※こちらは第二十九話の”後編”となります、前編をご覧になられていない方は「2-1」を先にご覧ください。
エースたちが謎の外国人リオーネと出会っている頃…。
長戸と酒匂は、ショッピングに出かけるために近くのショッピングセンターを目指していた。
「ぴゃ、ぴゃ、ぴゃ〜♪ ぴゃぴゃっぴゃ、ぴゃ〜〜♪」
「酒匂ちゃん、それなんの歌?」
「ふふん、酒匂せーさくの「ごきげんの歌」だよ! 長戸ちゃんとのお出かけが楽しいから、つい口ずさんじゃうんだ〜♪」
「そうなんだ…ちょっと嬉しい♪」
「ぴゃ! 長戸ちゃんも歌ってみたら? たのしーよ!」
「え? い、いいよ私は…恥ずかしいし」
「エンリョしないで、ほら! ぴゃ、ぴゃ、ぴゃ〜〜〜♪」
「うぅ………ん?」
長戸が酒匂に振り回されていると、不意に長戸は、道端で通行人に声をかける女性を見つける。
女性は金髪碧眼、耳の下辺りで髪を左右ともおさげで纏める。薄手のジャケットに無地の白シャツ、青色のジーンズと、少しラフな装い。それでいて目鼻立ちは、モデル顔負けの可愛らしさだった。
「Hallo, ich habe ein paar Fragen, aber gibt es hier einen Ort, um eine gute Zeit zu verbringen?」
「えっ!? いや…あの…ごめんなさい!」
なにかを尋ねていたようだが、外国語を話せないのか聞かれた人は逃げ出してしまった。
「ぴゅ〜、なーんか可愛そう…」
「………」
長戸はなにかを思案しながら、徐にその女性に近づく。
「Hahhh…」
「Bist du in Ordnung?」
「!」
長戸はその女性の母国語で話し始めた(どうやらドイツ語のようだ)。女性は驚きながらも満面の笑みを浮かべながら長戸に振り向く。
「Sind Sie Japaner? Sprechen Sie Deutschland!」
「Ja, ich kann ein bisschen sprechen. Haben Sie Probleme?」
長戸は女性に対して、相談事があるなら力になると言った。
話を聞くと、女性はある目的でこの日本を訪れたが、仲間とはぐれてしまい、とりあえずレジャー施設や人の集まる場所に行けば見つかるかも? と言っている。
※ここから日本語表記となりますが、()会話はドイツ語で話している"程"でお願いします。
「(それなら私たちと一緒に来ませんか? そういうことを手伝ってくれる人たちを知っているので)」
「(えっ!? でも…迷惑じゃないかな? …まだ遊び足りないし)」
「…?」
「(ううん! …そうだね、貴女優しそうだし、貴女といたら楽しそう!)」
「(あはは…それじゃ)…ごめん酒匂ちゃん、この人放っとけないから、一回エースさんのところに相談しに行ってくる」
「ぴゃー! 酒匂も気になるからいくー!」
「そう? …ごめんね? 誘ってくれたのに」
「ダイジョビダイジョビ〜♪ …ねぇ、その人の名前って?」
「っあ、そっか。(すみません、お名前を伺っても?)」
「(私? 私は「ペトラ・アイクラー」! よろしくね♪)」
「…ペトラさんだって」
「ぴゃ〜! よろしくねペトラちゃん!」
「さ、酒匂ちゃん…初対面の人なんだから…」
「(よろしく〜!)ぴゃ〜〜☆」
「えぇ…;」
こうして、意外とノリの良い外国人女性「ペトラ」を引き連れ、二人はエースの下へ向かう…。
・・・・・
そのころ、いつものマンションでは…?
いつものようにテーブルを挟んで、フォックスたちから事情を聴いているエース。
「とりあえず紹介しとくぜ。コイツは「リオーネ」俺たちの協力者だ」
「お前が知ってるってことは…政府絡みっことか?」
「そ。知っての通り海外の艦娘…らしい、まぁ先ずはコイツの話を聞いてやれ?」
そう言いながら、リオーネの方を見やるフォックス。
「っ! …急に押しかけてしまって、まことに申し訳ございません。改めまして…私はリオーネと申す者です」
その意図に気づいた様子で、少しぎこちない日本語でリオーネは、エースたちに自己紹介をする。
「こちらこそすみませんでした。ドタバタしてしまって…」
「…"ドタバタ"?」
「えっ? あぁ。ドタバタっていうのは…忙しないというか?」
「"お世話をしない"のですか?」
「うぇ!? えっと…参ったなぁ」
まさかのリアクションに頭を抱えるエース。他国語という厚い壁に、エースたちはコミュニケーションを取るだけでも四苦八苦していた。
「ふふん、お困りのようじゃな? これを耳に着けてみぃ!」
と、ここで利子が謎の機械を取り出した。
どうやら補聴器型の補助装置らしい、言われるままリオーネが片耳に装着する。
──ピピッ
「ほれエース、何か言うてみぃ?」
「えっ? じゃあ…さっきは本当にすみません、"ゴタゴタ"に巻き込んでしまって…?」
「(ピピッ)いえ、私の方こそ気づかなくて…ん?」
「よし、ではリオーネとやら、今度はお主の話しやすい喋り方でやってみぃ」
「は、はい…。私も今日という日を楽しみにして、つい勢いが…あら?」
「ん? どうしました?」
「いえ、私いま母国の言葉で喋ってるはずですのに…何故か、日本語に変換されていて」
「さっきのゴタゴタの意味も理解出来てたみてぇだな?」
「…利子ちゃん?」
「うむ! 吾輩特製の「カンタンほんや君」じゃ! 片耳のセンサーが外国語を瞬時に翻訳し、日本語として会話することができるのじゃ」
「す、すげぇ…原理は分からねぇけど、流石天才エンジニア」
「ふふん、時代の一歩先を行く、それが吾輩クオリティ!」
なんとも不可思議なことだが、ともあれこれで煩わしい壁は取り払われた。
「えっと…リオーネさん?」
「はい、お会いできて光栄です、提督」
「うん、問題ないみたい。…で、さっき玄関で言ってたことって?」
エースは早速本題に切り込む。彼女…リオーネは自身を「イタリア戦艦のリットリオ」だと言った。
「はい。私はリットリオ…かつてのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦、二番艦だったんです」
「…皆、どう思う?」
「うーん、いきなりそう言われても…」
龍美はそう言いながら訝しむが、隣の榛名は少し合点のいった様子だった。
「榛名はその人の言うことは、真実だと思います。でも…」
「うん、そうなると…艦娘は日本艦”だけじゃない”…っていうことになるな」
エースの口にした疑問に、リオーネは肯定の意を込めて頷く。
「貴方のおっしゃる通り。少しずつではありますが、あの時代に存在した艦艇の生まれ変わりが、目覚めようとしています。それは日本国に限った話ではありません」
「え!? じゃ、じゃあ…アメリカやドイツの艦娘も居る…ってこと!!?」
驚愕の様相で正解を口にする龍美。またも頷くリオーネ。
「はい。しかし何故か日本国以外の艦娘は、現在確認されているだけでも少数しかいません。私の母国イタリアを含めて。ですが幸いにも、欧州諸国には深海棲艦は未だ確認されていません」
「そっか…よかった」
「おいおい浮かれんなよ? いずれ世界中に現れるのが確定してんだぞ、確実に欧州にも出てくるっつーことだろうがよ」
「あ、そっか…」
「うふふ。でも、そうですね? 私たちとしてもそんな危険な存在を、指をくわえて見ている、なんて出来ませんから」
「そこで日本政府は一部の欧州国に招集をかけて、現在確認されている自国の艦娘を日本に寄越し、艦娘としての戦い方を共に学び、ゆくゆくは連携強化を目指し、最終的にやつらを倒すため協力し合おう! …ということじゃ」
利子の説明に、一応の合点はいったエースたち。龍美はすかさすリオーネに質問をする。
「ねぇねぇ、それじゃ海外の…日本以外の艦娘ってどんな人がいるのか分かる?」
「え? そうですねぇ? …会ったことはありませんが、各国に2~3人居ると聞いたことが」
「まだそれだけしかいないのか…でも、なんだか頼もしいな!」
「はい! 皆さん…私たちと志を共にして、戦ってくれる。こんなの…七十年前は、考えられなかった」
榛名の少し寂し気な言葉に、リオーネは微笑みながら回答する。
「私たちも同じ気持ちです。お互いに国と国という違う立場でしたが…今度は、皆さんと”ずっと”一緒に戦えると思うと、私も胸が熱くなって…嬉しいです」
「リオーネさん…」
「ハルナさん。これからは同じ艦娘として、戦友として、一緒に頑張りましょう!」
「…はいっ!」
まるで桜が開いたような満開の明るい笑みを浮かべる榛名。
エースはそんな嬉しそうにする榛名を、微笑ましく見守るのだった…。
…ふとエースは、頭に浮かんだ疑問を口にした。
「…あ、そういえばリオーネさん? なんで俺の子供の頃の写真を持ってたの?」
「あぁ、あれは貴方のお父様から頂いたもので…」
「う、うん。もう分かった…はぁ、あの親父どこで何をやってんだ?」
「うふ、実は私たちが日本に来るまでの案内役をしてもらって…あ」
「どうしました?」
「いえ、私の他にもう一人、ドイツの艦娘がいらっしゃったのですが…何故かはぐれてしまって」
「え、すごい!?」
「た、龍美ちゃん…あ、ちなみにその人は?」
「それは…(ガチャ)…あら?」
リビングのドアが開くと、そこから長戸が顔を出した。
「あ、エースさん。すみません、少し良いですか?」
「長戸さん、どうしたの?」
「今日は酒匂と出かけてんじゃないのかよ」
フォックスの疑問に、長戸は状況を頭で整理しながら話す。
「はい。実はその途中の道端で迷子…を拾いまして」
「っ! そっか。大変だったね」
「いえ。ですからその人の探し人を一緒に探して欲しいと思いま…」
「ぴゃ、ぴゃ〜ん♪」
「ピャーッ☆」
「…え、今の酒匂ちゃん?」
「あの…外国の方なんですけど…酒匂ちゃんと話してから…ずっとあの調子で」
「な、なるほど…」
長戸は話を一区切りすると、件の外国人を呼ぶ。
「(こんにちは! 私はペトラ、よろ…ん?)」
「…あら?」
「「…あーーーっ!?」」
扉から姿を現した金髪の女性、彼女はリオーネを顔を見合わせると驚きの声を上げる、リオーネもまた彼女を見て驚嘆した。
「…え?」
「なに、この状況…?」
エースたちは訳も分からぬまま、その様子を眺めていた…。
・・・・・
金髪の女性、ペトラの話を聞くと…彼女こそリオーネの言っていた「もう一人の海外艦娘」なのだとか。
利子の「カンタンほんや君」を着けたペトラは、そのまま朗らかに自己紹介に入る。
「私はペトラ! またの名をぉ~~…ドイツ重巡「プリンツ・オイゲン」でーす!」
「えっ!? マジか」
「すごい方なのですね?」
「うん。俺もそこまで詳しくないけど、雪風ばりの幸運に恵まれた艦だって」
「ふわぁ~! すごぉ~~い!」
榛名や龍美が歓心の眼を向けると、ペトラは謙遜の意味を込めてか言葉を投げた。
「ふぇ!? 私が「ラッキーガール」ですって? 全然そんなことないよ! 浅瀬とか苦手だしぃ…」
…ドイツ人だのに「ラッキー」とは? と喉から出かかったツッコミを、とりあえず「ほんや君のせい」だろうとして飲み込むエースであった。
「えっと…ペトラさん、貴女…いや君? も一緒に戦ってくれるの?」
「イエッサー! なんなりとお申し付けくださいまし〜〜!」
ペトラは朗らかにそう言うと、おどけた調子で敬礼をして見せた。彼女のテンションの高い会話に、エースたちも気圧された様子であった。
「げ、元気だね〜…か、絡みづれぇ〜…;」
「あはは…凄く元気な人ですね?」
「とにかく、これからよろしくねー! ピャー☆」
「ぴゃ〜♪」
「あはは…賑やかになりそう」
ペトラと酒匂が和気藹々とその場の雰囲気を和ませる、酒匂とも出会ったばかりだというのに、ここまで周りと距離を詰めることが出来るのは…偏に彼女の快活な人柄が出ている証拠だった。
こうして、海外からの助っ人「リオーネとペトラ」が仲間になった。
「すみません提督…お忙しいとは思いますが、私たちもお役に立たせていただけたら幸いです」
「ううん、全然。…でも」
確かにリオーネの言う通り、ここ最近のエースたちはやることづくめであった。
坊ノ岬組の捜索、艦娘の強化訓練、隼子の謎、そして…彼女たち海外艦娘の存在。
「これから…ゆっくりやっていけばいいさ…うん」
「…そうですね」
エースは自分に言い聞かせるように呟き、榛名もそれに同意するのだった。
○父と息子…どこで差がついたのか…?
十郎太「っくぁーー!? あやつどこ行きよった! かれこれ2、3時間は探したぞ…っふぅ、リオーネは進一のとこに着いたかのぉ?」
※徐に電話を取り出す十郎太。
エース『(ッピ)もしもし親父?』
十郎太「おう進一、そっちに外国のべっぴんさんが来とらんか?」
エース『うん、来たよ。”二人とも”』
十郎太「そうかそうか…ん? ちょっと待て、今二人といったか??」
エース『あぁ。リオーネさんにペトラさん、二人とも来てるよ』
十郎太「にゃにぃ~~!!? い、いつの間に…!?」
エース『悪いけど、今二人の部屋割り決めてるから、このマンションに滞在するみたいでさ』
十郎太「ちょ、ちょっと待て! お前のその「展開の都合の良さ」はなんなんじゃ!? ワシの数時間は一体っ!?」
エース『知らねーよ。アンタも忙しいんだろ? さっさと次のとこ行けば?』
十郎太「冷たいぞ進一、父が嘆いておるのだぞ!?」
エース『うるせぇ、人の知らないところで何も言わずに動いてるのに、今更何言ってんだよ。合わせるこっちの身にもなれっての』
十郎太「がーーーーんっ!!!?」
エース『…まぁ、偶には電話くれたら、ちょっとは融通利かすよ? 母さんも寂しがってたし』
十郎太「おう…息子がデレたぞ母さん;;」
エース『どこで覚えたんだよその言葉…んじゃ一応気を付けて、な?』
十郎太「(ピッ、ツーツー…)…寂しいのぉ、息子がいわゆるハーレム状態じゃというのに…ワシは……ワシは…っ!」
さぁ~~~びしぃ~~~~~~~のぉ~~~~~~~~……
礼子「…はっ! 今お父さんが「寂しい」って言った気がする!」
エース「気のせいじゃない? 偶には”良い薬”…ってことでさ?」