東京永年戦争   作:人世一夜

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お待たせしました。
最近暑いですねぇ。おかげで更新作業がはかどらなくて大変でした。



重大なミス

 

 関所に噴水がある理由は、少しでも国境線をわかりやすくするためだそうだ。しかし、それは表舞台に出した誰でもわかる嘘。本当は誰かさんが施した静かな場所なのかもしれない。その誰かさんのせいで、今二人は再会を果たした。静かに座る二人から、懐かしみの表情が伺える。

 

「へぇ、そうなんだ……」

 

 これまでの神奈川について語るリョータの隣で、マユミは空いた口が塞がらない。全て話していた。千神停戦条例で神奈川が息を吹き返しつつあり、千葉に真の感謝をしていること。警備に就く前、埼玉とのゲリラ戦があったこと。そして、その戦闘でリョータは目を負傷し、一番敵との接触する可能性が低い、この関所で警備することになったこと。

 

「目は、大丈夫なの?」

 

「あぁ、辛うじて見える。といってもほとんどぼやけてるけどな」

 

「そうなんだ……」

 

 一安心したのか少し膨れた胸に置いていた手を撫で下ろしながらホッと息をつくマユミ。ちょうど噴水も噴き上がる勢いがなくなってきたときのことだ。噴水が出した霧状に散りばめられた飛沫が、辺りをいっそう寒くさせる。今日は何日なのだろう? リョータはその沈黙中に考えてみた。――二月くらいだろうか。普通なら暖かくなってくる季節で、昔は節分の日、なんて季節の分け目を意味する日があったくらいの日にちだ。しかし、この日本にもう四季はない。どういうわけか熱くなったり寒くなったりを繰り返すだけのいわゆる天変地異というものが日々起こっているのだ。

 リョータは冷えた腕を組んで服の上から軽く擦る。

 

「寒くなってきちゃったね?」

 

 それを見たマユミがリョータと同じく寒いのか、両手を包んで白い息を吐きかける。結構なこと温かい格好をしているマユミだが、袖はほとんど無防備状態。隙間から冷たい風が通り抜けて確実に腕が冷えているだろう。

 

「あぁ……明日は、もっと暖かくなるといいな」

 

 しかし、リョータの願望は届くことなく、次の日の夜も冷えてしまう。さらにまた次の日も、そのまた次の日も、同じような夜の気温が続いた。

 

 

 

 

 そうして、警備を続けるリョータは、マユミと会い続け、だんだんとその回数も増えていった。話したいことがたくさんあったからだ。自分がどれぐらい成長したかとか、自国ではこんな物流行っているんだとか、例え日によって話題がなくても、二人は出会うだけで笑うことができた。会うたびにその間の時間がとても長く感じてしまい、毎日が待ち遠しくなった。

 ある日、ちょうどリョータが警備に就いてから10日経ったときのこと。慣れたように自室で警備前の準備をするマユミは、二枚、ある物を作っていた。

 青いマフラーと赤いマフラー。

 

「これでよしっ……えーっと」

 

 編んだマフラーを縦横に伸ばして、しっかり編まれていることに頷くと、確認をとる。

 

「赤い方はアヤので、青い方は……リョータ」

 

 マユミは赤から青へ目を流すと、急に恥ずかしくなった。こういうことは基本、恋人にするものだ。しかし、今更渡さないで自分のために使うと、虚しく感じる。だいたいなんで作ってしまったかというと、リョータがこの10日間ずっと寒そうにしていたからだ。マユミは覚悟を決める。青いマフラーを見つめながらスマイルを浮かべて、隣の部屋に向かった。

 アヤは今いない。昨日部隊から声を掛けられ、今日丸一日前線に出ている。

 合い鍵を使って扉を開けると、ベッドに丁寧に畳んでソッとマフラーを置く。そして、手紙を添えた。『いつも仲良くしてくれてありがとう』と書かれた紙切れ文書である。

 

「さぁ、行かなくちゃ」

 

――喜んでくれるかな。

 

 期待が高まるマユミは、関所に向けて駆け出した。

 

 

 

 さて、関所の門をくぐると、正午後なのに明るく照っている太陽の光が小さな橋に降り注いでいる。噴水はちょうど時間で、飛沫を噴き上げていた。

 

「あはは……」

 

 マユミから苦笑いが漏れる。かなり気温も暑い。完全に持ってくる時間帯を間違えてしまったようだ。こんな暑い日にマフラーを貰っても使い道がないではないか。

 この暑さだと、冷えないかもしれない。リョータ自信が言っていたが視力もだんだんと回復してきたようだ。もしかしたら、今日が警備の最後かもしれないのに。最後にただのお節介焼きをしてしまったかのように見えてしまう。しかしマユミは、

 

「しょうがないよね……」

 

 そう、開き直るしかなかった。残念だが、運が悪いこともあるということだ。もうすぐ噴水が見える。赤い髪の毛のシルエットが映っていることを確認すると自然と急ぎ足になってしまう。

 そのまま声を上げようとした。が――。

 

「あらぁ♪ 何を楽しそうな顔をしているんですか? もしかして、そんなに会いたかったんですか?」

 

「っ……!!?」

 

 その時、マユミは重大なミスに気がついた。振り返ってもみればいい。リョータは敵国でそれにたくさんの会話をしてきた。中には自国の事も多く喋った。それが何を意味するか。簡単な問題だ。

 ゾッと体中の毛が逆立つと、サーッと引いていく。同時に顔が蒼白と化した。

 

 赤い髪の毛でも違う赤い髪の毛だったのだ――。

 

 二マッと笑う狡賢そうな微笑。小さい身体にはミニスカートが良く似合う。さらに大きな黄色のリボンで髪を飾れば、不思議なことに、ニコニコとした笑顔から腹に抱えているであろう企みが全て隠れてしまった。

 しかし、彼女の心情は明らかだった。この状況、このシチュエーションから見出せる答えは、怒り。

 

 マユミは真下で踏みつけられている姿を捉える。

 

「これはどーゆーことですか? マユミさん♪」

 

 楽しそうに質問する千葉の指導者、姫咲えみるは、ギリギリとリョータを踏みつける足に体重をかける。苦しそうに唸るリョータを目の前にしてマユミは、平和な静けさが終わりを告げたことを知った。

 

 




静けさは終わりを告げる。

戦争ジャンルなのでこれは宿命ですよね?

いよいよ、これをきっかけにどんどん戦乱が巻き起こります。

はたして、リョータとマユミの運命は――?

まだまだ更新は落ち着きません。できるだけ早く更新できるように努力しますので、これからもよろしくお願いします。
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