東京永年戦争   作:人世一夜

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早めの更新です。
なんとか、休み明けにならずに済みました。

では、続きをどうぞ!


崩壊都市を駆ける二人のヒーロー2

 

「さよならだ……」

 

 その攻撃はたったの一振りだった。ナイフに赤い力を加え、大海嘯ともいえる衝撃波が襲う。少々加減を入れるべきだったか。後から後悔したのは、背中にある相方の身体が触れたときだった。

 

「ねぇ、ソウジ?」

 

「なんだい?」

 

「これ、逃げても追っかけてくるよね?」

 

 辺りの人数をざっと把握するようにルリカは目で標的を追い掛け回した。だが、諦める。わかったのはこの場に数百人は人がいるということだ。これでは目で追い掛け回されているのはルリカとソウジだ。そして、そのまたざっと言うなら、状況は悪い。あまり時間も掛けていられないというのに、この数を相手にするのは依頼からしても自分の命からしても死の伏線だ。

 ある時、突然。思考を展開しつつどうするべきか考えていたときのことだ。

 

「ルリカ……お前、可愛いな」

 

「何当たり前のこと言ってるわけ? というか突然すぎでしょ、どうしたの急に?」

 

「いや、もうこの状況はお前の顔も見定めかなぁとおもってな」

 

 ルリカは呆れたようにソウジの顔を凝視する。わかっていたからだ。これはいつものこと。言葉と表情のギャップがつくづく笑えてしまう。ルリカの瞳に見定めなんて顔は映っていなかった。視線がこちらを向いた状態で真面目な顔をしている。どういうことかと尋ねられるなら、彼には考えがあり、それを成功させるには(ルリカ)が必要だということだ。

 

「で、なによ。言ってみなさい? この赤い髪がフェチの変態」

 

「よくわかってるじゃないか……俺の好み」

 

「違うでしょ!? 早くしなさい、何かあるんでしょ?」

 

 ロングヘアーを揺らして、迫る大人数を無視するルリカ。そのまるで髪留め用に使っているような工業用メガネには、本当を言うと、可愛さの欠片もなく汚れた現場で働く泥女がふさわしかった。現に、彼女の顔はここ最近の忙しさで、ロクに顔も洗ってられなかったのである。そうだ――。彼女は今からソウジが下す泥沼な作戦には慣れているのだ。

 

 

 

「引き付けだ……」

 

 

「えっ」

 

 ソウジは、逃げるように軽トラックのエンジンをかけに行く。唖然とした。しかし、その後には、

 

「あぁ~もぉ~っ!!」

 

 吹っ切れていた。状況は悪い。だが、敵は前方だけ。裏から来るならこんな作戦に出るつもりはなかったはずだ。ルリカは策の全貌を知らされたときにそう思う。疾風が空を切り裂く。大空を舞うルリカの足が、空中でまるで壁でもあるかのようにそこを蹴り、敵集団の裏側へ雷やら炎やらをかわしながら舞い降りた。

 

「ばぁ~かばぁ~か! あほマヌケのスットコドッコイども! 私が相手してやんだから覚悟しなさいよ!」

 

 これが作戦だ。ルリカが前方で囮となり、敵を引き付けておく。その間に――。

 

 ブォンと音が響く。

 

「おおぉぁぁぁぁぁあぁぁ!!」

 

 ドカッバキッ。ベキベキッ。ドッ。背中を見せたヒーロー達に向けて軽トラックを突っ込ませる。するとどうだろう。あんな苦だったはずのヒーロー集団相手に、これほど簡単に且つ、無理やり逃走径路を作ってしまった。

 

「ルリカ、早く乗れ!」

 

「全く……私にばっか無茶させてぇ!」

 

 荷台に乗り込むと、まだトラックに轢かれていない連中が追ってくるのが見えた。このままでは確実に追いつかれてしまう。

 

「よろしく」

 

 命令だ。荷台にこれだけの武器があるのはこの作戦のためだ。

 

「……ッ、つくづく悪く言えないからもどかしいわね。わかったわよ、やればいいんでしょやれば!」

 

 マシンガンを両手に取ったルリカは、追い風に乗せるような銃弾の嵐を浴びせていく。

 

 

 

 

 

 どれくらい時間が過ぎただろう。少なくとも、激戦区は抜けた。路地の隅に軽トラックを止めると、ソウジのドッと出た疲れを表す溜め息が漏れる。

 

「まさかとは思うが、生きてるか?」

 

 と、ソウジは軽トラックの荷台を確かめる。銃器のほとんどがなくなっていたのが最初に映った。よほど頑張ったと見える。それで、肝心のルリカだが。

 

「……」

 

「ん? おい、だいじょぶか――っ!」

 

 滴り落ちる血。これは……夢ではないようだった。つまりこの血は。

 

「……おい、おい! バカな、上手くいったはず……」

 

「バァ~カ」

 

 夢じゃなかったが、恐ろしい悪夢でもなかった。袖で簡単に血を拭う。そして、その袖を見せびらかすようにして言った。

 

「これ返り血だよ? 何焦ってんのよ。あはははは♪」

 

「な……はぁ、これはこれは、冗談キツイことをしてくれるなぁ、ルリカ」

 

 白い髪の毛に、にこやかなスマイル。ルリカにとって歯がゆいのがこの笑顔だった。とても憎めないのだ。今までソウジの言う通りにして、自分が負傷したことがない。巧みな策略。ルリカの力量。全て計算しつくされている。本当に苦労をしているのは、もしかしたらソウジの方なのかもしれない。

 

 『ははは』と、酷くブラックなジョークを強いられたにも関わらず、ソウジはまるで楽しそうに笑う。考えてしまった。ルリカはだんだんと笑えなくなる。もしかしたら、本当はすごく怒っているんじゃないだろうか。

 

「……ねぇ、ソウジ」

 

「ん? なんだ?」

 

「やっぱ、悪かったわ。流石に流血ジョークはやりすぎだよね?」

 

「お? っはははは! 何を言ってるんだ?」

 

 ソウジはルリカの汚れた頬を拭いながら続けた。

 

「やりすぎじゃないさ。過去の日本もかなりそういうのが流行ったそうだよ? 別に今がリアルにブラックでも、そういうのは大切さ」

 

 気持ちがキュンとして消えていく。あぁ、赤髪フェチというだけを抜けば、これほど他者を考えてくれる人はいないのに。これほど好意を向けているのに。ルリカはどうしても性癖が好きになれない自分が悔しかった。

 

「さ、急がないと処刑が執行されちまう。行くぞルリカ」

 

「あ、うん」

 

 そうだった。依頼が先である。二人は、千葉へ急がなくてはならない。そこで処刑に遭う者を助けるのが仕事だ。

 

 彼らをヒーローは≪ソリッダー≫と呼ぶ。今回の依頼は、とある人物からだった。

 

 




はい、次章でまた視点が戻ります。

ソリッダー。
いわゆる傭兵のことですね。
いやいやいや、傭兵と言っても、ス○○○じゃないですからね?

ちなみにこれもオリジナル要素です。
イラストが実像されていないキャラにも傭兵がいたような気がしました。
登場させるかを聞かれると、今んところちょっと無理です。

さぁ、これを基に停戦していた神奈川と千葉がだんだん条例という名の壁を壊していきます。

いよいよ、話は戦争にっ!!

というわけで、また次回の更新で!
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