※こちらは第十六話の”後編”となります、前編をご覧になられていない方は「2-1」を先にご覧ください。
──Start our mission …!
”亡霊艦隊を攻略せよ!”
・・・・・
『先ずはアイツらを護衛艦から引き離す、榛名!』
「了解、榛名っ、全力で参ります!!」
エースの号令に榛名は亡霊たちに対し艦砲射撃、亡霊艦隊の周りに水柱が建つと、怪人はゆっくりとこちらに視線を移す。
「こっちです!」
榛名が叫ぶと、艦隊は護衛艦から距離を取るため踵を返すように反転する、それを見た怪人たちも後に続くように榛名たちの後を追う。
「艦長っ! 化け物たちが…あの少女たちの方に」
「た、助かったのか…?」
まいかぜ乗員たちは壊滅的な状況がここまで変わるとは思わなかったのか、皆一様に唖然とした状態だった。
「……」
それは艦長も同じだった、無言で榛名たちの後ろ姿を追うしか出来なかったが…程なくしてハッと目を見開くと、呆然とする隊員たちに檄を飛ばした。
「馬鹿者! 一時退艦と言ったはずだぞ、本艦が危機的状況であることに変わりはない、避難急げ!!」
「は、はいっ!!」
艦長の命令に従い、避難行動を取る隊員たち。
艦橋から次々と人が居なくなる最中、艦長は一人「彼女たち」の戦いを見守っていた。
「…すまない」
彼がそう零した言葉に込められたのは、感謝か無念か──
・・・・・
護衛艦より距離を取った榛名たちは、そのまま亡霊艦隊の周りを旋回するように滑り駆ける、戦いの火蓋は切られたのだ。
先手必勝と言わんばかりに、怪人が頭の”UFO”から発艦したのは先程の「名状しがたい飛行物体」、敵艦載機とも呼べるそれらは迷う事なく、榛名たちの上空に迫る…!
「──させませんっ!!」
榛名はそれに対し、腰に着用した「大砲」による対空射撃を試みる。
「はあぁーーーっ!!!」
大戦当時の「戦艦榛名」の艤装、装備を忠実に再現したそれは、榛名の闘志に呼応するかのように独りでに動き、その主砲より弾丸(三式弾)が射出される。
『…どうだ!?』
敵の艦載機にダメージを与えられるよう祈るエース、その願いは──
『…っ! やった!!』
「…!」
見事に成就した。榛名の対空砲火は雨あられの散弾となり、亡霊艦載機を無様に叩き落とす。海面には飛行物体の残骸が浮かぶ。
『…驚いたな、話に聞いただけで半信半疑だったが、やっぱ亡霊に対抗出来るのは艦娘だけみてぇだな?』
『あぁ…これならいけるか? …いや、まだ油断出来ないか?』
フォックスの言葉に答えながら、エースは次の行動をシミュレートした。
敵の数は怪人が一人と、黒い鯨が五匹。未だに輪形陣の形を保っていた。
怪人は飛行物体の群体を操る、向こうが航空戦力を仕向けるなら、こちらにも「空母」がいるので航空戦を仕掛けたいところ。
しかし…仮にあの黒鯨が護衛駆逐艦か何かで対空砲火可能だとすれば、今航空戦力を差し向けても、対空防御に優れた陣形「輪形陣」を取られている限り、すぐさま防がれてしまうのは明らかだった。
『あれを崩すことが出来れば、龍美ちゃんの「一撃」で…先ずは陣形を何とかしないと』
そうエースが慎重に思案していると、”艦隊”に動きが──
「…っ!」
「潮音ちゃんっ!? どこ行くの、戻って!!」
初花の叫びを聞いたエースがパソコンのモニターを凝視する、すると…命令も出していないのに一人で行動する「潮音」の姿が。
『潮音ちゃん駄目だ、戻れ!!』
「あの態勢を何とか出来れば良いんですよね、私は…私なら!」
『そうじゃない、君だけで何とか出来ることじゃないんだ! 君は──』
「私は人間です、でも”化け物”でもあるみたいです。…だったら!」
エースの制止を無視し、完全に暴走する潮音。彼女は手にした砲塔を亡霊艦隊に向けて発砲する。
──ズドォン!!
『■■■■■■■ーーーッ!!』
夾叉──次は当てるぞ、と慣れない睨みを利かせる潮音に、黒鯨は口を開けると──
──ズゥン!!
「ふぇ!?」
何と、口から「砲撃」を放ったのだ。
爆炎が広がると同時に放たれた凶弾は、着実に潮音の元へと近づいてくる。
『潮音ちゃん避けろ!!』
「…っ!」
エースの叫び声が虚しく響くと、敵の予測不可能な動きに対応しきれない潮音は──
──ズドオォォオン!!
『潮音ちゃぁああああん!!!』
…爆砲は確実に潮音を貫いた、これに耐えられる「人間」は居ない、そう絶望するエースたち…だが。
「──…っはぁ、はぁ…っ!」
『…っ!? 潮音ちゃん…?』
エースがその眼で見たものは、衝撃の光景。硝煙が晴れたその先に…確かに潮音が「立っていた」。
流石に服や艤装はボロボロではあるが、人体の目立った外傷は火傷や煤の跡ぐらいだ。"その程度では絶対に済まないはずなのに"潮音は無事だったのだ。
『コイツが化身…”艦娘”が人と明確に違う証、か…』
フォックスは虚しさを湛えた顔でモニターを見つめながら呟いた。
如何に見目麗しい少女たちだとしても、彼女たちの皮膚は最早何モノをも通さない「鋼の殻」となった…なってしまったのだ。
「…そう、そうだよね。分かってたよ、最初から。だから…「都合がいい」って思ったんだもん!」
自身の変化に絶望しきった潮音には、もう何も恐れるものは無くなっていたのかもしれない。
敵を鋭く睨むと、潮音は砲塔を構え直して臨戦態勢を取った。
「私はこの力で明里ちゃんを…皆を守って見せる! 私が…私が化け物になったって、構うもんかぁーーーっ!!」
『■■■■■■■ーーーッ!!』
『しぃぉおおおおんっ!!!』
「潮音さんっ!!」
敵性体第二射、黒鯨は口を開けると覗かせる砲身からまたも凶弾を発射する。
どんなに鋼の肉体を手に入れたところで、艤装等のダメージが蓄積すれば、それこそ「轟沈」もあり得る、エースと榛名は通信越しに全力で叫んだが…声は届かない。
「うああぁーーーっ!!」
決死の覚悟で敵を穿とうとする潮音、彼女はこのまま心までも「化け物」となってしまうのか──
「──し、おん、ちゃあああああああああん!!」
たどたどしくも心揺さぶる魂の叫び、潮音の窮地を救おうと駆け付けたのは…「雪」だった。
雪の砲塔から射出された砲弾は黒鯨に、まるで吸い込まれるような正確さで「着弾」する。
その一瞬の隙から、雪は潮音の手を繋ぐと全速力でその場を一旦離れる。
「…っ!? 雪ちゃん…どうして?」
敵艦隊より少し離れた位置に辿り着くと、雪は潮音の手を放す。そして──
──バシッ!
「…っ!」
雪は自身の怒りを平手に込めると、潮音の頬を思いっきり引っ叩いた。
「…どうし…て?」
「ゆ、雪ちゃん…?」
「どうしてそんな悲しいこと言うの?!」
「…雪ちゃん」
淀みなく感情を爆発させる雪、怒り任せに言葉を投げつけ、身体は震え、目は涙に溢れていた。
「潮音ちゃんは人間だよ、どこからどう見ても! 私だってそう。どんなに造られたからって、そんな風になったからってそんなの関係ないよ!」
「…っ、でも…私は…!」
「大事にしなくちゃいけないのは「自分」だよ! 貴女は潮音ちゃんだよ、前世とは何の関係もない。今は昔の自分に力を借りているだけ、それだけなんだよ、潮音ちゃんが化け物になる必要なんて、これっぽっちもないんだよっ!」
肩を激しく揺らし潮音の目を覚まさせようとする雪、潮音は彼女の言葉に瞠目し動揺する。
「…雪ちゃん、私は…人で良いのかな? 明里ちゃんを傷つけた私が…人間で…良い、のかな…っ」
徐々に涙が溢れていく潮音、会話を聞いていたエースは透かさず回答を入れた。
『当たり前だ、潮音ちゃんは人として生まれたんだ。化け物なんかじゃないんだ。だから…これから証明していこう? 君が化け物じゃないってことをさ?』
エースの言葉にゆっくりと頷く雪。
潮音は涙に濡れながらも…力強く頷くのだった。
『■■■■■■■ーーーッ!!』
…敵は幾分の時も待ってくれない。
獣の咆哮と共に射出される凶弾の嵐、黒鯨の弾幕であった。それに加えて敵艦載機群も迫って来る。
雪はそれに気づくと潮音の手を取り、そのまま距離を取ろうとする。敵も彼女たちに砲撃ないし航空爆撃を図る。
『…敵は潮音ちゃんたちに気を取られている、あの飛行物体群も向こうに行った…この隙を突くことが出来れば…っ!』
そう思い至ったエースの行動は早かった。通信で龍美の名を大きな声で呼ぶ。
『龍美ちゃんっ、今だよ! 艦載機発艦開始!!』
「わ、分かった!」
驚きつつ龍美は艦載機──弓矢の先端に取り付けた模型飛行機──を取り出す。
「…うぅ、幾ら夢の中でやったからって、ぶっつけ本番は流石に緊張する…;」
「大丈夫じゃ! どんなに下手くそでも打ち上げれば後は勝手に攻撃するからの!」
「下手!? …んん! 見てなさい!」
利子の発破に刺激され、龍美は徐に前に出ると姿勢を正し、ゆっくりと弓を引き絞り、狙いを静かに定め──解き放つ。
静かに海に浮かぶ着物姿の少女は、立ち姿、技術、全てが凡人のそれとはかけ離れ…眼光鋭く放つ弓矢は、空を裂き真っ直ぐ敵に向かい──
弓矢の「矢尻(艦載機部分)」は
一機の戦闘機はそのまま上昇し…亡霊の上空を飛ぶと、そのまま何かを落とす。
──ズンッ!!!
『■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーッ!!?』
『…---!?』
敵陣にて爆発が起こる、どうやら艦載機爆弾のようだ。敵の対空防御も間に合わず狙いも完璧だったか、何と「二体」の鯨を粉砕せしめた。音もなく海中に沈んでいく鯨二匹。
「…ふふん♪ どうよ! お母さん直伝の腕前なんだから!」
「おぉ、恐れいったわ…;」
ここに来て意外な才能を発揮する龍美、敵の陣形も明らかに崩れている。後はそのまま残りを撃てば「勝機」はある。
…しかし、亡霊側も黙っていない。黒鯨の口が不気味に上がると、そのまま「火を噴いた」。
『っ! 敵の砲撃三射目確認、榛名、回避運動急いで!』
「了解! さあ皆さん、急ぎましょう!」
榛名を旗艦(先頭)に、龍美、利子、初花は回避行動を取る。
少しすると榛名たちが居た場所から水柱が建つ、回避成功。その途中で雪たちと無事合流することに成功する。
「…潮音さん?」
「っ、ご、ごめんなさい榛名さん…;」
潮音は涙目になりながら俯いていると、榛名はその頭を優しく撫でる。
「一生懸命になっちゃいますよね? でも…こういう時こそ「
「…っ! …はい…っ!!」
言葉少なめだが、それでも心から潮音を心配する榛名に、潮音はただ頷くのだった。
『…っ、良かったな、潮音ちゃん』
『おい、泣いてる場合か! 油断すんなよ!? とにかく攻撃させろ!』
『は、はい。…じゃあ皆、今から「魚雷発射」だけど、用意は良い?』
「うむっ!」
「は、はいっ!」
「了解しました!」
「皆で一緒に、頑張ります!」
エースの言葉に頷く利子と雪たち。
先ずは隊列を組み直すと、敵艦隊周囲を旋回しつつ様子を窺う。敵は守りに徹しているのか、砲撃の構えを解かず辺りを回る榛名たち艦隊を見据えた。
『よし、行くぞ。…魚雷発射用意、目標は黒い鯨だ。狙って…ってぇ!!』
エースが力強く号令を放つと、四人の身体に取り付けられた発射装置から「ミニチュアサイズ魚雷」が射出される。
海下を真っ直ぐ進む槍は、黒鯨たちに視認されることなくそのまま貫く。辺りには轟音と爆炎が響き渡る。
『■■■■■■■■■■■■■■■■------ッ!!!』
『…っ! 不味い、タイミングが早かったか?」
当たれば一撃必殺の魚雷ではあるが、敵との距離や相手方とのスピードを緻密に計算しなければ命中は難しい。大きく軌道が逸れてしまったがそれでも「一体」撃沈、浮力を無くしそのまま海に沈んでいく。すかさず残りの敵二体の内一体の黒鯨は口から覗く砲身で反撃を加えようとする。
「っ! …させません!」
いち早く気付いた初花が、片腕の単装砲の照準を合わせ、爆砲と共に化物の身体を射抜いた。鮮やかに決まった砲撃は黒鯨にダメージを与え、行動不能に追い込む。
『■■■■■■■■■■■■■■■------ッ!!?!?』
…残る敵艦隊内訳は鯨二匹(内行動不能一匹)、そして謎の女性怪人のみ。
『良し! ありがとう初花ちゃん?』
「すごい…流石初花ちゃん」
「うふ。でもエースさん? あの女性…? はどうしますか?」
『うーん、あの帽子みたいなのを何とか出来ればいいから、先ずはあの帽子を無力化、女性は逃がそう』
『あ? 良いのかよ? やれるんならこのまま』
『お前が言ったんだろ? まだ早いって? それに俺たちは「戦争」したいわけじゃない…だろ?』
『…ッケ! 甘ちゃん!』
『言ってろ!』
「あはは…でも、榛名もそれで良いと思います!」
エースの方針に従う艦娘たち…だったが?
『──…ッ!』
怪人は再度頭のUFOより、不気味な意匠の艦載機を発艦させる。意表を突いたわけでもない様子、まるで榛名たちの実力を図るように。
『っ! 危ねぇ!!』
『榛名!』
「はい! …勝手は榛名が、許しませんっ!!」
フォックス、エースが叫ぶと榛名は
『…!』
怪人は目を瞠った。矢張り彼女も榛名たちがここまで食い下がるとは思いもよらなかったようだ。
『…--!!』
だが、怪人は直ぐに顔を憎々しく変貌させ睨む…その貌には人類に対する確かな「敵意」が感じ取れた。
『…まだやるつもりか!?』
「これ以上はやらせません!!」
エース、榛名たちは身構える。彼女がどれほどの実力があるか分からない以上、油断は大敵…艦隊と敵群の間に緊張が走る──しかし。
『…---!』
怪人は何を考えたか、その場から反転…離脱しようとしていた。
「…ぬ? なんじゃ、もう少し食い下がると踏んでおったが?」
『どうする…つっても聞くまでもないか?』
『ああ、こんなものだろう。…”作戦終了”。皆お疲れ様…ふぅ』
エースの脱力のため息に、艦娘たちも安堵した。
下手を打てば怪我だけでは済まなかったこの戦いを、こちらの勝利に導けたのは。
「──良かった」
敵の最大戦力たる艦載機を、榛名の防空砲撃が無力化したお陰…かもしれない。
水平線の彼方へ消えゆく敵艦隊を、エースたちは黙って見送った──
──mission complete.
・・・・・
「──そ」
「そんな馬鹿なッ!!!!!」
関四郎は驚天動地の叫びを上げた。
ただのおもちゃ同然の武器を持った奴ら…戦いにおいてはただの素人だと思っていた奴らが、まさかまさかの亡霊を「撃退」した。
「恐らくあの亡霊たちは、こんなことになると想定出来ていなかったのでショウ、アレは「脅し」の為に現れた…だがっ!!」
不測の事態に思わず顔が歪む、関四郎には心当たりがあった、如何に脅し目的とはいえ「あの」亡霊たちをここまで追い込んだ者たちは──
「…あの餓鬼どもッ!」
憎々し気に怒りを吐くと、関四郎は自身の計画の「最大の障害」を再認識した。
「おのれ…! こうなればもう躊躇しまセン! 絶対に生かして返すものか…!!」
「…あら? それはこちらのセリフなのだけど?」
「何っ!?」
関四郎は声のする方向を見やる、そこにはいつの間にか開けられたドアの前に立つ一組の男女。
「──警視庁捜査一課の高木雄子です。TW機関主席研究員「関 四郎」…貴方を、国家転覆罪の容疑で…逮捕します!」
高木、そして十郎太が悪魔を捕らえるため馳せ参じた。
「…っく! 何故警察がここに!? 此処をどこだと考えてますか!!」
「あら? 私たちは別件でこの首相官邸を「家宅捜索」していただけよ?」
「はぁ!?」
「どんな場所だろうと事件性があれば、真相を解明する、それが警察。…で、偶然執務室を通りがかったら、面白い話を聞いてね? 証拠もバッチリ取らせてもらったわ♪」
高木は余裕の表情で懐から「ボイスレコーダー」を取り出す、再生すると「平和なんて要らない」辺りの会話から全て録音されていた。
「…ック、ミストフォックス。まさかここまで計略を巡らせていたとは」
「さぁ、何のことかしら? でも…貴方のような尊大な男が、ここに現れない理由は無い。…と、ある人物は言っていたわ?」
してやったり、と自信に満ち溢れた笑顔で高木は言ってのけた。
「…フ、フハハハ! こんな事してタダで済むと思っているのデスか? 戦いに終わりは無い、亡霊たちはまたやって来る…私の居ない機関は無能同然。…貴方たちはどうやって」
関四郎が口先八寸でやって退けようと考えていると、ずかずかと早足で近づく男に問答無用で胸倉を掴まれる。
「…ッ! このクソ野郎がああああああああ!!!」
十郎太は渾身の力を込めて、一撃必殺の「背負い投げ」をお見舞いする。
「ぐぶぇあ!!?」
全身全霊の力を「外道」と共に床に叩きつける、国を揺るがした悪魔は呆気なく泡を吹き出しそのまま気を失った。
「…けっ! こんな野郎に国がどうかされようとしていたなんて、胸糞悪いわい!」
「おじさま、そのくらいで抑えて下さい? …後は、法の裁きに委ねましょう」
「雄子ちゃん、お前さんもコイツに言いたいことがあるのでは?」
「いいえ、話の通じない相手に何を言っても無駄。父はそんなことで戻りはしないことは、分かりきっています」
「…そうか。…っ! 総理!!」
十郎太は床に倒れ伏せていた春野首相を見つけると、急いで駆け寄り抱き起す。
「総理、ご無事でなによりです。お怪我はありませんか?」
「ああ…ありがとう、大丈夫だ」
春野首相はふらふらと立ち上がると、覚束ない足取りで高木に歩み寄り…両手を差し出す。
「…どういうおつもりです?」
「”私を逮捕してくれ”。私はもうこの国の首相である資格はない、君は捜査一課の刑事だろう? どうか…国を売ろうとした私を断罪してほしい」
高木は首相の発言に、少し考えるようにして、一言。
「──お断りします」
「っ!? 何故だ?」
「貴方が国民を思う心をまだお持ちであるから、そして何より「一人の父親」だからです」
「…っ! 君は…」
「亡霊たちがまた現れるというのなら、貴方にはそれを何とかする責任がある。…そんな貴方を犯罪者にするなんて、私には出来ません」
「…許されない罪だ、それでも…そんな私が、この国のために出来ることがあるだろうか…?」
春野首相の言葉に、高木は確かな一言を添える。
「貴方にも愛する娘がいるのでしょう。でしたら…娘さんを悲しませる真似はどうかお止め下さい?」
「雄子ちゃん…」
雄子は微笑むと慈愛と虚しさが混ざった表情を見せる、彼女も娘として思うところがある証左だった。
「……っ! すまない…! すまないっ……!!」
総理は涙ながらに、感謝の言葉を繰り返した。
・・・・・
「エースさん、化身のお二人の回収を完了しました!」
『ああ、ご苦労様。…どう、様子は?』
「はい、ボロボロですが目立った外傷はありません。少し休めば大丈夫かと」
『そっか…』
『ま、よっぽどの攻撃でもない限り化身にゃ傷はつかないわな?』
『お前なぁ、潮音ちゃんも居るんだから、もう少しデリカシーというか…考えろよ?』
『んだなあ?』
『ケッ! 無理だね!』
「あはは…;」
「もうフォックス君は…」
「大丈夫です、私はもう化け物じゃない。自分は自分だって思えたら…それでいい、ですよね?」
潮音の明るい一言に、榛名たちは朗らかに笑うのだった。
…ふとエースは、護衛艦のいる方向を振り向く。すると──
「一同、敬礼っ!!」
救命ボートの上で全員無事のまいかぜ隊員たちは、自分たちを助けてくれたエースと艦娘たちに、心からの謝意と敬意を表した。
「──ありがとう、君たちは我々の…いや、国の命の恩人だ」
艦長はエースたちに対しそう呟くと、エースは遠くの言葉を理解してか、ホッと胸を撫で下ろした。
『うん、良かった!』
エースは爽やかな笑いを浮かべると、榛名たちも釣られて和やかな笑顔になる。
──こうして、事態は一応の終息に向かう。しかしこれは、あの「亡霊」たちとの、長く険しい戦いの序章に過ぎなかった。
・・・・・
──ウフ、ウフフフフフフフフフ……
〇思い出の味 その2
榛名「エースさん、これよかったらどうぞ?」
エース「え? …っ! これ「アイスクリン」? 俺の好物、よく分かったね?」
榛名「はい! 十郎太さんから教えて頂きました!」
エース「あぁ…(親父、余計なこと言ってないだろうな…?)」
榛名「どうぞ、上手く出来たか自信ありませんが…」
エース「全然! どれ…(しゃりっ)…ん! 美味しい!」
榛名「良かった! …あの、お母様の味は再現出来てますか?」
エース「ぶっっほおぉう!!? あのクソ親父!!」
榛名「い、いえ! 私が無理に頼んだので…すみません」
エース「いやいや、榛名が謝らなくても…んーそうだな? 俺の母さんの味とは、少し違うかな?」
榛名「そうですか…(しゅん)」
エース「大丈夫だよ? あの人の料理の腕は凄かったから、そうそう真似出来ないんじゃないかな?」
榛名「そうなのですか? …あの、差し支えなければお母様の事をお教え頂けますか?」
エース「うーん…すごく優しい人だった、叱りつけることがあっても、怒鳴ったりしたとことか見たことないし?」
榛名「まあ! 素晴らしい人だったのですね!」
エース「まぁな? 俺の健康を考えて、色々な料理を作ってくれてな? 見たことない外国の料理とかも作ってたな?」
榛名「え!? 凄い…榛名には、真似できません」
エース「いや、俺は榛名のアイスクリン、スゲー美味かったって思う。ただ…あの人のは「お袋の味」ってのかな? 俺があの人の息子だからってのもあるけど、やっぱり「違う」んだろうな?」
榛名「…うふふ! エースさんはお母様が大好きなのですね!」
エース「うぅ、やめろよマザコンって思われるだろ…でもなぁ、そう言われても仕方ねぇのかもな?」
榛名「…ん? どういう意味ですか?」
エース「それは…(ブブブ)ん? あ、電話だ。(ピッ)もしもし? 母さん?」
榛名「!?」
???『シンちゃん! 聞いたわよ! ガールフレンド出来たんですって? お母さんにも紹介して!』
エース「か、母さん、誰から…って言わなくても分かるからいいや」
???『そこに彼女いるの? もしもーし! シンちゃんをよろしくねー? 何か困ったことがあったらいつでもry』
エース「もう切るね?! じゃ! (ピッ!) …ふぅ」
榛名「…榛名、何となく解りました」
エース「ああ、何かあったらすぐ電話してくるからさ? 世話焼きなんだよ…ひょっとしたらこっちに顔出しに来るかも?」
榛名「分かるのですね…?」
エース「まあ、俺の母さんだし? あ、何か聞かれても「友達です」って言っていいからな?」
榛名「了解しました…エースさん、大変ですね?」
エース「もう慣れたよ? 大好きな母さん…だからな?」
榛名「…ふふっ、そうですね♪」
???「榛名はそんなエースさんが大好きですぅ(声真似)」
エース「…龍美ちゃん? ###」
龍美「テヘッ☆」
榛名「あはは…」