エースは、父の残した手がかりにより、自分や榛名の見た夢が「戦艦榛名」のものだという結論に至る。
そして同時に、友人の龍美の見た「空母の夢」から、様々な夢を見たものが他にもいるのではないか? と気づいた。
エースはそれらを確かめるべく、コミュニティサークルを設立し、夢に悩まされる者たちの話を聞いていく…全ては榛名に、元の「人」としての記憶を取り戻してもらうため。
そして何より、自分たちの他に夢に悩む者たちを助けるため…と、ここでサークルの「オフ会」を提案する。
彼女たちの話を直に聞くために、一度集まってもらうことにした。
色々あったがオフ会は順調に進んだ。しかし、そこにいたのは、意外な人物で…?
平日の、麗らかなある日──
太陽が燦々と照りつける中、窓を閉め切り暗がりの部屋で四角の光を見つめる一人の人物がいた。
「…ふぅーむ?」
呻る声も愛らしい事から、若い女性であることが窺える。
彼女はある事柄を調べるために自前のデスクパソコンでネットの情報を物色していた。
「やはりあれを見たものはいないのかのぉ…?」
そう言いつつ、画面の検索ワードに新たなキーワードを打ち込んでいく。
「"記憶"… "夢" 。後は…「戦争」…っと」
──タンッ
エンターキーを押すと、検索結果の一覧が表示される…するとその中に気になる見出しが。
「むむぅ?」
女性が気になったサイトをクリック…そこはあるサークルの会話ログだった。
◇
ACE:「…それは、「潮」かも知れないね?」
しおん:「そ、そうですか?」
ACE:「ああ、「潮」は数々の作戦に参加している武勲艦…すごい船なんだ。君の見たものは、「潮」から見た戦いの場面かも知れない」
NDA:「んだなぁ。」
しおん:「そうなんだ…怖い時もあったけど、そのお船さんは頑張ってたんですね?」
FOX:「まあ、雪風と同じで疫病神扱いだったみてぇだけどw」
雪ちゃん!:「dzascdabdsd]fsd:/h\>x:;\zz.dfd;l:@;sd」
酒匂☆:「ぴゃあ!? 雪ちゃんそんなにキーボード叩いちゃダメ!」
NDA:「んだなぁ。」
◆
「おおっ! これじゃ! 何たる僥倖よ!」
女性はついに念願叶えたり、と嬉々としていたが…すぐに顔が険しくなる。
「…ん? 待てよ、この"べしゃり"は…まさか…っ!」
ガタッ! と勢いよく立ち上がった女性は、忌々し気に顔をしかめパソコン画面を睨みつける。
「…そうか、ならば…決着をつけねばなるまい! …待っておれいッ!!」
女性は簡単な身支度を済ませると、すぐに部屋を後にした。
・・・・・
場面は、いつものマンションの戻る。
エースたちはサークルのメンバーと共に「夢の記憶」の意味を話し合ったが…確定的な情報を得られることができなかった。
そこで、とりあえず一旦話を後日に持ち越し、その他に記憶を垣間見た者がいないか調べることにした。
「はぅにゃ! はぅにゃ!!」
「は~い、榛名はここですよ?」
「あい~!」
「うふふ」
朗らかに笑い合う榛名と雪。傍から見たら姉妹のような和やかな光景…そんな榛名の清楚な雰囲気を引き立てるのは、その服装だ。
白の薄手の上着、黒のワンピース。そして可愛らしいリボンをあしらったカチューシャ。
これらは、エースたちが買った来た着衣をそのまま着ていた「なんちゃってコーディネート」で済ませていた榛名を見かねて、龍美が見立てて購入したもの。
"女の子なんだから、おしゃれには気を遣わなくっちゃ♪"とは彼女の談。
「はぁ…」
そんな彼女を、遠目から薄ら笑いを浮かべながら見つめる男。
「おい変態wにやにやしてんなよ?ww」
「うるせえ! …またさぼってんのか?」
「えー? 休憩ですよぉ?w 俺にもやることあって忙しいんだよぉ?」
「(嘘つけ…)」
フォックスの軽薄短小な言葉だが、エースはいつものことだろ、と無視して榛名と雪の愛らしいやり取りを見ていた。
サークルのメンバーは基本的に出入り自由とし、暇なときはいつでも遊びに来てくれと言って、その言葉通りあれから一週間経った今ではいわゆるメンバーのたまり場となっていた。
情報収集は主にフォックスや、自己志願してきた青葉に任せている。その他のメンバーはご覧の通り暇を持て余していた。
「……」
「そう怒るなよ菊ちゃん? すぐに情報は集まるだろうから、それまでは…」
「"菊月"だ。…菊ちゃんではない」
「え? でも酒匂ちゃんが?」
「あれは言っても聞かないから、言わせているだけだ。…全く」
「(う~ん、中々懐いてくれない…)」
菊月としては、一刻も早く記憶の意味…自身の正体を知りたいと思っているだろう。
記憶喪失などそうそう起こるものではないので何とも言えないが、不安は隠せていない…この状況も、彼女にとって受け入れ難いものだろう。
「(彼女は素直になれていないだけ、だと思うんだけどなぁ…?)」
「あの…どうしました?」
「へぇ!? あ、はい?」
エースが考え事をしていると、横からマスクをした黒髪の女性に声を掛けられる…と思わず上ずった声が出てしまう。
「…ヤベッ! ヘンな声でた!?」
「ふふっ…」
女性は淑やかに笑う。落ち着いた大人の女性といった感じの声だ。
テレビで見た、インタビュアーのおちゃらけた質問に答える時にでる笑いの様な…そう、テレビの中でしか見ないであろうと思っていた若手人気アクション女優「長戸愛理」が目の前にいると思うと、どうしても緊張してしまっていた。
「…そんなに緊張しないでください。私は普通ですから?」
貴女が普通だったら他の人に逆に失礼なのでは? …と思ったが、言葉を飲み込むエース。
主演映画の公開も控えている、今一番人気が熱いであろう人。その彼女がまさかの「長門」だったのだ。
驚きは隠せないが、映画やドラマでのその威風堂々とした立ち振る舞いは、かつて連合艦隊の旗艦も務めた、日本を代表する大戦艦長門に当てはまっていた。
本来は仕事が忙しく、とてもここに来られるものではないが、今日はドラマのクランクアップとかで、暇の時間が出来たので試しに来てくれたのだという。
「…えっと、長戸さん?」
「は、はいっ!」
「いや貴女も緊張してるじゃないですか…その、マスク…取らないんですか?」
「…あの? やっぱり取った方が?」
「いや、まあ…」
「すみません…その…私、普段から顔を見られるのが…は、恥ずかしくて…」
顔がマスク越しでも分かる位赤くなり、背の高い比較的大きな体は、消え入りそうな声と共に小さくなっていくように思えた。
確かに最近の女性はマスクをして出歩く人が多いという…彼女もその一人なのだろう。
「演技をしているとそうでもないんですけど、こ、こういう場所は…慣れなくて…」
テレビで見る勇ましい姿とは対照的な、優しく大人しそうな人柄が垣間見えた。あの人気俳優の、意外な素顔を知った瞬間であった。
「大丈夫ですよ? その…さっきは僕も長戸さんだって思うと、緊張しちゃって?」
「分かります! すごくっ! 仲良くなりたいけど、どう接していいか分からないから、つい敬語になっちゃうんですよねっ!?」
「お、落ち着いて…。そうなんですよ、でも僕としては仲良くなりたいんだったら自然体でいればいいと思うんですよ? どういう人柄かを見せることが大事だと思います」
「自然体…?」
「そう、ああいう感じで?」
そう指差した方向には、プラスやマイナスドライバー等の工具を広げて、何やらテレビリモコンに細工をしている大男。
その巨大な体とは裏腹に、いかにも敵意のなさそうな顔に、細い糸のような目。つなぎの作業服に、頭にはタオルのバンダナを巻いている…それはテレビでよく見る「某開拓者たち」を彷彿とさせていた。
「んできたぁ」
そういうと試しにと、男はテレビに向かってリモコンを向ける。
──ポチッ…ザー……
映し出されたのは、海外アニメ…通称「カートゥーン」と呼ばれるものだった。
「あれ、バック〇バニーショー?」
「あの、ここってケーブル通ってるんですか?」
「はあ? ンなわけねえだろ! 高いんだから…」
家主であるフォックスの言葉に、本人含めた周りの者たちは「嫌な予感」に息を飲んだ。
「…おい、じゃあこれ」
「あぁ! うはぎしゃん! うはぎしゃん!!」
雪はそういうとテレビの前に座り込み、体を揺らし楽しそうにしている。そんな雪の姿を一瞥しながら、エースはアトラスを問い詰めた。
「おいアトラス、説明」
「ん~? "向こう"の電波をジャックしたんだあ?」
「したんだあ? じゃねえよ! もっと詳しく!」
「ん、こっちのチャンネルに直接受信するように設定したんだ」
「…what’s?」
「つまり、私たちの見ているテレビにだけ、"向こう"のテレビの映像が流れている、と?」
「んだなぁ。まあ設定変えちまったから、"向こう"がどうなったかは、知んね」
……マジカ。マジなのかコイツ。
恐らく、というか確実にこの暴挙は、雪を楽しませるためにやったのだろう。…うん、それはいい。
がこれは"向こう"にとっては、ある意味テロよりやばいんじゃねえのか?ジャックしてそのまま奪取なんて、とんだヒットアンドアウェイだよ!? しかも技術的に可能なのかそれ!!? いやそれを可能にしちまうのがコイツってのは分かってるけど!
…ニュース、確認するか?
いや、いいや! 俺は絶対見ねえぞ! この前のフォックスの件もあるし、もうあれだ、「見ざる言わざる聞かざる」だ! うん! そうしよう!!
…以上、エースの心の声をお送りしました。
「他に見たいのあったらぁ、遠慮なくいってくれなあ?」
「あい!」
「よーしっ! 俺はそれを遠慮なく阻止する!!」
「え、エースさん…?」
長戸がテンションが吹っ切れそうになるエースに心配の声を掛ける。
レンジャーズの中でも最も自由闊達とした性格…「アトラス」のある種の豪快さは今に始まったことではないが。
エースは未だに彼の考えが読めないでいた。具体的には「ちょっと気が向いたから世界滅ぼしてくる」と言ってもコイツならおかしくない、と思うほどに。
「お前なぁ!? そんな才能があるんだから無駄遣いすんじゃねえよ!!? 言っても聞かねえだろうけど!」
「んだなぁ」
「おーまーえーなあーー!!」
「無理無理wコイツを止められる奴なんていねえよw」
「あ、あの…ケンカは…;」
「おい、こういうのは黙ってやり過ごすものだ。馬鹿は死なねば治らん」
「んだなぁ」
菊月の言葉に、適当な相槌をするアトラス。
彼の「才能」…それは非凡なまでの"機械改造技術"。
幼少時代よりその片鱗を見せ、それは彼をその道へと導こうとしていた。高校は工業系へ、そして工科大学にと順風満帆の人生を拓いていた。…が?
「なあ、お前何でそういう仕事にいかないの?」
彼は何処へもいかず、今も着の身着のままの生活を続けていた。
恐らくだが、夢と現実の「格差」に踏ん切りがついていない…つまり本当に自分のやりたいことが見えないからこその現状であろう。…そんな彼を見兼ねたエースの言葉に、それでも彼は──
「んだなぁ?」
…と言って、本心を隠している…かもしれない。
「全く、お前はそんなんでry」
『遂に見つけおったぞ! 我が好敵手よ!!』
エースの言葉を遮るように発せられた声は、この場に居る誰とも一致しない「知らない声」だった。
「…え? 今のは?」
「窓から聞こえたか?」
「おいおいwここ最上階だぞ!?w」
「んだなぁ?」
「……」
全員、窓に向かって一斉に振り返る。
──そこにいたのは。
『むっふっふ』
したり顔をしながら空中に「浮いている」女性だった。
「「「「え”ぇえーー!?」」」」
一同が驚きの声をあげていると、女性はそのままベランダに近づき──
『よっと』
そのまま着地した。すぐに女性は「早く開けんか」というように窓をコンコンと叩く。
それに応じたのは直ぐ近くにいた榛名。ガラガラと扉が開かれると女性はそのままずかずかと押し入ってきた。
状況が呑み込めない一同を前に、彼女は勝手に話を始める。
「…まさかこんな所でお主と再会するとは、やはり吾輩たちは戦い合う運命かもしれんのぉ?」
そう睨む視線の先には──
「…」
──いつになく真剣な顔をしているアトラス。
「…え、アトラスの知り合いなのか?」
「マジか! w元カノか? 元カノなのかwwっていうか今どき「吾輩」ってwww」
「…あの? アトラスさん?」
「………」
──スッ
音もなく立ち上がったアトラス…そのまま女性を睨みつける。
…エースたちは驚いていた。何十年の付き合いの中で、彼のそんな顔を見たのは初めてかもしれない、と思ったからだ。
そんなアトラスを、不敵な笑みで睨み返す女性…果たして彼らの関係とは…?
「ん~? 誰だオメ??」
全員「だあぁ~~!!?!?(ズッコケ)」
「あんれえ? 皆どしたぁ?」
「いやお前がどうしたぁ!?」
「意味ありげに立ち上がってんじゃねえよ!?」
「いんやあ? 誰だっけかと思って、思い出そうとしてんだがなあ?」
「おま、それであんな険しい顔してたの!?」
…アトラスは、やはりアトラスであった。
「ふ、無理もない。あの時は一瞬の出来事。吾輩はともかく、お前は顔を覚えるまでもなかった、ということじゃろう?」
「向こうも都合のいい解釈してくれてる!?」
「いいだろう、思い出すまで吾輩たちの「馴れ初め」を聞かせてやろう?」
──ガタッ!!
どたどたどた………ガチャッ、どたどたどた、ガチャッ!
「今「馴れ初め」って聞こえたんだけど!!!」
「龍美ちゃん!?」
とここで、突然隣の部屋から乱入してきた龍美を加え、一行はテーブルを囲みながら謎の女性の話を聞くことにした。
・・・・・・
名乗るのが遅れたな? 吾輩は「根岸 利子(ねぎし としこ)」。
何れは工学の世界にその名を残すものよ! …まあ、今はそれはいい。
吾輩たちの出会い、それは吾輩が大学に通っていたころに出場した「ロボットコンテスト」まで遡る。
当時吾輩は、大学のサークルのチーム代表として出場していた。吾輩が率いておったのだ、当然そのチームは連戦連勝! ロボコンの決勝までカチ上がっていったのじゃ。
…そして決勝戦に臨む前、吾輩はある噂を耳にしておったのじゃ。
決勝で戦う相手…それは工学を学ぶものなら誰もが一目置く相手…。その図体のデカさに反して、繊細な技術でどんな機械であろうと意のままに改造する。
その名も…「コンバーター」。
当時の吾輩は、それはもう歓喜乱舞よ! 正に実力がモノをいう決勝に相応しい相手じゃとなあ!
…しかし、結果は「敗北」。
吾輩は終ぞ「コンバーター」を超えられなんだ…じゃが、吾輩は諦めなかった!!
その時から吾輩は誓ったのじゃ! …必ず、かならず腕を上げ、彼奴(きゃつ)に目にもの見せてくれるとな!
・・・・・・
「…ええと、詰まる所、利子ちゃん? はこいつにリベンジしたいってこと?」
「うむ! 概ねいやさドンピシャじゃな!! お主中々賢いのぅ?」
「いや…どうも…?」
「ふわぁ~、いい話だねぇ~? っていうかアトラス君にそんな色恋沙汰があったなんて、私知らなかったよぉ~!」
「いや絶対違えよなこれwwつうかこいつによりによってそっち方面で挑むなんてよwwww」
「んだなぁ?」
「…あの、利子さん? なぜアトラスさんがここにいるとお分かりになったのですか?」
榛名の問いかけに対し、利子はあっけらかんとした態度で答えた。
「ん? それはな! お主らのログを見たからじゃよ?」
「ログって…まさか俺たちのサークルの会話を見て!?」
「うむ!「んだなぁ。」なんていう奴そうそうおらんと思ってな?」
「いや結構…いや、いないか?」
「いないだろ普通は…お前たち、感覚が麻痺してるんじゃないか?」
「うぐっ、確かに;」
菊月に的を射た言葉をいわれ、反論できないエース。
「吾輩の事は良い! それよりそこの! 唐変木!」
「んぁ? トーヘン・ボクぅ? 誰だそら??」
「ワザと言っておるじゃろ!? 流石に! …まあ良い。吾輩を覚えてなくとも、吾輩を負かした責任をとってもらおう!」
「…具体的には、どんな?」
長戸が恐る恐る聞くと「よくぞ聞いてくれた!」と言わんばかりに彼女はテーブルからガタッと立ち上がった。
「もちろん「再勝負」じゃ! …あれから吾輩は「すぱこん」並みの我が頭脳を、更に磨き上げ、技術力も更にさらにパッワーアップしたのじゃ!!」
利子はこれでもかと自身を褒め称え、自分があの時とは違うことをアピールする。
そしてビシッ! と指をアトラスに向けると、高らかに宣戦布告した。
「さあ、吾輩のプライドを賭けて! いざ再戦の時じゃ!"源三"よ!!」
「ホントにアトラスに執着してんだな…本名まで知ってるとは」
「どうすんよぉ? アトラス君?」
「んえ? やだよオラ、めんどくせっ」
「ん”な”っ!?」
いつもの独特のノリで再戦を否定するアトラス。利子は予想外だったのか、大げさに驚いてみせる。
「な、なぜじゃあ!? 貴様勝ち逃げは許さんぞ!!」
「うーん? 別に勝ち負けとか、いいんでねえか?」
「まあ、技術勝負は「どこまで高められるか」が重要だろうから?」
「榛名もそう思います。…それに利子さんも充分凄いですし?」
「そうですね? …今更ですが窓からの「アレ」、CGか何かだと…」
「ん? 何のこと?」
「おお? これの事かの?」
龍美の疑問に答えるように、利子は立ち上がったままブーツのかかとを二回叩く。すると、利子の周りだけ無重力になったように、彼女はふわりと宙に舞う。
「い”ええぇ!!?!? ナニコレ!? ナンナノコレ!!?」
「ふふん! どうじゃすごいじゃろ!! 吾輩が開発した「無重力ブーツ」は!!」
「無重力!? す、すごい…」
「そうじゃろうとも、そうじゃろうとも! これを履けば遠かった空も身近に感じられ、雲のある高さまでひとっとびじゃ!!」
「(エース)いや普通に死ぬから!? 息できないから!!?」
「むぅ、そこなのじゃ? あんまり高度があると下が見れぬし、耳鳴りもひどい。っていうかさっきも危なかったこのマンション高すぎィ~」
ひとしきり言い終えると、利子はそのままふわりと着地した。
「しかもこれもまだ完全でないのじゃ? 無重力になれるのは「平面のみ」、宙返りなぞしたらそのまま真っ逆さまじゃ。」
「恐っ!?」
「ほぉん? んでもすごいだなぁ? オラにはそこまで思いつかねえだぁ」
「そ、そうか? いや、お主が言っても嬉しくないんだがな? まあ…なあ?」
そう言って、頬を緩ませる利子。もしかして、案外単純なのか? …そう思ったエースには、ある疑問が浮かんでいた。
「利子ちゃん? 何で俺たちの会話ログを覗いてたの? …コイツが絡んでいるにしても、おかしいと思って?」
「ん? …あっ!」
利子は思い出したかのように言葉を発した。
「そうじゃ! ここは「ヘンな夢」を見た者たちが集まるのじゃろう?」
「っ! 利子ちゃん! それって…?」
「うむ! 吾輩も見たのじゃ! それを! 調べたら海軍の船らしくてな? 吾輩の頭脳が「これはまだ他にいる!」といってそういう奴らを探しておったのじゃ!」
「そうだったんですか!?」
「因みに何を見たの?」
「ふむ、確か名は…「利根」じゃったか?」
「利根か…またすごいのが来たな?」
「なぁ? お主らこれが何なのか知っておるのか?」
エースたちは、自分たちが分かっている限りで、利子に現在までの経緯を説明した。
「…うーん、俄かには信じられぬが…」
「俺たちもだよ。だから今みんなで集まって、この夢が何なのか、どういう意味を持っているのかを調べているんだ」
「なろほどなぁ?」
(なろほどて…;)
何処か面白い個性的な言動を話す利子を見て、エースは直感で感じていた。
彼女は「そういう」肌の持ち主だと…現にここにいる「んだなぁ」と、どこか雰囲気が似ている…無茶苦茶な所とか。
まあ、また変な展開になりそうなので、余計なことは胸にしまっておこう…とエースは密かに考えるのだった。
そしてエースは状況を省みた、ある種当然の言葉を利子に掛けた。
「…ねぇ利子ちゃん、もし良かったら俺たちのサークルに入らない?」
「なぬっ!?」
「エースさん、それは?」
榛名の言葉にエースは小さく頷いた。
「利子ちゃんは頭が良いみたいだし、この夢についての見解っつうか、そういう意見も欲しくってさ? それにアトラスと戦いたいなら…いつでも戦えるように一緒に居た方が良いと思うんだけど、どうかな?」
「うーむ……」
利子は唸りながら辺りを見回して、次第に目を輝かせながら…。
「うむ! 面白そうじゃな! その夢は吾輩も気になっていたのじゃ!」
「それじゃあ…!」
「うむ、吾輩でよければ力になろうぞ? …とその前に、源三よ!」
「んん?」
「吾輩はお前と今すぐにでも決着をつけたいが、だからといって力量不足は否めん。…そこでじゃ!」
「?」
「これからお前の隣で、お前の技術を「盗ませて」もらう…それでどうじゃ? 吾輩としては精いっぱいの譲歩のつもりじゃが?」
「利子さん…!」
「吾輩のワガママでこの場の雰囲気も壊しとうない。…どうじゃ?」
「…ん、いいんでねえか? それで?」
アトラスは口の端を上げ、利子の提案を快諾した。
「よし! …ではこれからよろしく頼むぞ?」
「ああ! こちらこそよろしく!」
こうして、サークルに新たな仲間が増えた。
アトラスと共に工学の才能を持つ、天才肌の「利子」。果たして、彼女は一行にどんな結果をもたらすのか。…そして?
「…(ニッ)」
「珍しいな? お前がそんなに笑うなんて?」
「ん? そうけ? …んだども、これから面白くなりそうだなっと?」
「…そうか」
彼…アトラスに、どのような刺激を与えるのか──
彼のやるべきことを探す旅路は、まだ始まったばかりだ。
「んよし、久々に一からぁ、何か作ってみるだか?」
「お! 何じゃ? 何か作ろうとしとるのか? 吾輩を除け者にするなよ! 源三!」
「や”め”で!? それだけはっ! マジで勘弁してえぇ!!?」
「…ふん、また馬鹿が一人増えた、か?」
菊月は、一行のそんなやり取りを見て呟いた…だが、もう一人。
「(…ふうん? これは…「使える」な?)」
狐は何かを画策するように、その双眸で彼女を見据えていた。
〇子供か!
エース「あれ利子ちゃん? 何見てんの?」
利子「む? 知らんのか! 「仮面ライダード○イブ」じゃぞ! 雪と一緒に見とるのじゃ!」
雪「あい!」
エース「ああ、仮面ライダーね? …昔見てたけど、もういい大人だしなぁ?」
利子「何を言っとる! 人間いつまでも子供であるべきなのだぞ! それに仮面ライダーは名作ぞろいじゃからな!」
エース「いや否定はしねぇけどさぁ…ん? もうフィニッシュか?」
としこ「うむ! 仮面ライダーの見せ場じゃな!!」
ベ○トさん『Hissatu! fullthrottle!! furrllfull,foomulaa,taaihoou!!』
びーーーー ぼかーん!!
エース「!? うおおお!! 何今の!? ビームが!!! 極太ビームでたぁ!!?」
利子「なんじゃwお主も子供ではないか?」
エース「いやいやビームは別格だろ!! ビームは男の永遠の憧れだからなぁ!!(語彙力)」
利子「うむうむ、そうであろうて!」
雪「あい!(グイグイ)」
エース「え、俺も一緒に? し、しょうがねえなぁ~(ニヤニヤ)」
~30分後~
エース「(カションカション)変身!」
利子@ベル○さんの真似「どぅら~いう”! たーいぷ! すぴーど!!」
(BGM)チャラッチャラッチャ〜テレレ〜テレレ〜テレレテ!
エース「よっしゃあ! 悪党ども! 俺がまとめて逮捕してやるぅ!!」
雪「あい~!」
榛名「エースさん、楽しそうですね?」
フォックス「アイツ根っこが変わってねえんだよ、大人になっても…アレは「バカ」で「まんまガキ」だからなぁ?w」
龍美「それがエース君のいいところなんだけど…アレは流石に?」
アトラス「んだなぁ?」
利子@怪人役「わっはっは! 吾輩を捕まえられるかな!?」
えーす「いくぜ! ベル○さん!」
利子@ベル○さんの真似「おーけーだ、しん○すけ! すたーとゆあえんじんっ!!」
フォックス「お前らハマりすぎだろ…利子のヤツとか一人二役て…」
榛名「エースさん! 榛名も一緒に戦います!」
エース「おう! 一緒に行こうぜ! 「○ッハ」!」
榛名「ま、まは? …え、ええと、おう! いぃ一緒にやってやろうぜ!」
エース「違うって! マッ○は主人公を「し○兄さん」って呼んでいて…」
龍美「榛名ちゃん、ほっとけばいいのに…」
フォックス「っていうかいつの間にそこまで設定調べたんだよ! ほんとガキかよ!?」
アトラス「んだなぁ。」
エース「fooo! やっぱ特撮はいくつになってもサイコー!!」
榛名「…うふふ♪」