艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

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 ○前回のあらすじ

 エースが高木から海の亡霊の情報を聞きだした頃、各地で異変の兆しが見えて来た…。
 大統領と秘密の会合を果たした十郎太は、日本へ帰還しようとしたその折、大統領から「予兆が出た」と警告を受ける…十郎太はため息を吐きながら、その場を後にした。
 一方、日本の小学校での一幕。校舎裏に呼び出された潮音は友達の明里から事情の説明を求められる。
 だが状況説明は困難…潮音は明里を遠ざけようとわざと対立する。
 お互いがぶつかる中、筆箱を投げる潮音…がその速度は「逸脱」していた。危うく怪我どころでは済まなかった明里は、その異常な光景を見るなり潮音を「化け物」呼ばわりする。彼女はそのまま逃走し、潮音は自身の変異を只受け入れるしかなかった…。

 ──そして、榛名の元に走るエース。そこで彼が見たものとは…?



第十一話 化身(へいき)

 謎の男「関四郎」にマンションを占拠されてしまったエースたち。

 関四郎は改めてここに来た目的を話し始める…。

 

「…先ずは彼女、アナタたちが榛名と呼ぶヤツは私の「最高傑作(ハイモデル)」デス。ある目的の為に作られた…ネ?」

「…目的?」

「ンフ? 聞きたいですよネェ~? でも物事には順序がありマスから?」

 

 不敵でいやらしい笑みを浮かべながら、関四郎は事実を述べていく。

 

「私は政府非公式のある組織に属しているモノ、そこでは日夜とある研究が行われていマス」

「…化身ってやつか?」

「ピンポーン! 大正解っ! …話は変わりマスが、貴方は「生まれ変わり」を信じますか?」

「…?」

 

 いきなり訳の分からないことを話し出す関四郎、エースは答えに戸惑っていた。

 人間にはいつか訪れる「死」という概念がある。それを恐怖するからこそ「輪廻転生」や「前世」という考えが存在している。

 だがそれはあくまで「絵空事」であり、現実問題「生まれ変わり」など誰も証明しようがない、そう思っていた。…が、目の前の男の言い分は違うようだ。

 

「まぁ、大体はそんなモノないと思うでショウ。しかし…それらは事実、"科学的"な根拠もあります」

「っ!? どういうことだ…?」

「脳波計測の応用デスよ? アレでデータを入力することで「魂」が何処からどこへ行くのか、誰がダレに成ったのか、全てを知ることが出来マス。…おっとぉ、これは我々だけの特許技術デシタ?」

 

 …目の前の男は、おおよそにも信じられないことをつらつらと並べて行く…嘘を言っている訳でも無いのだろう、だとしても理解が追いつかない。

 どこかで「行き過ぎた科学は魔法のように見える」と聞いたことがあるが…これもまた、別世界の話に映った。

 

「そして、魂の計測と同時に、魂を「刷り込み(インプット)」することも可能デス…そう、例えば「モノの魂」とか?」

「…っ!」

「それらを利用して完成したのが「化身」。ヒトとモノの融合体、人類が到達した新たな進化、次世代の軍事兵器こそが彼女たちデス!」

 

 彼が発した「軍事兵器」というワード…それは彼らこそが、事前に高木と話し合っていた「裏組織」なのだと理解できた。

 

「でも、軍事兵器って…!」

「まぁだ理解出来ないって顔デスね? …いいデスか? 生き物の持つ精神のエネルギーは決まっています。ごく少量といったところデス…が彼女たち「無機物」にはそれが無い、無限の魂のエネルギーを秘めているのデス! …それが人の器に入ってしまえばどうなるか…?」

「…っ」

「ズバリ「別次元の存在」になる。膨大なエネルギーは、魂の器に入りきれずそのまま全身を駆け巡る…言うなれば肉体が強化された状態に成り果ててしまうんデスよ? それも「鋼鉄のように」…ネ?」

「…っ!」

「尤も、前世の「記憶」が発現しなければそれもままなりまセンが? とにかく、我々はそれを利用し彼女たちを創り上げた…あ、創ったと言っても機械じゃないデスよ? それだと器が用意出来まセン…ちゃんと「一から」作りましたヨ?」

 

 顔を歪め嗤いながら、当然のように関四郎は囁いた。それを聞いたエースには背中に走る悪寒が感じられた、そして同時に…コイツは「本 物(げどう)」だ、と直感した。

 

「我々が「所有」する彼女たちは、既に肉体と記憶の同化が進んでいマス。中途半端に記憶だけ垣間見た君たちでは太刀打ち出来まセンので、悪しからず?」

「お前…っ!」

「榛名たちを使って、一体何おっぱじめるつもりだ?」

 

 フォックスが言うと、関四郎は得意げな表情になり、鼻高々と話す。

 

「無論「戦争」デスよ! 海の亡霊、知ってるデショ? アレは無秩序に戦争好国を狙っている…今はアジア、中東、更にはヨーロッパと! 徐々に規模を拡大するでしょう…我々はその隙を突き! 滅びた国を新たな「日本国領土」とするのデス!!」

「なっ…!? そんなこと…出来るのか?!」

「イッエエエーース! 化身は百万の兵を率いても、如何なる武装兵装を以ってしても旧人類に打倒は不可能! 他国に邪魔をされずに、我々は悠々と領土拡大に漕ぎ着けるという次第デス! …フフ、フハハハハ!!!」

 

 邪悪に歪んだ顔で高らかに嗤う男。その目には「野望」は無く「支配欲」も無く、ただ「状況を愉しんでいる」だけに見えたエース。

 

「彼女たちこそ、時代を先駆ける兵士。我々日本国に新たな秩序をもたらす存在…ナニモノにも負けない軍事兵器なのデス!」

「…嘘だ」

「…何?」

「ウソだ。アンタは国の為とか、そんな風に一切感じていない…何もかもが──嘘だ」

 

 エースの言葉に呼応するかのように、関四郎の顔は欺瞞に歪んだ。

 

「クックック! 全くどこまでも勘のいい……そうデスね? 私は正直国だ戦争だなど、どーでも良いのデスよ?」

「アンタは…一体何がしたいんだ!」

「知れてますネ? 私の傑作たちを世の中のアホ面描いたヤツらに見せつける為。造り手ならば誰もが持つ思考デス」

 

 エースの叫びを意に介さず、さも当然のように回答する関四郎。

 彼の言う「化身」とは、作品と言うには余りにも精密で、見せつける、と言うにも「非人道的」であった。

 非情な言動に怒り心頭のエースは、関四郎の考えを真っ向から否定した。

 

「ふざけんなっ! 榛名たちはモノじゃねぇ!! こうして俺たちと同じ形をしてる、息もしてる、そんな彼女たちをモノ扱いするな!」

「では聞きますガ? …貴方「化け物」を人と見なせますか? 人形を人間と呼べますか? …違うデショ? 彼女たちは「人型」の「軍事兵器」! これに変わりは無いのデスよ!」

 

 異常な力を所持しているだけで化け物とは、最早認識の問題…歪んだ価値観と倫理観だが、この悪辣な感情は、世界中に「差別」が蔓延している以上、どのような人でも言えること…なのかもしれない。

 関四郎は一頻り語り終えると、詰まらなそうに顔を苦く歪めた。

 

「ッフン、いい加減問答は飽きまシタ…さあ、ナンバー31、我が化身計画の最 高 傑 作(パーフェクトモデル)よ! 戻りましょう、貴女の在るべき場所へ…そうすれば、この場の全員の命を保証しましょう」

「………」

「…榛名?」

 

 先程から黙っていた榛名は、意を決した顔で関四郎に問いかけた。

 

「…本当に、私が行けば皆さんを無事であらせてくれるのですね?」

「っ! 榛名!!」

「ンフフ! えぇ約束しましょう、我々が欲しているのは貴女のみ、そこの不出来な三人(酒匂たち)にも危害は一切加えまセン」

 

 嘘だ。確証がない、第一今し方自身の発言の嘘を肯定した人物。榛名が行ったところで、何も変わらない。そんな思考を巡らせ、エースは必死に叫ぶ。

 

「榛名やめろ! アイツはお前を騙そうとしてるだけだ、絶対にそうする保証は無いっ。お前は俺たちが守る! だから…!」

「違うんです。エースさん」

 

 榛名はエースに振り向く。その顔はあの夢のように…朗らかだが、儚げで、悲壮の覚悟を秘めた顔。

 

「私は兵器であることは最初から受け入れています。使われることが私たちの最上の喜び、だから…私にとって、これは運命なんです」

「…!」

「貴方たちを守れるのなら、本望です。だから…悲しまないで? 私のことは…もう忘れて下さい?」

「…っ、な……んで!」

「ごめんなさい…それから、今までありがとうございました」

 

 頭を下げてエースたちに謝罪する榛名。

 

 心にも無い言葉だ。

 

 何故なら目には涙を湛え。

 

 表情は悲哀に満ちていた──

 

 

 …エースは、かつて彼女の言った言葉を思い出していた。

 

 

「──皆さんに会うためにこの夢を見た…私は、そう思うんです」

 

 その時の彼女からは「人」としての思いが垣間見えた。

 

「──ふっざけんじゃねぇ!!!」

 

 エースはその光景を巡らせた瞬間、全身に燃え広がる怒りに身を任せた。

 

「エースさん…?」

「それがお前の考えか? 違うだろ榛名! 昔はそうだったのかもしれない、でも! 今のお前は誰が何と言おうと「人間」だ! 誰かが否定しても、俺はそう信じ続ける!!」

「…!」

「…ッフハ! 何を言いだすかと思えば、だからどうだって」

「──っし! 今だアトラス!」

「んだ!」

 

 関四郎たちの注目はエースに向いていた、今が「好機」。

 隙を見たフォックスが叫ぶと、アトラスは懐から何か取り出しそれをローブの少女に向かって投げた。カシャン、と気持ちの良い音がする。それは手首に巻きついていた…。

 

「何ッ!?」

「あーらよ!」

 

 フォックスも銀髪の少女に同様のモノを手首に巻きつかせた。見るとそれはブレスレットのような機械だった。

 

「利子!」

「ほいきたっ! あ、ポチッと」

 

 利子が手の平サイズの装置を押すと、ブレスレットから響くパワーダウン音。その音と共に二人の化身たちは、足元がもたついている様に見えた。

 

「む!? 何をしている?! 掛かりなさい!」

 

 関四郎は慌てて事態収束のため命令する、化身たちは言われるまま前に出ようとすると、足が引っ掛かりそのままスッ転んでしまう。まるで生まれたての羊のように、手足は震え痙攣していた。

 

「…!?」

「どうじゃ! 吾輩考案の”チカラナクナール君”の効力は! 出力マックスでやっとるから今のヤツらは赤子並の力しか出せん!」

「ソイツは化身の力を抑える制御装置っつーヤツだ。これでアンタの"切り札"は消えた…!」

「貴様ぁ…!」

 

 黒服が背中の銃口を向けたまま、銃の引き金を引こうとするが…?

 

「…っ、ぴゃあああ!!」

「っな!?」

 

 酒匂が後ろの黒服の一瞬の隙を突いて、身体にしがみ付いた。化身の力というのか、ガッチリ身体を抑えているようであった。

 

「酒匂たちは…もう「モノ」なんかじゃないもん!!」

「テメェッ!」

「この糞ガキ!!」

 

 黒服の男たちの注意は一気に酒匂の方に向く…更に開いた「隙間」を"彼女"は見逃さない。

 

「──やらせはせんっ!」

 

 日向がそう叫ぶと、立ち上がり様に男たちの手に握られた得物を、手刀で瞬く間にはたき落としていった。

 

「っぐあ!?」

 

 カラカラカラ──重なり合う音と共に床に転がる何丁もの銃、男たちは…それを拾い上げることが出来なかった。

 

「…動くなよ? さっきは加減出来たが…この先はどうなるか分からんぞ?」

 

 ギラリと鋭い気迫を向けられ、黒服たちは思わずたじろいだ。エースには訳が分からなかったが、とにかく事態は好転しているようだ。

 

「…ふん、してやられまシタか? 流石にここまで来るとは予想外でシタ」

「あぁ、アンタらが来ること自体は読めていたんでな? 色々仕込ませてもらった。因みにだが外では警視庁捜査一課殿もお待ちだ?」

「(っ! 高木さん、来てくれてたんだ…!)」

「 …どうする? 例えこの場を凌げても、後で証拠とか諸々も「でっち上げ」れるぜ? 悪しからず…」

 

 不敵に笑うフォックス。四郎も負けじと嗤ってみせる。

 

「…フハハ! まあいいでしょう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…いいでしょう、今回は大人しく引き上げましょう?」

 

 黒服たちは舌打ちしながらも、逃げ道を確保する為数人が出入り口へ。一人は関四郎の元へ。

 

「…教授」

「頃合いデスね? …では諸君、良い一日をお過ごしください…!」

 

 捨て台詞を吐いて、悪魔は嗤いながらその場から立ち去った。

 

 …二人のローブの少女は、関四郎の下に居た黒服が、脇に抱えて連れ去っていった。

 

「(あの子たちは…?)」

 

 まだ分からないことばかりだが、それでも全員無事だし良しとしよう…脱力感に襲われながら、エースはそう思った。

 

「…っふぃー! よく分かんないけどマジやばめだった〜、あ、呟こう」

 

 北上はマイペースに、スマホを取り出し今の気持ちを「呟こう」とする。

 

「おいおい…でも」

 

 確かに彼女の言う通り、本当に一歩間違えれば、であった…榛名を追いかけた連中を追い払えたのは、ひとえに──

 

「…フォックス、ありがとう」

「あ? ンだよ気持ち悪りーな?」

「うぉい!? …でもさ、もういい加減話してくれないか?」

 

 エースの問いかけに黙るフォックス、ここまで来れば彼が「何もかも」の事情を知っていることは理解出来た。龍美もそれに同意する。

 

「フォックス君、私ももう無理…一体何がどうなってるの!?」

「…っち、しゃーね! 割とめんどくせぇから、あんま言いたくなかっんだが…?」

「もうそんな次元では済まんからな? 吾輩もそれが良いと思うぞ!」

 

 何故か利子も事情の説明を承諾する…だが。

 

「ひっく………ひっ…!」

「………」

 

 雪は悲哀の激情に咽び泣き、菊もまた絶望の表情で目を見開いていた。

 二人がとても状態が良いとは言えないので、後日全員が集まり次第事情を話すことにした。

 彼らは何者なのか、国は何を考えているのか、そして…海の亡霊と「化身」とは…?

 

「今日のとこは解散だ。俺も…心の準備をしたい」

「…分かった」

 

「…エースさん、あの…?」

 

「ん? どうした榛名?」

「…いえ、なんでもないんです。うふふ…♪」

「…?」

 

 それらの謎の答えは、今出揃おうとしていた──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──トゥルルル……トゥルルル……ッピ!

 

「もしもし? 親父か? 何だよ今それどころじゃ…え? こっちに帰るって?! 母さんによろしく!? お、おい待てよおや(プツッ!)…切りやがった…マジかよ……;」

 




〇二人の距離

北上「エースってさぁ、榛名と付き合ってんの?」
エース「ぶふうぅお!!? な、何を言い出すんだい北上ちゃん?!」
北上「いやぁ二人が話してるとき、どう見ても恋人同士にしか見えなくってさ?」
青子「駄目ですよ北上ちゃん、そこはプライバシーでデリケイトな所ですから…因みに付き合っていません、清い交際すらまだです!」
エース「おい! さっきのセリフ! プライバシー尊重!」
北上「青子は口のチャックがばっがばだから、あんま期待しない方が良いよぉ?」
青子「まぁまぁ…それで、そこのところどうなのですか?」
エース「えっいや…彼女も迷惑だろうし…」
龍美「…ホントウ↑ニソウオモイ↓マスカ?」
エース「龍美ちゃん!? ナゼニ↑カタコト↓!!?」
龍美「私に言わせれば…そんなのはDTの甘えだよ、モタモタしてたら榛名ちゃん誰かに取られちゃうよ? エース君色々言ってるけど、ホント意気地が無いの止めなよ?」
エース「ガーーーーン!?」
北上「因みにどんなだと思う、榛名をNTRの??」
龍美「私はねぇ…意外にオジサン系が好きそうなんだよねぇ、それも強面の」
青子「マフィア〇田みたいな?」
龍美「あの人若いんだよ、そう思えないだろうけど…それかもう少し年季入った人かなぁ?」
北上「うーん、イケおじ系…?」
青子「ちょっと想像つきませんねぇ?」
エース「いやいや皆、榛名が決めることだからそういうのは…」
龍美「そんな事言って内心焦っているくせにぃ」
北上「やーいDT~」
青子「DT~」
エース「うるせえ! DTちゃうわーーーーい!!」





・・・・・

フォックス「…んで、実際どうなのよ?」
榛名「はい。エースさんは「とても素敵な人」です!」
フォックス「…こりゃ前途多難だな」
アトラス「んだなぁ?」
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