東京永年戦争   作:人世一夜

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三千文字です。
まだこの章は続きます。
ゆっくりみていってくださいね。


障害(トラブル)2

 

 ドォンッッ!!!

 

 開始から十秒と掛からないうちに、爆破音が響いた。耳がおかしくなりそうなくらいデカく恐ろしい音だ。同時に複数のけたたましい奇声も聞こえる。

 

――今だッ!

 

 隠れていた柱からつま先で捻るように方向を変え、地と空気を疾風で蹴り飛ばす。

 

「な、なんだ!」

 

 黒装束が驚愕する直後には、もう伸ばした足で繰り出す跳び蹴りで吹っ飛んだ。彼の持っていた紐は、綺麗にマユミの手と入れ替わる。

 スムーズにいった、が、慢心している時間はない。ギロチンの支柱である二本の細い柱をまるで風景を切り取るように鋭いカマイタチで切断すると、リョータに向けて声を掛けた。

 

「リョータ……リョータ! 助けに来たよ? 目を開けて!」

 

 反応がない。

 

「なんで? なんでよリョータ! 私、リョータがいなくなったら……お願い、私のことを置いていかないでよ! ねぇ……ねぇッ!」

 

 リョータがかなり衰弱していることはよく理解したつもりだった。もしかしたら死んでいるのかもしれないことも、わかっていた。それでもマユミは、ずっと声を掛け続けた。

 仕舞いには涙が零れ落ちる。

 

「――俺のことなんか忘れて、新しい友達と仲良く生きてりゃあ良いのによ……」

 

「っ!」

 

 深く息を吸い込んだ。顔に苦しそうながら笑みを浮かべるリョータ。生きていた。一気に力んでいた肩や腕がダラリと下がる。

 ホロホロと大粒の涙が何度も落下した。

 

「だけど、お前のそういうとこが良いところだよな……友達で良かったぜ」

 

「えっ……はっ……い、今外すね?」

 

 慌ててリョータの首と両手首を固定している板を取り外す。ケホッケホッと咳き込みながら、リョータは整然と立ち上がった。

 

「で、俺達はこのままどうするんだ?」

 

「えっと……南側のゲートを使って領土外に抜けるの。一番近くて安全な道だから」

 

「そうか、行くぞ!」

 

 そういうところが良いところ――。誉められたんだよね?

 マユミは、ヒーローになって一度も自分の行いが報われたことがなかった。ので、とても新鮮味に感じる。胸が熱くなって、今にも身体が飛び跳ねてしまいそうだ。気持ち良い。足が軽く弾んでしまう。こんなに満たされた気持ちは今までで初めてだ。

 

「何やってんだよ、急がないのか?」

 

「あ、うん!」

 

 教会の外に出て、ゆっくりと状況を見渡す。ずいぶんと派手にやってくれたものだ。複数煙が上がっているということは、爆薬庫からだんだん炎が燃え広がっているらしい。

 

「リョータ、早くこっち!」

 

 リョータが声に振り向くと、もう数メートル先にマユミがいる。南側ゲートはこっちか。ここ最近の牢屋で暗闇生活をしていたせいか、リョータは方向感覚が麻痺している。

 

「マユミ……」

 

 追いつきながら声を掛けると、マユミは静かに見つめ返して走り出した。今はマユミが頼りのようだ。リョータは千葉を歩くのが初めてだが、その広大さは走りながらもよくわかった。全く進展がなく前に進んでいるだけに感じる。

 暫時、先導するマユミに不安な表情が宿ったのは、それから雲行きが怪しくなってきた時のことだ。

 

「マズイなぁ……」

 

「どうした?」

 

 この作戦の大前提は、水分や湿気がないこと。この天気だと、そろそろ頃合いを見て水氷の衛生兵が動き出すのではないか。そうなると、アヤが危ないかもしれない。アヤは爆炎の使い手だ。例え衛生兵でも水をかぶればたちまち能力が使えなくなってしまうだろう。無線機に手が走った。

 

「もしもし、アヤ? 今どこ――」

 

 パァン、音が弾ける。銃声だ。

 

「アヤ!?」

 

『マユミ、無事?』

 

 色々な音が混じって聞こえて、伝わりにくい。間違いなく戦闘が行われているのは確かだ。

 

「何があったの!?」

 

『さっき、最後の爆薬庫を爆破しようとしたら、前線に出てた主力が帰ってきちゃったの』

 

「――ッ!?」

 

『それと出くわしちゃって……あ、でも大丈夫だから先に行って? なんとか撒いて合流するからッ……』

 

 通信がブチリと切られる前に、やたら大きく硬い音が響いた。無線機に銃弾が当たったのだろう。それほどに細かい弾幕の最中にアヤはいるのか。こうなることをマユミは予想できなかった。できるわけがない。こんなにも早く気づいて戻ってくるなんてこと。

 

「私のせいだ……」

 

 絶望の淵に追いやられた。アヤが――死ぬ? 冗談でもやめてほしい現実。マユミは、心臓を鷲掴みにされたように身体中の血の気が引いた。

 

「おい、さっきからどうしたんだ? えらく顔色が悪いじゃんか」

 

 リョータの一言に反応することなく、マユミは走り出す。さっきとは真逆の北へ向かって。『お、おい!』、そのリョータが出した一声に振り向くことはできなかった。聴覚の情報より早く、脳裏でアヤの遺体の映像が湧き上がって消えていく。泣く暇もなかった。ただ足だけが動いていく。それをリョータは引き戻そうと腕を引っ張った。

 

「なにやってんだよ! ゲートはこっちって言ったろうが!」

 

「離して! アヤが……アヤがぁ!」

 

「アヤ?」

 

 リョータは思わず疑問の声を出す。

 

「だれだよそれ」

 

「私の……この作戦に快く協力してくれた、私の大切な友達……」

 

 叫ぶ喉が、青ざめた顔を真っ赤にする。途端に、瞳が震えだした。

 

   ※

 

 強固な精鋭と防衛。そんなことを掲げて昔に大国として恐れられた国があった。武力と兵器の数で圧倒したこの国は帝国主義を貫き、ある小さな国と戦争をすることになる。その小さな国は、ちょうど産業革命を終え、兵器の強さには自信があった。決して大国と天地ほどの差があったわけではなかった。当時、誰もが大国が勝つと予想した。戦争に勝つために小さな国にはないものがいくつもあったからだ。――無謀な戦争だ。――勝てるわけがないだろう。そんな言葉ばかりが飛び交う。

 ある日、戦争を始めて数年した時のこと。

『本日一二〇〇、五度目の大戦にて戦争が終結。多大な損害を受けた大国は、戦意喪失し、終戦を要求した』。

 それは世界中の国々を驚愕させ、小さな国は一気に地位を上げた。――勝敗を分けたのは、我々が行った捨て身の作戦だ。我々は世界中でアッと驚く戦法で勝利したのだ。驕るように肩を広げる小さな国の軍隊。しかし、その天下は二年という短い時間で締めくくられる。

 あの勝利は、小さな国の戦法が勝敗を決めたわけではなかったのだ。

 

 

 

 

 

 あれほど軍の整っていた千葉が崩されている。西のゲートから入国したソウジとルリカは、有り得ない光景に驚倒しながら、何が原因かを考える。決まってこういう動向の推理は、先にルリカの頭がパンクしてしまう。考えることが無駄に感じたルリカは一番考えていそうな顔に疑問を飛ばす。

 

「ソウジ、どういうこと?」

 

「……う~ん」

 

 内乱か、あるいは他国が下した作戦の一部か。しかし、わざわざ本拠地を狙うほど指導者もバカではない。推測するには情報が乏しい。ただ、一つ言えることがある。

 

「この燃え広がりようといい、かなり大規模な作戦だな。ここまでして手に入れようとしているのはなんだ?」

 

「答えになってないし。でも、そんなのわかるわけないじゃん! ていうかどうでもいいけど、こっちに敵が来るよ?」

 

 走るヒーロー四人。青と黄色、緑が二人。敵であればお構いなしか。

 ルリカとソウジに、そのヒーロー達は襲い掛かってきた。しかし、わけもわからず二人に突っ込む奴らに、冷静な罰という名の対処が施される。常備していたショットガンで距離を見計らうと、派手にばら撒く。

 

「全く、俺達のモットーは隠密行動じゃなかったか?」

 

「そんなの知~らない! ほら、早くいってリョータとかいう子を回収して帰ろう? けっこうヤバイ感じだよ?」

 

 ルリカは、戦況について詳しいほどではないが、その一言は間違いではなかった。ここに来るまで、やたら徘徊しているヒーローの姿に遭っている。このままだと、せっかく彼女(、、)のいない間を縫った意味がなくなってしまう。

 

「そうだな……急ぐとしよう。ルリカ、赤い短髪を探せ。そいつがリョータだ」

 

「ぶっきらぼうな命令ありがとー! ……それじゃあ、見つからないように二手に分かれようか」

 

 こちらでも、指導者がいない領地内で、大雑把な作戦を開始した。少し予定より遅い始動だった。

 

 




さぁ、ルリカとソウジも到着し、逃げる二人は一体どうなるのでしょう?

作者もドキドキしています。←作者なのにw

では、次の更新も頑張ります。

少しだけ更新が遅くなっています。

それはご察しください。
可変速していますが、できるだけわかりやすい描写、伏線を心がけています。
その分、文章も少し多めに書きますので楽しみにしていてください。
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