国の暴走を止めるため奔走するエースたち、彼らは化身が「海上自衛隊」の護衛艦に守られながら海上を移動しているとの情報を掴む。
しかしフォックスは「すでに策はある」と言うも、人員という壁はどうにもならない…ごく少数のメンバーで立ち回るか、と思いきや龍美を筆頭に全員が戻って来た。
覚悟を決めた顔で決意を語る彼女たち、ここにエースたちは改めて世界に戦争を引き起こさせない為に行動を開始する。
──今、心を一つに巨悪に立ち向かう。
──首相官邸。
それは、日本政府の中枢…様々な執務や政治、経済の活性化、更には外交等…ありとあらゆる側面から日本を動かす正に「総本山」。
この拠点には、現日本総理大臣たる「春野晋五」と内閣の閣僚たちが今も日本の未来を見据え、その手腕を発揮している…だが。
「ンフフフ…♪」
総理執務室…その席に座っているのは「関 四郎」。彼は何故か首相に成り代わっていたのだ。
「……」
執務机の前、中央に配置されたソファに項垂れる様に座るのは、現職の春野首相。
「海上自衛隊は、無事に私の作品を乗せて出航したようデスねえ、晋五?」
「…ああ」
力無く、彼は肯定する…日本が侵略行為…「戦争の切っ掛け」を作ろうとしている事を。
春野首相は頭の中で整理する。…この官邸が奴の手中に落ちた事実は、ほんの一握りしか知らない。機関で「新兵器」を完成させてしまった関四郎は、それを機に政治にまで手を出すようになった…自慢の手駒をちらつかせ、我々に服従しろ、と。
晋五は頭を抱えながら、己の無力さを後悔した。勿論最初は聞く耳を持たなかった…だが奴は「切り札」を切り「私」を屈服させた。そう自身の罪を反芻しながら…。
「ンフ! 楽しみデスねえ〜? 彼女たちは半端な国力では対処出来ないでショウ…我々が世界の頂点に立つのも近いデスよぉ?」
関四郎の計画は、海の亡霊により破滅した国を、化身の力を以って鎮圧しそのまま自国領にしてしまう、というもの。
だがここで一つ疑問が、そんな事を秘密裏に進めたとしても、いずれ他国や、最悪亡霊たちに勘付かれ阻止されてしまうのでは? ということ。
しかし、関四郎の考えは違う。彼は自分の作品に絶対的な自信がある、化身の二つの「性質」を熟知しているのだ。
人の持つ「隠密性」により速やかに国力を広げ、万一戦闘が起こっても、モノの「強固性」により現代兵器の殆どは化身の肌を貫通出来ない。…誰にも止められはしない、ニヤリと嗤う関四郎。
亡霊も「国規模の戦い」が無ければこちらに目も向けないことは分かりきっていた…まあ何れは邪魔になる存在なので排除しマスが、と謀略を巡らせながらまた嗤う。
…尤も、彼には「世界征服」などというちっぽけな考えは無かった。彼は化身が齎す「恒久的戦争世界」を実現しようとしているだけ、神をも凌駕するであろう化身で、彼は世界の在り方を変えようとしていた…「不戦の誓い」を固く守って来たこの日本で。
「もうすぐ刺激的な時代が来る…その世界の中心になるのハ「日本」…私の生まれた国でなければ…フフ、フハハハハ!」
邪悪な高笑いを上げ、悪魔は自身がもたらそうとしている混沌時代に胸を高鳴らせた。
…しかし、彼の中には唯一の痼り、いや心残りが。
「(はあ…ここに彼女が在れば完璧だったんデスけどねえ?)」
そう、榛名…ナンバー31、彼が最高傑作と謳った彼女はここには居ない。
艦の記憶との同化率の高さは他の追随を許さず、高い知性と肉体の可動率も高性能。正に「理想の兵器」であった。
人としての機能さえ消去してしまえば、侵略兵器の最高戦力として世界を恐怖に貶めていただろうに…「勿体無い」、彼はそう思った。
人造化身の完成には、植えつけた艦の記憶の同化を高めなければならない、それには障害になる人体の精神機能を消去する必要がある。それが「人としての記憶」と「それ故の感情」である。
完全に消去すれば命令に忠実な、決して逆らわない「兵器」が出来上がる。…が、それを行う過程で「何者かによる脱走手引き」があったようだった。
「(あの不出来なモルモットたちもそうデスが…彼女たちの人体の精神機能を消去する過程で、"何者かの邪魔が入った"…誰が裏切り者か、は私には分かりませんデシタが?)」
想定内であったわけではないが、自分たちが「外から見れば」どれだけ非道を重ねているかは、流石の関四郎でも解りきっていた。しかしこれまで脱走が行われた回数自体少なかったし、泳がせて「覚醒」が早まれば余計な工程を省くことが出来るので「些事は放っておきマスが」。関四郎はそう頭を巡らせた…が、思いの外「しぶとい」。
彼女の行方を掴むのにこれだけ時間を割かれるとは…痕跡は完全に消され、それらしい人影も無し、黒服たちを総動員して探させた結果ようやく足取りを掴んだ。…ここまで時間を掛けた理由は、関四郎には理解出来ていた。
「これだけの隠蔽をやるとは…流石二代目ミストフォックス。あの伝説のハッカーの息子デスねぇ?」
関四郎は忌々しげに皮肉を言いながら、次に会ったら覚えておきなサイ、と「彼女」の奪還を誓う。
「(彼女はこの世界に混沌をもたらす「戦乙女」で無ければ…あのクソ餓鬼共には、後でキツぅイお仕置きをしなければ…!)」
関四郎がそんな事を考えていると、春野首相が尋ねる。
「…本当に、お前は国を巻き込んで戦争を起こすつもりなのか?」
「…ンン? あっはあ! すみまセン、声がちみっちゃくて聞こえまセンでしたぁ? 何テ?」
悪魔には彼が言わんとしている事は分かっていた。敢えて挑発すると、首相は立ち上がり最後の抵抗をする。
「…ッ! お前はそうやって戦争を促して、我が国民を危険に晒そうとしている! …あの時と同じだ、時代の流れがあったとはいえ、私欲に取り憑かれてしまった我が国は過ちを犯した…! その先に待っているのは多くの罪なき命の破滅だ。だからこそ、我々はもう命を奪う真似を繰り返してはいけないのだ!」
「ほお? それで?」
「言いたいことは分かっているだろう!? 今すぐにこんな蛮行は止めろ! 私は…これ以上の好き勝手は許せん! 我が国を二度も戦犯国にするつもりか!!」
「黙らっしゃい!」
机を叩き、関四郎は怒声を張り上げた。一国の首相に現実を叩きつける。
「自分の立場を分かっていないようデスねえ? …もうこの国は私のモノ、いい加減理解しなサイ」
「お前は…っ!」
「ほほう? "娘"がどうなっても良いと?」
「っ!」
それを聞いた瞬間絶望に屈した表情の首相は、全身から力が抜け、やがて膝から崩れ落ちた。
「貴方の娘に化身の予兆が出ているのは解っているのデスよ? 数は多い方が良い、どこに隠したかは存じませんがそれも唯の時間稼ぎ! 貴方が私の命令を拒否すれば、娘がどうなるか…分かりますネ?」
「…〜〜〜〜ッ!!!」
…そう、首相と言えど、彼もまた「父親」であった。娘を事実上の「人質」に取られた以上、彼は愛しい我が子を守る為、屈服せざるを得なかった。
「…フン、分かれば良いのデス! …さて」
関四郎は自前の機械(スクリーンがある、受像機だろうか?)の電源を入れる…すると見えたのは「一隻の船」…どうやら化身を載せた海上自衛隊の護衛艦のようだ。
「…ンフフ、特等席から見物させてもらいますヨ!」
まるで、映画を待ち侘びる子供のように…悪魔はそこに映るであろう「衝撃の光景」を静かに監視する。
・・・・・
「艦橋に定期報告、周辺に異常無し!」
「…うむ」
日本を出航した海上自衛隊の護衛艦「まいかぜ」は、被害に見舞われた国、並びに国民を救助する為に海を駆ける…あわよくば被害の原因を突き詰めて、自国に報告する…ここまではいつもどおり。
しかし…艦長はそう感じない。災害時に国から支給される物資、そして補給艦、輸送艦は「今回は居ない」。どういうことだ? と内心訝しんでいた(一応、救援物資は後から支給されると報告は受けている)。
最近、首相は会談や協議に顔を出さないことが多いと聞くし、防衛大臣に尋ねても「私が知るか」の一点張り…手渡されたのは「人が数人入れそうな大きな木箱」のみ、それが救援物資でないことは確かだ。
…怪しい、何か嫌な予感がする。更におかしいと思ったのは、現地に着き次第「中枢を掌握せよ」との命令。まるで侵略行為ではないか、とは口が裂けても言えんが、今までにない指令ではあるので戸惑いが無いと言えば嘘になる。
しかし、我々が口出し出来ない問題なのは確か。最近は「自衛行為」でさえ曖昧になりつつある、これも国同士の問題だろう…と、艦長は無理矢理完結することにした。
「…もうすぐか」
艦橋の窓から見やる艦長の目先には例の「崩壊した某国」が。
数ヶ月前、謎の連続爆破事故により某国の都市部に壊滅的なダメージが与えられた。爆発の原因は不明、被害は「甚大」であり、某国は否定しているが指導者一族を含めた多くの人民が悉く「死亡」したそうだ。
…一体全体、どんな災害に見舞われれば国が破滅するなど起こるのだろう? 噂では…あの国は「呪い」にかかった、と聞いたが。
「…いかんいかん」
我々は所詮国の命令でしか動けない。余計な考えはよそう…彼がそう思っていた──その時。
「…っ! 艦長!」
突然、CICにてレーダーのモニターを確認していた隊員が驚愕の声を上げる。
「どうした?」
「こ、こちらに接近する影が…! 物凄いスピードだ、こんなの有り得ない!?」
「落ち着け! 具体的な報告は!?」
「は、はい…こちらに接近する影有り、急速にこちらに向かっています! 数は六…"人"」
…その報告に一瞬呆気に取られる。六…人? ”人”と言ったのか? 艦長は再度確認するも──
「確かです! 隊列を維持して、人影六人が急速にこちらに向かって来ています!」
「…っ!」
まさか「呪い」か? と艦長は一瞬考えたが、急いでそれを頭の隅に押し込んだ。部下にこのような考えが伝わっては、指揮に関わる…と、艦長は艦橋の窓越しに前を見やると…嫌でも目に入ってしまう「不思議な光景」が在った。
「…っ!?」
艦長…いや、その場にいた全員が「度肝を抜かれた」。
自分たちの目の前には…色とりどりの衣装に身を包んだ「少女」…少女六人が、海の上を滑走し護衛艦をすり抜けて前に躍り出た…!
「な…何だと!?」
艦長の言葉に、その場は言い知れない緊張が走った…「有り得ない」誰もがそう思った、またその時──
『──おう、繋がったな! そこの護衛艦止まれ!』
何処からともなく若い男の声がした…どうやら通信が傍受されたようだが、ただでさえ訳が分からない状況が畳み掛けて来た、それで取り乱さない者はいない…!
「うわあああああ!? ゆ、幽霊だああ!!?」
「もしかして最近海に人影が見えるって…呪いってまさか!?」
隊員たちが慌てふためく中、艦長は怒声を浴びせる。
「静まれえええい!!」
「…っ!?」
「…通信を取れ!」
隊員に指示すると、すぐさま謎の声が語りかける。
『ふっふっふ! てめえら、自分が何やってんのか分かってねえようだなぁ?』
「…何だと?」
『お前らが何を理解してなくても、国の命令で動いている以上、俺たちは容赦なくお前らを──』
『だああ!? 何煽っとんじゃオノレはぁ!!?』
謎の声が自衛隊を脅すと、別の声が慌てて制止した…遂には「代わりにやる!」と自衛隊に話をする。
『…えぇっと、僕たちは貴方たちを止めたいだけです。もしこのまま進むなら…貴方がたを牽制しなければならない』
また若者の声だ、我々に脅しをかけるも、その爽やかな風のような声は彼を好青年だと教え、更に敵意も無いと思わせる。
「…成る程、事情は分からんが、君たちも引く気はない…ということか?」
『…はい』
「分かった…だがこちらも国の要請で動いている以上、君たちの言葉に耳を傾ける訳にもいかないのだよ」
『その国がおかしくなった…と言っても?』
「…そうか。だがどちらにせよ、だ」
若者はため息をつくと、自分たちはそれでも貴方たちを止めなくてはならない理由がある、と言った。…何故だ? と問うても彼は答えない「信じられないでしょうから」とだけ付け加えた。
「君たちの話を聞きたいが、どうかね? 今ならこの一件は子供の悪戯として扱わせてもらうが?」
『それを話してこの場を引いてもらえるなら、そうします…でもそうじゃないでしょう?』
「…やむを得んな、気は進まんが君たちを妨害対象と見なし、目の前にいる彼女たちを…攻撃とまではいかないが「痛い目にあってもらう」、異存は無いな?」
『はい…残念ですが』
「…艦長、アイツら幽霊ですかね?」
「馬鹿者、仮にも自衛隊員が世迷言を言うな。だが…そもそも君たちは何者だね?」
『…僕たちは──』
・・・・・
「あ? 新しい名前??」
「ああ…化身、なんて呼ばれるの皆嫌だろ? だから新しい名前付けようって!」
「んだなあ?」
「良いですね、エースさんは何か案がおありですか?」
「…っていうか、今そんな場合じゃないのに、もうエース君ってば…」
「なはは! 良いではないか! …それでエース、どんな名前じゃ? 吾輩はカッチョいいのが良いのう!」
「ああ、カッコよくて可愛いヤツ考えといたぜ!」
「…まさかまた子供っぽいのか?」
「んだなあ?」
「だ、大丈夫だって!…いいか、榛名たちの新しい名前は…」
・・・・・
『僕たちは、戦いを止めたい名も無き者です…でも、彼女たちは違う』
「何?」
『彼女たちは…』
──艦娘(かんむす)!
〇ビギニング艦娘
エース「榛名たちの新しい名前は…艦娘! どうだ、「艦」でカッコよさを補いつつ「娘」で女性らしい可愛さを表現したんだ!」
フォックス「…ちょっといい? 何それ?」
アトラス「んだなあ?」
エース「な、なんだよ気に入らないのか?」
榛名「榛名は良いと思いますが…?」
フォックス「全然ダメ、いいか? 国を止めるために立ち上がる選ばれし少女たち、この展開はSFも真っ青だぞ?」
アトラス「んだなあ?」
エース「もっとカッコいいのって? じゃあお前は何かあるのかよ!?」
フォックス「そうだなあ…バトルシップソルジャーズ、略して「BSZ」ってのは?」
エース「駄目だろ? やっぱ日本らしさを出さなきゃ! 漢字で「艦娘」これだ! 大体BSZって何だよ、しかも綴り間違えてないか?」
フォックス「いやいや分かってねえな?「Z」はカッコよさを象徴するヤツだよ、ほら某格闘漫画とかもそういうニュアンスだろ?」
エース「そうかもしれないけど…?」
アトラス「…ペル〇ナ(ボソッ)」
エース「アトラス君、それ色々アウトだから問答無用で却下な!」
アトラス「マジか」
龍美「じゃあ変身少女もの的な「艦隊少女 リリ〇ル榛名」は?」
エース「アウトだから! ってか何で榛名が出てくるの!?」
龍美「似合うと思って♪」
榛名「あはは…」
エース「ああもう! 利子ちゃんはどれがいいと思う!?」
利子「どれも同レベルじゃろ、子供か(シラケ)」
エース「…ええ、利子ちゃんに言われた」
利子「どういう意味じゃ!?」
榛名「あの…今回は時間も押していますので、とりあえず最初の「艦娘」でいきませんか?」
全員「異議ナーシ!」
※こうして”艦娘”が誕生した。(ンな馬鹿な。)