※こちらは第三十一話の”後編”となります、前編をご覧になられていない方は「2-1」を先にご覧ください。
リカルドの訓練は朝早くから始まる。
早朝七時からの朝日を浴びながらの公道ランニング、そのまま山間を走り、急斜面往復(全員の息が切れるまでやる、止めの号令はリカルドの采配次第)。
そこから湖前まで直(ひた)走る、湖前で十分ほどの小休止を取り、各々艤装を取り付けたら、湖の上でそのまま四人二組になり演習を行う。
「艦隊を動かすのは旗艦の役割だ、旗艦に艦隊の全権限を預けることになるが、随伴艦も気を抜くなよ。周りを注意深く観察し、変化があればすぐに旗艦に伝えろ。Boyに判断を仰ぐのは飽くまで最終手段だ、お前さんらの先祖もそうやって、軍隊を動かして来た。いいか?」
リカルドの言葉に「はい!」と強く返答する艦娘たち。
「よし。ではこれから演習を実施する、お前さんらの砲塔には、トシコの嬢ちゃんに作らせた「ペイント弾」が装填されている、思い切り撃て、撃たれる側もちゃんと回避しろよ!」
「はいっ!」
「では、制限時間は十分、より多くペイント弾を当てた部隊の勝利とする。──始めっ!」
リカルドの口から「号令」が叫ばれた瞬間、両艦隊は行動を開始した。
一方の旗艦を妙子、もう一方を青子に据えて両艦隊は距離を取る。
「皆さん、頑張って参りましょう!」
「旗艦なんて柄ではないですけど、これも仕方ないですね〜?」
先ずは艦隊の横側に敵艦隊を捉えるように旋回する。
「皆さん、敵艦隊を捕捉、砲撃の用意を!」
妙子の言葉にキビキビと砲撃の準備をする艦隊、一方の青子艦隊は?
「皆さんー敵艦発見です! どんどん撃ちましょう!」
「なーにー?」
「だから、北上さん! うーちーかーた、よーいっ!」
「フジカタ、ヒューイ? 誰ソレーw」
「だぁーかーらあぁーーっ!」
「今です、撃ち方始め!!」
「あっヤバ。」
妙子艦隊から雨あられと撃ち込まれるペイント弾、当然青子艦隊には為す術はなく、無様に赤色に染まっていくのだった。
「アバーッ!?」
「うわぁいやばぁ〜い」
・・・・・
「…お前さんら、俺の話聞いてたか?」
正座する青子艦隊に対しリカルドが呆れてものを問うが、主犯二人は反省の色はなし。
「聞いてたけどー青子の声って通信越しに聞いても聞き取りづらくってさ〜?」
「いやいや、北上さん? あの聞き間違いはどうかと思いますが、なんですかフジカタ・ヒューイって」
「あはは〜、全然違う言葉に聞こえることってあるよね?」
「ありますけど、アレ一点に言えばないです。絶対ほづ…北上さんが悪いです!」
「にゃにおぅ?」
「ヘイヘイヘイ、Stopだ。お互いに責任なすりつけ合う元気があるなら、今度から気を引き締めていけよ。でないと死ぬぜ?」
「えー、いいじゃん練習なんだから〜」
北上の言い訳に、リカルドは眉を顰めると、引き締めた表情を緩めてにんまりと笑った。
「そうか、じゃあ練習だからお前さんらには「筋トレ」追加な?」
「ふぁ!? キツイことしないって言ったじゃん?!」
「上官の意思に反する馬鹿者どもに罰を与えてやるんだ、キツいだの言ってたら罰にならねぇだろ? お前さんらが最初からやる気出せば、こんなことにはならなかっただろうな?」
「うへぇーっ!?」
「さぁさぁ、まずは向こうで腕立て五十回を三セット、腹筋背筋を五十回三セット。それが終わったら山の坂道往復三十回だ。早くしろよ、ぐだぐたやるとまた追加するからな!」
「ひえぇーっ、おたすけー!?」
「オニー! 悪魔ーーっ!!」
青子と北上たちは泣き言を喚きながらも、急いで向こう側で腕立てを始めるのだった。
「…全く」
「ふふっ。リカルドさんは矢張りお優しいですね?」
一部始終を見ていた妙子の言葉に、要領を得ない表情のリカルド。
「ん? 俺がか? Hahaha ! そんなこと言われたのはアンタが初めてだぜ、ミス・タエコ!」
「いえ。長戸さんたちもそうでしたが、北上さんたちのやる気を促すためにわざとあのようなことを仰って。外国の方は大らかな人が多いので見逃してしまいますが、私には…貴方は繊細な心と慈しみを持って彼女たちに接していると思えます」
妙子の鋭い指摘に面食らったか、リカルドは驚く素ぶりをして頭を掻いた。
「やれやれ…アンタと話してると調子が狂うなぁ」
「うふふ、でも本当にお優しいと思いますよ? 彼女たちのトレーニングの回数だって少ないと思うし」
「ほう? なら増やすか」
「え」
「おーい! ミス・タエコの提案で筋トレ追加だー! 腕立て百回を五セット、腹筋背筋百回を五セット、坂道往復五十回、更にスクワット百回五セットもやるようにー!」
「うぇーっ!? たえさーーん?!!」
「へっ、ちょ、ちょっと待ってくださいリカルドさん! 違うんです、そういう意味ではなくてぇえええ!!?」
リカルドの冗談半分の筋トレセットに、思わず駆け出して訂正を求める妙子だった…。
「(龍美)…私たち、あっちじゃなくて良かったね?」
「(潮音)そ、そうですね…あはは;」
「(雪)…?」
・・・・・
休憩を挟みながら、夕方までの演習を終えると、その先は自主トレーニング…という名の終わり。
体を休め次に備えるため帰宅する者もいれば、湖で(あくまで自主的に)トレーニングを重ねる者もいる。
トレーニングは、浮き輪の上に浮かせた的にペイント砲撃を正確に当てる、浮き輪と浮き輪の間を素早く移動する、練習用の模型魚雷を動く的に当てる…等。二人以上でやるなら更なる演習も可能になる。
リカルドはその辺りは強要はしない。確かに一日中”シゴキ”を入れれば、それなりの鍛えた肉体は手に入るだろう。しかし…矢張り疲労というものはある。
艦娘である以上基本的に常人よりも遥かに「打たれ強く、体力もある」のだが、基本的な身体の構造…肉体疲労の「システム」は変わらない。身体を動かすことに対して素人の彼女たちが、無理に鍛えて肉体疲労が蓄積された状態で戦えば、それだけパフォーマンスの低下にも繋がる。
…本音を言えば、温い鍛え方だとはリカルドでも思うが。いきなり彼女たちに「サバイバル」…は、流石に厳しいか? と思い留まる。
「Boyとの契約もあるしな? まっ、奴(やっこ)さんが契約内容を変えたいと言うなら、いつでも応じてやるがな?」
ウハハ、とリカルドは誰に対してでもなく豪快に笑った。
──そんな訓練の中、リカルドが特に目を瞠った人物がいた。
「ほう…!」
日が沈み、視界が黒く暗闇に狭まる…手探り状態の水の上では、手元のライトが唯一の道標。
そんな夜更けの一幕。湖面を滑りながら、艤装の砲塔を「浮かぶ的」に目掛けて狙い定める"妙子"。
「…撃てっ!」
妙子が手を前にかざしながら叫ぶと、砲塔からペイント弾が射出される。妙子の手元のライトは的を指していた…そして。
「…っ! 当たった…!」
妙子の視線の先には…光によって宵闇に映し出されたシルエット、その的は…赤く塗りつぶされていた。
「よし…っ!」
拳を握り小さく動かす、彼女の喜びが高まった証拠だ。その一連の結果に、リカルドも驚いていた。
「まさかここまで成長が早いとはな…」
この日は、リカルドが艦娘たちに訓練を施してから一週間が経っていた。
最初はぎこちない動きでしかなかったが、慣れ始めたか全員がまともに動けるようになっている、そう感じ始めていた…その中でも群を抜いて成長スピードが速いのが「妙子」だった。
艦娘たちに率先して呼びかけ、走り込み、演習、自主トレーニングも積極的にこなし、その日その日の成果を確実に自身のものにし、そして今日…それが「結果」として花開いた。
妙子がここまで訓練に入れ込むのは、隼子の存在が大きいだろう。エースたちから隼子に連絡がつかないと聞き自分も電話をかけた…しかし彼女も例外でなく、隼子から応答が来ることはなかった。
それでも彼女の人柄を近くで見てきた妙子は、隼子が黙って出て行くということは「それだけ心配を掛けたくない出来事が出来た」ということ、そのぐらいは理解していた。
なので、影で頑張っているであろう彼女のため、いつか彼女が帰ってくるその日まで自分が皆を見守る存在で在らねばならない。…妙子は隼子の友情のため、そしてエースたちと共に強くなるため、精進を続けていた。
まるで武に生きる者の考え方は、彼女の真面目で何処かストイックな性格の表れであるだろう。彼女の前世にあたる妙高も、様々な武勲を立てた武闘派であったという。それが彼女に影響を与えているかはさておき、その後ろ姿の勇ましさは「流石」としか言えなかった。
「ブラボー! インクレディブル! 見事だミス・タエコ!」
「リカルドさん…!」
拍手でその健闘を称えるリカルドの声に反応し、妙子は後ろを振り返る。妙子がライトを当てると、湖の湖畔に大男が立っていた。
「お前さんには戦いの才能があるぜ、一週間でここまでいけりゃ上出来だ、日本じゃ「メカラウロコ」って言ったっけか?」
「そんな、私なんてまだまだです。それに…戦いの才能、と言われても、なんだか複雑で…」
「ウハハ! その謙虚な姿勢、それがお前さんらに一番必要なものだ。アンタが残りのヤツらを引っ張ってやれりゃ、それからは心配なさそうだな!」
「はい、期待に応えられるように頑張ります。…ふふ」
「…どうした?」
リカルドが、あまりに嬉しそうにする妙子を見て思わず尋ねた。
「あ、いえ。貴方と話してると、姉さんを思い出して」
「あん? 俺が女に見えるって?」
「いえ、そうではなくて。…姉は気骨逞しい、凛々しい人で我が家の誇りでした。私も姉さんに負けないよう、日々精進して参りました」
「そうか姉貴か。姉貴は今何してるんだ?」
「っ、それは…」
リカルドの問いに、妙子は少し躊躇うように間を開けると、ゆっくりと重くなる口で言葉を紡いだ。
「…姉は海上自衛隊で、既に「亡くなり」ました。…災害派遣先で、土砂に巻き込まれて……」
「…っ! ソイツは…すまなかったな。軽口でいらねぇこと言っちまった」
「いえ。私は覚悟していましたから。海上自衛隊に入ると聞いた時、姉はその命を懸けて、守りたいものがあると仰っていました。だから…」
みるみるうちに暗くなっていく表情、普段温和な笑みを浮かべている妙子が、滅多に見せない「悲しみ」の表情だった。
「リカルドさん、私は不安なんです。姉が命を賭してでも守りたかったものが何なのか、私には終ぞ知り得ませんでしたが、それは貴方に言わせれば「死ぬ覚悟」だったのでしょう。私は尊敬する姉のようになりたい、しかし貴方の言う「生きる覚悟」を理解出来る自分もいるのです…」
リカルドに胸の内を語る妙子、妙子にとってリカルドは、それだけ「本音を語れる程信頼出来る人物」だということ。
「これから、私が皆さんと共に歩む中で、そんな私が「生きる覚悟」を語って良いものかと…姉が死んだことに、少しでも意味があったと願うこの私が、語るべきなのかと…そう思うんです」
妙子の口から零れた悩みは、深い霧の中にいるような不安に駆られるもの…生きる覚悟と死ぬ覚悟、どちらが正しいかなど、一概に言い切ることは難しい。そこに「何を求めるか」で意味が変わることなのだろう。妙子が求めている答えは「禅問答」に等しかった。
それを踏まえて、リカルドは自分の考えを妙子に伝えた。
「…矢張りな」
「…? やはり?」
「ミス・タエコ。本当はあの日…ナガトとイチカをあの場から追い出したあの時、お前さんも似たような「死にたがりの目」をしていた」
「…っ!?」
つまり、下手を打てば妙子も「長戸たちと同じく」訓練を追い出されていた可能性があった…ということ。
「そんな…でも、それでは何故私をこの場に残されたのですか?」
妙子の当然の疑問に、リカルドは神妙な面持ちで回答した。
「上手くは言えないんだが…アンタの目の奥の、更に奥に「生きたい」と願う意志を感じた。…あの時アンタは「人として」という言葉でそれを表した、そう思った」
「そこまで感じとっておられたのですね…?」
「まぁな? 何があるにせよアンタなら余計な考えはないだろう、そう思った…だが、お前さんは自分では気付いて無かったのか?」
妙子はその問いに、黙して頷いて肯定する。
「…姉貴が死んだことに意味があったのか、と言ってたが?」
「はい…私自身は生きたいと願っているのでしょう。ですが…姉は己の命を投げ出してでも守りたいもののために戦った、戦い抜いた。…そんな姉を差し置いて、同じような状況に立った私が「生きるために戦う」など…姉に対して申し訳ないような気がして」
「…なるほどな?」
妙子の迷いは、言ってしまえば「杞憂」なのだが、それでも彼女が前を向いて戦うには必要な区切りなのだろう。それを理解したリカルドは改めて自身の人生観も含めた考えを口にした。
「…俺は、身内を喪ったお前さんにかけてやれる上等な言葉は思いつかない、なにせ俺は常に戦場に身を置いているからな、生きるも死ぬもその日の「運」次第よ」
「はい…」
「だがな、考え方によっちゃアンタの姉貴は幸せだったんだろうぜ?」
「…? それは、どういう…」
「俺には何となくだが、アンタの姉貴が命に代えても守りたいものってのが解る」
「っ! それは一体…?」
リカルドはゆっくりと、妙子に人差し指を向けた。
「私…?」
「そう、守る覚悟を決めるのは、いつだって身近なヤツらのためだ。アンタっていう掛け替えの無いものを守れたんだ、そこに後悔なんてねぇと思うんだ。アンタの姉貴の覚悟は…アンタを守りたいと願う「愛情」だったんだろうぜ?」
「リカルドさん…」
「なんて、本当のことは分からねぇし、傭兵の俺が言えたことでもないがな。愛だとか正義だとか、俺にはそんな信念なんざ持ち合わせちゃいないが、それでも…戦士として、その覚悟には敬意を払うぜ。…立派な姉貴を持ったな?」
リカルドはただ妙子の姉の生き様を讃えた。その言葉を受け、妙子の瞳から一筋の雫が零れ落ちるのが見えた…。
「…はいっ! 本当に…自慢の「姉」でした…!」
妙子の心からの笑顔に、リカルドも静かに口角を上げた。
「アンタを守って死んだ姉貴のためにも、アンタは生きなきゃならない。それが…アンタの「生きる覚悟」…それで良いじゃないか?」
「…はい。ありがとうございます、リカルドさん」
「なぁに、こんな他愛無い話でよけりゃ…」
「たえさーん! 一緒に帰ろー!」
話がひと段落したところで、龍美と潮音がこちらに駆けてくる。
「あら、龍美さんに潮音さん。わざわざお迎えに来てくれたのですね?」
「はい。もう夜も遅いですし、一緒に帰っていった方がいいと思って…!」
「まぁまぁ…! 分かりました、少し待っていて下さい?」
妙子は湖面を駆けると、艤装を片付け急いで潮音たちの下に戻る。
「お待たせしました。…それにしても態々待ってもらわなくても良かったんですよ? もう夜も遅いですのに、特に潮音さん? 早く帰らないと親御さんも心配されてますよ?」
「はぅっ、ごめんなさい。…でも、妙子さんと一緒に帰りたいと思って?」
妙子の注意を受け反省するも、自分の意見を述べる潮音。彼女の言葉を聞き龍美も肯定的に頷く。
「うんうん、それにお喋りしながら帰った方が楽しいでしょ? たえさんの話って面白いし! 二人の妹さんのこととか」
龍美の言葉に、横で聞いていたリカルドは驚きを感じた。
「アンタ、妹さんが居たのか、二人も?」
「えぇ。二人とも私の自慢の妹で…特に四女は、潮音さんとどこか似ていて」
「だから潮音ちゃんに優しいんだよね〜たえさんって」
「た、龍美さん…;」
「いいんですよ潮音さん、事実ですから。…妹たちを姉の代わりに面倒を見ていたら、ついついお世話を焼いてしまって」
照れながら嬉しそうにする妙子、なるほど…妙子のどことなくしっかりとしたイメージは、妹たちの面倒を見ていたからか。とリカルドは感心していた。
そして…興味本位で妙子に、彼女の妹たちについて聞いてみる。
「私の妹ですか? そうですね…三女は私とはまるで反対で、いつも元気で負けん気が強くて、四女は先程申しましたように、潮音さんとどことなく似ていて、大人しくてとても優しい娘なんです♪」
「ほう、成る程! 妙高に四姉妹とくりゃ「妙高型四姉妹」じゃねぇか? なんてな!」
リカルドの指摘に「冗談でも言ってはいけないことでしょ?」と言わんばかりに、龍美と潮音はリカルドに白い目を向けた。
「…ちょっとリカルドさん?」
龍美が目と言葉で注意を呼びかけるも、リカルドはどこ吹く風といったところか。
「はっは、そう目くじら立てるな、ジョークだよジョーク。なぁ?」
「…はぁ、まあいいけど。行こうたえさん?」
「は、はい。…あ、リカルドさん」
「ん?」
「…先程はありがとうございました、私…最後まで戦い抜きます。亡くなった姉のため…彼女が守りたかったものを守るため、必ず生き残ります」
妙子は力強く宣言するように「生き残る」と宣誓した。リカルドは妙子の瞳の奥を覗き込むように、彼女の顔を見据えた。…その眼には確かな「生きる意志」が宿っていると感じた。
「…ウハハ! そのぐれぇ言い切れるならもう大丈夫だな?」
「そうですね。まだ少し自信はありませんが…すみません、色々ご指導ご鞭撻を頂いたのに?」
「いや、誰も完全な覚悟なんざ持ち合わせちゃいねぇさ? …もう一人で考え込むのはよせよ?」
「はい。…さぁ、行きましょうか皆さん?」
「う、うん。…たえさん、リカルドさんと何かあったの?」
「それは…内緒です♪」
「…?」
妙子は龍美たちに微笑みながら、彼女たちと共に帰り道についた。
リカルドは妙子たちを見送りながら、妙子の姉や妹たちの話を反芻する。
「…これも運命ってヤツか。ッハ、"惹かれ合う"とはよくぞ言ったもんだな?」
彼が呟いた一言の真意とは…?
○会議 その2
フォックス「はぁ…全然思い浮かばない。アイツがこう言ったら絶対あの娘は…だから…こう行くだろ? そしたら…で。って結局堂々巡りじゃねぇか! アイツらどんだけ…」
礼子「そんなに大声出して、どうしたの?」
フォックス「あ、おばさん」
礼子「はい、コーヒー入れたから、少し落ち着きなさい?」
フォックス「あぁうん。どうも…(ちょっと聞いてみるか? いや流石に聞き辛ぇか)」
礼子「…進ちゃんのこと?」
フォックス「ぶっはぁ!? な、なんで…」
礼子「うふふ、進ちゃんのことになると感情的になるの、昔から変わらないわね?」
フォックス「…はぁ、敵わねぇなおばさんには」
礼子「もし私で役に立てることがあるなら、なんでも言ってね? おばさんなんだってやったげちゃう!」
フォックス「分かったよ。…実は」
・・・せつめーちゅう〜・・・
礼子「そう…進ちゃんと榛名ちゃんを付き合わせたいのね?」
フォックス「おばさんも望んでることだとは思ったけど…だとしても反応薄くね?」
礼子「うーん、私もどうしたら二人が付き合うのかなーって、なんとなく考えてたから」
フォックス「親御さんも心配するレベル…」
礼子「進ちゃんって昔から皆のことを考えるばかりで、感情的になったり、否定的な意見とか表に出さなかったし。お父さんもその辺りの礼節には厳しかったし」
フォックス「だから仕方ねぇ…で済ませたくもねぇんだよな、俺としては。アイツには…デケェ借りがあるからな」
礼子「そう。…そうね、だったら私からも色々と進ちゃんに言ってみるわ」
フォックス「っ! おばさん…」
礼子「私もあの子たちには、幸せになってもらいたいもの。ね?」
フォックス「…ありがとなおばさん、アイツの生みの親のアンタが居てくれりゃ百人力だ」
礼子「いいのよ。じゃあおばさんも…がんばルb」
フォックス「おばさん、若者の使う言葉口ずさめばいいってもんじゃねぇぞ…?」
礼子「あら〜?」
※こうして、フォックスたちの計画に、礼子の助言が加わった。