東京永年戦争   作:人世一夜

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リョータの視点です。
毎度毎度視点変更ですね。
今回より、それはしないように心がけます。
飛び飛びでは疲れますもんね


負傷から関所警備へ

 

 神奈川の勢力は、基本的にバラバラである。それぞれで休息をとり、前線参加は互いに連絡を取り合ってから行う。この方式をとることで少ない犠牲で済まそうという指導者の方針なのだが、実質の結果は連絡の取り合えない場所にいれば作戦決行までの時間が延びてしまったり、いつまでも連絡が取れないと、勝手に戦死扱いになるなど、欠点も多い。

 そのため、神奈川では連絡の取り合いを重点的に置いて、これを忘れないようにしている。ユージも今、その連絡をどうするべきか考えているところだ。自分のことは良いとしよう。しかし、負傷したルーキーが目を覚まさなければ、報告し難い。作戦でルーキーが死んだなんて報告をすれば、大目玉を食らってしまうからだ。

 

「ん……」

 

 ようやくリョータが気がついた時、そこは戦場ではなかった。

 

「よく寝たか?」

 

 辺りを見回す。冷たい壁、ベッドのみが温もりを持っている。すぐにいつも寝泊りに使っている場所だとわかった。少し薬の臭いがするのはユージの飲んでいるいつもの粉薬かなにかだろうか。

 

「ユージ……あれ?」

 

「目が覚めるのが遅すぎだ。もう半日ほど過ぎているぞ? ちょうど食事を終えて薬も飲み終えたところだ。よし、すぐに連絡を取ることにしよう」

 

「……」

 

 ユージは違和感を感じる。いつもならここで『うるせぇ』と反抗期特有の一言が返ってくるはずなのだが、それどころか顔色を変えてリョータは様子がおかしい。

 

「……どうした?」

 

「見えないんだ……」

 

「………………何?」

 

「見えないんだよ、目が!」

 

 リョータの視界にユージの姿は全く見えなくなっていた。至近距離で炎を浴びた時、網膜がやられたのだ。戦争で目が見えなくなった奴に使い道はない。片目ならまだ良いだろう。しかし、両目が瞑れたことはかなりの重症である。発覚すれば、しばらく様子を見て回復しないようなら見捨てられるか、そのままお払い箱である。

 

「くそっどうすりゃいいんだよぉ!」

 

「落ち着け。本当に見えないのか? これは何本に見える?」

 

 ユージはリョータの目の前で二本指を立てる。見えたままにリョータは答えた。

 

「さ、三本……」

 

「なるほど……」

 

 ユージが冷静に考察を考える。思考を働かせるためにいつものガムを口に放り込んだ。クチャクチャと音をたてつつ、顎に手を当てると結論を紡ぎだす。

 

「急性且つ極度の近視だな。しかも視神経が完全にやられた状態、確かに兵としてはかなりの重い怪我だ」

 

「どうしたらいい……」

 

 落ち着きを取り戻したリョータ。静かにユージの言葉を待つ。ユージは眉間にしわを寄せながら、三回同じ場所を行ったりきたりすると、地べたに座りながらしばらく間を置いて答えた。

 

「戦線には出撃できないことを本部に報告するしかないな」

 

「そんなことしたら、俺はっ……」

 

「待て、何も神奈川を脱退しろとは言っていない。さっきも言ったろう? 急性且つ極度の近視、見えないわけじゃない。網膜が回復すればまだ希望はある。それに、戦闘に出ることができなくても神奈川ではやることがたくさんある」

 

 そういうと、懐から簡易的な地図を出す。地図には各勢力の国境線が細かく記載されており、ユージは国境線のラインを指差した。千葉と神奈川の国境線である。

 

「ここへ向かえ。この場所は比較的戦線警備が手薄な場所だ。まず狙われる心配はないだろう。それに千神停戦条令の件もあるしな」

 

「千神停戦条令?」

 

 疑問を抱いたリョータは単語を復唱した。

 

「……そういえば、今の千葉と神奈川の戦況をお前は知らなかったな」

 

「なんだよ。戦況って」

 

 重い表情を浮かべるユージに、リョータも真剣な顔でじっと見つめる。ガムの舌鼓をしながら、一見楽観的な態度をとるユージだが、やたらと歯に力を入れて噛んでいるらしく、カッカッと音を立てている。ちょっとした歯軋りのような状態だ。不安と不愉快な気持ちでいっぱいなのだろう。

 

「今の千葉と神奈川は、停戦している。そのために千葉とはほとんど交戦していない。裏では間違いなくドンパチしている臭いがあるがな……」

 

「なるほど、だからこそここの国境線に行って仕事してろってことか?」

 

「不満か?」

 

 質問に対して、即座にリョータは首を振る。

 

「何言ってんだ! 勢力を追い出されるよりはマシだろ? わかった。この千葉と神奈川の関所だな」

 

「あぁそうだ。報告は俺がしておこう。早く向かえ。くれぐれも敵と出会ったらすかさず逃げろ。今のお前では歯が立たないだろうからな」

 

「わかってるって!」

 

 言うも束の間、リョータは飛び出す。見送ったユージはヤレヤレとばかりに一言呟いた。

 

「全く、気持ちの変化が激しい奴だ。なんでそこまでして勢力に居ることへのこだわりがあるのだろうな。いても、良いように扱き使われているだけだというのに」

 

 空は明るい。青々とした快晴だ。静かになった部屋で、ベッドに座り込むユージはケータイに手をかけた。電話番号を慣れた手つきで押すと、耳に押し当て、相手の様子を伺う。

 

「もしもし…………えぇ……はい………………先ほど休息ポイントを出発しました。…………はい……はい……わかっていますよ、守って見せます。…………えぇ、頃合いを見て…………はい。では失礼します」

 

 連絡を終えたユージは、ケータイを片手からダラリと下ろすと、ベッドに放置する。それから、手の甲を額に当て、ひんやりとした自分の手で頭を押さえた。まるでリョータのときとは別人のように礼儀やTPOを考えることなく、ダラダラとした生活態度だ。

 

「もう少しだ……あいつの手を汚させるわけにはいかない」

 

 ユージは、天井に腕を上げると、天にでも誓うように小さく何か呟いた。その後、しばらくユージの身体が動くことはなかった。

 

 

 

 




目が……目がぁぁ!!
目が悪くなるのは本当に辛いです。ただでさえ視力が低下しているので、よくわかります。

さぁ、千葉と神奈川の国境線にある関所で警備をすることになったリョータ。
この先どうなるんでしょう?
ちょっと更新のペースが遅くなるかもしれません。
グダグダにならないためです。申し訳ありませんがご了承ください。
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