東京永年戦争   作:人世一夜

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どうも!
いよいよですね。
自分もできるだけわかりやすくするように努力しようと思うのでよろしくお願いします。
では、ゆっくり閲覧していってくださいね?


障害(トラブル)

 

 薄い雲が太陽を隠し、一日の始まりにしてはどんよりとした朝。溜め息が漏れるばかりだ。あれだけミーティングを繰り返したのに、当日でいきなりの予想外とは、全く、ついていない。

 しかし、今更作戦を止めるわけにはいかなかった。死刑は午前10時に執行される。今が9時30分で、あと30分しかないのだ。

 

「どうしよう……」

 

 マユミは心拍数が上がり出す。今彼女がいるのは、死刑執行場所である古い教会を建て替えて新しくしたギロチンがある処刑台前だ。雨が降ったらと悩むマユミだが、幸い雨は降っていない。降り出せば最悪だ。何もかも無駄になってしまう。

 祈るしかない。どうか雨が降らないように。

 

   ※

 

「それで? 私は千葉領にある爆薬庫を全力で燃やしにいけばいいの?」

 

 アヤの部屋で、ベッドに座りながら打ち合わせで自分のやる仕事を簡潔に述べる。少々せっかちな言い回しは彼女ならではだ。本当に理解した上で話しているのか心配だが、アヤはコクリと頷く。

 

「うん、アヤの仕事はそれだけ。これで千葉全体をパニックにできれば成功。あとは油断している中でリョータを連れ出して、千葉領内から脱出する……」

 

「本当にそれだけでいいの? 爆破の火なんて、すぐに消されちゃうんじゃない? それに、執行場所に指導者がいたら……」

 

「大丈夫、えみる様と戦うことは決してないよ? その日に前線へ行っちゃうみたいだから。それに爆破の火がすぐ消されちゃうってアヤが言ったけど、そうもいかないみたいなの」

 

 マユミは事前に持ってきていた資料を呈示する。千葉兵士戸籍表と書かれた分厚い戸籍本だ。さっそく本を開いたマユミは、パラパラとページを捲ると、衛生兵の欄を指でなぞる。

 

「これで、わかる?」

 

「衛生兵の欄でしょ? やたら水氷の使い手で偏っているみたいね……これが全員動いたら、爆薬の火事なんてすぐ消されちゃうんじゃないの? それって作戦的にヤバイじゃん」

 

「ところが、そうもいきそうにないよ?」

 

 それは簡単な作戦全貌の概略だった。千葉は兵士の仕事がキッチリと決められている。そのためか、戦闘兵が衛生兵の仕事をするということは規則上で絶対にありえなかった。千葉の弱点はそこだ。戦闘向きな能力を考えてみればいい。湿気や水分を一瞬にして凍結させる水氷の能力は、乾燥した晴れの日にはほとんど戦力として皆無なのだ。このところの晴れ続きで、前線にほとんど水氷の使い手が出るところをマユミは病室から見ていないので、これは事実である。

 しかし、熟練された能力者なら、湿気や水分の量なんて考える必要はないのでは?

 その疑問は、水氷の能力が衛生兵に偏っているところがそのまま回答している。前文で言った通り、衛生兵が基本戦闘に加わることはない。それを逆手にとって言うならば、『能力を発動させたこと』がないのだ。そのため、熟練者はゼロ。たとえいたとしても、千葉のバラバラにある爆薬庫が一斉に爆発すれば、それだけ鎮圧に時間がかかるだろう。

 千葉の人手と力量、両方の失敗要素を補った二段構えの作戦。なかなか手の込んでいると言えるだろう。

 

「つまり、パニック状態はそれだけ長引くから心配ないってことね? 合ってる?」

 

「うん、ちゃんと理解してくれたならこれで安心ね……だけど、この作戦には重大な欠点があるの」

 

「欠点?」

 

 アヤは首を傾げる。

 

「それは、この作戦が晴れ限定だってこと。いくら熟練じゃない水氷でも、湿気があれば早く消火が済むし、パニックはすぐに鎮圧されてしまう……このところの猛暑で、曇りくらいならまだ勝機があるけどね」

 

   ※

 

 まさか、本当に空色が悪くなってしまうなんて。われながら神様に見放されているようだ。しかし、まだ乾いた風が吹いている。成功するとは言い切れないが、失敗しないとも言えない。後20分ほどで処刑が執行される。執行場所にはマユミの一人だけだ。

 

「そろそろ……黒装束が来てもいい頃なんだけど」

 

 ギロチンを下ろす黒装束が未だに現れないのも気になるが、それよりもマユミは、天候の方が気になって仕方がなかった。あの夜、幸せだったリョータとの会話を思い出す。雲一つない夜だった。まるで幸せな時間に雨が空気を読んでくれているようだった。今は違う。『また元に戻りたければ、運など当てにするな』とばかりに、今にもシトシトと降り始めるような雲行きだ。

 だが、敢えてマユミはその神様が出した試練に立ち向かおうと決意した。友達が理由もなく死んでしまいそうな時に、その日の運なんて関係ない。

 

「――!」

 

 来た。黒装束だ。教会の柱に隠れてタイミングを待つ。腕と首だけのリョータが映る。

 

(リョータ……)

 

 表情が確認できない。よほど牢屋で死を覚悟したんだ。マユミはそう考えて、もっと希望を確かにする。

 

 生きている――よね?

 

 ポケットから無線機を取り出し、電源を入れて、コツ、コツ、コツ、と3回爪で音を鳴らす。作戦開始だ。




水氷って確かに、新兵が使う能力ではないですよね、理論的に考えて。
実際に迅雷や爆炎なんかはすごく扱いやすいですね。
攻撃一方だし、遠距離型ですしね。しかも、ほとんど自分で発生させる感じなイメージがありますし。

いよいよ作戦開始です。

次の更新はもしかしたら目安の2000字より多めになるかもしれません。
イコール(今度は真面目に)更新が遅くなります。
よろしくお願いしますね?
それでは、また次の更新で会いましょう。
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