艦隊これくしょん―七十年後の君へ―   作:謎のks

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 ○前回のあらすじ

 エースは、榛名の失った記憶…彼女の「人としての記憶」を取り戻すため、サークルを立ち上げた。
 そこに集まったのは、榛名と同じ「軍艦の記憶」を持つ年もバラバラな少女たちだった──
 そして、彼のそんな行動が一人の「嵐」を呼び寄せた。
 根岸 利子(ねぎし としこ)…アトラスと因縁浅からぬ彼女が、彼らの仲間になった。
 果たして、これがどのような結果を生むのか…?


第六話 光明

「司令官! 青葉、見ちゃいました!」

 

 ダンと机を両手で叩き、立ち上がって食い気味に彼女の「司令塔」に話を振る。

 

「…ええと、青葉ちゃん?」

「はい! 何でしょう司令官!!」

「俺は「エース」ね? …何で司令官なの?」

「私の記憶違いでなければ、軍艦を指揮する立場の人を「指揮官、又は司令官」と呼ぶはずです!」

 

 ポニーテールを揺らしながら答える青葉。確かに彼女の言う通りなのだが…。

 

「青葉ちゃん? 俺は「何か新しい情報はないか」って聞いただけだよ?」

「はぁっ! 自分は司令官の部下であります故、立場を弁える所存でありまーす!」

 

 敬礼しながら、まるで心のこもっていないセリフをいとも簡単に言う。年若いのにある意味しっかりしているというか、掴み所がないというか…エースは彼女にフォックスのような隙のなさを感じ取った。

 

「(情報通って、皆こんな感じなのか…?)」

 

 心で思いながら、ふと彼は辺りを見回す。

 

 話に出たフォックスはと言うと、今日は珍しく留守にしていた。

 榛名はいつものように子供たちの相手をしていた。今回は潮音と初花に勉強を──教えて「貰っていた」。

 

「成る程…数字って面白いですね!」

「榛名さん、結構賢い人みたいなのに…算数も漢字も知らなかったなんて」

「し、潮音ちゃん…?」

「…はわっ!? わ、私ったら…す、すすみません!」

「いえ! それよりもっと教えて下さい! えーと次は…理科とはどういうものでしょう?!」

 

 榛名は興奮気味になりながら、理科の教科書を両手で前に出すと、小学生に「学」をご教授願った。…側から見れば「珍百景」になりそうな場面だった。

 

「(あれも記憶に関係あるのか…?)」

 

 エースは榛名は「常識はある方だ」と思っている。礼儀正しく、更に料理や言葉もハキハキと話せた。なのに「座学や知識」といった一回り上の「常識」は彼女には無かった。

 勿論、世の中にはそういった環境の人間もいるが、ここ日本においては「それだけ」で異様が際立っていた。

 

「(何にしても、今はまだ何も言えないか…)」

 

 次にエースが見やったのは、部屋の端で設計図を広げ、何やら話し合っている二人の工学研究者。

 

「これはどう表現したらいいだぁ?」

「うーむ…これは……こうかの?」

「おぉ〜! んだら次はぁ」

 

 ──アトラスと利子。

 因縁ある二人は、過去を水に流し(ついでにエースの制止も聞き流し)現在は共同で何かを「開発」しようとしていた。

 

 …エースは嫌な予感がしながらも目を伏せ、青葉の方へ向き直る。

 

「…で? 情報は?」

「はいはい〜。実はですね? 新たな「記憶」の持ち主を見つけた…というか、それらしき人がいるという噂をキャッチしましたー! ワー! (≧∀≦)」

 

 大げさに振舞いながら、青葉は艦の記憶の持ち主らしき人物を聞いたと言う。

 

「おお! それだよ!! で、どこに?」

「はいはい、ここから近場ですかねえ? …「伊勢崎剣道」という道場なのですが…」

 

 

 

 

・・・・・

 

 青葉に連れられ、件の伊勢崎道場を目指すエース。その傍らには──

 

「むふっ」

「あの…利子ちゃん? 何でついて来てるの?」

「面白そうだからじゃ!」

「んだなぁ」

 

 アトラスと利子もくっついて来ている。

 まあそんなことだろうと思っていたエースは、構わず青葉に情報を聞く。

 

「青葉ちゃん? 伊勢崎道場って結構昔からあるやつじゃ?」

「んーそですねえ? 元の元は江戸時代後期、又は明治初期から始まったと聞いています。まーいわゆる派生流派ですねぇ? その道場はいまから約50年も前からあるみたいです」

 

 徒然と情報を垂れ流していく青葉。…なるほどと思いながら、エースはふと考えなく頭に浮かんだことを聞いてみる。

 

「…ねえ、何でコードネームしか名乗らなかったの?」

「おやおやぁ? 貴方がたが言い合っているからと思ったのですが?」

「あ、そうか。ごめん…警戒されてるのかと思って? ちなみに俺は」

「んふふーん? その辺は調査済みですよぉ? 貴方が進一さん。後ろの巨漢さんは源三さん。ですね?」

「んだなぁ」

 

 既にエースたちの身の回りを調べ尽くしたと見える青葉、流石情報収集を自己志願しただけはある。これなら伊勢崎道場も間違いない。…とエースは更に気になっている点を青葉に尋ねた。

 

「じゃあ北上ちゃんも?」

「あ〜彼女は…ただ恥ずかしがり屋さんなだけでは?」

「ええ…友達なんでしょ、なんか他人行儀な」

「まークラスは同じですが、友達というか、席が隣同士で愚痴を言い合うぐらいですかねぇ?」

 

 …それは友達ではないのか? 女の友情は分からん。と思うエース。

 

「でもそこはプライバシーもありますし、彼女の本名は明かせませんが…あ、私は「葉月青子」と言います」

「え!? そこで言っちゃう感じ!!?」

「アレは北上ちゃんに合わせただけで? 貴方がたは信用できるみたいですし、良いかなって?」

 

 何とも食えない娘だ、とエースは思った。だがフォックスのような憎めない感じもするので嫌な感じは無かった(寧ろむこうより「しっかり」していて好印象)。

 

「そっか…じゃあこれからもよろしく、青子ちゃん!」

「はい! お任せください「司令官」!」

「エースね…?」

 

 ──と、ここで曲がり角を曲がって、右を見ると大きな門が出現した。木造でいかにも高級な門は、一行の前に聳え立った。

 

「ここか…?」

「うむ、そのようじゃ。というかアレがある」

 

 利子が指差す方向に、門の横に立てかけられている「伊勢崎流剣道指南道場」なる看板が。

 

「ええっと、来たはいいけど、これからどうすれば?」

「そこはこの青葉に…いえ、青子にお任せ!」

 

 青子によると、伊勢崎側には事前に「アポ」を取っているらしく、門をノックすれば聞きつけてくれるらしい。

 

「いきなり押し掛けるのもいいですが、やはり信用第一な世の中ですからねえ?」

「流石、頼りになるぅ!」

「むふ! もっと褒めてもらっていいですよ~?」

「…煽てると調子に乗るタイプと見たの」

「オメと同じだ」

「失敬な!」

「静かに! …よし、行くぞ」

 

 エースは緊張の面持ちで、門をノックした。

 

 

 ──コン、コン。

 

 

「はーい!」

「っ! 来た!?」

 

 奥から声が聞こえてくる、しばらくして門の横に備え付けられた小さな扉から現れたのは、髪を束ね道着を着た快活な印象の女性だった。

 

「…あら? もしかして貴方たちが?」

「はい、電話で連絡させてもらったものです。今回はご無理を通して頂き、誠にありがとうございます」

 

 青子が仰々しくお辞儀すると、女性は朗らかに笑う。

 

「うふふ、いいのよ。…それにしても」

「…? 何でしょうか??」

 

 エースのことをジッと見つめる道着の女性は、一言。

 

「…貴方、いい男ね?」

「ふぁ!?」

「残念じゃがこいつは彼女もちじゃ」

「とーしこちゃああん!!?」

「あらそうなの? ごめんなさいいきなり。私考えより口が先に出ちゃうタイプなの」

「んだなぁ」

 

 道着の女性の笑顔と弁解に、相も変わらず適当な返事をするアトラス。何だが口が達者な女性のようなので、一応エースは話に区切りを入れる。

 

「あ、あの! 諸々の話は、中の方で…?」

「そうね? じゃあどうぞ! …んふ、可愛い」

 

 小声でそう言う女性が妙に猟奇的に見えたエースは、身震いするのだった。

 ともあれ、落ち着いて話せる場所まで女性に案内してもらおう…と考えていたエースたちだったが、彼女に連れられて来たのは「剣道道場」だった──

 

「あの、僕たちは…」

「分かってる。入門者じゃないのは知ってるけど…「あの子」いつもここで鍛錬してるから」

「…え?」

 

 女性が徐に道場の扉を開けると、そこには直線的に前後にすり足で歩き、一心不乱に竹刀を素振る…男と見紛うショートヘアの道着の女性の姿が。

 

「フッ……フッ……」

 

 彼女は素振りに夢中で、どうやらこちらに気づいていないようだ。

 

「日向(ひなた)、お客さん」

「…ん?」

 

 声に反応すると、中性的な女性はこちらを見やった。

 

「…何だ? 入門希望者か?」

「違うわよ。ほら、最近見る夢。アレを調べてる人たちだって」

「ほお?」

 

 日向と呼ばれた女性は、ジロとこちらの眼を見据えた。それは心に入り込み、こちらを見透かすような…厳しく、それでいて真摯な眼差し。

 

「あの…?」

「…そうか」

 

 にこりと笑う女性。どうやら信用してもらえたようだ。

 

「ご足労痛み入る。私は伊勢崎流師範代を任せられた「伊勢崎 日向 (いせざき ひなた)」と言う…よろしく頼む」

 

 礼儀正しくお辞儀をする。直角でそれでいて自然、普段から作法を重んじる様子が窺えた。

 

「あ、どうもエース…あ! えーと、これは…」

 

 エースはどこか堅苦しい雰囲気に参っていた。それを見た日向は…ふふ、と優しく微笑む。

 

「いやいい。すまないな? こうでも言わんと師範代の面目が立たない、私はあまりそういうのは気にしない」

 

 少し砕けた口調で話す彼女を見て、ホッと胸を撫で下ろすエース。

 

「師範代って…その、お若いですね?」

「ん? …ふ、ははは! 君面白いな?」

「? え??」

「いや。…そうだな? 父に先立たれ、母は病弱でな…私が継ぐしかなかった、という事情もある」

「あ……すみません」

「いや…」

「ちょっと、納得いかないんだけど?」

 

 エースと日向の会話に割って入る先ほどの女性、女性と日向の顔はどこか似ているので、どうやら姉妹のようだ。

 

「…ん? 何だ月子(つきこ)?」

「何だ? じゃないわよ。長女の私が看板を背負うはずだったのに、アンタの方が腕が立つからってお父様から師範の資格を受け継いだの忘れたの?」

 

 少し怒り気味に話す月子と呼ばれた女性。日向は真っ直ぐに月子を見ると訂正する。

 

「その話は断ったはずだが? 師範の座はお前のもの。ならば私は剣を教えるだけでいい」

「だから、置きものはイヤだってこと!」

 

 …成る程、複雑な家庭の事情があるのか。とエースは少し険悪のような二人の仲裁に入る。

 

「あの…込み入った事情があるようですが、出来ればお話を?」

「ん? おお、そうだった。すまないな、少し熱くなってしまったか?」

「そうよ? 日向って見かけによらずすぐ熱くなっちゃうんだから」

「はは、見た目は余計だ!」

「うふふ」

 

 二人が和やかに話す。どうやらアレは彼女たちなりのスキンシップのつもりだったようだ。

 伊勢崎姉妹とエースたちは道場の壁、「心剣非負(下に"シンケンマケニアラズ"と書いてある)」の掛け軸の前に集まると、向かい合うように正座する。

 改めて、今回の要件を話し合うのだった。

 

「先ずは、改めて来訪を感謝する。伊勢崎流剣道指南役、師範代の日向だ」

「私は…「一応」師範の「伊勢崎 月子(いせざき つきこ)」よ。よろしくね!」

「えっと、俺はエースです。あ、やっぱりコードネームじゃ…?」

「ほう? いいじゃないか、コードネーム。私も小さい頃、よくやったよ」

「んだなぁ」

「言われとるぞ、エース」

「うわあん! 本名は進一ですぅ!!」

「んふ…やっぱり可愛い」

「そうだな? …他の者は?」

「我輩は利根である! 名前はある」

「知ってるよ!?」

「まあ冗談じゃが? 本名は利子と言うのじゃ、好きに呼べぃ」

「オラはアトラスっつーもんだ。名前は源三だぁ」

「青葉です! 名前は青子と言います!」

 

 それぞれの自己紹介が終わると、そのまま本題に入る。

 

「そうだな…あれは大晦日だったか?」

「そうね。私たち同じような夢を見たの、海の上を走っている夢だったわ」

 

 伊勢崎姉妹が言うには、自分たちが船になって、何かを必死に避けながら走っている夢。同時に、何かを「輸送」する場面も映ったと言う。

 

「名前は分かりますか?」

「ふむ、何だったか」

「ほら、アンタと同じ「漢字」の! 読みは違うみたいだけど?」

「…それって「日向(ひゅうが)」とか?」

 

 おお、鋭いな。と見事言い当てたエースに日向は感心している様子だった。

 エースは表情が険しくなりつつ彼女たちの記憶の主について想起する。──日向、並びに伊勢(いせ)とはまたしても武勲と豪運を併せ持つ航空戦艦姉妹。

 様々な作戦、海戦において、どんな絶望的な状況であろうとも任務を「成し遂げる」という奇跡を連発した。

 主なものとして、敵艦載機の爆撃、並びに潜水艦の雷撃などの数々の攻撃を避け切ってみせた。

 

「(彼女たちも榛名と同じ、あの戦いを「生き」抜いた………? 待てよ)」

 

 ここでエースは自分の中である考えに至る。それは、この夢の「法則性」に関連するかもしれないものだった。

 

「…どうした?」

「えっ? あ、いや。すみません」

「…ふむ。エースよ、どうやら気づいたようじゃな?」

「っ! 利子ちゃんも?」

「うむ、何となくじゃがな? …そうでなければおかしい話である、かの?」

「…ねぇ? 今さらだけど、貴方たち何であの夢を調べてるの?」

「それは──」

 

 月子に促され、エースはここまでの話を全て姉妹に聞かせた。

 

「…なるほどな?」

「そんな大事になってたの?」

「はい…あの、今更なんですが信じてもらえたんでしょうか?」

「まぁ~変な夢見た後だし、君が嘘をついてるようにも見えないし? …ねぇ?」

「…そうだな?」

 

 二人はエースを信用してくれるようだ、ありがたいと思いながらこれからのことも話し出す。

 

「榛名をつけ狙ってたヤツらは、まだ姿を見せてません。でも何れ向こうから接触してくるはず、それまでに」

「彼女の記憶を思い出させようと? …ふむ。些か無謀ではあるな?」

「ちょっと日向!」

 

 日向の的を射た言葉だが、月子は日向に喝を入れる。彼女は構わずエースに問いかける。

 

「エース君。仮に彼女の記憶が戻ったら、君はどうするつもりだ?」

「どうって?」

「彼女を「付け狙う」ということは、連中は患者を連れ戻そうとする病院側…という訳でもないのだろう?」

 

 エースがあの日聞いた男二人の会話。怒号を飛ばし合い榛名を血眼で探しているように感じた…遠目から見ても善意の行為の可能性は「皆無」に等しい。

 

「はい…これはあくまで俺の直感ですが、アイツらが榛名を狙う理由は「記憶(これ)」しか思い浮かばない」

 

 艦の記憶を持つ少女たちは他にもいる、しかし榛名には記憶と「それ以上の何か」があり、連中はそれを踏まえて榛名をつけ狙っている。そう感じ取るエース。

 

「私もそう思う…だからこそ君に何が出来る? と聞きたいのだが」

 

 真っ直ぐエースを見つめる日向。それは覚悟を問われているように感じた。

 

「彼女が記憶を取り戻し、それで何らかの事柄が明らかになり、そこからまた考えようというのなら、浅いとしか言えないな。…彼らが政府関係者にしろ軍関係にしろ、私は彼らが「一筋縄ではいかない」ように感じる」

「…そうでしょうね。仰る通りです」

「なれば、君は如何にして彼女を守るというのか? 「記憶が戻ったらそれまで」か?」

「…お恥ずかしいですが、まだそこまで考えていません。彼女が何者にしろ、俺は彼女に笑顔でいてほしい…暗い顔や不安な顔は、見たくないだけなんです…」

「あら…?」

 

 月子が「面白くなってきたわねぇ?」と言いたげなニヤついた顔を浮かべる。日向は一貫して鉄面皮で問答を続ける。

 

「なぜそこまで彼女にこだわろうとする? 君には何の関係もないだろう?」

「…俺は、あの日彼女に会う前、彼女の夢を見ました」

「何?」

 

 エースは自分が「艦の夢」を見たことを日向に話す。

 

「それが偶然なのか、今は分かりませんが…それでも俺は、夢の中の彼女のような悲しい顔はして欲しく無いんです」

「…それだけか? それだけの理由で?」

「はい…俺は昔からこんな性格だから、よく怒られるんですけど…それでも「助けたいから助ける」じゃ駄目ですか?」

「………」

 

 日向が言葉を止めると、重い沈黙が続いた。そして──

 

「…ふっ、ははははははは!!」

「ひ、日向!?」

 

 月子が驚くほどの豪快な笑いをかます日向。どうやら普段の彼女からはありえない光景のようだ。

 

「ははっ! いやすまない…君は中々の傑物のようだ」

「え? ど、どうも…?」

「しかし、そうか…そういうことなら、協力も吝かではないな?」

「どういうことですか?」

 

 エースが言うと、日向は暖かい微笑みを向けながら話す。

 

「どうだろう? 私を君たちの用心棒として雇うというのは?」

「えっ!? いやそれは…」

「遠慮するな。助けたいから助けるのだろう? 私なら「不測の事態」にも対応できるだろうし、何より君は…失礼だか危なっかしく見える、放っておけない」

 

 日向が先程の一見冷たい態度から一転し、親身になって提案をする。それを見た月子は。

 

「良かったわね? 日向はそんじょそこらのヤツには絶対負けないから!」

 

 と太鼓判を押す。…確かに道場の師範代を任せられるような人だ。守ってもらえるなら有り難い…が。

 

「でもいいんですか? 道場の方は…留守にしてもらうわけにも?」

「それこそ心配いらないわ! ここは私が何とかするから!」

 

 自分が代わりに道場を取り仕切ると、ドンっと胸を叩いて言った月子。日向も頷く。

 

「うむ。「伊勢」なら心配ない」

「あ、やっぱりお姉さんも?」

「そうよ? 貴方たちからしたら伊勢がコードネームになるかしら? まあ私は何ともならないけど、その代わりひな…いえ、日向(ひゅうが)をよろしくね!」

 

 トントン拍子で進んでいる話。ノリが良いといえばそれまでだが、それでもその気持ちは心強かった。

 断るのも失礼と感じ、エースは彼女たちの提案を受け入れるのだった。

 

「では改めて…よろしくな? エース君」

「はい! お願いします、日向さん!」

「オラに任せとけぇ(きらーん)」

「お前じゃねぇよアトラス!?」

「ふっ、お手並み拝見といこうか」

「しゅっ、しゅっ(しゃどーぼくしんぐ)」

「いや対抗しようとすんな! 無理だからな!?」

「ちょっちゅねー(具○堅)」

「(青子)あはは! 利子さんちょっと似てる!! w」

「ええい! 真面目にやれオノレらぁーーー!?」

 

 エースたちのいつものやり取りに、道場は和やかな雰囲気に包まれる。

 彼はこれからも、榛名を守るため戦い続けるだろう…彼女の笑顔が絶えない一筋の「光明(みらい)」を胸に宿しながら──

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 ──だが、この裏で動いてる影があることを、エースたちは知らない…それは。

 

「んじゃ…行くかな?」

 

 何事かを企む「狐」…果たして何を謀るのか?

 ニヤリと嗤う彼の視線の先には、何が待っているのか…?

 




○慌てないあわてない

榛名「では、勉強を教えて頂いた代わりに、お料理を伝授します!」
潮音「うう…私、料理ニガテ…;」
初花「潮音ちゃん、家庭科の授業で先生に怒られてたものね…?」
潮音「うん…隣の席の明里ちゃんに「不器用すぎるわ!!」って怒られて」
初花「そういえば…榛名さんは、どこで料理を?」
榛名「へっ? うーん、覚えてませんが誰かに教わったような…?」
潮音「それ、結構大事な情報じゃ?」
榛名「ごめんなさい、これ以上は霞がかっていて…」
初花「い、いえ私たちこそ…」
潮音「でも、お料理してたら元に戻るかも…!」
榛名「そうですか? では試しにやってみましょう! まずは基礎的な部分から取り掛かりましょう!」

二人「はいっ!」




・・・それから・・・

エース「ガチャ)ただいまー」
榛名「あっ! エースさんお帰りなさい!」
エース「おう榛名…ん? 何かいい匂いが?」
榛名「はい! お料理を…作ったのですが……」


~リビングいどー~


エース「っ!? なんじゃこりゃ!? サンドイッチに、クッキーに、デコレーションケーキ!!? こんなにたくさん…」
榛名「すみません…お料理を教えていたら、夢中になってしまって?」
潮音「ごめんなさい……(しゅん…)」
エース「うーむ、しかし…どれも美味そうだぞ?」
初花「え? それって」
エース「うむ、すなわち皆でパーティー出来るということだ!」


たつみん「パーティーと聞いて」
アオバワレ「スクープと聞いて!」
隼子姐「酒が飲めると聞いて!! (ヒャッハー!)」


エース「おぅ、皆準備バッチシだな! よーし、今日は皆で騒ぐぞー!!」

パリピ共「いぇーい!!」

潮音「うーん、榛名さんの記憶が…」
初花「焦ってもしょうがないよ? 「急がば回れ」だよ?」
潮音「…そうだね?」
榛名「お二人共? 早く食べないと、皆に取られちゃいますよ?」
潮音「あっ! 私のはあんまり食べない方が…」
エース「おー、このパンダのクッキーは誰の? すごくおいしい!」
潮音「はわっ!? そ、それはネコちゃんで…あ、あの……」
初花「(猫なんだ…;)」

※このあとメチャクチャパーティーした。
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