艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

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 ○前回のあらすじ

 謎の艦娘三人組と相対する榛名たち。
 三人組は数で勝る榛名たちをものともせず、迅速かつ的確な戦闘行動により彼女たちを窮地に追いやる。
 しかし、榛名の捨て身の行動により一行はピンチを免れた。その時に現れた謎の男。
 彼は「リカルド」と名乗り、艦娘三人組を率いる傭兵だという。然る御方に雇われた彼らは、榛名たちの実力を図るために襲いかかってきたのだ。
 そんなリカルドから「お前たちに戦い方を教えてやる」と一方的な提案を持ち掛けられる、もちろん散々ひどい目に遭った榛名たちは容易に承諾できるわけはなかった…。
 しかしエースが機転を利かして、彼らをこちらから「雇い直す」ことによりこの場を治めてみせた。リカルドは彼の大胆な頭の回転の速さをいたく気に入り、彼の傘下に入ることを承った。

 謎多き傭兵リカルドは、彼らに「伝えなければならないことがある」と言い出す、それは「艦娘の法則性」にまつわる話だという…。


第二十話 願い

 榛名たちが謎の艦娘たちと交戦して早三日。

 エースは榛名、フォックス、アトラスの三人と共にいつものマンションに来ていた。勿論ただお茶を飲みに来ているわけでなく、揃ってこの場所に集まった理由は彼らの眼前に座る。

 

「Phew〜あちぃな…」

 

 夏の一幕。机越しの向こうには平和な日常に似つかわしくない、戦闘用青迷彩服を着こなす四人の人物、件の艦娘三人と彼女たちを率いる男。彼らはとある御方に雇われた傭兵団…「少数精鋭だが場数はこなしているぜ? そんじょそこらのヤツと一緒にすんなよ!」と一際大柄な男は豪快に笑う。

 

「…エース、お前」

「フォックス、皆まで言うな。あの場を治めるにはアイツらを取り込む必要があった」

「んだなぁ?」

「ケッ、まぁいいけどよ…」

 

 机に肘をつき、呆れた様子のフォックス。彼は今「TW機関」の足取りについて、更に追求していた。

 艦娘のメカニズム解明がどこまで進んでいたか、そして関四郎の思惑、それらを知ることで深海棲艦打倒のヒントを掴もうとしていた。だが…今まで公にすら姿を見せなかった機関は、未だ謎のヴェールに包まれている。

 アトラスはというと、艦娘たちの艤装製作に余念がない。艦砲、魚雷、艦載機…当時の軍艦の武装を(アレンジをふんだんに加えているが)再現していた。これは利子が自らを糧にした実験で「当時の装備に似せた艤装の方が威力が上がった…気がする!」と直感任せの発言で試行錯誤を繰り返した結果であった。

 現場を利子に任せて、アトラスもこの場に居合わせた。彼らがここに集ったのは、目の前の男…リカルドの申し出からだった。

 

「俺はアンタが信用できるヤツを呼んでくれ、と言ったが…嬢ちゃんは予想出来たが、まさかチビとゴリラが来るとは! Hahaha!」

「……てんめぇ」

「マジブッコロ」

「やめろやめろ!!? …リカルドもそういう喧嘩口調で煽るなよ」

「Ha! こりゃ失敬、俺はちと育ちが悪いもので?」

「育ち…?」

「…あ? おい、何でこっち見てんだ?! 悪かったな育ちが悪くて! チビで!!」

「誰もそこまで言ってないだろ? (ま、育ちが悪いとは思ってたけど?)」

 

 フォックスとリカルドは、案外仲良くなれるような気がする、そう思ったエース。談笑するエースたちを余所に、不意にリカルドが切り出す。

 

「さて…早速で悪いが、お前さんたちに伝えなきゃいけないことがある」

「っ! ……」

 

 リカルドの言葉に、エースたちも黙って聞く姿勢を取る。

 

「カンムスの法則性…お前さんらはどう捉えてる?」

 

 エースたちは、自分たちが発見した艦娘の法則を伝えた…「艦娘はあの戦いで生き残ったモノ」が人に転生した姿…と。

 リカルドはその考えを聴くと、深く頷き一言。

 

「そいつは半分正解で半分ハズレだな?」

 

 リカルドの言葉に、エースたちは驚きを隠せない、唖然とした表情のままエースは問い詰める。

 

「どういうことだリカルド? アンタは艦娘について何か知っているのか?」

「…そいつを語るにゃ色々厄介ごとを話さなきゃならん。ま、それは時期が来たらだな? 今は…変人が何か言ってるっつうことで良い、信じるも信じねぇもお前さんたち次第だ」

 

 リカルドの言葉に半信半疑なエースたちだった、エースはまずフォックスに「リカルドについて何か知らないか」と耳打ちする。

 

「…悪りぃ、お前から連絡きた辺りから調べてみたんだが…コイツが何者かは俺にも分からねぇ」

「っ! フォックスにも分からないのか!?」

「海外の紛争地域の戦いや裏社会の始末屋稼業を生業としているヤツらに、それっぽいのは居たが…コイツらの素性は一切謎だ」

 

 元警視庁の高木も一目置くフォックスの情報収集能力を以ってしても、リカルドたちが何者か、誰に雇われたかも分からずじまいだった、本人に聞いても「そいつは守秘義務ってヤツだから言えねぇな?」と突き返された。…分かりきっていることは「彼らが味方である」という事実だけ。

 

「…どうする? お前さんらが俺を信用出来んというなら、この話は無かったことにしてもいいんだぜ?」

 

 リカルドは真剣な表情でエースたちに問いかける。…エースの答えは?

 

「…分かった、話してくれ。俺たちはアンタを信じる」

 

 その言葉に口角をニヤと上げるリカルド、彼はエースに自分が知る限りの真実を話す。

 

「…カンムスはあの戦いで生き残ったヤツらが「生まれ変わった」…成る程な? じゃあそいつらにとって「死」ってのは何だ?」

 

 腕を組んでまるで何かの禅問答を問うリカルド。

 

「…? そんなの「海に沈んだ」ってことだろ?」

「そうさな? あの戦い…"1945"の戦いで沈んでいったヤツらも多く居た、だがな…呪いはその「時点」で掛けられていたのさ」

「…1945?」

 

 もしかしなくても年号のことだろうが、あの戦いは数年にも渡り戦火を拡げていた、ただの一年で収まるものではないはず…エースたちはその表し方に不可解な疑問を抱いた。

 …しかしその疑問自体は、リカルドの次の言葉で氷解した。

 

「ここに居るCatsは、旧日本海軍の軍艦だった…俺の隣にいるコイツは「矢矧」と言われていた」

「…!!?」

 

 何と。リカルドは隣の…艦娘三人組のリーダーを「矢矧」と呼んだ。矢矧は菊月と違い、1945の「最後の戦い」で確実に海の底に沈んだはず…?

 

「ちょ、ちょっと待て! …じゃあその娘たちは?」

「銀髪が「浜風」長い黒髪は「磯風」だな?」

 

 リカルドの言葉に、謎の艦娘たちはそれぞれ頷いた。浜風も磯風も矢矧と共に最後の戦いで沈んだはずだ。

 

「な、なんでその娘たちが…だって」

 

 エースは驚き狼狽した。

 そう、彼女たちの存在そのものが、エースたちが結論づけた「生き残った艦こそが艦娘」という図式を見事に否定するものであった。

 リカルドは力強く宣言するように、答えを叩きつけた。

 

「俺の見解としては…カンムスは1945の間に在った艦艇が人間に成り代わった姿、その間に「生きた」も「死んだ」もねえ。言い換えりゃ1945の時点で「海の上に在った」全ての艦がカンムスなのさ!」

「なっ…!?」

「(…尤も、その法則は「日本艦艇」に限るみてぇだが? おっと、コレは今のコイツらにゃ早いか?)」

 

 エースたちは衝撃的なその内容に、ただただ驚くしかなかった。

 とどのつまり「1945年1月」の時点で存在した艦こそが「艦娘」…それは例え「人造化身」であろうとも変わらず、実艦も行動不能だったとしても「海の上にその身があれば」関係ない話のようだ。

 

「じゃあ、菊月ちゃんが艦娘になったのは…!?」

「そうさな、「駆逐艦菊月」は沈みはしたが、その後は海岸に沈座していたと聞く。船たちにとって生死の境ってのは曖昧なもんだ。キクヅキの嬢ちゃんも、その法則に則って転生したんだろうぜ?」

「あ、頭痛くなって来たぜ…」

「んだ……」

「榛名も、何がなんだか理解出来ません…」

「うぅ…"1945"に何の意味が……?」

 

 頭を抱えて悩むエースたちに、リカルドが更に捕捉する…それは事実を「突きつける」と言った方が正しいか?

 

「驚きも解るが、コイツらがこの場にいるのは偶然じゃない。七十年前の記憶…「1945の記録」が重要なのさ? 深海棲艦とカンムスが同時に現れたのには意味がある。コイツは「罰」だ、未だに国家だ紛争だ、誰が憎いだ悪いだ宣(のたま)っている俺たち「人類」のな?」

「それは…」

「──運命」

 

 ふと呟いたのは矢矧だった。キッと眉を吊り上げ一点を見つめる眼差しで、凛として言葉を紡いでいく。

 

「貴方たちに分かりやすい言葉で言い表すなら…これは「運命」よ? 戦う運命にある私たちが、形を変えて現代に蘇っただけ。…罰とは「あの戦い」の再現、深海棲艦はさしずめ「日本から見た連合国」……といったところかしら?」

「…Hey, ヤハギ」

「分かっています、隊長。とにかく私たちは深海棲艦を倒すために生まれた、貴方たちもそれぐらいは理解してるでしょ?」

 

 矢矧の言葉に、エースたちも頭を整理して冷静に考える。要は"七十年前"が重要なのだ。この現代に蘇ったのは「1945に在った艦娘」それを自分たちが勝手に縮小解釈していただけ。

 

「…でもどうして1945なんだ? それが本当なら、それ以前に沈んだ艦娘たちだって居ていいはずなのに…?」

「Hm? これは飽くまで俺の推測だが」

 

 リカルドは静かな口調で自身の考えを述べる。

 

「1945という括りは「願い」だった、そう考えるのが妥当だろう。あの当時の…激動の時代を生き抜いた人間たちの「この凄惨な戦いはこの時を以て終わりたい、終わってほしい」…そんな純粋な願いだったんだろう」

「それがいつしか「呪い」に…春野首相の言ってた通りってわけか」

「ま! まだ何とも言えんがな? …さっきヤハギが「あの戦い」の再現と言ったが、俺としてはニュアンスが違うと思っている」

「ニュアンス?」

「ああ、あの戦いの「先」…七十年経った今「1945からの続き」を、奴らはおっぱじめようとしてるのさ?」

「っ! …そうか、だから「1945」…あの当時に在った艦娘たちなんだ!」

 

 エースたちは憶測を多分に含むにせよ、矢矧たちがこの場にいる意味を見出した。しかしもしもこれが本当なら…深海棲艦という脅威によって、世界にはあの当時とは「比べ物にならない」大災害が降りかかることになる…そうなる前に。

 

「止めないと…俺たちが!」

 

 エースが使命感に意気込んでいると、リカルドが優しく手綱を引っ張る。

 

「Be cool …まだ話は終わってないぜ?」

「え?」

「確かに奴らは強大だ、だが…奴らはまだ「本調子じゃねぇ」と思う」

「っ! どういうことだ?」

「言葉通りだ。俺は世界中の国の海を見て回ってきたが…ここ十年で奴らの本格的な動きがあったのは「アジア諸国」だけだった、欧米諸国にはその余波はあるにせよ深海の奴らの目撃例は”極端に少ない”」

「…それは「戦争を続けている国」を優先的に狙ってるからだろ?」

「そうさな? 奴らは今まで「様子見」していた、この世界において「真に斃すべき敵」ってヤツを見定めてたのさ。お前さんらは一ヶ月前、あの亡霊と交戦し、そして勝ったと聞いた。その戦いでお前さんらの力を再認識したはず、であるなら…矛先は自然と「お前さんら」に向かうだろう」

「…っ!」

 

 リカルドの言葉に息を呑むエースたち。

 

「確かなことは、次に狙われるのはこの「日本国」だということ。お前さんらカンムスの存在を認知した今、奴らはもう間もなく日本、並びに世界に牙を剥くだろう」

「そんな…っ!」

「まぁ待て。奴らの今までの傾向から察するに、それでも本格的な侵攻はまだ先の話だろう、その間は力を見極めるために、この国に最低限の部隊を寄越すにとどまるはずだ」

「っ、そうか…良かった」

「安心させて悪いが、それでも時間は無い方だろうぜ? …猶予は最低でも「数か月」か? その間に俺たちは「軍備」を整えるという寸法よ!」

「数が月!? でも軍備なんてどうやって」

 

 エースが数か月という間近に迫ったカウントダウンに尻込みすると、鼓舞するようにリカルドは勢いよく立ち上がる。

 

「お前さんらはそれぞれ残りのカンムスの捜索に当たってほしい、その間に俺はカンムスの「強化訓練」を施させてもらう!」

「えぇ!? 残りの艦娘を…そんなに上手くいくかな?」

「大丈夫だ! こういう時こそ楽観的に笑って進むのさ! お前さんらなら出来る! 国を救ったんだろう? 少しは根性見せろ! ウハハハハハ!!!」

 

 リカルドが豪快に笑って見せる、エースたちはその姿に深く勇気づけられる。

 

「…ああ解った! こうなりゃ行けるとこまでいってやる!!」

「ケッ! 仕方ねぇ…俺のキャラじゃねぇが本気出して色々調べてみるか、何も知らねぇままは、情報通としてプライド傷つくからよ!」

「んだなあ!!」

「榛名も、全力で参ります!!」

 

 四人はそれぞれのやるべきことを思い描きながら決起する、それを見たリカルドは嬉しそうに笑う。

 

「その意気だぜ! よっしゃ! 作戦行動開始だ!」

 

「おーーーーっ!!」

 

 エースたちが勝鬨を上げるように一丸となると、矢矧は「私には関係ない」と言わんばかりに立ち上がる。

 

「…隊長、我々は彼女たちの代わりに哨戒任務に就きます。その方が効率がいいでしょう?」

「おお! 任せたぜヤハギ!」

「…失礼します」

 

 矢矧が早々にその場を立ち去ろうとすると、エースが引き留める。

 

「ま、待って! …協力ありがとう、これからも」

「勘違いしないで」

 

 矢矧はエースの方を振り返る、その顔に「不信」を募らせながら。

 

「私は任務だから共に行動しているだけ、貴方たちの仲間になったつもりはないわ」

「そ、そんな…」

「仲間意識? 国を守る? まるで子供の御伽噺ね? 反吐が出るわ。…そんなものじゃないの、あの「戦い」は…」

 

 矢継ぎ早に憎しみを吐露し、最後に何かを呟くとそのまま矢矧は足早に去っていった。

 

「………うぅ」

「Haha! 気にすんな、ヤハギはカタブツだからな? お前さんらと力を合わせにゃならんことは、アイツもよく分かってるだろうさ」

「…だと、いいけど」

 

 心に引っ掛かる矢矧の言葉、そしてそこから生じる不安。そんなエースの横を磯風は「無言で」通り過ぎ、矢矧と共にその場を後にした。

 

「ううぅ…」

「エースさん…」

 

 リカルドの連れてきた艦娘たちとの「距離感」に悩まされるエースたち──だったが?

 

「………(くいくい)」

「…ん?」

 

 エースの袖縁を掴むのは、最後に残った銀髪少女改め浜風。

 

「…あの、日本の文化を…教えて欲しいのですが?」

「…は?」

 

 突然の申し出にエースの理解が追いつかないでいると、リカルドが加わり説明する。

 

「ハマーは日本に一種の憧れがあるんだ。特に日本のゲームやアニメ、マンガ! Cool Japan に興味津々なのさ!」

 

 リカルドの言葉に、前のめりの姿勢になりつつ頷く浜風、少し興奮気味なその目は何故か「しいたけ」のように輝いていた。

 

「え? …ジョ○ョとか?」

「ッ!」

 

 ──ビッシャアッ! ドドド…ッ!

 

 浜風はその名前が出た瞬間、独特のポージングをビシッと決める。何故か彼女の周りに「特徴的な擬音」が浮かんでいるような気がした。

 

「…うわぁお」

 

 まさかの展開に、エース以外誰も言葉が出なかった…。

 

「…やれやれだぜ!」ずぎゃーん

 




○予知夢

潮音「いよいよ夏休み、だね? 初花ちゃん!」
初花「あ、うん。そうだね…?」
潮音「私、夏は毎年家族と田舎のおばあちゃんの家に帰るんだけど…今年は大丈夫かなぁ? さっきエースさんから「夏は予定開けてくれ」って連絡来て」
初花「……………」
潮音「きっと艦娘としてのお仕事だよね? でもその分皆と一緒なんだよね? えへへ…ちょっとだけ楽しみ♪」
初花「……………」
潮音「せっかくだから、艦娘の皆と海に遊びに行きたいな…あ、海は毎日行ってるか、あはは………? 初花ちゃん?」
初花「……はっ、な、何潮音ちゃん?」
潮音「初花ちゃん、さっきからずっとボーっとしてるけど…大丈夫?」
初花「うん…最近おんなじ夢を見て」
潮音「初霜の?」
初花「そう、仲間と一緒に最後の戦いに赴くの。それを毎日のように繰り返し見て…ちょっと疲れちゃったみたい?」
潮音「そうなんだ……よしよし(ナデナデ)」
初花「ありがとう潮音ちゃん。…雪風も見えたから、雪ちゃんも同じ夢を見てるかも?」
潮音「…それって予知夢みたいなものじゃないかな? もうすぐその仲間たちに会えるのかも?」
初花「それはどうなんだろう? …でも、そうであってほしいって思ってる自分がいる」
潮音「…うん、じゃあ今度の夏休みは、初花ちゃんの…初霜ちゃんの仲間を探そう!」
初花「潮音ちゃん…」
潮音「雪ちゃんと一緒にね! 絶対見つかるよ! だから…元気出して!」
初花「……う……っあ、あ"りがどゔ……潮"音"ぢゃ"ん"!!」
潮音「っ!? い、初花ちゃん落ち着いて…あぁ鼻水拭かないと」
初花「ゔぅ……ひっぐ」

 ※大粒の涙と滝の如く鼻水を垂れ流す初花、彼女の悲願達成は遠い未来ではない…。
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