東京永年戦争   作:人世一夜

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約束どおり場所が変わります。



生きるが勝ち、死んだら永遠の負け←無限ループ

 

 国境線とは人間からすれば堅い鎖のようなものである。しかし、ヒーローにとっては堅い鎖ではなく恐怖の鎖だ。触れただけで撲殺される運命を辿る。それほどにも国境線は厳しい取締りをするのだ。

 もちろん、指導者も例外ではない。来栖右京は、本部代わりに使っているビルの一室でそのことを考えていた。

 

「なんで、埼玉のメガネに千葉のリボン娘ちゃんは本部への侵入を厳しくシャットアウトするかなぁ……どう思う? 俺は別に敵が何人入ってこようが一掃するけど」

 

 疑問を問われた彼女は、元マネージャという縁で右京の側近をしているヒイロという女だ。寝転がりながら喋る右京に冷たい視線を返す。

 

「当然だと思われますが? 侵入されれば、勢力が持つ情報が晒されます。別に直接指導者を狙ってくるような猿頭はいないかと……」

 

「それって、遠まわしに俺が猿頭って言ってね? おいおい……そりゃないぜブラザー」

 

「そんなこと言ってませんよ。ただ私は、妥当な考えを率直に述べているだけです」

 

「相変わらず、頭も冷たくて思考が鈍くなってんじゃないの? ヒイロ」

 

 フカフカのソファに肘掛で首を垂らしながら逆さまのヒイロを見つめる右京。ヒイロは水と氷を合わせて《水氷》という名称の能力者だ。性格もそれに影響したのか、ほとんど気持ちの出さない涼しい顔をしている。右京はふざけたように続ける。

 

「ヒイロのヒは、否定の否か?」

 

「……そういうあなたも少し指導者として異常なのではないでしょうか?」

 

「なにが?」

 

 肩にかかった青い髪を後ろへやりながらメガネをクイッと上げる。そして、対面するソファに座りながら、持ち歩いていたファイルから一枚の書類を取り出し、机へ置いた。勢力外機密通知と透かし文字で書かれている。

 

「……あぁ、これのことか」

 

 右京が納得したように顔を緩ませる。その書類にはこう書かれていた。

 

『千神停戦条令』。

 1.千葉と神奈川のヒーローにおける戦闘及び武力行使。これを原則禁ずる。

 2.千葉のヒーローが敵勢力と戦闘しているのを見つけた神奈川ヒーローは、指導者の指令を仰ぎ、許可を得た上で加勢に入る。なお、神奈川ヒーローが敵勢力と戦闘している場合の千葉ヒーローも同様である。

 3.神奈川は、千葉の属国とし、管理権を千葉が有すものとする。

 4.ヒーローに関しての研究やラボ施設は、千葉と神奈川が共同で行うことを許可する。

 

 それは、つい最近の出来事だ。千葉の幹部直々の伝言。国境について厳しい取締りをしていない神奈川を見た千葉の優しく神々しいご意向だと、その幹部たちは言っていた。

 『領土を千葉保有にする代わりに、フリーの安全を全て保障しましょう』。同封の文章である。恐らく、千葉指導者直筆のものだ。

 

「こんなものを信じて、あなたは犬のように条令へ喰い付いてよろしいのでしょうか? 千葉のやり方はお気づきでしょう?」

 

「残虐で兵力は駒、か? ありゃ嘘だよ。リボン娘ちゃんにも感情はちゃんとある。そんな下手な真似したら、千葉に人が集まるわけないだろう?」

 

 楽観的ともいうべきだろう。右京は、やはりソファにダラッと足と胴体を伸ばし、側近の意見に知る由もないとその体勢こそ軽い感じだが、内はどっしりと構えている。

 

「しかし……っそもそも、なんでこの条令を呑んだのですか?」

 

「ん? そうだなぁ……」

 

 ソファから立ち上がった右京は軽く背伸びをしながら、ヒイロの顔面にズイッと近づく。とても形の良い表情だ。茶色いロングヘアーが顔を少し隠しているが、その目には難しいことを何一つ考えていないことがわかる。さすがにヒイロも動揺が隠せなかった。やがて近かった顔に新しく先ほどの書類へ目からの情報は更新された。

 

「こことここだ」

 

 人差し指と中指で二つを指差す。

 

「2と4?」

 

「俺はお前らのことを考えたいんだ。ただでさえフリーの集まりだってのに、千葉とか埼玉みたいな奴を相手にできると思うか? 確かに、属国協定で完全な千葉が支配する場所になっちまったがよ……それで安全の保障とここにはなかったヒーローに関しての研究とラボ施設を借りれるならおいしい話だろう?」

 

「……っで、ですが、それを確実に保障するという可能性は……っ」

 

 右京は紙を背中から後ろへ丸めて投げる。紙くずとなった書類はゴミ箱へとしっかりと入った。大事な条例を投げているとでも言っているらしい。しかし、ヒイロはなにもそれ以上何も言い返せなかった。右京の統括精神を知っていたからだ。

 前文でも何度も言っているように、神奈川はフリーの集まりだ。そんな雑魚集団が勝ち残ろうとする術は何か。自分自身を守ること――。右京はその精神何一つ曲げてはいない。確実な保障がないのなら、逆に確実な保障がある可能性もあるということ。簡単な解釈だ。

 

「俺たちにできることは、生きることだけだろ? お前らフリーは、なんでここに来るまで戦闘を避けてきた? 死ぬのが怖かったからじゃないのか? だったら、集団になっても死なないことばかり考えればいい。そうだろう?」

 

「それは……」

 

「言っとくが、俺はまだ死ぬのが怖いぜ? この若さだしよ……おっと、そんじゃ、留守番よろしく。ちょっと、また死にそうな奴を東京で探してくるわ」

 

 ヒイロはその日、最後まで言い返しの言葉を思いつくことはなかった。ただ深くため息をつき、留守になった机にある書類を指導者に代わって片付ける作業をし始める。

 まだ死ぬのが怖い。迷言に聞こえた。まだ怖いということは死への怖さがいつかなくなるのだろうか。考えれば考えるほど疑問しか浮かばない。

 

「右京様、あなたは何を望んでいるのですか……」

 

 




来栖右京は、原作でも本当に何を考えているかわからない人でした。
自由を求めていますが、けっこう嫌々指導者をやっていたり、しょっちゅう東京をフラフラする人ということからクラゲなんて呼ばれたりもwww

ここで少し長いですが、指導者以外のキャラについて紹介します。
たとえば、第一節で「お前さんもヒーローになってみないかい?」と言っていた女性は春日野桜といいます。
彼女はけっこうウラで暗躍している神出鬼没の少女です。
何でも、ヒーローの原点と関係があるとかないとか。

おっと、これ以上いうとそのままコピペすることになるので詳細は黙秘します。
しかし、登場はもう少し先になりそうです。
というわけで、東京ヒーローズウォーのちょい話を終わります。
また見ていただければ幸せです。
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