体は一気にマクスウェルの元へと引き寄せられる。

 黒々とした渦巻きが、オルガマリーを引き寄せる程の重力を放っているのだ。渦巻に飲み込まれるかと思った刹那、それは炸裂音とともに消滅する。

 呆気にとられたレフが正気に戻って叫んでいたが、マックスウェルは気にすることなくノートに何かを書き記した。

 

 

【ソウジュウデキル ノリモノノ シンダ オルガマリー・アニムスフィア】

 

 

 小気味よい炸裂音がした。オルガマリーと瓜二つの女性が現れるなり、彼女はそのまま崩れ落ちる。ロマニが『死体を出してどうするの!?』と怒鳴っていた。

 確かに、目の前に転がったオルガマリーと瓜二つの女性は死んでいた。瞳孔が開いているし脈もなく、体温も冷たい。だが、完全な五体満足である。

 

 これにはレフもびっくりしていた。「爆弾で吹き飛ばした筈なのになぜ五体満足なのか」と悲鳴を上げていた。「マックスウェルが現れてから物理法則が崩壊している」とも。敵であるが、彼の言葉は何一つとして間違っていない。

 

 呆気にとられたオルガマリーの手を引き、彼は死体の女性とくっつけた。ふわふわ浮かんでいた感覚が消え、地に足着いたような気分になる。

 手を動かすのも、足を動かすのも、マックスウェルとマシュを見ることにも異常は感じられなかった。それを見たマックスウェルは安心したように微笑んだ。

 

 

「よかった! 僕の予想通りだ」

 

「予想通り?」

 

「【ソウジュウデキル ノリモノ】って付ければ、本来なら乗れない物体に乗ることができるようになるんです。『オルガマリー所長が【シンダ オルガマリー・アニムスフィア】を操縦する』って形なら、貴女の魂が消滅しなくて済むんじゃないかって」

 

「その発想はいらなかった!!」

 

 

 霊魂だけのオルガマリーは、レイシフトを終えて戻って来ても消滅するしかない。だが、裏を返せば、オルガマリーの霊魂が宿る器があれば、カルデアに戻っても生き延びれる可能性が上昇する。

 マックスウェルはノーヒントでその発想に辿り着き、ノートを使ってその事象を証明してみせたのだ。物理法則を崩壊させ――或いは完全無視して齎される奇跡の業に、生粋の魔術師たちは頭を抱えざるを得ない。

 

 

【ツウジョウノ ポーション】

 

 

 マックスウェルは「最後の仕上げです」と笑い、ガラス瓶を取り出した。レフを妊娠させた薬と同じデザインだったため、レフがぎょっとして身を竦める。勿論、オルガマリーも身じろぎした。

 自分たちが恐れおののいている様子など関係ないと言わんばかりに、マックスウェルは薬をオルガマリーに使った。操縦しているような感覚は一切なくなり、レイシフト前のオルガマリーがそこにいた。

 発狂したロマニ曰く『肉体と霊魂の乖離もなく、バイタルも通常。異常なし。本当に生き返った。死を超越した』とのことだ。それを耳にしたレフが目を剥いたが、マックスウェルが満面の笑みを浮かべて宣言する方が早かった。

 

 

「物理法則が完全崩壊しましたが、オルガマリー所長が無事なので問題ありません!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ――このときのカルデア関係者は、知らなかった。

 

 

 一部のサーヴァントが【ニンシンシタ ポーション】――性別、人間、動物、道具、乗り物、無機物問わず妊娠させる薬品――によって、途方もない精神的ダメージを受けることも。

 カルデア内で悪だくみをしたり騒ぎを起こした面々が【ヤジュウノヨウナ ムキムキ】――筋肉隆々で日焼けした褐色肌の男性に追いかけ回されて大変な目に合うことも。

 最終特異点で魔神柱と戦うことになった際、マックスウェルが何の躊躇いもなく【ナンデモタベル ムテキノ メガヘッドマックスウェル】――自分の顔を巨大化させた物体を設置し、魔神柱を片っ端から食い荒らすことも。

 

 

 ――発想が生粋の魔術師と良識人、あるいは凡人しかいなかったカルデアには、予測できるはずもなかったのだ。

 

 

 




クロスオーバー先:『マックスウェルの不思議なノート』≒『スーパースクリブルノーツ』
参考動画:『マックスウェルの不思議なノート(TAS)』、『マックスウェルのフリーラン(TAS)』、『マックスウェルと不思議な死んだライオン(TAS)』
・「ノートに書いたものを現実世界に取り出すことができる。形容詞を付けると、その特性が付加された物体が出てくる」、「あらゆる手段を講じて課題をクリアしよう!」を拡大解釈した結果の産物。
・レフが生んだものの正体=フラウロス(ミニサイズ)。【ニンシンシタ】という形容詞を付けると、子どもとして「同じ外見のミニサイズ」のキャラクターが出現する。
・下手したら「ノートに【セイジョウナ ジンリ】と書いて出せば、人理修復ができてしまう」かもしれない。
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