東京永年戦争   作:人世一夜

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これでこの話は終了です。
前回と足したら、約四千文字になってました。

この長い話を分割するのは賛否両論あると思いますが、どうかご了承をお願いします。


黒髪の男性2

 

「あんた、いったい何を……」

 

「何を? ……いや、そんなことはこの際どうでもいいだろう。目の前の敵がいなくなった。それ以上に今知る情報など必要ない」

 

 そう語る彼だが、どこかにスゴウデのスナイパーでもいるのではと、リョータは辺りを見回す。やがてその行動は無駄になった。要は死因が銃の狙撃ではないのだ。ライフル如きで、この三人が受けたパックリと肉細胞を切り裂く傷ができるか。そんな都合の良い弾丸があるのなら、すぐに広まってこの日本中に出回る。そもそも射出音なんて聞こえなかった。

 やはり、彼が殺ッたということになる。

 

「どうした? 俺の顔に何か付着しているか?」

 

「いや、そうじゃなくて。……あんた、マジで何者だよ」

 

「黒澤大悟。フリーで断罪を専門稼業にしている者だ」

 

「黒澤……って、黒澤大悟!?」

 

 リョータは聞き覚えのある名に驚愕しながらも思い出す。勢力には、やり方に着いていけず逃げ出す者もいる。それを殺し、報酬をもらうヒーローがいるのだ。それが断罪人。恐らく彼らほど人を殺し慣れ、たくさんのヒーローを殺害してきた者はいないだろう。

 内に、断罪人がどうしても敵わない相手もいる。裏切るときのタイミングを計った奴らだ。基本、自身の強さがある一定まで身につくのを見計らって裏切る。そんな頭の良い奴らが追いかけられ、最後に見る人物がこの≪黒澤大悟≫であり、そこで最後を迎えることになる。

 さっきの光景と同じだ。大悟の攻撃は全く見えない。気づいたときには攻撃が終了しているのだ。それほどに強い存在なのだ。

 

「あんたが、ユージの言ってた唯一の友達か?」

 

「ん? …………あぁ、そうか。お前がユージの受け持っている新人か」

 

「うっ……」

 

 ここでも哨兵のような扱いか。これから哨兵として働くリョータからすれば、自分に劣等感を感じてならない。本当に、よく追い出されなかったものだ。千葉や埼玉だったらどうなっていただろう。きっと、目の負傷を理由にスッパリと所属を抹消されてしまうだろう。

 リョータは神奈川が気に入っている。仲間を一番に考えているからだ。一部、一人のヒーローを除いて。

 

「……どうした?」

 

 目を擦るリョータを見て、大悟は尋ねる。

 

「前の作戦で目をやられて……」

 

「ほう、油断したな」

 

「いえ、たぶんほとんど俺のせいじゃないッスよ」

 

「……というと、どういうことだ?」

 

 リョータは前回の作戦でのことを全て話した。あの時、あの路地にいるヒーローに向かって単独で突っ込んだ事。ユージがその時『必ず守ってやる』と言った事。そして、軽くその約束を破ったこと。

 大悟はコクコクと頷きながら返答を考えているようだった。

 

「それで、そんなお前がここにいる理由は、家出か?」

 

「違う。目の負傷のせいで、前線を追い出されて関所の警備に就かなきゃならなくなったんだ!」

 

「なるほど、実は俺も関所から千葉へ行こうとしていたのだ。短い道のりだが、一緒に行くか?」

 

「……はぁ」

 

 結局、何か言葉を返してくるのかと思いきや、話題を切り替えられた。歩き出す二人を、風景が出迎える。神奈川は復興など行っていないため、瓦礫と崩れたコンクリートの山ばかりだ。全てヒーローの仕業ではなく、昔の震災で崩壊した傷跡である。リョータはその震災を知る由もない。もうそれから四年は過ぎているのだ。

 大悟は、その瓦礫の場所で止まった。

 

「何やってんスか?」

 

「……いや、相変わらず壊れたままだとおもってな」

 

「そんなの決まってるじゃん。神奈川には拠点を建設するだけの予算があったらゲリラ戦なんてやってないッスよ? それよりさっきの話聞いて何も感じないんスか?」

 

 さっきの話。ユージが約束を破ったという話だ。

 

「あぁ…………リョータ? だったか。良い仲間に恵まれた奴だお前は」

 

「はぁ?」

 

 感想があっさりとしすぎて、ポカンと口を開けるリョータ。笑顔を見せているということは、適当な答えを返したわけではないようだ。納得のいかない大悟の言葉に、リョータは憤慨したように歯を食いしばる。

 

「まさか、あんな奴が良い仲間だっていうのか!? 冗談じゃねぇ。あいつは俺を守るとか約束しといてすぐに破りやがった最て……」

 

「では、少し考え方を変えてやろう。もし――お前の身を考えてそう言ったのだったらどうする?」

 

「えっ……」

 

 止まった声から、モヤモヤが風に運ばれていくような感覚に陥った。大悟は目の中でじっとその様子を見ている。数秒後、リョータの顔は真っ赤に火照った。なぜここで羞恥心が気持ちに交差するのだろうか。理解できない。リョータは理解できなかった。

 

「っふふふ……なんだ、自分で気づいてしまったではないか。それでは俺が答える必要もないな」

 

「……なんだよ、それ。まるであいつが――ドコまでも俺に冷たいあいつが、人より十倍他人を考えてるみたいじゃんかよ」

 

「言うとおりだ。ユージは戦死する仲間を一番悲しむ男。恐らく、作戦前に元気がなくなったお前に奮起を促させるために、わざわざそんなことを言ったのだろうよ……確かに冷たい奴かもしれない。俺があいつ出会った時には話すことすら拒絶しているような奴だった。だがどうだ。裏を翻して、お前から話を聞いてみれば、お前ととても多くの会話をしている」

 

 再び歩き出す。リョータもその足並みに合わせて地を踏む。その間に大悟が続けて話した。

 

「あいつが抱え込んでる苦しみから救い出せるのは、もしかしたらお前かもしれないな」

 

「ユージの……苦しみ?」

 

「忘れるな。ヒーローも元を糺せば人間だ。それ以前の記憶もあるし、そのせいで苦しんでいる奴がいる。ユージはその一人だ。それから俺は助けてやれない。他の誰かでなくてはな」

 

「じゃあ、俺はどうし……」

 

 その目を少し逸らした瞬間、大悟の姿は雲散霧消。そこにいた痕跡すら残されていなかった。

 

「……あいつの苦しみ、か。考えらんないけど」

 

 跡形もない黒澤大悟の消えた場所を後にしながらリョータは、少しだけ警備をしっかり取り組もうという気になった。




黒澤大悟。
性格は完全にオリジナルです。
何せ、見たこともどんな性格なのかも詳細はなぞだらけですから。

この人には、もう少し働いてもらおうかなと思います。
次の出番は~……??

も、もうちょっとかかります。
(※舞台裏で大悟さんがマジギレしてるのは言うまでもない)

ついに十話目ですね。
章設定どうしようか、と考えてしまいます。
そうそう、挿絵の方も♪
はいはい。ちょっと色んな人に今掛け合っているところです。

もし、挿絵きましたって時は、活動報告にドーンと発表しますので。

では、次回の更新で。
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