おいでよ獣狩りの町 あの田舎町ヤーナムがオバロ世界にインしました   作:溶けない氷

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アンゲリカ「うーん これ使ったらラキュースに私の赤ちゃん孕ませられるかな?」カレル文字 アンゲリカの蠢き


Hunt 20 ラキュース

「アンジェ・・・全くどこに行ったんだ?」

王都の上空に『飛行』の魔法で飛び上がったイビルアイは

アンジェを探して街の建物の上からあたりを見渡していた。

本来なら、王都内での『飛行』魔法を緊急時でもない限り使うことはないが

今がその緊急事態だ。

ドラゴンが監視の目もなく歩き回っている、それくらいの危険度。

(まずい・・・まずいぞ・・・)

時が経つにつれてイビルアイの焦りは募るばかり、

そもそも自分が目を離したのがいけないのだ・・・

なんで、250歳とはいえ見た目幼女の自分が大人の面倒を見なけりゃいかんのだ!

だいたいあいつもあいつだ!

幾ら珍しいからって自分がいることを忘れなけりゃこんな事には・・・

と思いながら辺りを見渡すと、かすかに臭ってきた

吸血鬼としてのイビルアイの鋭い嗅覚に反応する血の匂い、そして人々の騒ぐ声・・・

ああ、遅かったなとイビルアイはどこか達観した気分で現場に駆けつけた。

 

「ぶ、武器を捨てて大人しく縄につけ!」

へっぴり腰の衛兵が尻すぼみの声でアンゲリカに呼びかけるが、

そんなものを気にする様子はなく平然と足を進める。

その度にあちこちからヒッと言う声とともに人垣が割れて道ができあがる。

「あーあ、何なのよこいつら。自分から喧嘩売っといて負けたから通報?

呆れた根性ね」

 

だがそんなところにイビルアイがそれはそれは見事な勢いで駆けつけた。

 

「な・・・何をやっとるんだぁぁ!」

 

「あーイビルアイ?出迎えごくろー。じゃ帰ろっか」

 

「おい!何やってるんだ!あのイカれ女を早く捕まえてくれ!

何のために日頃から高い税金を払ってると思ってるんだ!」

 

店の従業員が叫ぶが、十人以上の80kgはある大の男を街灯のよりも

遥か上まで放り投げて串刺しにするどこぞの始祖もどきを誰が率先して捕まえようと言うのか。

 

「おい!アンジェ!一体なんでこんなことをしたんだ!」

軒先の街灯には死体が突き刺さっているが、それも中に比べれば可愛げがある。

店先も中も死体と内臓がぶち撒けられ凄まじく冒涜的な光景になっている。

自分のはらわたで吊り下げられている肉塊が店の中で

滑稽にぷらぷら揺れている様はてるてる坊主のようだ。

お茶の間にはちょっと放映できない有様だ。

「うーん、成り行き?そこの袋開けたら、いちゃもんつけられて、

ヒデブようこそヤーナムタウンへドッスンバッタン大冒涜になった」

アンゲリカは特に理由もなく殺したが、説明するのも面倒なので麻袋を指した。

「何を言ってるんだお前は・・・この袋が?う・・・」

イビルアイが麻袋の”中身”を見る。

「おい・・・私はアダマンタイト級冒険者チーム“蒼の薔薇”だ。

お前の店の仕業か?これは」

イビルアイは袋の中の女性にポーションを飲ませながら、通報してきた店の従業員に凄む。

イビルアイの気迫に押され、チンピラ上がりの従業員は怯むが

「な・・何だって言うんだよ!そ、その女がうちと関係あるからなんだってんだよ!

今問題にしてんのはそのイかれた女だろ!うちの連中皆殺しにしやがって!」

 

「よく言うわよ、私にいちゃもんつけて借金被せようとしたのは誰かしら?

それに武器を最初に抜いたのはそっちでしょ?私の持ってるのは、ほら護身用の杖だけよ」

血の岩で最大限まで強化した仕込み杖で殴っておいてこの言い草である。

外観こそただの杖だが、血晶石と合わせて破壊力だけなら神器級の杖の前では

人間などという冒涜のナメクジ以下の防御力の物体は何の抵抗もなくすり抜けるだろう。

ガンパリィする必要性すら無かったのは残念だった、もっと血が欲しい。

 

「フゥン、成る程。事情は飲めた、私は彼女”ミスリル級冒険者アンゲリカ”を支持する。

お前たちがやったのは明らかに悪質な奴隷売買だ!この悪党どもめ!

役人に袖の下さえ渡しておけば何とでもなると思ったか!」

イビルアイは事情を察した。

女性として怒りと、同時に心底情けなくもあった。

かつての十三英雄と同じぷれいやぁのアンゲリカに王国の恥を王都に来て早々に見られたことについても。

「ふっ!ふざけるな!こんなイかれ女の肩を持つのか!

冒険者組合は身内の不始末を誤魔化す気か!」

 

「それについては後日、組合の方から説明があるだろう。

だが、今はこの一件が先だ!おい、目の前で違法営業の娼館を放っておくのか!」

 

イビルアイに発破をかけられ、おっかなびっくりしていた衛兵たちはお互いにどうしようかと目を合わせる。

 

「ふぅん・・・衛兵さんはこれを見逃すの?私・・もう一回怒ろうかなぁ・・・」

 

アンゲリカはそっと静かに彼らの勇気を後押ししてあげた。

衛兵たちはこんな化け物を相手するよりは娼館一つで済むのならと目の前で喚き立てる従業員を縛り上げた。

「さぁ立て!違法営業行為・および恐喝、強姦未遂の現行犯で逮捕する!

イビルアイ様、並びにアンゲリカ様!捜査にご協力ありがとうございます」

 

顔を蒼くしながら二人に敬礼し、なお喚き立てる従業員を引っ張っていく衛兵。

力こそ正義である。

 

「ああ、それと・・・建物の中もちゃんと捜査しとくのよ。

被害者女性の救済も忘れないでね。

後で聞きにいくけど、証拠物件が紛失して証拠不十分で釈放なんて・・・ないわよね?」

 

「ひっ、も、勿論です!徹底的に捜査し、関係者には重罰が下されるでしょう!

おい!被害者女性を丁重に保護し、すぐに神殿に運び込むんだ!」

衛兵隊長が部下に指示を出し、娼館に踏み込む。

中の惨状に吐き出した衛兵も、痛ましい女性達の悲惨な状態に

これではあの人がブチ切れるのも無理はないと思いロビーで吐いたことに感謝した。

 

アンゲリカは自分を嵌めようとした連中に呆れたが、

血を大っぴらに楽しめたことには感謝していた。

そのきっかけを作ってくれた女性達にお礼くらいあってしかるべきだろう。

 

このようにしてアンゲリカは王都到着の初日に大虐殺をしたミスリル級冒険者から

王都到着の初日に攫われ陵辱の限りを受けて来た女性達の状況に憤慨してこれを叩き潰した正義の人として世間に知られることになった。

この美談は血なまぐさいところは消して、王都の演劇や吟遊詩人にも歌われるところであった。

美貌の冒険者が悪を討つ、実にわかりやすい勧善懲悪の物語だ。

その一方で『串刺し夫人』『解体屋』といった異名も少し広まってしまった。

・・・・・

 

宿屋に軽い取り調べの後に戻ってくるとそこにはドレスからいつもの冒険者装束に着替えたラキュースが待っていた。

イビルアイが実に言いにくそうに事の顛末を報告すると、ラキュースは持っていた紅茶のカップを落とした。

「そう・・・それで?

王都を観光してたら何で人を串刺しにしてたり、内臓引っこ抜いたりしてるのかしら?

うん?」

 

「・・・・・・・ごめんなさい、はんせーしてます」

アンゲリカは反省する気0なのははっきりとわかった。

ラキュースは王宮から戻って来て事の顛末を聞くと静かにキレた。

瞳から色が失せ、暗黒の殺人者の目をしたラキュースはなぜだかわからないが

とてつもなく悍ましく名状しがたい宇宙的恐怖を連想させた。

輸血したら啓蒙高まりそーと思ったが口には出さないでおいた、余計にキレさせるだけだ。

 

「まぁまぁ、リーダーもそうカッカするなよ。

疲れてるんだろ?もう休みなよ」

 

「鬼リーダーをアンジェと私が楽しませればいい。ベッドでギシギシスッキリs『アベシ!』」

 

「鬼ボスがこんな調子だから嫁の貰い手もない。いっそアンジェと結婚すれば『ヒデブ』」

 

おバカなことを言って囃し立てる姉妹に本気の真拳を叩き込み黙らせると鼻からフーフーと荒い息を出した。

折角の美人もこれでは台無しだろう。

「いい!?もう街中で大虐殺はダメよ!」

「わかった、小虐殺に止める。ついでにベッドで一緒に寝よ、あと処女頂戴」

「ちっがーう!そして隙あらばセクハラしようとするな!」

 

 

「ラキュース・・・アンジェに言っても無駄だ。

それにアンジェの方も正義感からした・・・んだよなぁ。

うん、そういうことにしとこう。

ま、まぁ結果としては大勢の女性が助かって悪党を叩きのめしたんだからいいじゃないか!

それにほら!相手には何とあの八本指の六腕の一人、サキュロントもいたんだぞ!

すごいじゃないか!これから戦う相手の一人をもう倒したなんて!」

イビルアイがフォローに回る。

確かにこれから八本指と戦うに当たって連中の戦力の6分の1を先制して叩けたのだから

棚からぼた餅というべきだろう。

あの戦闘も結局はアンゲリカを手篭めにしようとした連中が襲いかかってきた結果として

正当防衛として認められた。

 

「・・・・はぁぁぁ、まぁいいわ。

とにかく今日は寝るわ、どっと疲れた。

明日には例の件の製造拠点に向かってそこを破壊するから、皆も用意しといて」

 

「寝るの?それなら私も一緒に・・・」

と言ってそそくさと脱ぎ始め、下着姿になるとティアが興奮して飛びついてきた。

これからチュッチュチュパカブラな展開がラキュースと始めようとしたが

「だから隙あらばセクハラすんなつっとるだろーが!」

キレられてしまった。

やはり処女なのが怒りっぽい原因の一つなのだろうか?

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