『守る』って何だっけ?   作:リハビリ中

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第1話 全ての始まり

○月×日

 

 俺は今日から日記を付けようと思う。というのも、弟が生まれたからだ。

 

 いや~、両親に弟か妹が生まれるよって聞かされてから約半年。長かった。

 毎日毎日、早く産まれて来いとwktkしつつ近所の社に安産祈願をしてきた。長かった。

 その間、図書館で育児関連の本を読み漁って色々と予習してきたんだよ。長かった。

 長かったけどそれも昨日までの話! 今日から俺はお兄ちゃんだ!

 

 ま、実を言うと昨日までは妹が欲しいなって思ってたんだけどね。だって10歳も年が離れた弟じゃあ、思いっきり遊べないじゃん。だからいっそ、思いっきり可愛がれる妹が良いなって、口には出さなかったけど考えてた。

 

 でも違った。俺ってば赤子を舐めてたわ。

 

 何だアレ何だアレ!! 

 生まれたばっかで猿みてぇなのにそれでも分かるぷくぷくほっぺとか!

 ちみっちゃい紅葉お手てとか!

 むにゃむにゃ言ってるたどたどしい様子とか!

 天使か! 天使だな!!(確信) 将来どうなるかは解んねぇけど、少なくとも現状では天使以外の何者でもねーわ。

 

 ま、そういうわけで。そんな弟の成長記録も兼ねて、これから日記を付けていくことにしたのだ。

 

 でもそんなホクホク状態の俺にも、1つだけ気がかりがある。どうやら今回の出産の負担が大きかったらしく、母が体調を崩してしまったのだ。

 だからだろうか。母はベッドの上で弱弱しい笑みを浮かべながら俺に言った。俺はお兄ちゃんなんだから、弟の事をしっかり守ってやれって。速攻で頷いた。

 

 あぁ、当然だとも! 心配するな母よ、俺は何が何でも弟を守るぞ! 手始めっていうか、目下の敵は……父だな。

 

 

 

 

 

○月△日

 

 母の体調の悪さはガチらしい。産後の肥立ちが悪いと言う奴だ。父も昨日から母に付きっきりである。このまま行くと、母は入院したまま弟だけ退院になるだろう。そうなったら俺が弟の面倒を見なければ。俺も先日忍になったが、まだまだ雑用ばかりの新米下忍。時間はある。

 心配するな父母よ。確かに俺は世界的にも稀に見るレベルのぶきっちょに生まれ付いたが、この約半年の間、生まれてくる妹or弟のために色々なスキルを寝る間も惜しんで習得したのだ。そんな俺に死角は無い(ドヤァ)。

 

 とはいえその母も今すぐどうこうという程差し迫ってるわけでも無いようで、父も別の事を考える余裕はあるらしい。

 

 別の事……そう、弟の名前である。大事だ。めっちゃ大事だ。そしてこれこそが、俺が父を敵視する理由である。

 何故なら父の名付けというか、ネーミングセンスは最悪の部類に入るからである。ソースは俺自身。俺の名前こそが父のソレのアレさを雄弁に物語っているのだ。

 

 なので俺は考え込む父に滔々と語った。要約すると、名前とは親から与えられる最初の贈り物であり、それによっては後々学校で苛められたりグレてしまったりする場合もあるのだから極めて慎重に考えなければならない、そのせいで俺もさんざん苦労したんだ的な感じで。

 アカデミーで苛められてたのかい!? と父は驚いていたが、何故そこで驚くのか解らん。俺の名前なんて苛めてくれっていうか、からかってくれって言わんばかりの代物じゃないか。しかし心配するな、そんなクソガキどもはキッチリと血祭りに上げて来た、と返すともの凄く項垂れていた……おい、本気で気付いてなかったのか?

 めっちゃいたぞ、そういうのを突っついてくる奴ら。似たような状況に置かれることが多かったハバネロと結託して暴れ回ったわ。

 

 ま、あれだけ言えば少しは慎重になってくれるだろう。俺も明日は任務があるし、今日の日記はここまでにして早目に寝よう……昨日は興奮して中々寝られなかったし。

 

 

 

 

○月□日

 

 マジか……マジか………………

 

 

 

 

 うん落ち着こう落ち着こうビークールビークール忍は慌てない……フゥ。

 

 全然落ち着けてないけど、自分を無理矢理落ち着けるために日記帳を開いた。混乱した頭を纏めるには客観的視点を持つのが1番だ。日記はそのためのツールである。

 

 まず現在地。ここは木ノ葉病院の一室、そして清潔なベッドの上。

 目覚めたらここにいた。頭に軽く包帯が巻いてあるし、最後の記憶が任務中にうっかり足を踏み外して木から落ちたことだから、そのせいで頭を打ってここに運ばれたんだろう。

 

 いや本当、うっかりしてた。結局昨日も中々寝られなかったからな……でもそんな言い訳は通用しない。次からは気を付けよう。

 ちなみに寝不足な俺の事を、チームメイト×2及び先生は生暖かい目で見てた。あの人たちはここ最近の俺の浮かれっぷりを見てたからなぁ。実際に兄弟が生まれたら有頂天になるだろうとは予測してたらしい。祝福の言葉もくれた。

 任務開始前の待ち時間にチームメイトの1人に弟の名前が気がかりだって愚痴ったら、一緒に考えようかって言ってくれたし。その善意100%の申し出はとっても嬉しかった。そして勿論、速攻で断った。うん、めでたいって思ってくれてるんならお前は……お前だけは絶対に名付けに関わるんじゃねぇ。絶対に父さんが考えたやつよりもおぞましいのが出来上がるわ。

 

 おっと、話が逸れた。いかんな、やっぱり混乱が収まってないらしい。

 

 任務自体は上手く行ったんだよね。今日の任務は迷いネコの捜索。ターゲットはしっかり見付けて捕獲した。そしてその直後に俺は落下。ワラエナイ。

 

 そしてもっとワラエナイのはこの先。

 

 頭を打ったせいか、俺は前世の記憶を思い出してしまいましたとさ。まる。

 

 ……つまりどういうことだってばよ!? その通りの意味だってばよ!?

 

 いや本当、こうとしか言いようが無いわ。幸いなのはあくまでも『記憶を思い出しただけ』なのであって、『人格を乗っ取られたわけじゃない』ってことだろうか。

 

 前世の俺は、日本という平和な国に住む人間だったらしい。日本には様々なサブカルが溢れていて、その中には『NARUTO』という全く忍ばない忍を題材とした人気漫画があった。

 忍。そう、忍である。

 遠回しに言ってもどうにもならないから、単刀直入に本題に入ることにする。

 

 どうやら俺は『NARUTO』の世界に転生していたらしい。

 

 マジか……マジか……。

 

 いや、正確には『NARUTO』の世界ではなく、『NARUTO』に酷似した世界なんだろうけど。だって『NARUTO』(一々書くのが面倒なので、以下は『原作』と記す)じゃ俺、いなかったもん。

 

 けどそんな事実は慰めにもなりゃしない。ちなみに今、俺は右手で日記を書きながら左手で頭を抱えている。頭痛が酷い。そして俺を取り巻く環境も酷い。というか、俺の周囲にいる人間の未来が酷い。

 

 改めて原作に置いて我が家族・友人・恩師の辿った未来を1つずつ思い起こしてみる。うん、酷い。(確信)

 

 あの、ちょっと泣いてもいいですかね?

 

 ……って、いかん!! 泣いてる場合じゃ無い!! もしも原作通りに物事が進むとしたら……ヤバい!! 日記書いてる場合じゃ無ぇ!! 止めなければ!!!

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 俺は日記帳を閉じた。必ず、かの邪知暴虐の男を除かねばならぬと決意した。俺には由来など解らぬ。俺は、ただの無知な子どもである。けれどもコレに関しては、人一倍に敏感であった。

 

 ……って、メロスごっこしててもどうにもならないな。早く行かねば。

 

 白い病院衣から着替えることも無く、俺はまず母の病室へと向かった。母が入院しているのもこの木の葉病院なのだ。

 そしてそこには入院中の母と弟がいた。弟は平和そうな顔ですやすやと眠っていたが、母は起きていた。俺の怪我に少しばかり目を見開いたが、俺とて一応は忍の端くれである。大したことが無いなら、とそこまで気には留めていなかった。

 しかしそう、病室にいたのは母と弟のみなのである。あの男はいない。母にその行方を尋ねると、どうやら役所へと向かったらしい。さらに突っ込んで聞くと、肝心の『ソレ』は既に決まったとのこと。どうやら原作と同じようだ……遅かったか。

 盛大な舌打ちを溢したい所だったが、衰弱した母にあまり心労を賭けたくは無いのでこの場は堪える。

 

 ふと、弟の手を突く。小さな手だ。まだ何も知らぬ無垢な手である。俺が守らねばならない存在だというのに、まず一歩目から躓いてしまったというのか?

 

 ……いいやまだだ。まだ終わらぬよ。

 

 ぎゅっと俺の指を握った小さな手の意外な力強さに目を細めつつ、俺は諦めかけた己を恥じた。

 そう、役所にアレが提出される前に捻じ曲げてしまえばいいのだ。諦めてはそこで試合終了なのである。俺が諦めるのを諦めろ!!

 

 決意を新たに、俺は母に一言掛けてから病室を出る。そしてそのまま走り出した。目的地は役所。

 そう、今の俺の気分はまさにメロス!

 

「待てやこのクソ親父ッ!! テメェ、んな名前を付けられるガキの気持ちも考えろやこの野郎がァァァァァァァ!!!」

 

 道中そんな思いの丈を吐き出してしまったけれど、それもご愛嬌である。きっと俺は悪くない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

○月☆日

 

 間に合わなかった。

 

 昨日、俺は全力で駆けたが既に事は成った後だった。俺が役所に辿り着いた時、あの男……父はとうに弟の出生届けを出してしまっていた。それにより弟の名前は決定した。

 そんなに気に入らないかい? って聞かれたけど、当然だろうが。俺がそれでどれだけ苦労したことか……! ま、弟の方が俺より少しはマシな代物な気はするけどさ。

 折角忠告したのにこんなことになってしまい、俺の怒りは諸悪の根源たる父へと向かった。なので昨日から口を利いてない。結構しょげてたけど知るもんか。

 

 そもそも、俺は俺にこんな名前を付けた時点で父に一定の恨みを抱いてるし。絶許だし。何だよコヤシって。はたけのコヤシって。ある意味素晴らしいセンスだわ! 勿論悪い意味でな!!

 

 すまん弟よ、非力な兄を許してくれ……本当、もう少し早く気付いてりゃあな……。

 

 しかし業腹ではあるが、決まってしまった以上は仕方が無い。よくよく考えたら、我が弟を待ち受ける運命は名前の1つや2つなんて気にしちゃいられない程苛酷になる可能性高いし。

 

 いやうん……本当……もうね……なにこれぇ?(棒)な感じだよ。

 

 母よ。弟を守るというあなたとの誓い、俺はどうしたらいいんですかね?

 

 

[日記は続いている。この日の日記はやたら長い]

 




この作品を書いた理由

①リハビリ

②日記形式を書いてみたかった


ちなみに次話は丸々状況把握に費やされます。

需要はあるのだろうか……?

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