エースは、友人のフォックスより「ビジネス」と称したある事を持ちかけられる。
それは、国家機密情報である「海の亡霊」の正体を探ることだった…。
しばらく調べる時間がほしいと言う、フォックスの情報収集を待ちつつ、各々で出来ることをやることにした。
…そんな中、榛名はエースにある相談事をしていた。
「え? 夢を見た?」
「…はい」
とあるマンションの一室、陽だまりが窓から差し込む爽やかな朝。
テレビには平日のワイドショーが映っており、今日もあることないことを話していた。
そんな中、榛名はエースに奇妙な夢を見たと相談していた。
──その直後、エースの脳裏にはあの時の”夢”が過っていた。
「…榛名、その内容って?」
「恐らく、エースさんが見たものと同じです」
エースと榛名が見た夢、それは榛名と思しき少女が、武装した銃火器を、鬼気迫る表情で操る。
だが攻撃は届かず、そのまま海に葬り去られる…というものだった。
「私自身…なぜあそこにいたのか…あれが何を意味するのか、分かりません」
「そうか…」
「でも…あの夢を私は、悲しくもあり、"嬉しく"もある…そう思っているんです」
「嬉しい…?」
「はい。あの夢の中で私は、何かを守っていたと思うんです。でしたら…守るために全力を尽くせたなら、例え意味のないことだったとしても、私は「嬉しい」と感じます。…自己満足、なのかも知れませんけど?」
榛名は心底そう思うと言わんばかりに、爽やかな表情だった。
エースは、そんな彼女に、どこか違和感…いや、おかしな点があると考えた。
「…なぁ榛名、その夢見てる時って…何て言うか、自分が何処の誰なのか、とか分からないか?」
「えっ、エースさんそれは…?」
「あぁ、俺も榛名と同じ夢を見た以上、コイツが君の身の回りに無関係だとは思えないんだ。コイツが…君の記憶を呼び覚ますことに繋がる。…そんな気がする」
二人が見た不思議な夢が、榛名の失われた記憶を思い出させる「切っ掛け」にもなるかもしれない…とエースは考えた。もちろん何の根拠もないが、どこか「そうなのかも知れない」と確信のような第六感があることに気づいていた。
だが榛名は言葉を発することなく、ただ寂しそうに首を横に振る。
「そっか。…榛名、辛かったらその分俺が聞くから。だから…あんま無理言うなよ?」
「いえ! 全然そういうことじゃなくて…でも、ありがとうございます」
そう言う朗らかな彼女と、夢の中の「悲壮の覚悟の彼女」を対比する。
彼女が何者なのか、それは未だにはっきりしない…だが。
「(…彼女には、ずっと笑顔でいてほしい)」
そう考える自分に、何か彼女にできることはないか?そう思考するエースだったが…?
「おー、長戸愛理の新作だってよ!」
テレビのワイドショーを眺めていたフォックスは、ある女性俳優の名前を叫ぶ。
それは、切れのあるアクションが得意な人気俳優の、新作主演映画の告知だった。
『CB(クールビューティー)刑事の公開を記念して、初日舞台挨拶が行われました! …会場にはたくさんの来場者と、主演の長戸愛理さんが…』
人気俳優の新作とあって、一目見ただけでも満員だということがわかった。
場面が切り替わり、インタビュアーの質問に、主演が答えていた。
『未だ未熟の身ではありますが、皆さんの期待に応えられるよう、これからも努力します』
「けっ! 本当は物凄い嬉しいくせに、殊勝なコメントだこと」
「んだなぁ」
「お前らテレビに向かって何言ってんだ…」
3人がそんな会話をしていると、不意に榛名が疑問を投げかけた。
「そういえば、皆さんは小学校からのお付き合いなんですか?」
「ああ、そうだよ」
「ガキの頃からってのも、中々あるもんじゃねえんだろうけどな?」
「んだ」
「そうなんですね…あの、なぜ、こーどねーむ?で呼び合っているんです?」
名前で呼べばいいのでは?と当然のことを何となしに聞いてみた榛名。
「そりゃ…こいつに聞いてくれよ?言い出した本人なんだし?」
「え?」
「…え? そうだっけ?」
子供時代に、お互いをコードネームで呼び合うように提案したのは、他ならぬエース本人である。
その例に倣い、お互いにあだ名のような感覚で言い合ってるうち、自然とそうなってしまった…という。
「忘れてんじゃねえよw」
「す、すまん…っていいだろ! その方が仲良くなれるかなって?」
「なるほど…いいですね! 榛名、感心しました!」
「何なら榛名にも付けようか?」
「いいんですか? ではぜひ!」
「はーい! おっぱい魔人ってどうですかー!」
その場にいた全員が、フォックス案のコードネームにスッこけた。本人は悪びれもせずプッシュする。
「イーじゃん! 初めて榛名ちゃんがここに運ばれたときに見たけど…結構でk(ボカッ)いってえ!」
「なに言おうとしてんじゃオノレはあ!!?」
思わず突っ込みをいれるエース。榛名は少し恥ずかしかったのか、俯いた顔が赤かった。
そんなやり取りを尻目に、ふとアトラスは少し考え込むと…何かを思い出して呟いた。
「あんれ? 確かいたんでねえか? その名前のヤツ」
「え? そうなんですか!?」
「あーそれ俺も思ったけど…お前女だったら構わずその名前付けるの?」
「あれ? そうだっけカ?」
「うおい! 忘れてやるなよ!!」
「いや冗談だよw…つっても、アイツの小学校転校以来、もう全然会ってねえけどな」
フォックスは少し寂しそうに呟く…榛名はそれを見て少し驚いていた。
「フォックスさんも…そんな顔をなさるんですね?」
「いや榛名ちゃんひどいからw」
「お名前は何と言うのですか?」
「ん? 名前は──」
その時──ピンポーンと、軽やかなチャイムの音が鳴り響いた。
「ん? はーい」
「お客さんですか?」
「ああ、昨日隣に引っ越してきたっつう奴だろ? ただの挨拶回りだ、エース君にお任せ〜」
「はいはい、全く…ちょっと待ってろよ」
「…良いのでしょうか?」
「いいのいーの! なぁ?」
「んだなぁ」
3人がそんな話をする中、エースが応対に向かう。
エースはドアに近づき、覗き穴から尋ね人を伺う。
「はーい、どちらさ…ま”!?」
『え、えと…隣に引っ越してきました「鳳」です…ご挨拶に伺いました。……? あ、あのぅ?』
エースの目に映ったのは、青みがかった黒髪セミロングに、少し背の小さい可愛らしい女性だった。
──ガチャ
尋ね人の姿を見た途端、返事もなく急にドアを開けるエース。鳳と名乗る女性は身体をビクッと震わせるが、すぐに目を見開き、吃驚する──
「え…エース君!?」
「龍美ちゃん!?」
龍美と呼ばれた女性は、なんと今しがた噂をしていた「転校した友人」だったのだ。
まさかの旧友との偶然の再会に、思わず驚嘆する二人だった…。
・・・・・
「えっと…改めまして、「鳳龍美(おおとり たつみ)」と申します」
「榛名です。よろしくお願いします!」
「いやーこんな偶然ってホントにあるんだなぁ?」
「ああ、びっくりしたよ…龍美ちゃんの話をしようとしたら、だからさ?」
「そうなの? 私も…少し驚いちゃった」
えへへ、と龍美は少し照れている様子だった。
彼女は、エースたちの結成した「レンジャーズ」に所属していたが、程なくして家の事情により、学校を離れた。
その時のコードネームが”おっぱい魔人”、由来はフォックス曰く。
「いや普通に? あの小学校時代に? 何てモンもってやがんだ! …と?」
「もう! そのニックネームはやめて! …未だに言われる時があるのに…」
「マジで!?」
「ぶはっwwやっぱ男は胸に目が行くんだよw」
「ん~…だ!」
「そこは否定しろよアトラス!? …っていうか龍美ちゃん、ニックネームじゃなくて、コードネームだからね?」
「エース君、相変わらず細かいよ…?」
「ん”な!?」
「あ”はは!! いいぞもっと言え!」
四人は気楽に、そして思い思いに再会を喜び、十数年ぶりの会話を楽しんだ。そんな様子を、榛名は楽しそうに見ていた。
…と、不意に龍美は榛名を見やると疑問を投げる。
「あの…榛名さんは、どうして此処に?」
「へっ? 私ですか?」
唐突な質問に、どう答えていいか分からない榛名。エースは少し悩んだが、榛名の代わりに事情を説明する。
「って、いう訳なんだ…信じろって言う方が無理かもしれないが…」
「そう…やっぱり」
「え? やっぱり、ですか?」
榛名の疑問に応え、龍美はエースという人物を語る。
「うん、エース君ってすぐに何でも手を出して、それをみんなで解決しようってね? …子供の頃はよく振り回されたなぁ」
「あー、あったな! お前正義の味方じゃねえんだからって思ったわw」
「んだんだ」
レンジャーズの主な任務…もとい遊びは、様々な事柄に全力で挑もう、というもの。
特にリーダーだったエースは、トラブルに巻き込まれやすい体質か、それとも自分から飛び込んでいたのか…。
兎にも角にも、問題を持ち込んではメンバーに協力を仰ぐ、という事は毎日のようにあったのだという。
そのためか周りからは問題児扱いされ、メンバー達も呆れる始末だった。
「いや流石に今回は不可抗力…って言うか子供の時の話だろ!? それに俺だけ悪いみたいに言ってるけど、お前らに言われたくないわ!!?」
「俺たちはスキにやってるだけだもーん」
「んだなぁ」
「…でも、なんだかエース君らしいというか…ふふっ、懐かしいね?」
微笑みながら、龍美は納得した様子だったが…?
「そう、"夢の中"で…ね?」
「…龍美ちゃん、どうかした?」
直ぐに不安の色を顔に浮かべる龍美。戸惑った様子だったが、意を決し切り出す。
「あ、あのね? …私も…”見た”んだ。」
「え? 見たって…まさか…!?」
「そう…不思議な夢…見ちゃったの」
その言葉に一同は固まり、困惑する。
「ちょ、ちょっと…龍美ちゃん?」
「分かってる…変って言いたいんでしょ? 私も、自分でどうかしてるんじゃないかって…」
「そ、そうじゃなくて! …その夢はいつから?」
「え? …つい最近、えっと…大晦日ぐらいからかな?」
「!!」
その事実に驚愕するエース、彼女はエースが夢を見た同じ日にそれを見たという。
龍美にその夢の内容を聞き出すが…それは、エースの見たものとはまた違った内容だった。
・・・・・
──海の上に立っていたの。
ううん、移動していたんだと思う…波を掻き分ける音が聞こえたから…
それで、空を見上げながら弓を構えていたの…おかしいでしょ?
隣には、私と同じように上を睨んでいる人たちがいた…
しばらくして、プロペラ機みたいなものが来て…そこからよく覚えてなくて
雨みたいに降り注ぐ爆弾。
そこら中に水柱がたって──
私たちも、攻撃していたんだけど…それは届かなかったの。
ぼろぼろになった私は、ついに、倒れて……ふっ、て周りを見たら。
──居なくなってた、誰も。
私だけが…その場に立っていたの。
…私は、その光景を──
──悲しい、って思ったの。
・・・・・
「…龍美ちゃん?」
ひとしきりに言い終えた龍美の頬に、一筋の涙が…悲しみを湛えるように、流れ落ちていった。
「…ごめんね? 分かってるんだけど、思い出すだけで、悔しいって…涙が…勝手に…っ!」
龍美は涙を拭いながら、自らの異常を訴える。
「ねえ、エース君の夢と関係あるかな? それとも…私が……おかしいのかな…?」
溢れ出る涙を抑えながら、龍美はエースたちに問いかけた。
──エースは、胸が苦しくなりながらも、ある「決心」を固める。
「…龍美ちゃん、ごめん。…辛いこと聞いたな?」
「…エース君?」
「俺が、必ず何とかするから」
龍美を真っ直ぐに見つめるエース。その言葉にフォックスは、すぐさま反応し茶化した。
「おっ、ついにエース君が動くか〜?」
「話を”聞く”だけだよ。この国に何が起こってんのかは分からないけど、俺だって…このまま分かんねえままは、嫌だ」
偶然が重なったとはいえ、この国の異常に気付き始めたエースたち。
榛名、海の亡霊、そして謎の夢。
エースは、これらのワードが何を意味するのか、それを知っている人物に「心当たり」があった。
「ちょっと席外すぜ、すぐ戻るから」
「エースさん、あの…話を聞く、とは…どちらに?」
榛名の不安の色をした顔を見て、エースは「心配ない」と優しく笑い返した。
「久しぶりだから、話を聞いてくれるか怪しいけどな?」
そう言うと徐に携帯電話を取り出し、どこかへと番号をかけるエースだった…。
〇愛ゆえに
龍美「フォックス君、相変わらず小っちゃいままだね?」
フォックス「うるせえ! お前に言われたくねぇよ!?」
龍美「ちゃんと牛乳飲まないとおっきくなれないって、昔から言ってるでしょ?」
フォックス「オカンかお前は! っていうか、お前も栄養偏ってるから身長そのままなんだよ」
龍美「え? どういう事?」
フォックス「…ジーッ(ある一点を見つめながら)」
龍美「…! (気づいた)」
「「・・・・・」」
龍美「むぅう~~~!! (両頬をつねる)」
フォックス「痛いいたいいひゃいイヒャイ!!?」
榛名「ああ! いいのでしょうか止めなくて? 痛そうです!」
エース「いや、あれは愛情表現の一種だろ?」
アトラス「んだなぁ」
榛名「そ、そうなんですか? …そうなんでしょうか?」
フォックス「ほまへら、ひてへえではふへろー!?(ギュー」