艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

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 ○前回のあらすじ

 エースは、友人のフォックスより「ビジネス」と称したある事を持ちかけられる。
 それは、国家機密情報である「海の亡霊」の正体を探ることだった…。
 しばらく調べる時間がほしいと言う、フォックスの情報収集を待ちつつ、各々で出来ることをやることにした。
 …そんな中、榛名はエースにある相談事をしていた。


第二話 仲間

「え? 夢を見た?」

「…はい」

 

 とあるマンションの一室、陽だまりが窓から差し込む爽やかな朝。

 テレビには平日のワイドショーが映っており、今日もあることないことを話していた。

 

 そんな中、榛名はエースに奇妙な夢を見たと相談していた。

 

 ──その直後、エースの脳裏にはあの時の”夢”が過っていた。

 

「…榛名、その内容って?」

「恐らく、エースさんが見たものと同じです」

 

 エースと榛名が見た夢、それは榛名と思しき少女が、武装した銃火器を、鬼気迫る表情で操る。

 だが攻撃は届かず、そのまま海に葬り去られる…というものだった。

 

「私自身…なぜあそこにいたのか…あれが何を意味するのか、分かりません」

「そうか…」

「でも…あの夢を私は、悲しくもあり、"嬉しく"もある…そう思っているんです」

「嬉しい…?」

「はい。あの夢の中で私は、何かを守っていたと思うんです。でしたら…守るために全力を尽くせたなら、例え意味のないことだったとしても、私は「嬉しい」と感じます。…自己満足、なのかも知れませんけど?」

 

 榛名は心底そう思うと言わんばかりに、爽やかな表情だった。

 エースは、そんな彼女に、どこか違和感…いや、おかしな点があると考えた。

 

「…なぁ榛名、その夢見てる時って…何て言うか、自分が何処の誰なのか、とか分からないか?」

「えっ、エースさんそれは…?」

「あぁ、俺も榛名と同じ夢を見た以上、コイツが君の身の回りに無関係だとは思えないんだ。コイツが…君の記憶を呼び覚ますことに繋がる。…そんな気がする」

 

 二人が見た不思議な夢が、榛名の失われた記憶を思い出させる「切っ掛け」にもなるかもしれない…とエースは考えた。もちろん何の根拠もないが、どこか「そうなのかも知れない」と確信のような第六感があることに気づいていた。

 だが榛名は言葉を発することなく、ただ寂しそうに首を横に振る。

 

「そっか。…榛名、辛かったらその分俺が聞くから。だから…あんま無理言うなよ?」

「いえ! 全然そういうことじゃなくて…でも、ありがとうございます」

 

 そう言う朗らかな彼女と、夢の中の「悲壮の覚悟の彼女」を対比する。

 彼女が何者なのか、それは未だにはっきりしない…だが。

 

「(…彼女には、ずっと笑顔でいてほしい)」

 

 そう考える自分に、何か彼女にできることはないか?そう思考するエースだったが…?

 

「おー、長戸愛理の新作だってよ!」

 

 テレビのワイドショーを眺めていたフォックスは、ある女性俳優の名前を叫ぶ。

 それは、切れのあるアクションが得意な人気俳優の、新作主演映画の告知だった。

 

『CB(クールビューティー)刑事の公開を記念して、初日舞台挨拶が行われました! …会場にはたくさんの来場者と、主演の長戸愛理さんが…』

 

 人気俳優の新作とあって、一目見ただけでも満員だということがわかった。

 場面が切り替わり、インタビュアーの質問に、主演が答えていた。

 

『未だ未熟の身ではありますが、皆さんの期待に応えられるよう、これからも努力します』

「けっ! 本当は物凄い嬉しいくせに、殊勝なコメントだこと」

「んだなぁ」

「お前らテレビに向かって何言ってんだ…」

 

 3人がそんな会話をしていると、不意に榛名が疑問を投げかけた。

 

「そういえば、皆さんは小学校からのお付き合いなんですか?」

「ああ、そうだよ」

「ガキの頃からってのも、中々あるもんじゃねえんだろうけどな?」

「んだ」

「そうなんですね…あの、なぜ、こーどねーむ?で呼び合っているんです?」

 

 名前で呼べばいいのでは?と当然のことを何となしに聞いてみた榛名。

 

「そりゃ…こいつに聞いてくれよ?言い出した本人なんだし?」

「え?」

「…え? そうだっけ?」

 

 子供時代に、お互いをコードネームで呼び合うように提案したのは、他ならぬエース本人である。

 その例に倣い、お互いにあだ名のような感覚で言い合ってるうち、自然とそうなってしまった…という。

 

「忘れてんじゃねえよw」

「す、すまん…っていいだろ! その方が仲良くなれるかなって?」

「なるほど…いいですね! 榛名、感心しました!」

「何なら榛名にも付けようか?」

「いいんですか? ではぜひ!」

「はーい! おっぱい魔人ってどうですかー!」

 

 その場にいた全員が、フォックス案のコードネームにスッこけた。本人は悪びれもせずプッシュする。

 

「イーじゃん! 初めて榛名ちゃんがここに運ばれたときに見たけど…結構でk(ボカッ)いってえ!」

「なに言おうとしてんじゃオノレはあ!!?」

 

 思わず突っ込みをいれるエース。榛名は少し恥ずかしかったのか、俯いた顔が赤かった。

 そんなやり取りを尻目に、ふとアトラスは少し考え込むと…何かを思い出して呟いた。

 

「あんれ? 確かいたんでねえか? その名前のヤツ」

「え? そうなんですか!?」

「あーそれ俺も思ったけど…お前女だったら構わずその名前付けるの?」

「あれ? そうだっけカ?」

「うおい! 忘れてやるなよ!!」

「いや冗談だよw…つっても、アイツの小学校転校以来、もう全然会ってねえけどな」

 

 フォックスは少し寂しそうに呟く…榛名はそれを見て少し驚いていた。

 

「フォックスさんも…そんな顔をなさるんですね?」

「いや榛名ちゃんひどいからw」

「お名前は何と言うのですか?」

「ん? 名前は──」

 

 その時──ピンポーンと、軽やかなチャイムの音が鳴り響いた。

 

「ん? はーい」

「お客さんですか?」

「ああ、昨日隣に引っ越してきたっつう奴だろ? ただの挨拶回りだ、エース君にお任せ〜」

「はいはい、全く…ちょっと待ってろよ」

「…良いのでしょうか?」

「いいのいーの! なぁ?」

「んだなぁ」

 

 3人がそんな話をする中、エースが応対に向かう。

 エースはドアに近づき、覗き穴から尋ね人を伺う。

 

「はーい、どちらさ…ま”!?」

『え、えと…隣に引っ越してきました「鳳」です…ご挨拶に伺いました。……? あ、あのぅ?』

 

 エースの目に映ったのは、青みがかった黒髪セミロングに、少し背の小さい可愛らしい女性だった。

 

 ──ガチャ

 

 尋ね人の姿を見た途端、返事もなく急にドアを開けるエース。鳳と名乗る女性は身体をビクッと震わせるが、すぐに目を見開き、吃驚する──

 

「え…エース君!?」

「龍美ちゃん!?」

 

 龍美と呼ばれた女性は、なんと今しがた噂をしていた「転校した友人」だったのだ。

 まさかの旧友との偶然の再会に、思わず驚嘆する二人だった…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「えっと…改めまして、「鳳龍美(おおとり たつみ)」と申します」

「榛名です。よろしくお願いします!」

「いやーこんな偶然ってホントにあるんだなぁ?」

「ああ、びっくりしたよ…龍美ちゃんの話をしようとしたら、だからさ?」

「そうなの? 私も…少し驚いちゃった」

 

 えへへ、と龍美は少し照れている様子だった。

 彼女は、エースたちの結成した「レンジャーズ」に所属していたが、程なくして家の事情により、学校を離れた。

 その時のコードネームが”おっぱい魔人”、由来はフォックス曰く。

 

「いや普通に? あの小学校時代に? 何てモンもってやがんだ! …と?」

「もう! そのニックネームはやめて! …未だに言われる時があるのに…」

「マジで!?」

「ぶはっwwやっぱ男は胸に目が行くんだよw」

「ん~…だ!」

「そこは否定しろよアトラス!? …っていうか龍美ちゃん、ニックネームじゃなくて、コードネームだからね?」

「エース君、相変わらず細かいよ…?」

「ん”な!?」

「あ”はは!! いいぞもっと言え!」

 

 四人は気楽に、そして思い思いに再会を喜び、十数年ぶりの会話を楽しんだ。そんな様子を、榛名は楽しそうに見ていた。

 …と、不意に龍美は榛名を見やると疑問を投げる。

 

「あの…榛名さんは、どうして此処に?」

「へっ? 私ですか?」

 

 唐突な質問に、どう答えていいか分からない榛名。エースは少し悩んだが、榛名の代わりに事情を説明する。

 

「って、いう訳なんだ…信じろって言う方が無理かもしれないが…」

「そう…やっぱり」

「え? やっぱり、ですか?」

 

 榛名の疑問に応え、龍美はエースという人物を語る。

 

「うん、エース君ってすぐに何でも手を出して、それをみんなで解決しようってね? …子供の頃はよく振り回されたなぁ」

「あー、あったな! お前正義の味方じゃねえんだからって思ったわw」

「んだんだ」

 

 レンジャーズの主な任務…もとい遊びは、様々な事柄に全力で挑もう、というもの。

 特にリーダーだったエースは、トラブルに巻き込まれやすい体質か、それとも自分から飛び込んでいたのか…。

 兎にも角にも、問題を持ち込んではメンバーに協力を仰ぐ、という事は毎日のようにあったのだという。

 そのためか周りからは問題児扱いされ、メンバー達も呆れる始末だった。

 

「いや流石に今回は不可抗力…って言うか子供の時の話だろ!? それに俺だけ悪いみたいに言ってるけど、お前らに言われたくないわ!!?」

「俺たちはスキにやってるだけだもーん」

「んだなぁ」

「…でも、なんだかエース君らしいというか…ふふっ、懐かしいね?」

 

 微笑みながら、龍美は納得した様子だったが…?

 

「そう、"夢の中"で…ね?」

「…龍美ちゃん、どうかした?」

 

 直ぐに不安の色を顔に浮かべる龍美。戸惑った様子だったが、意を決し切り出す。

 

「あ、あのね? …私も…”見た”んだ。」

「え? 見たって…まさか…!?」

「そう…不思議な夢…見ちゃったの」

 

 その言葉に一同は固まり、困惑する。

 

「ちょ、ちょっと…龍美ちゃん?」

「分かってる…変って言いたいんでしょ? 私も、自分でどうかしてるんじゃないかって…」

「そ、そうじゃなくて! …その夢はいつから?」

「え? …つい最近、えっと…大晦日ぐらいからかな?」

「!!」

 

 その事実に驚愕するエース、彼女はエースが夢を見た同じ日にそれを見たという。

 龍美にその夢の内容を聞き出すが…それは、エースの見たものとはまた違った内容だった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──海の上に立っていたの。

 

 ううん、移動していたんだと思う…波を掻き分ける音が聞こえたから…

 それで、空を見上げながら弓を構えていたの…おかしいでしょ?

 隣には、私と同じように上を睨んでいる人たちがいた…

 しばらくして、プロペラ機みたいなものが来て…そこからよく覚えてなくて

 

 雨みたいに降り注ぐ爆弾。

 

 そこら中に水柱がたって──

 

 私たちも、攻撃していたんだけど…それは届かなかったの。

 

 ぼろぼろになった私は、ついに、倒れて……ふっ、て周りを見たら。

 

 

 ──居なくなってた、誰も。

 

 

 私だけが…その場に立っていたの。

 

 …私は、その光景を──

 

 

 

 ──悲しい、って思ったの。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

「…龍美ちゃん?」

 

 ひとしきりに言い終えた龍美の頬に、一筋の涙が…悲しみを湛えるように、流れ落ちていった。

 

「…ごめんね? 分かってるんだけど、思い出すだけで、悔しいって…涙が…勝手に…っ!」

 

 龍美は涙を拭いながら、自らの異常を訴える。

 

「ねえ、エース君の夢と関係あるかな? それとも…私が……おかしいのかな…?」

 

 溢れ出る涙を抑えながら、龍美はエースたちに問いかけた。

 

 ──エースは、胸が苦しくなりながらも、ある「決心」を固める。

 

「…龍美ちゃん、ごめん。…辛いこと聞いたな?」

「…エース君?」

「俺が、必ず何とかするから」

 

 龍美を真っ直ぐに見つめるエース。その言葉にフォックスは、すぐさま反応し茶化した。

 

「おっ、ついにエース君が動くか〜?」

「話を”聞く”だけだよ。この国に何が起こってんのかは分からないけど、俺だって…このまま分かんねえままは、嫌だ」

 

 偶然が重なったとはいえ、この国の異常に気付き始めたエースたち。

 

 榛名、海の亡霊、そして謎の夢。

 

 エースは、これらのワードが何を意味するのか、それを知っている人物に「心当たり」があった。

 

「ちょっと席外すぜ、すぐ戻るから」

「エースさん、あの…話を聞く、とは…どちらに?」

 

 榛名の不安の色をした顔を見て、エースは「心配ない」と優しく笑い返した。

 

「久しぶりだから、話を聞いてくれるか怪しいけどな?」

 

 そう言うと徐に携帯電話を取り出し、どこかへと番号をかけるエースだった…。




〇愛ゆえに

龍美「フォックス君、相変わらず小っちゃいままだね?」
フォックス「うるせえ! お前に言われたくねぇよ!?」
龍美「ちゃんと牛乳飲まないとおっきくなれないって、昔から言ってるでしょ?」
フォックス「オカンかお前は! っていうか、お前も栄養偏ってるから身長そのままなんだよ」
龍美「え? どういう事?」
フォックス「…ジーッ(ある一点を見つめながら)」
龍美「…! (気づいた)」

「「・・・・・」」

龍美「むぅう~~~!! (両頬をつねる)」
フォックス「痛いいたいいひゃいイヒャイ!!?」

榛名「ああ! いいのでしょうか止めなくて? 痛そうです!」
エース「いや、あれは愛情表現の一種だろ?」
アトラス「んだなぁ」
榛名「そ、そうなんですか? …そうなんでしょうか?」

フォックス「ほまへら、ひてへえではふへろー!?(ギュー」 
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