艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

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 ○前回のあらすじ

 エースは、榛名たちが待ついつものマンションにて、榛名を付け狙う一味の奇襲に合う。
 彼らは(高木からの情報と照らし合わせて)裏組織と推測され、秘密裏に人型の生体軍事兵器「化身」の研究と製造をしていると発言。
 そして…何とフォックスの口から衝撃の情報が次々と飛び出す。
 榛名、化身、酒匂たち…更に裏組織を率いる謎の男「関 四郎」から「化身を使い戦争を始める」と聞かされる…榛名は戦争に利用されようとしていた。
 榛名は「エースたちに手出ししない」という条件付きなら、自分は道具として使われる運命だと語る。
 しかしそれは、人の心を持つ榛名の嘘と見破ったエースは、彼女に「自分は人間だと信じる」と説く。
 そして、何とか隙を突き窮地を脱したエースたちは、フォックスに真実を教えてほしいと迫る。
 フォックスはこれを承諾する、ここにこの世界で起ころうとしている真実が明かされようとしていた──



第十二話 真実

 ──時は、平成27年。西暦2015年。

 

 マンションの最上階の一室…20人は入る広々とした空間。

 その一室に、サークルのメンバーは全員集結していた…。

 

 エース、フォックス、アトラス、榛名、龍美、利子、妙子、隼子、北上、青子、潮音、初花、酒匂、雪、菊、長戸、日向…そして?

 

「っふぃ〜コイツは壮観じゃ! まさか本当に女子(おなご)だらけとはのぉ〜?」

「エースさん? そちらの方は?」

「あ、うん…あんま言いたくないけど、俺の…親父」

「えっ!? ええと…お母様似、なのですね?」

「あはは、よく言われる…」

 

 エースの父親「十郎太」も駆けつけた。これで…全てが揃った。

 

 

 ──今こそ、真実を垣間見る時。

 

 

「…さて、無駄話は出来んでな? ワシが何者かは置いといて、お前さんたちの疑問について、早速紐解いていこう。じゃが…ここから先の話は凡そは理解出来ん事ばかりじゃ…無理に理解する必要はない、それだけは断っておく」

 

 その場の全員が頷く。それを見て十郎太は話し始める…全ての真相を。

 

「まずは進一よ…今までに調べた情報を上げてみぃ?」

「おう…まず海の亡霊。これは、政府が隠し続けて来ている何らかの脅威、実際に被害が出ているらしいが、その辺はまだ分からない」

「うむ…」

「それから化身、榛名を連れ去ろうとしたヤツらがそう言ったから。榛名たちを指す言葉らしいけど、海の亡霊と関連があるかは不明だ。ヤツらは「軍事兵器」って言ってたな?」

「むぅ…」

「最後は裏組織。榛名を連れ去ろうとしていたヤツらで間違いないと思う。奴らは化身を使って、日本に戦争をさせようとしている」

「………」

 

 エースの言葉に、十郎太並びにその他のメンバーも驚きを隠せなかった。長戸は改めてエースに尋ねた。

 

「そんなに大事になっていたんですか?」

「ああ、この前も大変だったよ…フォックスたちが居なかったら、どうなっていたか…?」

 

 フォックスは何かを思案するように、黙して目を鋭く細め虚空を見つめていた。雪たちも俯いていたがエースは敢えて構わず、話を続ける。

 

「要するに、国が化身を使って戦争しようとしていて、それに海の亡霊が関わっている…ってことかな? 親父?」

「うーむ、そこまで調べとるんだったら、ワシ要らないんじゃね?」

「何言ってんだよ? 親父が話くれないと纏まらねえって! ほら」

 

 エースに言われ、十郎太は口を開き始める。

 

「まず、お前さんらが尤も理解出来んだろうことは「海の亡霊」じゃろう…コイツはワシの友人からの情報、信憑性は確かじゃ」

「…友人?」

「後で話すわい…それで早い話ソイツは………」

 

 

 ──"呪い"じゃよ。

 

 

「呪い…?」

「世の中には「霊」と言うものがおる。世界各国でソイツは形を変えて伝えられて来た。人が死した後憎悪の念となり後の世に災いをもたらす…それは遥か大昔から繰り返されて来た」

「…っ!」

「ある時は呪詛を唱える亡霊、またある時は憎しみを撒き散らす妖怪となり…人類の文明の発展の中で、そうした悪霊たちの姿も見られたそうじゃ」

「……そんなの、御伽話の中だけだと思ったけど?」

「事実じゃ。じゃが…文明が発達する過程で、そうした神秘の力は薄れていった、長い時間をかけて、世界は変わり始めていったワケじゃな? …しかし、亡霊は未だ存在する…!」

「…それが「海の亡霊」か?」

「そうじゃ。彼奴らが目撃されたのはこれが最初ではない。七十年前…あの大戦が終わった翌月に姿を現したのじゃ」

「…っ!?」

「亡霊相手には、如何なる兵器を持ってしても傷をつけることも敵わん。それでも何とか勢力が拡大する前に食い止めることが出来た」

 

 1945年、表立った記録は残されていないが、戦争が終わりを告げたあの日から、海の亡霊は日本を攻撃し始めていた…。

 しかし、各国の助力と「謎の勢力」の力添えにより事なきを得た──しかし撃破されたその折、亡霊は怨嗟を呟いた。

 

 

 ──イツカノミライ…ヘイワナウミデ……ア…イマ…ショウ………!

 

 

「っ! それは…」

「うむ。奴らの宣戦布告、遠くない未来に奴らは再び現れると言われておった。それを受けて秘密裏に設立されたのが、亡霊たちの動きの観測、並びに対策を目的とした「対亡霊対策研究機関」…即ち"TW機関"じゃ!」

「TW機関………ッ! あの「裏組織」か!? じゃあ榛名たちは」

「そうじゃな…化身は「対亡霊決戦兵器」…といったところじゃろ」

「……っ!?」

 

 遂に明らかになった裏組織、そして化身の本来の役割。それは常人が理解するには範疇を逸脱し過ぎていた…。

 絶句するエースたちを余所に、十郎太は補足を加えた。

 

「ワシも詳しくは知らんが、化身の力無くして海の亡霊には勝てん。と言われておる」

「……? 待てよ、親父。だったら亡霊が出ているんだったら何で国はそれを隠し続けてんだ? 寧ろそれを利用して戦争って…」

「ふうむ、そこなんじゃが…少しややこしい事になっておる」

「ややこしいって…?」

「おやっさん」

 

 フォックスは手を上げ、自分から話をすることを伝える。

 

「影二君…」

「そろそろ自分から言わねーとよ、ヤバイんでな? …さて、こっからは俺が話すぜ?」

「やっぱり…お前もそれを知ってたんだな? フォックス?」

「まぁな……んじゃ始めるぞ?」

 

 狐は語る…自身の過去と共に、この国の現実を──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──俺の親父は「ジャーナリスト」だった。

 

 只の記者じゃねえ、いかがわしいヤツから裏を取って、それを基に多額の「賠償金」をセビって一儲けしていた。このマンションも、親父の隠し財産で買ったモノだ。

 …親父ははっきり言って道楽者だ。「世の中腐りきってるが、それでもオレは上手く渡っていけるぜ?」といけしゃあしゃあと言いのけたものだ。

 

 甲斐性もない、威厳もない、尊敬もしない。

 

 そんな生活だから、母さんとは離婚するし、俺を平気で一人にしてたし…大嫌いだったね? ただ、あの日…俺が小学生のガキの頃、何ヶ月も帰って来ず、ようやく帰ったと思った、あの日。

 

「…っ!? 親父、どうしたんだ!!? ボロボロじゃねえか!」

「影二……ワリィ、長居出来ねえから、これだけ渡しとく…」

 

 …それはデータ入りの一枚のフロッピーディスクだった…。

 

「な、何これ?」

「あぁ?!」

「…!? (ビクッ)」

「 …そうさな? 次の月のお前の誕生日にでも見てくれや? オレのパソコン…使い方分かるよな? アレは今日からお前のモノだ」

「親父…俺の誕生日覚えて……」

「…へっ! んじゃな!」

 

 ニヤリと笑うと親父はそのまま出ていき、それ以降帰って来なかった…。

 

 俺は親父の言う通りに、フロッピーの中身を確認した…そこには。

 

「な…なんだこれ!?」

 

 国家機密情報──

 親父がハッキングして手に入れた代物だろう…そして、親父が書き加えたであろう海の亡霊の項目、その下書きなどを確認した…。

 

「下のメモは何だ…? ……っ!」

 

 そこには、事の次第がつらつらと書かれていた。

 

 海の亡霊をという脅威が現れたこと。

 それに気づいた友人から話を聞き、何とかする為に情報をハッキングしたこと。

 それがバレて、友人共々明日には消される我が身になったこと…そして。

 

「──影二、構ってやれなくてすまなかったな? お前はコイツを目に焼き付けてくれりゃ良い…この国はもう駄目だ。だが…それでもお前だけは、平和に暮らしてくれ………愛してる」

 

 ──何だよ、それ。

 散々人に迷惑かけといて、挙句一人で野垂れ死んで…最期の言葉が「愛してる」だと…?

 

 ふざけてるよな…? ホント……巫山戯んな………ッ!

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「フォックス…」

「…親父は国に訴えようとしていた、ただそれだけだった。海の亡霊なんて誰も信じねえだろうし、それでもこの国に立つ誰かが何とかしなければいけない。…だから、防衛省のシークレットエリアにハッキングして、あんな回りくどい方法で国に訴えた。あの文章を見たヤツに、オレたちに協力してほしいと訴えた。だが、奴らは親父たちを見限った…!」

「……」

「しかしそれは当然かもな? あの時から…あの「クソ外道」に国はどうかされちまってたんだからな?」

「それって…?」

 

「機関だ…この国は、既に機関に"乗っ取られている"…!」

 

 その言葉に激震が走る、驚愕の表情を浮かべる一同。彼は「日本が乗っ取られている」と発言した…あの裏組織「TW機関」の魔の手によって。

 

「おいおい…それは、一体全体どういう理屈だぁ!?」

「あのタヌキ親父だ。アイツが機関に入ってから全てが狂っていった、主任研究員となったヤツは人造化身を造り、ソイツをちらつかせ徐々に国の主導権を奪っていった…俺の親父が殺されたのも、ソイツが海の亡霊を通して得た化身の情報を公に知られたくないから…胸糞ワリィが、正にマッドサイエンティストだってことだな?」

「いやだからって…そもそも化身? がそんな力を持っているなんて、とても…!」

 

 エースの言葉に殆どの者が肯くが、十郎太が説明する。

 

「進一よ、それは事実じゃ。ヤツらは我々には計り知れない技術を用いて化身を形作った、逆を言えばその未知の力は海の亡霊と同等であり「各国の軍事力」を持ってしても太刀打ち出来んのだ」

「…!?」

 

 信じられないことだが、一国の軍事力を以ってしても化身を撃破するには至らないようだ、関四郎の言っていたことを借りると「別次元の存在」の彼女たちには、国ですら相手にならないというのか。

 それを利用して関四郎は日本の主導権を握っていった。国としても彼の暴走を止めたかったが、彼の「手駒」に阻まれ、ひれ伏し付き従う他なかった…これが、この国に起ころうとしている「災厄」その真実である。

 

「俺が化身の情報を知り得ていたのは、親父が政府のデータベースをハッキングした時に、海の亡霊の情報と一緒に載せられていた化身の情報を、データとして俺に託していたから。アイツは…最後までこの国のために、一人で戦っていたんだ」

「そんな…! そんなことの為に、フォックスの親父さんたちは…ッ!」

 

 狂った価値観によって、平和への願い、その純粋な思いすら踏み躙るTW機関。

 エースは憤りを感じながらも、フォックスに話を向けた。

 

「フォックス…お前があの時ビジネスに付き合えって言ったの、こういう意味だったんだな?」

「………」

「…アトラス、お前もだな?」

「…んだなぁ」

「そうか…最初からそうだったんだな」

 

 最初から「騙されていた」…と言えば聞こえは悪いだろうが、事実としてフォックスはエースを「巻き込もうという意志」があったことは明白、しかも今回はとても洒落では済まない状況だった。

 複雑な心境のエースであったが、それについてまだ要領を得ない部分があったので、聞いてみる。

 

「なぁ、どうしてあの時俺にこの話を振ったんだ? それって…」

「海の亡霊ってな」

 

 話をはぐらかすように、フォックスは話を続けた。

 

「七十年前の戦争…アレで亡くなった英霊や軍艦たちの魂が、白い女の形を取って顕現したんだと」

「…それが呪いか」

「あぁ。そして呪いを解くにゃ同じぐれぇの呪いをぶつけるに限る…ソイツが化身だ」

「そうか、じゃあ国が化身を造ってって話は…」

「いんや。そもそも「前提」から違う」

「…え?」

 

 何処か哀しげな顔になりながら、フォックスはただ淡々と事実を述べる。

 

「化身はかつての「軍艦の魂の生まれ変わり」。造られたモノじゃねえ、言い換えればここにいる艦の記憶の保持者は、全員が「化身」だ」

「!!」

 

 更なる事実。フォックスは化身…艦の記憶を持つ少女たちは「軍艦が少女の姿に転生した姿」だと言った──

 

「つまり、彼女たちが見ていた夢は「前世の記憶」だった…!?」

「そうなるな。化身はどういうわけか「亡霊が出現すると同時に」現れたと言われてる。かつて亡霊が攻め込んだ時も、その当時の化身の力を借りて打ち克ったと聞いている…尤も、その後にソイツらを見たヤツは誰もいねえらしいが?」

「そうか……っ! なぁフォックス、今現在その化身を人造したのが機関なんだろ? もしかして元々の機関が目的にしてた、亡霊への「対策」っていうのは?」

 

 何かを察したエースの疑問を肯定し、回答するフォックス。

 

「あぁ、より詳しく説明すると──亡霊たちへの警戒、監視、観測。そして…亡霊打倒のために化身のメカニズムを解明すること、そんでいつ来るか分からない「その時」に備えて、化身に代わる兵器を造る。それが奴らの目的"だった"…今じゃ寧ろ亡霊よりタチが悪いが?」

「…そっか、それであの「関四郎」がやろうとしていることは」

「そうだ、化身に「代わる」じゃなく「化身自体を造る」。あの屑野郎は、外道の所業と思考でそれを成し遂げちまった。あり得ねえだろうが、俺が政府関連のデータベースサーバーから探った情報だ」

「……マジかよ…」

 

 あの戦いから時代は変わっていった。七十年という時は、思いの根本を腐らせていく…新時代の軍事力を有する機関が、日本国を乗っ取るのは時間の問題だったのかも知れない…。

 

「アイツが機関に入ってから、化身の基になる「基礎構造(システム)」を次々と造っちまった…しかしアイツは亡霊とかにゃ興味が無い、ただ自分の作品を「試して」より良いモノに「昇華」させたい…それだけだ。その為だけに戦争をおっぱじめようとしてる」

「…本当に、榛名たちをモノのようにしか思っていないのか?」

「どうだろうな? だが…アイツは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 またも絶句するエースたち、戦いというものはその時代において逸脱した存在によって齎されるであろうが…彼こそがそうなのかもしれない、と各々は背中に悪寒を感じつつ悟った。

 

「俺は奴らに対抗する為、仲間を集めることにした。だが…生まれてこの方人に頼る、何てして来なかったんで? 信用もクソもねえ俺がそれをやるにゃ力不足だった…だから」

「俺を頼った?」

 

 エースの回答に、静かに頷くフォックス。

 

「……そう。お前の周りにゃいつも人が集まっていた。俺はお前なら、化身の少女たちを見つけ出せるって思ったんだ」

「そうか…でも、買い被りだよ? 俺にはそこまでの力は…」

「いいや。俺は正解だと思ったね? お前は見事に榛名や、化身の奴らをこの場に集められた…その辺は感謝してる。それから……騙して、悪かった………お前を変に巻き込みたくなくってよ?」

 

 殊勝な態度でエースに謝罪するフォックス、エースはそんな彼を感心した様子で見ていた。

 

「…ふーん? お前も大人になってたんだな?」

「うるせっ!」

「ははっ! …でもフォックス? 対抗するって、一体どうするつもりだ?」

「それは…いや、ここからは駄目だ」

「え…?」

 

 フォックスは立ち上がると、メンバーの皆を見つめる。

 

「お前ら、最近体に異変は無いか? なんつうか…妙に身体が丈夫に感じたり、馬鹿に力が出たり?」

「っ!」

 

 フォックスの突然の言葉に驚愕し、沈黙がその場を支配したが──程なくして手が挙がる。

 

「…は、はい」

「潮音ちゃん…!?」

「どんな感じだ?」

 

 フォックスが問いかけるが、潮音は俯いたまま震える声で呟く。

 

「…ッ! 私…友達とケンカして…! その時、筆箱、投げて…っ!」

「…そうか、辛かったな? …だが」

 

 フォックスは潮音に向かって、ブレスレット型の機械を投げる。それはあの時「TW機関」を退ける切っ掛けを作った「あのブレスレット」だった。

 

「っ! フォックス、これ…」

「…ソイツは電磁波で人間の筋肉繊維に働きかける。要はパワーダウン装置だ。他の奴の分も用意してある、持っていけ。異常を感じたら直ぐソイツを填めろ」

 

 潮音は恐る恐るそのブレスレットを手に取った。他のメンバーもそれに倣った。

 

「化身は、あのオッサンが言う通り別次元の身体になっちまう。…今までどおりの生活は、少し厳しいかもしれん」

 

 そういう彼の顔は「虚しさ」に溢れており、彼女たちを心から心配する様子が見て取れる。

 …そして、意を決した顔でその思慮深さとは真逆の言葉を投げかける。

 

「俺は…化身の力を使って奴らを止めようと思っている」

「!?」

 

 驚きの連鎖の中で一番の衝撃発言、つまりは国と「戦争する」と言い出したフォックス。

 

「フォックス、お前…!」

「ああ、言いたいことは分かる。こいつ等を「利用したい」と言っているんだ、俺は。…だが強制じゃねえ」

「っ! ……皆の意思に委ねる…って?」

 

 エースの言葉に、肯定の意志を込めて強く頷くフォックス。

 

「俺は、どんなに恨まれても良い…お前らをモノみてぇに扱うってことも分かってる…それこそ奴らみたいに」

「フォックス…」

「だが、意思がある以上、俺がどんなにそれを強いても意味が無い──俺と同じで、この国のやり方に疑問があるヤツだけ、俺と一緒に来てほしい…頼む」

 

 頭を下げるフォックス。その態度はいつもの尊大なモノとは違う…謙虚で、あまりにも小さく見えるものだった…。

 

「そうだな…お前が嘘つきなのは前からだし、榛名が連れ出されそうになった時も、お前は俺たちを助けてくれた。…だったら俺も誠意見せないとな?」

「っ! エース…」

 

 フォックスが驚いていると、エースは艦の記憶を持つ少女たちに呼びかける。

 

「俺は…コイツのビジネスを手伝うって約束してる。だから…それを最後まで貫こうと思う」

「…すまねぇ」

「良いんだ。でも…皆はどうしたい? これから?」

「どうって…?」

 

 潮音がポツリと呟くように言うと、エースはその場の全員に向かって問答を投げ掛ける…このまま行くつもりなのか、と?

 

「コイツは不器用だから上手く言えないだろうけど…要は皆に「命のやり取りをしてほしい」って言ってるんだ…でも、俺ははっきり言って、こんな形は望まない」

「エースさん…」

「皆にも帰るべき居場所がある。それを蔑ろにしてまで戦いを強いる、それこそ間違ってるんだ。…だから、今日限りでこのサークルは終わりにしよう。それぞれのやり方でも、国は相手取れる筈だ」

 

 こんな事をしなくても、君たちは国を守れる…だから戦いに拘る必要は無い。どう行動するかは自分たちで決断してほしい、エースはそう発した。

 

「明日から、此処には来なくていい。でも、もし何か…迷った時には、いつでも協力するよ?」

「…悪りぃな? 俺はこーいう性格だからよ? 後はリーダーの指示に従ってくれや?」

「んだなぁ?」

 

 エース、フォックス、そしてアトラスは和かに彼女たちに微笑んで、この戦いから手を引くように促した。だが──

 

「──何よ、それ……ッ!」

「龍美ちゃん…?」

 

 龍美は肩と唇を震わせながら、乱暴に言葉を投げた。

 

「勝手に考えて、勝手に行動して……やっと話してくれたと思ったら、今度は手を引け!? ふざけないでよ!!」

「龍美…」

「フォックス君の馬鹿! もう知らないッ!!」

 

 龍美は怒って、憤りの込もった足取りでその場を後にしてしまった…。他のメンバーも、また倣うようにそこから出て行った。…そこに残ったのは、ほんの数人。

 

「──っはぁ」

 

 フォックスの重い溜め息のように、その空間の空気は沈んでいた…。

 




〇口癖

酒匂「ぴゃっ♪ ぴゃあ♪ ぴゃあぁい!」
アトラス「んだなあ?」
日向「…」
利子「む? どうしたのじゃ日向? しかめっ面はようないぞ?」
日向「いや、わたしも口癖をつけた方がいいのか、と思ってな?」
利子「むむ、どういう意味じゃ?」
日向「何、私はあまり表情が豊かとは言い難いからな? 語尾の一つでもつければ少しは雰囲気も和らぐかと考えたのだよ?」
利子「…そんなどうでも良い事を真面目に考えとったのか?」
日向「ああ、クソ真面目だからな?」
利子「誰もそこまで言うとらんぞ…;」
日向「はは、それで何か私に似合う語尾は無いものか、どうだろうか利根殿?」
利子「うぅむ、見た目というか性格からして「ござる」とか?」
日向「ござるか…悪いがもっと意外性のあるものの方が良い」
利子「意外と我が侭じゃな…」
酒匂「ぴゃ! 私は「ぴゃ」って言うのが好きだから言ってるの!」
アトラス「んだなあ?」
日向「おお、好みを反映してという事か!」
利子「ふむ、ではお主の好みを言うてみい?」
日向「好み…実はプラモデルが趣味でな?」
利子「おおぅ!? 意外過ぎる…!?」
日向「そうか? とにかく飛行機のプラモデルを子供の時分から作ってな?」
利子「うむ」
日向「そして…夢で見た日向から見た機体がな? 良いフォルムをしていたのだ…」
利子「…うむ」
日向「そう、あれは良いものだった…! そうか、アレを語尾にしてしまおう!」
利子「…うむ??」





・・それから~・・

エース「ただいま~」
酒匂「ぴゃ! お帰りエースちゃん!」
アトラス「んだなぁ?」
利子「おぉ、お帰りなのじゃ!」

日向「お帰り”瑞雲”! エース君!」

エース「ああ日向…さん?」
日向「どうした瑞雲? 私がどうかしたか瑞雲?」
エース「いや…その語尾? 急にどうしたの?」
日向「いや何、私なりのイメチェンという奴だ瑞雲、どうだ良い感じだろ瑞雲?」
エース「ズイウンって何、逆に言いにくくないの!?」
日向「まあ、そうなる瑞雲?」
利子「”瑞雲”のゲシュタルト崩壊…!」
アトラス「未来に生きてんな?」
酒匂「んだなっぴゃ?」
エース「うわあん!? 何だこのカオス空間は?! どこから突っ込めばいいんだあああああ!!?」

 ※数年後、彼女は同僚たちに瑞雲の素晴らしさを説く「瑞雲教」なる独自宗派を広めようとするが…これが、始まりだったのかもしれない、瑞雲。

日向「まあ、そうなるな?」
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