申し訳ないです。
目安より若干長いです。
「見つけた……」
リョータは崩壊しそうなビルとビルの路地を壁の角から覗き込みながら、冷や汗垂らす。相手は五人。ここを隠れ場所に連絡があったら襲撃を行う策か。よりによって神奈川領土の下で。
「……」
最終確認だ。ショットガンの装填段数は六発。バッグにショットガンのシェル弾丸が七発。といっても実質戦闘に入れば弾丸を装填する時間はない。リョータは目を閉じて心を落ち着けながら考える。
(頭だ……頭を吹き飛ばせば一撃なんだ)
ヒーローも無敵ではない。人間と同じように急所を狙えば死滅する。覚悟は決まった。ショットガンを向けて構え、全力で走る。
「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「な、なにっ……」
ドパンッ! 最初に狙われたのは、青い髪をした男だった。ばら撒かれた弾幕が顔を中心にして血飛沫を上げる。すぐにショットガンを添える手を自分に引き、リョータはポンプアクションならではのリロードを行った。事態に気づいた集団が血相を変える。ハンドガンを向ける男は叫んだ。
「この野郎!」
「っ……!」
ショットガンがまた火を吹く。
「くはっ……」
残り四発。リロードし、隣にいた男にも構える。しかし、既にその目の前にいる男は戦意喪失していた。恐怖のあまり腰を引いている。
「やめろ……いやだ、死にたくないんだ」
「……」
リョータは、引き金を引く。至近距離の弾丸が血とともに散乱した。これで三人を討伐した。我ながら好調な出だし。そして、辺りは静かになった。
(残りの二人は……)
確かに五人いたはずだ。これは五分壁に立ち往生したので、確実にいえる。急に不安になった。ここは隠れる場所なんてない。辺りを見回す。ハッと気づいたとき、瞬間的にそちらを向くために身体が方向を転換する。
「上か!」
ワイヤーのようなものでビルの壁にへばりつき、こちらを伺っているのが目に入った。しかも、一人は何かを持っている。あれは――無線機。今にも連絡をするつもりでいるようだ。
「させるかっ!」
ここに来て、残りの装填弾を構えずに一、二発上の二人にぶち込んだ。ワイヤーは切れたが、二人は死ぬどころか全く的外れなところへ撃ってしまい、ほとんど掠り傷。
「っへへ……どうしたい? 一人で突っ込んできやがって。さすがに相手は選ぶべきだったな」
敵の二人はそう言って不敵な笑いを見せる。ショットガンの装填弾数は残り一発。リョータは距離を一定に保ちながら頭をフル回転させた。
(……装填しているほどデカイ隙はない。だったら)
ショットガンを向ける。相手は緑とリョータと同じ赤。そして、どうしても勝とうに勝てない状況から出した答え。引き金を颯爽と引いた。標的は緑でも赤でもない。
空。上空に向けてリョータは最後の散弾をばら撒いた。
「……ぷっはははははっははははは、ついには力押しの万策も尽きたかよ」
ねじれたような顔の二人は、手から狐火のような火が灯される。能力だ。酸素を瞬間的に燃やし、自分の手でその炎を操っているのだ。これこそ爆炎の能力。要因を無視して発火を可能とした一般的なヒーローの属性である。
「チッ……」
ジリジリとにじり寄られ、後退余儀なくされるリョータ。どちらにせよ、距離をとってかわしても、もう一人の炎が待っている。一か八か自分の能力を使ってみようと考えたが、だめだ。タイミングが大事だ。恐らく彼らは能力に対して確実に勘違いをしている。まずはそこを突くために、少しでも動揺してもらわねばならない。だから、リョータはわざとショットガンを無駄な方向に撃ったのだ。
カラリ。
「ん? ……なんだ?」
二人の頭に、コンクリートの欠けた粒が落下してくる。最初はそれだけでまず驚こうとはしなかった。すると。
ガラガラガラッ!! 壊れたビルのコンクリートが剥がれ、落ちてきた。
「なにッ……ギャッ……あ……」
思いのほか上手くいった。男が一人下敷きになり、避けたもう一人も焦る顔が絶えない。それはリョータにとって最高の好機。すかさず首を掴みにいき、地面に引きずるようにして叩きつけた。このまま首を絞め殺しでもするつもりだろうか。それくらいにリョータの腕は全力で男を殺しにかかっている。
「ぐ……あ゛あ゛あぁぁぁぁぁ」
「俺の勝ちだ……何が万策尽きただぁ? 最初からお前らは罠にはまってやがったんだよ!」
「く、……っははは……」
「なんだ? 何がおかしい?」
刹那。
「がああぁッ!」
突然、絞めていた首から上で火を吹きつけられた。至近距離の火炎を喰らったリョータは、当然耐えられず顔を押さえる。男はその様子を見てニヤリと笑う。狙いはただの目潰しだ。後は逃走を図るだけ。そして、増援を呼ぼうと無線機を出して連絡を入れた。できればあのショットガン持ちが絶望するぐらいの大人数を期待しながら。
「もしも……し?」
突然、前方を遮る煙のような空気の幕が視界を奪う。路地の狭い通路壁さえ見えなくなるような黄土色の幕だ。砂塵。岩石物質ならなんでも操ることができる能力だ。誰かが砂を操っている。男は辺りを見回したが、見つかるわけがない。何せ砂煙に囲まれているのだ。三百六十度視界は黄土色である。
「どうだ? ルーキーの強さは?」
砂の幕をくぐり、姿を現したユージは、男に向かって冷徹な表情をしながら問う。
「ハッ、強くねぇよ。油断したところを顔面に火を吐いて今頃のた打ち回っているだろうさ。そして……お前も今からそうなるんだ! ぐぁッ!!」
男は、ユージに向かって口から炎を吐きかける。赤い炎に焼かれ、黒い影消えて無くなっていく。そして、完全な塵と化した。
「残念だったな」
「なっ……」
ユージは、砂を纏いながら再び現れる。
「ふ、不死身かお前……」
「俺の能力は砂塵だ。自身を砂に変えることくらい容易い」
周囲を包む砂煙をどうにかしないことには、ここからどうすることもできない。爆炎では砂塵に抗えないのだ。男はペタリと膝をつく。戦意喪失といったところだ。もう動く気すらないようだ。
「まいった……」
気力のない口がつぶやく。その状態を見たユージは、囲む砂煙を操り、内部ところどころに針のような物体を作り出す。
「黄色いの、なんだそりゃ……」
「ローマの処刑道具をモチーフにしたものだよ。内部に針がたくさんついていてな。蓋をすると針が人の至る所に刺さり、死ぬ」
「おいおい、そりゃねぇぜ……もう少し楽に死なせてはくれないのか?」
問いに対して、ユージはキッパリと答えた。
「安心しろ、痛みは一瞬だ。最近のやつは圧迫死させようとしても、死なない場合が多いんだ。悪いが、手加減をできるほどおちゃらけた姿勢で前線に出ているわけじゃない」
残虐な答えだ。男はそう思いながらもユージの顔を視界にもってきた。一切の手加減をする様子もなく、掌をかざす。きっとあの手が拳に変わったとき、一瞬にしてすべては終わるのだろう。
「まったく……酷く命を持て余す時代になったもんだわ。ほんとに」
砂がユージをすり抜けて男をギュッと包む。音一つたたない静かな圧迫の一撃だった。残った丸い砂の塊は、ザラーっと降下し、土に還る。消え去った命とともに――。
「すまない……」
東京ヒーローズウォーのキャラは他にもたくさんいます。しかし、そのほとんどが顔グラフィックがなくてどんな姿をしてるのかわかりません。
そんなキャラ達も実質登場させたいとは思っているのですが、正直なところ、全く予定に入れていません。
成り行きで登場できそうなキャラがいたら、ばしばし(描写に支障が出ない程度に)出していこうかなと思います。
そういえば、指導者の能力について全く触れていませんでしたね。
指導者の能力は特別なスキルです。
作中に出てくる爆炎、水氷、砂塵、迅雷、疾風とは違い、全く別な能力を持っています。
詳しくは内緒です。
それでは、また更新を楽しみにしていてください。
……ではでは