艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

30 / 39
 ── 注意!

 ※こちらは第二十九話の”後編”となります、前編をご覧になられていない方は「2-1」を先にご覧ください。



第二十七話 世界 2-2

 エースたちが謎の外国人リオーネと出会っている頃…。

 

 長戸と酒匂は、ショッピングに出かけるために近くのショッピングセンターを目指していた。

 

「ぴゃ、ぴゃ、ぴゃ〜♪ ぴゃぴゃっぴゃ、ぴゃ〜〜♪」

「酒匂ちゃん、それなんの歌?」

「ふふん、酒匂せーさくの「ごきげんの歌」だよ! 長戸ちゃんとのお出かけが楽しいから、つい口ずさんじゃうんだ〜♪」

「そうなんだ…ちょっと嬉しい♪」

「ぴゃ! 長戸ちゃんも歌ってみたら? たのしーよ!」

「え? い、いいよ私は…恥ずかしいし」

「エンリョしないで、ほら! ぴゃ、ぴゃ、ぴゃ〜〜〜♪」

「うぅ………ん?」

 

 長戸が酒匂に振り回されていると、不意に長戸は、道端で通行人に声をかける女性を見つける。

 女性は金髪碧眼、耳の下辺りで髪を左右ともおさげで纏める。薄手のジャケットに無地の白シャツ、青色のジーンズと、少しラフな装い。それでいて目鼻立ちは、モデル顔負けの可愛らしさだった。

 

「Hallo, ich habe ein paar Fragen, aber gibt es hier einen Ort, um eine gute Zeit zu verbringen?」

「えっ!? いや…あの…ごめんなさい!」

 

 なにかを尋ねていたようだが、外国語を話せないのか聞かれた人は逃げ出してしまった。

 

「ぴゅ〜、なーんか可愛そう…」

「………」

 

 長戸はなにかを思案しながら、徐にその女性に近づく。

 

「Hahhh…」

「Bist du in Ordnung?」

「!」

 

 長戸はその女性の母国語で話し始めた(どうやらドイツ語のようだ)。女性は驚きながらも満面の笑みを浮かべながら長戸に振り向く。

 

「Sind Sie Japaner? Sprechen Sie Deutschland!」

「Ja, ich kann ein bisschen sprechen. Haben Sie Probleme?」

 

 長戸は女性に対して、相談事があるなら力になると言った。

 話を聞くと、女性はある目的でこの日本を訪れたが、仲間とはぐれてしまい、とりあえずレジャー施設や人の集まる場所に行けば見つかるかも? と言っている。

 

 ※ここから日本語表記となりますが、()会話はドイツ語で話している"程"でお願いします。

 

「(それなら私たちと一緒に来ませんか? そういうことを手伝ってくれる人たちを知っているので)」

「(えっ!? でも…迷惑じゃないかな? …まだ遊び足りないし)」

「…?」

「(ううん! …そうだね、貴女優しそうだし、貴女といたら楽しそう!)」

「(あはは…それじゃ)…ごめん酒匂ちゃん、この人放っとけないから、一回エースさんのところに相談しに行ってくる」

「ぴゃー! 酒匂も気になるからいくー!」

「そう? …ごめんね? 誘ってくれたのに」

「ダイジョビダイジョビ〜♪ …ねぇ、その人の名前って?」

「っあ、そっか。(すみません、お名前を伺っても?)」

「(私? 私は「ペトラ・アイクラー」! よろしくね♪)」

「…ペトラさんだって」

「ぴゃ〜! よろしくねペトラちゃん!」

「さ、酒匂ちゃん…初対面の人なんだから…」

「(よろしく〜!)ぴゃ〜〜☆」

「えぇ…;」

 

 こうして、意外とノリの良い外国人女性「ペトラ」を引き連れ、二人はエースの下へ向かう…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 そのころ、いつものマンションでは…?

 

 いつものようにテーブルを挟んで、フォックスたちから事情を聴いているエース。

 

「とりあえず紹介しとくぜ。コイツは「リオーネ」俺たちの協力者だ」

「お前が知ってるってことは…政府絡みっことか?」

「そ。知っての通り海外の艦娘…らしい、まぁ先ずはコイツの話を聞いてやれ?」

 

 そう言いながら、リオーネの方を見やるフォックス。

 

「っ! …急に押しかけてしまって、まことに申し訳ございません。改めまして…私はリオーネと申す者です」

 

 その意図に気づいた様子で、少しぎこちない日本語でリオーネは、エースたちに自己紹介をする。

 

「こちらこそすみませんでした。ドタバタしてしまって…」

「…"ドタバタ"?」

「えっ? あぁ。ドタバタっていうのは…忙しないというか?」

「"お世話をしない"のですか?」

「うぇ!? えっと…参ったなぁ」

 

 まさかのリアクションに頭を抱えるエース。他国語という厚い壁に、エースたちはコミュニケーションを取るだけでも四苦八苦していた。

 

「ふふん、お困りのようじゃな? これを耳に着けてみぃ!」

 

 と、ここで利子が謎の機械を取り出した。

 どうやら補聴器型の補助装置らしい、言われるままリオーネが片耳に装着する。

 

 ──ピピッ

 

「ほれエース、何か言うてみぃ?」

「えっ? じゃあ…さっきは本当にすみません、"ゴタゴタ"に巻き込んでしまって…?」

「(ピピッ)いえ、私の方こそ気づかなくて…ん?」

「よし、ではリオーネとやら、今度はお主の話しやすい喋り方でやってみぃ」

「は、はい…。私も今日という日を楽しみにして、つい勢いが…あら?」

「ん? どうしました?」

「いえ、私いま母国の言葉で喋ってるはずですのに…何故か、日本語に変換されていて」

「さっきのゴタゴタの意味も理解出来てたみてぇだな?」

「…利子ちゃん?」

「うむ! 吾輩特製の「カンタンほんや君」じゃ! 片耳のセンサーが外国語を瞬時に翻訳し、日本語として会話することができるのじゃ」

「す、すげぇ…原理は分からねぇけど、流石天才エンジニア」

「ふふん、時代の一歩先を行く、それが吾輩クオリティ!」

 

 なんとも不可思議なことだが、ともあれこれで煩わしい壁は取り払われた。

 

「えっと…リオーネさん?」

「はい、お会いできて光栄です、提督」

「うん、問題ないみたい。…で、さっき玄関で言ってたことって?」

 

 エースは早速本題に切り込む。彼女…リオーネは自身を「イタリア戦艦のリットリオ」だと言った。

 

「はい。私はリットリオ…かつてのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦、二番艦だったんです」

「…皆、どう思う?」

「うーん、いきなりそう言われても…」

 

 龍美はそう言いながら訝しむが、隣の榛名は少し合点のいった様子だった。

 

「榛名はその人の言うことは、真実だと思います。でも…」

「うん、そうなると…艦娘は日本艦”だけじゃない”…っていうことになるな」

 

 エースの口にした疑問に、リオーネは肯定の意を込めて頷く。

 

「貴方のおっしゃる通り。少しずつではありますが、あの時代に存在した艦艇の生まれ変わりが、目覚めようとしています。それは日本国に限った話ではありません」

「え!? じゃ、じゃあ…アメリカやドイツの艦娘も居る…ってこと!!?」

 

 驚愕の様相で正解を口にする龍美。またも頷くリオーネ。

 

「はい。しかし何故か日本国以外の艦娘は、現在確認されているだけでも少数しかいません。私の母国イタリアを含めて。ですが幸いにも、欧州諸国には深海棲艦は未だ確認されていません」

「そっか…よかった」

「おいおい浮かれんなよ? いずれ世界中に現れるのが確定してんだぞ、確実に欧州にも出てくるっつーことだろうがよ」

「あ、そっか…」

「うふふ。でも、そうですね? 私たちとしてもそんな危険な存在を、指をくわえて見ている、なんて出来ませんから」

「そこで日本政府は一部の欧州国に招集をかけて、現在確認されている自国の艦娘を日本に寄越し、艦娘としての戦い方を共に学び、ゆくゆくは連携強化を目指し、最終的にやつらを倒すため協力し合おう! …ということじゃ」

 

 利子の説明に、一応の合点はいったエースたち。龍美はすかさすリオーネに質問をする。

 

「ねぇねぇ、それじゃ海外の…日本以外の艦娘ってどんな人がいるのか分かる?」

「え? そうですねぇ? …会ったことはありませんが、各国に2~3人居ると聞いたことが」

「まだそれだけしかいないのか…でも、なんだか頼もしいな!」

「はい! 皆さん…私たちと志を共にして、戦ってくれる。こんなの…七十年前は、考えられなかった」

 

 榛名の少し寂し気な言葉に、リオーネは微笑みながら回答する。

 

「私たちも同じ気持ちです。お互いに国と国という違う立場でしたが…今度は、皆さんと”ずっと”一緒に戦えると思うと、私も胸が熱くなって…嬉しいです」

「リオーネさん…」

「ハルナさん。これからは同じ艦娘として、戦友として、一緒に頑張りましょう!」

「…はいっ!」

 

 まるで桜が開いたような満開の明るい笑みを浮かべる榛名。

 

 エースはそんな嬉しそうにする榛名を、微笑ましく見守るのだった…。

 …ふとエースは、頭に浮かんだ疑問を口にした。

 

「…あ、そういえばリオーネさん? なんで俺の子供の頃の写真を持ってたの?」

「あぁ、あれは貴方のお父様から頂いたもので…」

「う、うん。もう分かった…はぁ、あの親父どこで何をやってんだ?」

「うふ、実は私たちが日本に来るまでの案内役をしてもらって…あ」

「どうしました?」

「いえ、私の他にもう一人、ドイツの艦娘がいらっしゃったのですが…何故かはぐれてしまって」

「え、すごい!?」

「た、龍美ちゃん…あ、ちなみにその人は?」

「それは…(ガチャ)…あら?」

 

 リビングのドアが開くと、そこから長戸が顔を出した。

 

「あ、エースさん。すみません、少し良いですか?」

「長戸さん、どうしたの?」

「今日は酒匂と出かけてんじゃないのかよ」

 

 フォックスの疑問に、長戸は状況を頭で整理しながら話す。

 

「はい。実はその途中の道端で迷子…を拾いまして」

「っ! そっか。大変だったね」

「いえ。ですからその人の探し人を一緒に探して欲しいと思いま…」

 

「ぴゃ、ぴゃ〜ん♪」

「ピャーッ☆」

 

「…え、今の酒匂ちゃん?」

「あの…外国の方なんですけど…酒匂ちゃんと話してから…ずっとあの調子で」

「な、なるほど…」

 

 長戸は話を一区切りすると、件の外国人を呼ぶ。

 

「(こんにちは! 私はペトラ、よろ…ん?)」

「…あら?」

 

「「…あーーーっ!?」」

 

 扉から姿を現した金髪の女性、彼女はリオーネを顔を見合わせると驚きの声を上げる、リオーネもまた彼女を見て驚嘆した。

 

「…え?」

「なに、この状況…?」

 

 エースたちは訳も分からぬまま、その様子を眺めていた…。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 金髪の女性、ペトラの話を聞くと…彼女こそリオーネの言っていた「もう一人の海外艦娘」なのだとか。

 利子の「カンタンほんや君」を着けたペトラは、そのまま朗らかに自己紹介に入る。

 

「私はペトラ! またの名をぉ~~…ドイツ重巡「プリンツ・オイゲン」でーす!」

「えっ!? マジか」

「すごい方なのですね?」

「うん。俺もそこまで詳しくないけど、雪風ばりの幸運に恵まれた艦だって」

「ふわぁ~! すごぉ~~い!」

 

 榛名や龍美が歓心の眼を向けると、ペトラは謙遜の意味を込めてか言葉を投げた。

 

「ふぇ!? 私が「ラッキーガール」ですって? 全然そんなことないよ! 浅瀬とか苦手だしぃ…」

 

 …ドイツ人だのに「ラッキー」とは? と喉から出かかったツッコミを、とりあえず「ほんや君のせい」だろうとして飲み込むエースであった。

 

「えっと…ペトラさん、貴女…いや君? も一緒に戦ってくれるの?」

「イエッサー! なんなりとお申し付けくださいまし〜〜!」

 

 ペトラは朗らかにそう言うと、おどけた調子で敬礼をして見せた。彼女のテンションの高い会話に、エースたちも気圧された様子であった。

 

「げ、元気だね〜…か、絡みづれぇ〜…;」

「あはは…凄く元気な人ですね?」

「とにかく、これからよろしくねー! ピャー☆」

「ぴゃ〜♪」

「あはは…賑やかになりそう」

 

 ペトラと酒匂が和気藹々とその場の雰囲気を和ませる、酒匂とも出会ったばかりだというのに、ここまで周りと距離を詰めることが出来るのは…偏に彼女の快活な人柄が出ている証拠だった。

 こうして、海外からの助っ人「リオーネとペトラ」が仲間になった。

 

「すみません提督…お忙しいとは思いますが、私たちもお役に立たせていただけたら幸いです」

「ううん、全然。…でも」

 

 確かにリオーネの言う通り、ここ最近のエースたちはやることづくめであった。

 坊ノ岬組の捜索、艦娘の強化訓練、隼子の謎、そして…彼女たち海外艦娘の存在。

 

「これから…ゆっくりやっていけばいいさ…うん」

「…そうですね」

 

 エースは自分に言い聞かせるように呟き、榛名もそれに同意するのだった。

 




○父と息子…どこで差がついたのか…?

十郎太「っくぁーー!? あやつどこ行きよった! かれこれ2、3時間は探したぞ…っふぅ、リオーネは進一のとこに着いたかのぉ?」

 ※徐に電話を取り出す十郎太。

エース『(ッピ)もしもし親父?』
十郎太「おう進一、そっちに外国のべっぴんさんが来とらんか?」
エース『うん、来たよ。”二人とも”』
十郎太「そうかそうか…ん? ちょっと待て、今二人といったか??」
エース『あぁ。リオーネさんにペトラさん、二人とも来てるよ』
十郎太「にゃにぃ~~!!? い、いつの間に…!?」
エース『悪いけど、今二人の部屋割り決めてるから、このマンションに滞在するみたいでさ』
十郎太「ちょ、ちょっと待て! お前のその「展開の都合の良さ」はなんなんじゃ!? ワシの数時間は一体っ!?」
エース『知らねーよ。アンタも忙しいんだろ? さっさと次のとこ行けば?』
十郎太「冷たいぞ進一、父が嘆いておるのだぞ!?」
エース『うるせぇ、人の知らないところで何も言わずに動いてるのに、今更何言ってんだよ。合わせるこっちの身にもなれっての』
十郎太「がーーーーんっ!!!?」
エース『…まぁ、偶には電話くれたら、ちょっとは融通利かすよ? 母さんも寂しがってたし』
十郎太「おう…息子がデレたぞ母さん;;」
エース『どこで覚えたんだよその言葉…んじゃ一応気を付けて、な?』
十郎太「(ピッ、ツーツー…)…寂しいのぉ、息子がいわゆるハーレム状態じゃというのに…ワシは……ワシは…っ!」

 さぁ~~~びしぃ~~~~~~~のぉ~~~~~~~~……

礼子「…はっ! 今お父さんが「寂しい」って言った気がする!」
エース「気のせいじゃない? 偶には”良い薬”…ってことでさ?」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。