艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

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 ○前回のあらすじ

 エースたちの元に、かつての旧友「鳳龍美」が訪れる。
 彼女は、最近見始めたという悪夢に苛まれていた。
 …それは、榛名やエースが見た夢と同じ「戦いの夢」だった。
 龍美の流した涙に、居ても立ってもいられなくなったエースはある人物に電話する。

 それは──


第三話 追求

 硝煙の漂う廃墟群に、乾いた銃声が響き、爆音は虚しさを表すように辺りに木霊する。

 時折、戦闘機らしき飛行物体が接近し、取り付けられた得物で、確実に敵(ターゲット)を仕留めていく。

 

 ──ここは世の地獄、その具現を果たした”一つの終わり”。

 

 生も死も、混沌も闘争も、全てが無秩序のこの果てに、一人の男は──

 

「がっはっは! 敵さんも中々やるようじゃのう!」

 

 そう豪快に笑いながら、男は物陰から、敵のいる方向に手榴弾を投げた。

 爆風と悲鳴、壊音を確認し、男の強面の口元が強く歪んだ。

 

「たーまやー! がっはっは! ざまあみろ!!」

 

 隣にいる男から外国語で『静かにしろ! 場所がバレるぞ!!』と注意される…が彼は不敵に笑いながら『はいはい』と言わんばかりに手を仰ぐだけだった。

 

「わーっとるわ! …さてお次じゃ、ん?」

 

 ふと、ズボンのポケットから振動を感じる。

 素早く確認してみると電話が掛かっている、そこには男にとって懐かしい名前が表示されていた。

 

「っ! …おい! ちょっとタイム」

『はあ!? …おいどこに行く!!?』

「すぐに戻る!」

 

 男はそれだけ言うと、戦場の光景を後にした。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 トゥルルル…

 

 トゥルルル…

 

 ──ピッ

 

「っ! 繋がった!? もしもし?」

『おう進一か! 久しぶりじゃのう? 実家に帰ってから五年ぶりか! がっはっは!』

 

 電話に出るや否や、捲し立てるように話しかける、エースを本名で呼ぶ男。

 エースにとって彼は苦手な存在であり、要件を話してさっさと電話を切りたい相手だった。

 

「…相変わらずだな、親父? 戦場を転々としてるって聞いたけど?」

『おうよ! ”老兵は死なず”というやつよ! 今も敵さんにかましてやった所よ!』

「……はぁ」

 

 がははと笑う快男児に、エースは頭痛の感覚を覚える。

 

 元海上自衛隊一等海佐…それが、エースが父親と呼ぶ男の肩書だった。

 しかし上位の立場であるにも関わらず、常に戦場の矢面に立ち、ひどい時にはマシンガンを片手に、領空に侵入した他国の戦闘機を相手取っていた。

 その型破りな血気盛んぶりは健在であり、現在は自国を離れ、各紛争地域で傭兵まがいの仕事に明け暮れていた。

 

『しかし珍しいのぉ? お前が自分からワシに電話してくるとは…?』

「ああ、アンタに聞きたいことがあってな」

『ほーお? 良しいいぞ! どんと来い!』

 

 父は胸を貸す思いで、電話の向こう側で力強く頷き、息子の相談に応じる。

 

「話が早くて助かるぜ。…実は」

 

 早速エースはこれまでの経緯を、包み隠さず父に打ち明ける。

 

 ──さて、なぜエースは自分の父親が今ある事柄の全てを解決できると思ったのか?

 

 それは父が様々な事情を知っていると”確信しているから”。

 エースは、度々帰省してくる父に対し、子供ながらに色々質問していた。…そのどれもが全て答えとして返っている。要するに知らないことは無いと思っている。事実それは情報通でなく、博識のそれに近かった。

 裏の裏まで知っていると言える。特に出自からか軍や政府関係の知識、並び裏話まで知り尽くしていると言えよう。

 

 エースが一通り話し終えると、電話から短くため息が聞こえた。

 

『ふーむ…進一、その話は本当なのだな?』

「…ああ」

『そうか…だが進一よ、世の中には知らないでいた方が良いこともあろう?』

「やっぱそうくるか…」

 

 当たり前だが父は、こと軍関係の情報はあまり喋りたがらない。

 そういうブレーキをなぜ普段からできないのか…とエースは内心思うが、ここで引き下がるわけにはいかない。

 何しろ仲間が被害にあっているのだから…せめて糸口だけでもと、父に懇願する。

 

「勝手なことは解ってるけどよ…それでも頼れるのはアンタしかいないんだ!」

『進一…これは子供の遊びではない』

 

 エースの意志を遮るように、父は普段のトーンより低く落ち着いた、それでいて厳しい声色で息子を諭す。

 

『この事を知れば、お前はもう日常には戻れなくなる…最悪ワシのように戦い漬けの毎日になる、”これ”はそういう事なのだ』

「…やっぱ、心当たりがあるんだな?」

『何故お前がそれを知りたいのかは聞かんが、何の覚悟もなく興味本位で聞くだけなら止めておけ。…何も知らないのは恥ずべきことではない、お前には…母さんと一緒に平和に暮らしてほしいんじゃよ』

 

 父の言葉少なの愛、エースはそれを感じ取れる程には、父と親交はあるつもりだ。父がそう言うのなら、この先は本当に危険なのだろう。

 

──だが。

 

「…そうだな、アンタはそういう人だ。でも、俺も腐ってもアンタの息子だ」

 

 あの夢を見たあの日、榛名と初めて出会ったあの時から、相応の覚悟をしたつもりだったエース。

 戦場を駆け回る父とは違い、ぬるま湯の平和の中に居るエースだが…それでも、彼にも譲れないものがある。

 

『進一…』

「なあ親父…俺、さっき話した榛名の夢を見たんだ」

『夢じゃと?』

「あぁ、彼女が戦っている夢さ…祈りながら激しい戦いに身を投げて、それでも自分の願いは決して叶わない悪夢だ。…そしたら、彼女も同じ夢を見ててさ」

 

 エースは夢の内容を語りながら、電話の持ち手ではないもう片方の握り拳に力が入る。

 

「意味分かんねえよな…でもそれ以上に分からないのは…彼女があの悪夢を”嬉しい”って言ったことだ」

『………』

「俺は、彼女を助けた以上、彼女には幸せになってほしいって…心からそう思うんだ。…だから」

 

 ──その目に輝きを宿し、エースは力強く言い放った。

 

「俺は、彼女を助けたい! …彼女をあの悪夢から救いたい!!」

『それが自らを、戦いの日々に導くものだとしても?』

「ああ、俺がそう決めたんだから悔いはない…まあ戦いはごめんだけどな?」

『…そうか』

 

 エースの覚悟を聞き届けた父は、ニヤリと笑いながら皮肉を零す。

 

『ハッ! あのちんまかった小僧が、いつからそんな恥ずかしい台詞を長々と言えるようになった?』

「うるせえ、アンタにだけは言われたくない、クソ親父」

『ぬかせえ! バカ息子!! がっはっは!』

 

 お互いを認め、罵倒し合う二人。

 父は息子の成長を受け入れ、自分の知る限りを教える。

 

『…とはいえ、遅かれ早かれ、彼女を傍に置くなら、自ずと向こうからやって来よう』

「正直どうなんだ、榛名の事…何か分かるか?」

『嘘をついてる、と思われるだろうが…生憎知らん!』

「おい!」

 

 今までの問答は何だったのか、と思わずツッコミたくなるエースだったが、父は話を続ける。

 

『だが、榛名という娘っ子を追いかけ回していたという連中…そっちは心当たりがある』

「っ!」

『だが如何せん、なぜ奴らが…まさかあの噂は…?』

 

 父は何事かを反芻しているのか、ぶつぶつと電話越しに呟き始めた。流石に埒が開かなくなるので、話を進めるよう乱暴に促した。

 

「おい親父! 独り言ちになってんなよ!」

『やかましいわ! …しかし進一よ、お前さんが見たという夢…』

「ん? 何だよ??」

『…そこに答えがあるのではないか? 榛名の正体…お前さんの友人も見たという夢の意味が』

「え…?」

 

 言われて、それまでの夢の内容を整理し始めるエース。

 

 特徴的なのは、二つの夢の全てが「海の上」での出来事。

 

 戦闘機らしきものから爆弾が投下されたこと。

 

 ──これはまるで。

 

『…進一よ、今から70年前…その日何が起こっていたか、分かるか?』

「な、なんだよ藪から棒に…?」

 

 父は突然、エースに対し新たな問答を投げた。

 現在…西暦2015年より七十年前…即ち西暦1945年。

 この一年は、太平洋戦争末期、広島と長崎に「原子爆弾」が落とされ、多くの罪なき人々が亡くなった…そして。

 

「戦争が終わったってことか?」

『そうじゃ、そして”榛名”という名前…これだけ言えば、もう分かるじゃろ?』

「……っ!」

 

 その言葉で、エースの疑問は確信に至った。

 それは、太平洋戦争において、最も活躍したとされる「戦艦」──

 点と点が線で繋がった…俄かには信じられないことだが、そうとしか思えなかった。

 

「そうか…じゃあ、榛名の見ていた夢は…!」

『ようやっと理解したようじゃな?』

「あぁ、ありがとう親父。…やっぱアンタには、なんだかんだ迷惑かけてるな、ごめん」

『がっはっは! バカタレっ、ワシらは腐っても親子なんじゃ。どんなにデカくなろうともお前はワシの息子に変わらん、家族なら当然のことよ』

「あはは…本当にありがとな、親父?」

『うむ。…時に進一よ! 長いこと話をしていたら、久しぶりにお前の顔が見たくなってきたのぉ!』

 

 話を一区切りにした直後、父は息子に会いたいと急に申し出た。あまりにも唐突なので、エースはその意図が掴めないでいた。

 

「は? …何言ってんだ?」

『ここで話しても何ともならん、ということじゃ…ワシが帰るまで、この話はここでお預けじゃ』

「は!? いやちょっと、まだ聞きたいことがry」

『じゃあのぉ進一! 母さんにもしばらくしたら帰ると伝えてくれぃ!!』

 

 ──プツッ― ツーツーツー

 

「おい! まだ話は…ッ! 切りやがった…」

 

 またしても唐突に切られた電話、まるで嵐か津波のような目まぐるしさだ。

 しかし、どうせ掛けなおしても出ないだろう、とエースは思い至りこれ以上追求するのはやめた。

 それでも収穫はあった…榛名と龍美が見た夢…その意味が解った気がした。

 

「(まだ分からねえ事だらけだがな…)」

 

 この国で、確実に何かが起ころうとしている。

 そしてその鍵は、恐らく榛名とその夢だ──

 

「まさかフォックスの言ってたことが、現実になるなんてなぁ…」

 

 他愛のない会話をしていた数日前、こんなことになろうとは誰が予測出来たか? エースは誰も居ない空間で皮肉笑いを浮かべる。

 それでも選んだのは自分だ。そう言い聞かせて次の行動を思考する。

 

「(榛名のために…今の俺に出来ることは──)」

 

 彼女の記憶…人としての記憶を思い出させる。

 彼女は”兵器”ではなく、一人の少女だと思えるように──

 榛名の記憶を元に戻すためには、自分を含めた複数の人が見た「夢」について、もう少し調べる必要がある。そう感じるエース。

 

「(夢か…龍美ちゃんも、どうにかしなくちゃな…)」

 

 龍美がなぜ榛名と似たような夢を見たのか、それはまだなんとも言えない。だが…エースは「ある考え」に辿り着き、そしてそれは彼を「ある行動」に駆り立てた。

 

「よぉ、話出来たか?」

 

 様子を窺いに来たフォックスに、エースは…。

 

「あぁフォックス。頼みたいことがあるんだけど…」

「あん…?」

 

 自らの「考え」を実行に移すため、何事かを依頼するのだった──

 

 




〇運命の出会い?

龍美「榛名さんは、エースさんに助けられたんですよね?」
榛名「はい、ですが…その時の事、全然覚えてなくて…」
龍美「そう…でも良いなぁ、まるで運命の出会いみたいで!」
榛名「うーん…実感がないから、なんとも?」
龍美「うんうん、まるで眠り姫と白馬の王子様だよね!? 女の子の憧れだよぉ(ほれぼれ」
榛名「え? た、龍美さん…?」
龍美「大丈夫かい?お嬢さん(キリッ)なぁ~んて!なぁ~んて!!」
榛名「…;」
龍美「そこから二人の、甘く切ないラブストーリーがぁ〜(キラキラ)」
フォックス「…とりあえず夢見すぎじゃね?」
アトラス「少女漫画の読みすぎだぁ」
榛名「あはは…」
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